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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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ゴーストコーヒー

12/11/19 コンテスト(テーマ):第十八回 時空モノガタリ文学賞【 コーヒー 】 コメント:2件 石蕗亮 閲覧数:2491

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 祖父の葬儀の時、焼香の列の中に一際珈琲の香りを纏っている人がいた。
白髪に同じ白い口ひげを生やした初老のその人は焼香し手を合わせた跡で「この後うちの店に寄って行っておくれよ。」とおかしなことを呟いたのが印象に残った。
 
 それから数日後、学校帰りにふと珈琲の匂いに立ち止まると喫茶店の看板が目にとまった。
何気なしにドアのガラス越しに店内を覗くと、店内のカウンターに腰掛けている祖父の姿が見えた。
「おじいちゃん!?」
叫びながらドアを開けたがカウンターには誰も座っていなかった。
一瞬遅れで羞恥心が意識を覆い、慌ててドアを閉めようと掴んでいたドアノブを引こうとした矢先に「いらっしゃいませ。」と声をかけられた。
「あ、あの、すみませんでしたっ。」
真っ白になっている頭で咄嗟に返事をし顔を上げると、先日の葬儀に居た初老の人が居た。
「その節はご愁傷さまでした。」
「いえ、こちらこそお悔やみ戴きありがとうございました。」
「お若いのにしっかり挨拶できるんですね。おじい様も喜んでおられるでしょう。」
挨拶を交わしながら、どうぞと店内へ案内されカウンターの席を勧められた。
店内にはお客は居なかったが珈琲の入れたての香りが充満し、今まで誰かが飲んでいたような空気が残っていた。
 ふと見るとカウンターに空のコーヒーカップが置かれていた。しかし珈琲を淹れた痕跡はなかった。
確かそこはさっき祖父の姿が見えた席だったはず。
そう思いながらカップを見つめていると「どうぞ。」と言いながら珈琲を差し出された。
注文もしていないのに出されたので躊躇っていると「サービスです。」と笑顔で答えられた。
「いただきます。」と会釈すると「視えましたか。」と聞かれた。
「え、っと、祖父がですか?」
「やはり視えられたんですね。今日は一般のお客様は来ないようにしていたのですが。」
初老のマスターはそう言うとグラスに水を入れ、その中にお札のようなものを入れると私に差し出し「この水を瞼と耳の中に塗ってください。」と説明してくれた。
おそるおそる両瞼にグラスの水を塗るとカップの置いてある席に座っている祖父の姿が見えた。
「おじいちゃん!」大声を上げる私に祖父は何か話しかけてきたが声は聞こえなかった。
「耳の方にも。」とマスターに促され指先につけたグラスの水を耳の中に付けてみた。
「よう、驚かせてしまったな。」
祖父の声が聞こえた。
「え、なんで?幽霊だよね?」
「あぁ、まごうことなき幽霊だ。ここは幽霊も飲める喫茶店なんだよ。」
そう言うとカップを傾けてこちらに見せた。
さっきは空だったカップに今は半分ほど珈琲が入っている。
「ここのマスターはな、昔からの知合いなんだが陰陽師をやっていてな。幽霊相手にも珈琲をだしているんだそうだ。」
祖父はそう言うと一口飲んだ。
「さっきそのカップ空だったよ。」
私が不思議そうに言うと、「そりゃそうだ。」と祖父は笑いながら答えた。
「何故ならこの珈琲も幽霊だからさ。わしの姿が見えるうちは同じように珈琲も見えるんだろ。」そう言いながら最期の一口を飲み終えると「ごちそうさん。」とマスターに声をかけた。
「またお盆にでもきてくださいな。」
マスターはそう言いながらカップを下げた。
「じゃぁ、じいさん逝くけど、このことはみんなに言うなよ。次から来難くなるからな。お前とじいさんの秘密だ。」
言いながら祖父の姿が急に霞んで見えなくなった。
「逝ってしまったの?」
少し寂しくなって俯く私に「あ、瞼の水乾いたから見えなくなっただけですよ。」とマスターが教えてくれた。
 あ、そんなもんなの。
なんか有難いんだか何なんだか微妙な空気になったので私の珈琲を一気に飲み干して空気を誤魔化した。

 あれ以来、私はこの喫茶店に入り浸っている。
あの日、人間が来れないようにしていたお店に入ってきた私には陰陽師の才能があるらしいとマスターが教えてくれたので弟子入りしたのだ。
お盆に祖父が帰ってきた時には、今度は私が淹れた幽霊専用のゴーストコーヒーを飲ませるのが目下の目的だ。


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このストーリーに関するコメント

12/12/28 笹峰霧子

行ってみようかな、その喫茶店。
もしかして懐かしい人に会えるかもしれない。

13/01/17 石蕗亮

笹峰霧子さん
コメント頂きありがとうございます。
気付くのが遅れ申し訳ありませんでした。
いつかこんな喫茶店やりたいです。
つくったらご案内いたしますので来て下さいね^^

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