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Fujikiさん

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異星人襲来!

17/05/22 コンテスト(テーマ):第134回 時空モノガタリ文学賞 【 正義 】 コメント:0件 Fujiki 閲覧数:535

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 彼らが異星人だと聞かされたのは高三の秋だった。
 人類に擬態した彼らはコチンダ君とグシチャン君と名乗っている。変な名前。おまけに二人ともちょっときつめの地方訛りで話す。どうせ擬態するなら、目立たないように佐藤とか田中とか普通の名前にして標準語を使えよ。コチンダ君の告白を聞いた時、僕はそう思った。地球に着いて最初に降り立った場所がまずかったのだろう。
 星がよく見える夜、僕らは二人でビールを飲んだ後、公園の芝生に寝転がって星空を見ていた。酔ったせいで焦点の定まらなくなった目には、空が勝手に回って見えた。
「あの赤い星、見えるかー? 俺とグシチャンはよ、あそこから来たばーて」無数に広がる星の一つを指差してコチンダ君は言った。指の先を見ると、カシオペヤ座と北極星のちょうど中間あたりで小さな赤い星が鈍い光を放っていた。
「は、何言ってんの? いくら冗談でも、そんなこと……」
「こっからは今でも見えるけど、あの星本当はずっと前に滅んでいるさ。住む場所がなくなってから、はるばる宇宙を旅してここに来たわけ。どうね、俺のこと怖くなった?」
 横にいるコチンダ君の顔を見ると、彼は両目から緑の光線を発して僕の顔に照射した。僕は思わず「うわっ!」と声を上げてのけぞった。
「ハハハ、ただの照明だし。レーザービームか何かと思ったば?」
「異星人のくせに、ふざけた真似しやがって!」
 コチンダ君とグシチャン君が転入してきたのは四月のことだ。クラスの皆は受験勉強にかかりっきりで、転入生を気にかける余裕はない。コチンダ君の遊び相手になったのは、卒業後に正義軍に入隊することを決めていた僕だけだった。グシチャン君は常に周囲の人間を警戒しているようなところがあって、直接話をしたことはない。コチンダ君もグシチャン君もなぜか勉強はものすごく得意で、遊んでばかりなのに定期テストの席次で学年一位と二位を取った。クラスの連中が二人を敬遠した理由の一つには、彼らに対する嫉妬心もあったのかもしれない。
 三人で遊びに出かける時は、コチンダ君が僕とグシチャン君のあいだに入って通訳のような役割を務めた。僕が最初に何かを提案すると、グシチャン君は決まって眉間に皺を寄せ、困惑した表情になる。すかさずコチンダ君がなだめるように囁きかけ、彼と低い声で言葉を交わす。コチンダ君がこちらを振り返り、「それ、グシチャン君もすごくいいと思うって!」と満面の笑顔でグシチャン君の答えを代弁する。でもグシチャン君は不信の目で僕を鋭く睨んでいた。今から思えば、グシチャン君は彼にとってのエイリアンである僕を全然信用していなかったのだろう。地球の言葉も苦手だったのかもしれない。三人で出かける機会はだんだん減り、僕はコチンダ君とだけ遊ぶようになった。
 春が来て、僕は予定通り正義軍に入り、二人は優秀な頭脳を活かして国立大学に進学した。彼らの他にも多くの異星人が人類に擬態して生活していることがマスコミに暴露され、数年のうちに異星人の存在は内閣でも議論される問題になった。憲法で定める基本的人権は異星人には適用されない。閣議でそう決まった後、政府は異星人侵略対策本部を設けた。市民からの通報を受け付け、危険と見なした異星人をすみやかに強制収容所に送る部署である。その一方、全国の大学では異星人シンパを中心に平等な権利を求める人権運動が勃発した。正義軍に伝わってきた情報によれば、グシチャン君がその運動の中心的な活動家の一人であるらしかった。
 ある雨の夜、学生団体が国会前で大規模なデモを行った。正義の味方である僕たち正義軍は自動小銃を担いで事態の鎮圧に出動した。兵卒たちの銃口はリーダー格のグシチャン君の頭に向けられている。異星人なら問答無用で射殺しても罪には問われない。彼らが人類に危険を及ぼしたという大義名分さえあればいい。そのために学生に扮した私服の兵卒がピストルを忍ばせてデモに加わっていた。
 グシチャン君は拡声器を手にし、変な訛りで何やら叫んでいた。レインコートのフードの陰から見える彼の視線は鋭く、僕らに対する敵意をむき出しにしていた。彼の人類に対する不信は高校時代から少しも変わっていない。地球の言葉はやっぱり下手だった。
 計画通りにピストルの銃声が轟いた。兵卒たちはグシチャン君に向けて一斉に発砲した。僕も躊躇なく引き金を引いた。グシチャン君と彼を守ろうとした十人ばかりの学生が蜂の巣になった。悲鳴と怒号が飛び交った。
 その時、緑色の光が突然僕の目をくらませた。僕は反射的に光が差す方向へ発砲した。逃げまどう群衆の足元にコチンダ君の死体があった。銃弾は正確に彼の両目を撃ち抜いていた。
 チキショウ、二度も騙された。空を仰いでも雨雲に隠れて星は見えなかった。でも、数億光年も離れた赤い星の残光はまだ消えていないはずだ。


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