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あずみの白馬さん

成人済 アイコンは天乃ゆうりさん作成(無断転載を禁じます) 自分なりの優しい世界観を出せるように頑張ります。 好きな作家は飯田雪子先生です。若輩者ですが、よろしくお願いします。 Twitter:@Hakuba_Azumino

性別 男性
将来の夢 旅立つときには、ひとりでも多くの人に見送られたい。
座右の銘 「これでいいのだ」

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魔女エメリアと【正義の味方】

17/05/21 コンテスト(テーマ):第134回 時空モノガタリ文学賞 【 正義 】 コメント:2件 あずみの白馬 閲覧数:943

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――魔女、エメリアの前には、幼馴染の青年、デネブがいる。
 彼女は無表情で、金色に輝く長剣を振り上げる。
 彼は微動だにしない。待ち受ける運命に従うかのように……

 ***

 この世は光があれば、闇もまたある、しかし……

 現王セレストにより善政が敷かれたこの国は、国民に能力が認められれば誰でも王様になれるチャンスがある。

 私、エメリアは魔女として生まれ育った。
 山奥の小さな村の外れの屋敷に一人で住み、人間に対しては付かず離れず。目立たないよう、あまりいい服は着ない。【任務】に必要な時以外は。こう見えても色々あって。

 そんな時、一人の少年が私に懐いて来た。
「おねーちゃん、薬草取って来たよ」
「あら、いつもありがとう」
 彼はデネブ。美しい目をした、村に住む少年。
「ぼくね、大きくなったら王様になるんだ」
「えらいえらい、じゃあ、お化けなんかに負けちゃだめよ」
「……負けないもん。王様になったら、おねーちゃんをお姫様にして、綺麗な服着せてあげるね」
「ありがとう」
 かつて、村の肝試し大会で、怖くなって動けなくなったのを、私が助けてあげた。それ以来、私をお姫様にすると言ってくれている。

 ***

 数年が過ぎ、彼も18歳になり、この国の兵士になっていた。本当に王様になるつもりらしい。

 どういうことか、時をほぼ同じくして、国じゅうに疫病が流行り始めた。
 村の人に薬草を調合して飲ませると、たちどころに病気は治った。
 けれども流行自体は収まる気配を見せない。すると何を思ったのか、突然王様は、これを魔女のせいにして討伐を命じた。

 時同じくして、魔女一族の長から、私に手紙が届けられた。それを読み終え、暖炉にくべる。

 その数日後、兵士がやってきて私は捕まってしまった。魔女であることは隠していたが、薬草調合が上手すぎるのがおかしいと思われたらしい。

 形だけの裁判が行われ、私は処刑されることになってしまった……。

 ***

 処刑場には鋼鉄の処女が置かれていた。これに挟まれて私は死ぬ、ということなのだろう。

 それを操作するのは……、なんとデネブだった。
「助けて! デネブ!」
 思わず私は声をあげた。しかし王様が彼に命令する。
「何をしている。早くせぬか!」

 彼の手で殺されるなんて嫌! デネブ、正義の味方になって私を助けて!

 しばしの沈黙の後、
「エメリアさん、ごめん!」
 願い虚しく、鋼鉄の処女は無慈悲に閉じられてしまった。

 ***

 時間が過ぎ夜となり、私は城の地下にいる。
 処刑具が閉じられる直前、一か八か瞬間移動の魔法を自分にかけて、これが成功した。

「(デネブ、私、つらい……)」

 涙を払い、任務を遂行するため、城内へ足を踏み入れた。
「誰だ!」
 兵士に気づかれたが、眠りの魔法で眠らせ、城内を慎重かつ大胆に進んで行く。
 
 ある部屋まで来た時、デネブとエルストの声が聞こえて来た。

「ワシは悪魔族のギーク。ゆくゆくは世界を我が物にしたい。そのために、まずはこの国を支配させてもらう。エルストはもう、この世にはおらぬ」
「そ、そんな……」
「昼間の楽しいショーの御礼に貴様も天国に送ってやろう。死ね!」

 情報通りだった。
 演説に夢中で隙だらけのギークに、私は毒針を打ち、任務を遂行した。

「エ、エメリアさん!?」
 私を見て腰を抜かしているデネブを見ると、怒りの感情がわいた。
 ギークから長剣を奪い、彼に近づく。
「よくも私を串刺しにしようとしたわね……」
「あ、あれは、命令されて……」
「そう。命令されたら殺せる程度の存在だったってこと」
「ごめんなさい。許して」
「あれだけ懐いてくれたのに……、許さない」
 命乞いの言葉を否定すると、彼は観念した。
「……、僕を殺して。おねーちゃんなら、いい」
「……」
 私は長剣を振り下ろした。彼はもう、運命と諦めたのか微動だにしない。

「(おねーちゃんなら、いい)」

 心の中でさっきの言葉が繰り返された。
 命を差し出してまで償おうとする彼の心は、私の衝動を止めさせるのに十分過ぎた。剣を鞘に収め、彼に語りかける。
「殺される覚悟ができるなら、生きて私に償えるよね?」
「え……? 助けてくれるの?」
「今は助けるけど、次裏切ったら今度こそ命は無いと思って」
「……」
「あなたを許すことは出来ない。けど、二度と裏切らないなら、あなたを認めることは出来るから」
「……はい」

 魔女は悪魔と人間の間の存在。互いの力が暴走した時に食い止める役目を担っている。あの手紙はギークを止めろという指示書だった。

 私は女王の座につくことになり、デネブを夫に迎えた。

 今度こそ、私を救う【正義の味方】になってね、デネブ。


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このストーリーに関するコメント

17/05/23 あずみの白馬

【謝辞】天乃ゆうりさんにストーリー面などで協力いただきました。改めて感謝申し上げます。

17/06/08 冬垣ひなた

あずみの白馬さん、拝読しました。

エメリアは魔女といっても繊細な女性であり、やはりこのような時はデネブに救ってもらいたかったと思います。最後に彼が改心してほっとしました、二人には幸せになって欲しいですね。

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