平岩 藩士さん

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17/05/16 コンテスト(テーマ):第134回 時空モノガタリ文学賞 【 正義 】 コメント:0件 平岩 藩士 閲覧数:580

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去年の夏に野球部を引退してから、私は必死で勉強をした。
その努力が実を結び、全国的に見ても一流と呼ばれる大学への入学が決まった。
合格が決まった時は、両親は大いに喜んでくれ、その日は頼んでもいないのに高級なレストランに連れて行ってもらった。
友人からも熱烈な祝福をうけた。
そんなこともあり、私は意気揚々と大学入学までの休暇を楽しんだ。
そして迎えた入学式。
会場に入るといかにも賢そうな面々が視界を覆った。
分厚い眼鏡をかけた人、勉強冊子を眺めている人など様々いたが、誰1人騒いでいる人はいなかった。
私は弱った。
なぜなら、私は根っからの真面目でもエリートでも無いからである。
中学校の時は学年順位は下から数えた方が早かったし、定期的に問題を起こして担任からはこっぴどく叱られたものである。
そんなことを考えながら周りをぼんやり眺めていると、その大勢の賢そうな面々から、一人だけ異彩を放っている男を発見した。
男は金色の髪の毛を整髪料で固め、耳や鼻にはピアスが数個も付いていた。
もちろん、この集団においては目立つに決まっていて、四方八方からは冷たい目線が向けられている。時にはヒソヒソ声まで聞こえてくる。
だが、男はいたって平穏な表情を浮かべながら、口に含んだガムを噛んでいた。
その時、私は「どう見てもこの大学に入れるような人間ではないな」と思った。

入学式が終わるとクラス発表があった。
私は同じ高校の友達がいなかったので自分のゼミを確認して、速やかに指定された教室に向かった。
教室の扉はやけに大きく感じた。
そして、恐る恐るドアを開けた。
私はゆっくりと教室に入り、指定された席に座った。
相変わらず賢そうな面々ばかりだ。
すると、先ほど発見した不真面目そうな男が教室に入ってきた。
男は暫し教室をウロチョロしていた。
私は「早く席を見つけて座ってくれ」と不満に思った。
しかし、男の動きは我々とは違った。
男は黒板に貼ってある座席表を勢いよく剥がしたのだ。
一同の目線が男に向けられた瞬間、男が口を開いた。
「はい!皆さん、こんにちは!このゼミを担当する小川と申します!」
ここにいた全ての生徒が腰を抜かした。
つまり、男は小川という名前で、我々のゼミの担任ということらしい。
驚いているうちに小川は甲高い声でこう続けた。
「皆さん、驚いたでしょー?」と自慢気に言った。
もはや、訳がわからなかった。
言いたいことが多すぎると思いつつも、
私はその小川というやつが喋り出すのを待っていた。
まもなく、小川は満面の笑みで喋り始めた。
「みんな、僕をここの学校の生徒だなんて思わなかったでしょ?ましてや担任の先生だなんて」
周りの人が小さく頷いた。
さらに小川は続けた。
「ようはね、そういうことなんだ。みんなに知ってもらいたかったことは」
周りの人は再び小さく頷いた。
今度は、先ほどとは違って、周りの人の関心が高ぶっているようにも思えた。
その期待が頂点に達した時、小川が口を開いた。
「つまりね、人は外見だけでは分からないってことなんだよ」
私はギクリとした。
なぜなら、私は小学生の頃から外見で人を判断してしまう癖があった。
自分の中での正義を会話を交わしたこともない人に向かって振りかざし、勝手に好き嫌いを決めていたのだ。
私はそのことを指摘された気がして、急に自分が恥ずかしく思えた。


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