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小高まあなさん

鳥と怪異と特撮ヒーローが好き。 ひねくれつつも清々しい物語がモットー。

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帰ってきたよ、修羅の国

17/04/24 コンテスト(テーマ):第132回 時空モノガタリ文学賞 【 浦島太郎 】 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:965

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 一年ぶりに戻った職場は、私の知っている場所ではなかった。
「え、席ここなんだ?」
「あ、そうなんですよー! めっちゃ窓際ですよ」
 同僚が笑う。
 産休明けの職場は席替えが行われていた。個人が移動しただけじゃない。チームの島ごと移動していた。壁際から窓際へ。こんな大移動、めんどくさかったろうに。
「まあ、席替え一回じゃないですけどね」
「え?」
「飯田さんがいない間に大規模席替えが三回ありましたー」
 小学校かよ。
 半笑いになりながら、席につく。
 仕事の勘を取り戻す以前の問題な気がする。
 席だけではなく、組織体制にも変更があったそうだ。三つのチームが合同になっている。
 あたりを見回し、
「そういえば、吉田さんは? どこの席?」
 割と仲が良かった人の名前を告げると、
「あ、辞めました」
 さらっと言われた。
「えー」
 教えてくれてもいいのに。
「あと、石田さんと飛田さんと新田さんが辞めましたねー」
 辞めすぎだろ。っていうか、
「飛田さんって誰?」
「あれ? あの小さい……」
「飛田さんは、飯田さんが産休入る前に入ってきた子だから知らないと思うよー」
 通りすがりの課長が声をかけてくる。
 この課長も知らぬ間に、部長と結婚して苗字が変わってた。交際三ヶ月のスピード婚なので、付き合ってたことすらも知らなかった。
 そしてその飛田さんとやら、辞めるの早すぎだろ。大丈夫か、この会社……。
「あと私、来月いっぱいでやめます」
 同僚がさらりと言った。
「え、マジで?!」
 彼女が辞めたら年が近くて、仲が良かった人がいなくなる。寂しい。
 世の中の移り変わりを感じる。浦島太郎ってこんな気持ちだったんだろうか。
 コーヒーマシーンが導入されてるとか、いい変化も勿論あったけど。あと自販機が増えてた。
 仕事内容はあんまり変わってないといいけど。
 と思っていたら課長に、
「飯田さんには悪いんだけど、三ヶ月後リリースのやつ、担当してもらうから」
「は?!」
 手渡された資料。産休前にやっていたのと全く同じ仕様の仕事。もちろん、具体的な案件は違うけど。
 仕事内容は1ミリも変わっていなかった。変わってなさすぎた。
「え、いや、私久しぶりなんですけど」
 普通、軽い仕事から始めるものじゃない?
「だよねー、わかるわかる。でもね」
 課長は強ばった顔で微笑んだ。
「人が足りないの」
「あー……」
 元々足りてない職場だったが、産休明けの浦島太郎を使うほど逼迫してんのか。
「ふぁいと!」
 辞める同僚がなんかイッちゃった笑顔で応援してくれた。
 一年ぶりに戻った職場は修羅の国と化していた。やばい、戻ってくるべきじゃ無かったかも。


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