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森伸さん

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雨上がりの虹

17/04/13 コンテスト(テーマ):第103回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 森伸 閲覧数:683

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営業の帰りに公園のベンチに座った。今日の営業は失敗だった。会社の新しいソフトの売り込みだったが、担当者には鼻であしらわれた。「実績のない会社とは取引はしません」と言われたのだ。雨が上がったばかりで、あたりには濡れた芝生の匂いが漂っていた。
ため息をついて、自動販売機で買ってきた微糖の缶コーヒーのブルタブを開ける。いつもブラックばかり飲んでいたのだが、今日はコーヒーの甘さを心地よく感じた。口の中に感じる苦味が一瞬和らぐ。
会社に帰ったら、また上司に怒鳴りつけられるだろう。「お前は無能だ」とか「もうやめちまえ」という上司の言葉が恐ろしい。
今の会社をやめようかと思う。もともと自分に営業は向いていないのだ。そう思った時に、
「あっ、虹だ」と公園の誰かが叫んだ。見上げると、青い空に大きな虹が掛かっていた。虹を見るのは久しぶりだ。それでも何の感慨も浮かんでこない。子供の時にはあんなに感動したのに。
「虹、虹、虹」と叫びながら小さな男の子が走ってきた。男の子は、彼の横で転んでしまう。膝を強く打ったようだ。顔がくしゃくしゃに歪んでいる。そんな様子を見て、彼は思わず息をのんだ。
「だいじょうぶ?」思わず立ち上がって、声をかける。
男の子はしばらく倒れたままだったが、やがて起き上った。顔をしかめているが、泣こうとはしない。お母さんらしき人が追い付いて、彼に声をかけた。
「どうもすみません」
「いえいえ、だいじょうぶでしょうか?」
「こうちゃんだいじょうぶだもん」
男の子は起き上がって、口を尖らせながら言った。
「偉いね、こうちゃん」
お母さんは、男の子の頭をなでる。
「こうちゃん偉いね。男の子は簡単に泣かないよね」
彼がそう言うと、男の子は大きくうなずいた。
バイバイと親子に手を振って、彼は歩き始めた。胸が軽くなっている。
空を見上げると、虹はまだ消えていなかった。


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