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雲取哲人さん

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真・浦島物語

17/04/16 コンテスト(テーマ):第132回 時空モノガタリ文学賞 【 浦島太郎 】 コメント:0件 雲取哲人 閲覧数:737

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 竜宮城での豪奢な一時を過ごした太郎は、皆に別れを告げて今助けた亀に乗って家路を辿るところ。
「しかし亀よ、なぜ乙姫はワシにあのような箱を渡したのじゃろ? それも絶対に開けてはならぬとは全くもって解せぬ。開けるなと言われればかえって開けたくなるのが人情。振っても物音一つしないのでなおさら気になる。今ここで開けてしまうかの?」
「太郎様、それはなりませぬ! 確かに開けるなという物をわざわざ土産に持たせるのは理解に苦しみますが、開ければ何やらあなた様に不幸が訪れる気がしてなりませぬ。陸に着き次第どこぞへお隠し下され。絶対ですぞ、太郎様!」
「…う、うん」
 そうする内にも両者は陸に到着。
「か、亀よ、景色が何やら変わっておらぬか⁉ 家々がこんなにも立ち並んでおらんかったぞ」
「うーん、確かに…。同じ浜には違いありませぬが、まるで別世界」
 太郎の家に戻るとその家はなく、近所に尋ねると両親はすでに亡くなり、当の太郎も行方不明で死んだだろうとの返事。皆に太郎は自分だと告げても、仮に太郎が生きていてももうかなりの爺だと、誰も取り合ってはくれない。
「ど、どうしよう亀よ…。竜宮城で戯れる間に時は過ぎ、ワシらどうやら未来に戻って来たようじゃ。誰もワシをワシと信じぬし、これから一体どうしたものか…。そうじゃ、何やらその玉手箱に答えがあるような気がしてならぬ。開けるぞ亀よ!」
「いえ、なりませぬ太郎様」
「開けさせぇ、亀よ!」
 両者揉み合いになって箱を奪い合う始末となり、やがて疲労した太郎の隙をついた亀は箱を抱えて逃げ出し、太郎に開けられるよりよかろうと自らその場でフタを開けた。
 すると中からモウモウと煙が飛び出して亀を包み、煙が晴れてそこに残るは何と年老いた亀であった。
「か、亀よ! 何たる事…。おヌシ見る影もなく年老いてしもうたぞ…」
「…やはり箱は曲者にございました。乙姫様が先を見越してあなた様に気を配ったのでございましょうが、私が開けて良かった。私を助けたばかりに太郎様の人生を棒に振る所でございました。何分別世界ではございますが、今から存分に青春を謳歌下され」
「か、亀よ…」
 すると近所から一人の老婆がやって来た。
「…おぬし、ほんに太郎かえ? ワシじゃ、花子じゃ。よう生きとった…。身寄りなどおらぬじゃろうから、とりあえずワシの家で暮らすとええ」
 人生一寸先は闇なると同時に、人生は奇なるものかな。


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