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荒木成生さん

はじめまして、こんにちは、荒木成生です。 二千字をオーバーした時の推敲作業に苦労しています。 説明不足になりがちですが、そこは想像力で補ってください。 二千字よりも長いものは小説投稿サイト『アットノベルス』に置いてありますので、興味があればこちらもよろしくお願いします。 ペンネームは同じです。

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メリーさんのクリスマス

12/11/19 コンテスト(テーマ):第十九回 時空モノガタリ文学賞【 クリスマス 】 コメント:1件 荒木成生 閲覧数:2253

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 イヴの夜は稼ぎ時だ……、というのも、お客様という名のファンからクリスマスプレゼントという名の貢ぎ物をたくさんもらえるからだ。
 私が働くお店『メリー☆ジェーン』はアイドルパブと呼ばれる芸能界を引退したアイドルをホステスとして雇用したお店であり、その客層は昔からのファンという方がほとんどである。
 このファンの方たちというのが、当然のごとく私の好みを把握しており、お店が終わる頃には控え室に私好みのブランドの腕時計やバッグなどで溢れかえることになる。
 そのプレゼントの山の中から自分の欲しい物を見繕って持ち帰るのが本日最後の仕事だ……、残った物は後日売却する。
 しばらくプレゼントを吟味していると、怪しげな物に出くわした。
 人形だ……、フランス人形……、これはいけない……、人形やヌイグルミは盗聴器を仕掛けられる怖れがあるので禁止されている。
 それ以前に、気味が悪い……、いかにも真夜中に動き出しそうな気色悪さがある……、迷わずゴミ箱行きにした。

 その夜、携帯電話の呼出し音で目が覚める。
 時刻は深夜二時……、寝付いたばかりなのに……、誰だ?
「あたしメリーさん。今、お店にいるの」
 それだけ言って、通話が切れる。
 誰、メリーさんって? うちの店で働いている元アイドルにはそんな名前の人いなかったはずだ。
 と、また呼出し音が……、
「あたしメリーさん。今、セブンイレブンの前にいるの」
 このメリーさんって……、もしかして、都市伝説の……、
「あたしメリーさん。今、ローソンの前にいるの」
 やばいよ! ゴミ箱に捨てたあの人形だとしたら……、
「あたしメリーさん。今、ファミマの前にいるの」
 コンビニに寄り過ぎだよ……、でも、この時間に明るいのはコンビニくらいか。
 メリーさん襲来の前に何とかしないと。外へ逃げれば……、今ならまだ間に合うか……、
「あたしメリーさん。今、あなたのマンションの前にいるの」
 ダメだ……、今出て行ったらメリーさんと鉢合わせだ。
 とりあえず、戸締りをきちんとして侵入を防ぐ。
「あたしメリーさん。今、玄関の前にいるの」
 オートロックのマンションなのに……、さらに、ドアノブからカチャカチャと音が……、シリンダー錠すらも……、ピッキングのスキルまで持っているとは。
 どうすれば助かるのか……、武器を……、武器を手に入れないと。
 玄関にゴルフセットがあった……、その中から五番アイアンを手にする。
 ついにドアが開く。チェーンは掛かったままなので半開きの状態だ。
 人間なら入ってこれないが……、
「あたしメリーさん。クリスマスプレゼントを持ってきたの」
 ドアの隙間から人形の顔が覗き込むようにこちらを見ている。
 そして、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
「あたしメリーさん。プレゼントは……、あ・た・し!」
 言うや否や、私の胸元目掛けて飛びかかってくるメリーさん。
「あんたなんか、いらないわよ!」
 心の叫びと共に、私は上段に構えたアイアンを振り下ろす……、手応えはあった。
 メリーさんは叩き落とされ、仰向けに転がっている……、このまま終わってくれればいいが……、
「あたしメリーさん。どうして……、どうして受け取ってくれないの?」
 表情は無いが、無念さが伝わってくる……、どうも都市伝説のメリーさんっぽくない。
 プレゼントとして受け取ってもらいたい……、そんなファンの心が宿ったのだろうか?
「クリスマスプレゼントはサンタさんが持ってくるものよ……、自ら歩いてくるプレゼントなんていらないの」
 いらないと言って拒否するより、プレゼントとして受け取れないと諭して、あきらめさせた方がいいと判断した。
「あたしメリーさん。おフランス製なの。職人さんのお手製なの。世界に一つしかないの……」
 メリーさんは立ち上がり、必死にセールスポイントをアピールする……、が、私にはどれ一つ食指を動かすようなポイントはない。
「プレゼントは私が希望する物、もしくは私が喜びそうな物でないと……、人形なんかいらないの……、動いたりしゃべったりする人形なんかいらないのよ!」
 強引な論破だが、効果はあったようだ。
 視線をそらさず、無言で一歩、また一歩と後退するメリーさん……、森の中で熊さんに出会ったと時の対処法と同じだ。
 玄関のドアを抜け、小さな歩幅で駆ける足跡が遠ざかっていった……、どうやら危険は去ったようだ。

 三月三日丑三つ時、電話が鳴る。
「あたしメリーさん。お雛様を持ってきたの」
 聞き覚えのある声が……、またお前か……、早く片付けなきゃ、婚期が遅れるといけないから。


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このストーリーに関するコメント

12/11/30 池田K

コンビニに寄り過ぎです。

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