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とむなおさん

とむなお――です。 ちょっと奇妙な小説を書きます。どうぞ宜しく!

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十数年前の不思議な光景

17/04/13 コンテスト(テーマ):第133回 時空モノガタリ文学賞 【 スイーツ 】 コメント:1件 とむなお 閲覧数:821

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 ある夕方のこと……。

 パンポーン……。
(おっ、来たな)
 私はインターホンの前にいき、
「はい。どーぞー」
『りょうかーい』
 それは、二十歳になる妹のカズ実だった。彼女は入りながら、
「お邪魔しまーす」
 手には予定の物が入った手さげ袋をさげている。カズ実は、それをテーブルに置きながら、
「はいこれー。我が家の定番スイーツの、プリンだよー」
 私はキッチンで、カズ実の分も含めた夕食を作りながら、
「ありがとう」
「じゃ、先に供えちゃうよ……」
 その手さげ袋の中から、プリンを一個、取り出しスプーンを付けてリビングに向う。
「うん。お願いー」
 そのリビングには、両親の位牌と母の遺影を収めた小型の仏壇があるのだ。
 オムライスを仕上げている私の耳に、カズ実が鳴したリンの音が届いた。さらに続いて、
「残りのプリン、とりあえず冷蔵庫に入れるねー」
「うん、お願いー」
 私と妹のカズ実とは五年の歳の差があった。そして両親は、今から十数年前に他界していた。

 父は交通事故死だったと母から聞いた。その母も、それから一年たらずで亡くなった。
 それから間もなく、叔母(おば)さんが私達を引き取って育ててくれたのだった。

 私が夕食をテーブルに運ぶと、カズ実は、
「もー、お腹ペコポコ……」すぐに椅子に座り、「いただきまーす」と行儀(ぎょうぎ)おかまいなしで、食べ始めた。
 おい、おい、お母さんがいたら、怒られるぞ……と思いながら、私も同様に食べ始めた。
 こんな感じでカズ実を見ていると、十数年前に体験した不思議な光景を思い出す。

 我が家の家族は少し変っていて、父以外の誕生日が三人共、同じだった。
 そして、なぜか定番のスイーツは、プリンだった。
 父が亡くなった夜は、私たち三人の誕生日だったので、我が家の大好物のプリンを買った父が、急いで横断歩道を渡っていた時、居眠り運転の車に轢(ひ)かれたらしい。
 その車は直後、電柱に激突して、運転手も即死だったそうだ。
 そのため母は、私達を育てるため必死で働き、数ヶ月後、過労で亡くなったのだった。
 そんな母が亡くなって間なしの、夜のことだった……。
 夕食が済み、カズ実を寝かせて私も布団に入った。が……これから妹と二人で、どうやって生きていこうか……? と、なかなか寝られなかった時、カズ実が泣き出したのだ。
 私は、仕方ないな……と様子を見にいった。するとカズ実は、
「お母ちゃんはー? お母ちゃんはー?」
「お母ちゃんは、ちょっと出かけてるんよ。大丈夫だから寝なさいね」
 しかし、カズ実はまた泣き出した。私は、カズ実に背を向けて、
(その内、泣き疲れて寝るよ……)
 思わず耳を手でふさいだ。が、それでも聞こえていた。
(お母ちゃん、助けてー!)
 すると、急にカズ実の泣き声が聞こえなくなった。
 私は、何気なく振り返った。すると、カズ実のそばに亡くなった母が座り、あやしてくれていたのだった。
 私は、ホッとする反面、うらやましかった……。
 
 そのことを今のカズ実に言っても、何も覚えていないと言う……。
 もー、姉の心、妹知らず……でも、まー、いいか……。
 私もカズ実も、別住まいではあるけれど、お互い会社員としてちゃんと生きているのだから。
 でも、もし母が生きていたら、
「次は結婚ね」
 と言うかも知れないけれど……。
 夕食を済ませた私とカズ実は、それぞれプリンとスペーンを持って仏壇の前にいき、一緒に合掌(がっしょう)すると、笑顔の母の遺影を見ながら食べるのだった。
 そう、今日は私達の誕生日なのだから。


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このストーリーに関するコメント

17/04/13 AZUME

とても良い作品で、心打たれました。

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