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つけもンさん

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浦島太郎

17/04/23 コンテスト(テーマ):第132回 時空モノガタリ文学賞 【 浦島太郎 】 コメント:0件 つけもン 閲覧数:640

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冷たい床、タイル張り。
白い壁、壁にもたれつづける僕。
狭いなかに、飽和するメチルアルコールの匂い。
「もう助からない」と誰かが呟いた。それを聞いても、もう何も感じない。目をつぶって思い出す君の後ろ姿、あの声、どんな服きてたかまでは、もう忘れちまった。心臓は動いたまま、歩きつづける。君が死んだら、僕も諦めがつくだろうか。そんなことを思い続けて、もう2ヶ月たった。

未だに1人になると、反芻する君の声。端の方は消えちまった。けれど、真ん中は消えないや。

「君と共に人生を歩みたい」

君は嘘が嫌いだったね、確か。

ふと、気づいた。
君と共には人生を歩けない。けれどもゴールは皆一緒。だったら君だけが待たなくても、一緒に待とう。そこで休むなら、僕も休もう。

延命治療による、君の寝息は僕を縛りつける。君はそんなことを望んでないかも知れない。いや、きっと僕の知ってる君なら、僕の記憶の君なら、そんなことしないでと言うだろう。けど、それならば、僕に何をしろと?後ろ髪を引っ張るのは、僕なんだよ。部屋の広さすら、きっかけになりうる。

君の声を忘れる前に、君の表情すらもう危ういんだ。だからいっそ、全部そのまま、眠らしてくれ。今の僕にはつらすぎるんだ。

通りすぎた道は、望んでないと言う。晴れ晴れしい気持ちで進むのは、否定しない。でも、いつだって髪をつかむの僕だ。僕自身だ。

ふと、病院の並木道で君の姿をみる。追いかける足。かすれ声で呼ぼうとした刹那、その気持ちがなくなった。ああ、もう疲れたよ。
なくなったものを数えるのは疲れる。

わからない、わからない、おやすみなさい。
 


あれから60年。

天井の照明が眩しく、目があけれない。意識さえも混濁。そのなかでドアの音が聞こえたように感じた。
 
両手を握られた。

しわくちゃの手で僕を包む君は。
しがれた声で話しかける。
「やっと、会えた。」


しわくちゃの手で握り返す。

大丈夫だ。確か。ああ、大丈夫。

寂しいから僕は、人は、その箱を開けたんです。どうか、責めないでよ。


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