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ネコライオンさん

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20代後半の熱い休日

17/05/08 コンテスト(テーマ):第135回 時空モノガタリ文学賞 【 休日 】 コメント:2件 ネコライオン 閲覧数:912

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「何のためにやっているのか!?それを常に考えて打ち込めよ!」

社会人にもなってめちゃくちゃ熱い草野球チームに加入した。
野球なんて未経験な俺だし、正直うまいなんて思ってない。
が、しかし、これほど楽しい時間はないと思う。

最近は仕事も上手く行くようになった。休日のことを考えるとワクワクする。色んなことがうまく行くようになった。

元々はあまり明るくない文化系の人間で、社会人になる前まではスポーツというものとは縁がなかった。

しかし、ある熱血野球バカに出会ってから人生が変わった。

「俺と一緒に甲子園を目指さないか?」

そんな言葉を言われて加入した。その言葉、28歳だから13年前ぐらいに聞きたかったわ。

いつしか俺は毎日仕事帰りも一人で素振りをし始めた。仕事の休みもプロ野球選手のバッティングフォームを見たりするようになった。

そんなある日の休日、隣街の社会人チームと大事な試合があった。
相手は元甲子園選手を含めた強豪チームだ。

一方、うちは元未経験者もいるチームだ。

そんな相手と炎天下の休日、プレイボールの笛と共に試合が始まった。

「なんのために野球やってんのか常に考えろよー!」

俺たちの熱血キャプテンはそう叫ぶと、マウンドに上がった。

一方、俺はこいつの女房役ことキャッチャーだ。

頭脳や戦略には自信がある。

だからこそ今回も相手の情報を先取りして、データ通りのリードをしている。

熱さと冷静さを兼ね備える俺たちのピッチャーはうまく構えた場所に投球した。

その結果、6回まで0対0と奇跡的に均衡試合を運ぶことができた。

「いいぞ!! 勝てる!! 勝てるぞ!!!」
ピッチャーは汗を大量に流しながら俺たちを元気付けた。

しかし9回表、ボールがすっぽ抜けて、そのボールは場外へと運ばれた。そのショックで立て続けに打たれて試合は一気に3対0になってしまった。

たかが趣味の社会人野球であったが、ピッチャーは大泣きしていた。本気で勝ちたかったらしいが、これで勝つのが難しくなった。

こいつに誘われて、人生が変わったやつは多いだろ。空虚な毎日に彩りをくれた。

そんなあいつを勝たせたい。

俺たちアラサーたちは立ち上がったのだ。

バッターボックスに入ったのは6番田村。
機械エンジニアとして働く男の手先は器用だった。
基本的に無口な男だが、今回ばかりは違かった。
「勝たせたいな」
そう言うと、真剣な目つきで140キロの速球を金属バットで打ち返した。
貧弱な当たりであったが、落ちたところがうまかったため、内野安打となった。

次は7番バッター室田。
室田は証券マンだ。証券の営業とは断れることが普通な過酷な職業だ。
「死んでも出塁してやる!!」
自慢な粘り強さを活かし、フォアボールを勝ち取り出塁した。

次は8番バッター清水。
清水は鍛冶屋で働いている。鍛冶屋の世界は一瞬一瞬を見逃さない。
「あそこを狙え!」
二遊間の隙を狙いヒットを打ち出塁した。

そして9番バッター。戦略コンサルタントの俺だった。
今まで勉強ばかりしてきて、弁は立つが身体は貧弱で、口だけ達者なやつとして煙たがられていた。

そんな俺にある日あいつは声をかけてくれた。
「俺と一緒に甲子園を目指さないか!?」

馬鹿なんじゃないかと思った。
そんなこと高校の頃ならまだ分かるが、良い歳した大人が言うかよ。
でも嬉しかった。今まで外で遊んでいた奴らが羨ましかった。チームスポーツで泣き笑いする奴らを外部から蔑んでいたのと同時に、羨ましかった。

受験勉強をしっかりして、良い大学、良い会社に行くだけが人生じゃなかった。
一瞬一瞬生きる意味を見つけ熱く生きることこそが、人生の真髄だった。それをあいつが気づかせてくれた。

だからこそ、今日こそは敗戦投手にさせる訳にはいかなかった。

理論的思考ではなく、今回だけは想いに忠実になろう。

「そういえばデビットヒュームも言ってたな。理性は情念の奴隷だって」

何もかも考えず思いっきり振ったバットは、ボールに思いっきり当たった。金属バットから初めてこんな大きな音が響いた。

そのボールは遠くへと運ばれ、消えていった。

俺たちに光を与えてくれたあいつに、有終の美は飾ることができた。

あいつは泣きながら喜んでいた。
20代後半。結婚とか現実を見据えて行動しないといけない年頃だが、今の俺たちには関係なかった。

一瞬一瞬を大切に生きる。
なんのために野球をやるのか、それは大切な仲間と熱く生きるためだ。

休日だというのに、汗びっしょびしょだ。
あー。本当に、人生って素晴らしい。


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このストーリーに関するコメント

17/05/09 真早

2000文字でドキドキハラハラ、熱くなりました。
良いですね、大人の青春。
ピッチャーの名前が出ないのが少し残念でしたが、さわやかで清々しく、楽しかったです。

17/05/11 ネコライオン

家永真早さん:読んでいただきありがとうございました!熱くなっていただけたことがとても嬉しいです!ピッチャーの名前は字数の関係で出せませんでした。すみません。

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