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解場繭砥さん

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浦島殺人事件の真相

17/04/23 コンテスト(テーマ):第132回 時空モノガタリ文学賞 【 浦島太郎 】 コメント:0件 解場繭砥 閲覧数:768

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 単純な思考実験ですが、たとえばあなたがボートに乗っていると思ってください。そのボートがいきなり沈没しました。どうするでしょうか。
 当然、慌てますね。手足をばたばたさせてもがくでしょう。結局は沈まないように何とか頑張るでしょう。泳げない人は水を吸ってその場で死ぬかもしれませんが、漁師ともなればすぐに泳いでしまって水面に留まってしまいます。
 であれば、この話は当然裏を読み解く必要があります。少し土台が沈んだくらいで人間が海中に没することができるためには、それなりの細工が必要です。たとえば十分な重さの土台に、足を紐で縛っておくとか。

 つまり、浦島太郎は死のうとしたと解釈するのが自然です。別に亀に誘われたわけでも何でもありません。亀の役割はいわゆる重りです。浦島は、泳ぎの達者な自分が間違って生き延びてしまわないよう、自らを括りつけて海に身を投げたのでした。
 当然、竜宮城での体験は臨死体験による幻覚とすれば説明できるでしょう。

 次は動機の解明です。これは、童謡にヒントが隠されています。
「鯛やヒラメの舞い踊り」とあります。なぜ、踊り子の役として鯛やヒラメが選ばれたのか。
 また思考実験です。回転寿司店に入ったと思ってください。では、鯛の皿とヒラメの皿を取ってください。
 ――今、あなた思考実験とはいえ躊躇したでしょう。そんな高い皿を取るよりもっと安い玉子焼きとか〆鯖にしておこう。そのほうが腹が膨れるし。そう思いませんでしたか。
 竜宮城は臨死体験幻覚であることを思い出してください。つまり、ここから、高級魚に対する憧れを読み取ることができます。もうおわかりでしょう。動機は貧しさです。貧乏に耐えかねたのです。おそらく借金なども溜まっていたことでしょう。

 さて、ここまでで浦島が借金を原因として身を投げたところまでが解明されました。しかしながら、借金をした人が自殺をする場合、なお二通りが考えられるのです。
 ひとつは、何もかもから逃げたいという意思が熟成した結果。完全な自分の意思によるものです。
 もうひとつは、債権者や回収業者といった者が、保険金をかけた上で、自殺とバレないよううまく工作しつつも、脅して自殺を強要するパターンです。最終的には自分の意思となるわけですが、半ば殺されたようなものですね。
 ここで冒頭で亀をいじめている子供たち、という悪役を登場させていることに注目しましょう。つまり、この事件には何らかの悪人が介在していますよ、ということを暗に伝えるメッセージだったのです。
 しかし、なぜはっきり描写せずにこのような示唆的な表現に留めたのか。それは、その悪役の目に留まることを恐れたからです。

 さて、この話で最も重要なアイテム、玉手箱の謎も解明しておきます。玉手箱などという言葉自体、このお話以外で聞いたことはありませんが、ともかく箱であると。現代では、重要なものを入れる、軽々しく開けてはいけない箱のことをこの話から転じてそう呼んだりしますね。
 逆に言えば、玉手箱には重要なものが入っています。自殺強要において重要なものとはなんでしょう。保険金殺人ですよ。といえば、保険の契約証書ではないでしょうか。
 浦島が玉手箱を開けたら白髪の老人になるほどショックを受けた。これはおそらく、きちんと本人しか知りえない事実などが精査された場合、一銭も貰えないことがわかったのです。

 では、事件の核心……ここに迫りましょう。つまり、「誰が浦島に自殺を強要したのか」という点を読み解くのです。
 もう、消去法しかありません。登場人物はもう二人しか残っていないのですから、これが最も合理的な解明方法です。

 そのうちの一人は、乙姫です。しかし、先述のように、悪役の説明をあからさまに述べることを避けた事実を考えると、これは物語の中であまりにも存在が目立ちすぎます。よってこちらの可能性は消えました。
 もう一人残っている人物がいます。あるいは皆さんすっかり読み飛ばしていると思います。それほど印象に残らないようにこの物語には書かれたのです。

 ズバリ、犯人は浦島の母です。

 多くの本で浦島は母と二人暮らしであることが冒頭でさらっと述べられますが、決して犯人に気取られぬよう、登場だけに留めたのです。

 何て痛ましい事件なんでしょう。

 実の母が自分を食わせるために、実の子に投身自殺を強要した。これがこの物語の本質です。

 繰り返しますが、乙姫である可能性はありません。先述の理由に加え、これが臨死幻覚であることから、実在するはずがないのです。
 浦島は、哀れ、毒親に狙われ、独身、童貞のままその生涯を閉じたのでした。

 という、童貞の妄想です。


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