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とむなおさん

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Nの正義という名の鬼行(きこう)

17/04/24 コンテスト(テーマ):第134回 時空モノガタリ文学賞 【 正義 】 コメント:2件 とむなお 閲覧数:785

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ある雷雨の夜のこと……
X病院の産婦人科で、友瀬一郎・和子夫婦に、とても元気な男児が誕生した。
一郎は、さっそく我子に「一也」という名前をつけた。
翌日は休日ということで、一郎は和子の病室で夜を明かすことにした。
実に可愛い寝顔でスヤスヤ眠っている生まれたての一也を、一郎は何度も見ては、
「やっぱり俺に似てるな……」
それを見て和子は、あきれたように笑いながら、
「あなた、何回、言うのよ……」
その時、誰かがドアをノックした。一郎は振り向き、
「いま頃、誰だろう……?」
怪訝そうに和子を見てから、
「はい、どうぞ……」
すると、ゆっくりドアが動き、
「失礼します……」
ドアを開けながら、気味の悪そうな男が入ってきた。ボサボサ頭に丸メガネをし、一応という感じの白衣を着て、手には袋のような物を持っていた。
「えっと……あなたは……?」
「中川という者です……」
「中川さん……。この病院のお医者さんですか?」
「いえ……。ですが……似たような者です……」
「それで、どういうご用件ですか?」
「あなたは、ご存知でしょう? その昔、日本で起きた、いまわしい連続殺害犯の小久保 清の事を」
一郎と和子はキョトンとしていた。更に中川はつづけ、
「小久保 清……彼がいなければ、あんな事件は起きなかった……」
一郎は、我慢できないといった感じで、
「えっと中川さんとかいいましたね。あなたは、いったい……」
「大変、申し上げにくいのですが、あなたたちのお子さんは、その小久保 清の生まれ変わりなのです……。このまま成長させてはいけません。大変な事に……」
「な、何を言い出すかと思えば……。もういい、出て行ってくれー! 気分が悪い!」
一郎は中川に駆け寄った。すると中川は、その袋を持った手を上げて、
「これを被ってごらんなさい。分かりますから……」
中川の体をドアへ押しやろうとする一郎の頭に、その袋を被せた。
一郎はその瞬間、立ち止まってしまった。視界が真っ暗になったからだ。
しかし、特に何もなかった。
一郎は笑いながら袋を取り、
「バカばかしい……。いったい何の真似だ。とにかく出て行ってくれー!」
「えー? そんな……そんな……」
「早く出て行けー!」
その時、ドアを開けて看護師が顔を見せ、
「あの……何かありましたか?」
一郎は中川を看護師に押しつけながら、
「こんな変なヤツが入ってるよ。困るね。まったく」
「あら、どなたですか? 勝手に入られては困りますよ!」
看護師は、中川を連れて行った。
「まったく世の中には変なヤツがいるもんだ……。おっと起きなかったかな……?」
一郎は一也が寝ているベッドに駆け寄った。一也はスヤスヤ眠っていた。
「よかった……」
和子も笑顔を見せた。
やがて友瀬夫婦は一也を抱いて退院した。
そして月日は流れ、一也は元気にスクスク成長していった。
が、一也が小学一年生になったある日、自宅の庭の隅で楽しそうに何かしている一也を一郎は見つけた。
「何をそんなに楽しそうに……」
と覗きこんで、ドキッとした。一也は、何匹ものカエルをバラバラに殺して遊んでいたのだ。
そして、そんな一也の恐ろしい行動は、成長するにしたがってエスカレートしていった。
一也が十八歳になった頃、近所の子供の次々に行方不明になる騒ぎが起きた。
友瀬夫婦は、それが一也の仕業だと分かっていたが、どうにもならなかった。
一也は、ついに家に帰らなくなった。
そしてやがて日本各地で、男女が変死する事件が起きていった。
友瀬夫婦は、ただただ自宅でひっそり暮らすしかなかった。
そんな夜、友瀬宅に一人の男が訪れた。恐ろしい顔と姿になった一也だった。
「お前は、もう私の子供ではありません。出て行きなさい!」
和子が、どなりつけた。
「それが、母親が息子に言う言葉かー!」
和子を絞め殺した。それを見た一郎も、
「なんという事を……。お前は息子じゃない。とっとと出て行けー!」
「てめぇもかよ、親父。せっかく息子が帰ってきてやったというのに……」
一郎の首を絞めた時、パトカーのサイレンが聞こえた。
「クソっ」
一也は一郎を壁にぶつけた。一郎の意識が薄れていく中、バスタオルが顔に落ちた。
視界が真っ暗になった。
「あなた、いつまでそんな袋を被ってるの?」
和子の声が聞こえ、一郎はハッとして袋を取った。
目の前に中川と名乗った男がいた。
そこはX病院の一室で、心配そうに見詰めている和子もいて、赤ん坊の一也はスヤスヤ眠っていた。中川は真顔で、
「どうです。納得されましたね?」
静かに一也に近付くと、両手を突っ込んだ。
「あなた……。どうして止めないの?」
中川は、一郎から袋を受け取ると、だまって出て行った。
一也は亡くなっていた。
「これで良かったんだ……」
一郎はつぶやいた。


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このストーリーに関するコメント

17/04/26 文月めぐ

はじめまして。文月めぐと申します。
物語拝読いたしました。
はじめはとても穏やかな家族のお話かと思いきや、後半はどきどきしながら読みました。
中川という人物、とても不思議でした。

17/04/26 とむなお

文月めぐ様、コメント本当にありがとう御座いましたー! m(_)m(作者)

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