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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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なぜ浦島太郎は玉手箱を開けるハメになったか

17/04/07 コンテスト(テーマ):第132回 時空モノガタリ文学賞 【 浦島太郎 】 コメント:2件 海見みみみ 閲覧数:682

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 一学期の終わり。
 この海の見える町から、引越しする家族がいました。その家族の長女、小学生のマナミは同級生の男の子、カケルに一枚の紙切れを渡します。
「これ、わたしのLINEのID。連絡、待ってるから」
 そう言ってマナミはこの町から引っ越していきました。
「バーカ」
 しかしカケルは素直になれず、その紙切れをズボンのポケットに突っ込みました。

 それから時は流れ二学期。
 最近この町であるウワサが流れています。浜辺に浦島太郎を名乗る男が現れるというのです。
 カケルとその友達はウワサに興味をもち、浦島太郎に会うべく浜辺に向かいました。

 カケル達は浜辺を歩いて浦島太郎を探します。しかしそれらしき人の姿は見当たりません。
「ここは別々に探そう」
 そうカケルが提案し、友達とそれぞれ浦島太郎を探します。しかしそれでも浦島太郎は見つかりません。
 やっぱりこんなウワサはウソだったのか。そう諦めかけた時でした。
「なにを探しているのかな、坊や」
 突然後ろから声をかけられ、驚いて振り向くと、そこにはボロボロの服を着た白毛のおじいさんが立っていました。
「おじいさんが、浦島太郎?」
「左様、わしが浦島太郎じゃ」
 そう言っておじいさんはガハハと笑います。カケルはすぐに友達を呼びに行こうとしました。
「待て、わしはお主と話がしたい」
「友達がいちゃダメ?」
「ダメじゃ」
 そう言われたら仕方ありません。カケルは後で友達に浦島太郎と会ったことを報告することにして、今はこのおじいさんと話をすることにしました。
「おじいさん、本当に浦島太郎なの?」
 そう問いかけるとおじいさんはガハハと笑いました。
「浦島太郎であり、浦島太郎ではない」
「どういうこと?」
 カケルの疑問におじいさんが優しく答えます。
「本に載っている浦島太郎はわしと別人じゃ。わしは本に出てくる浦島太郎の数百年後、昭和初期の時代に竜宮城に行った。浦島太郎と名乗っているのは、その方が分かりやすいからじゃ」
「じゃあ本物の浦島太郎じゃないんじゃん」
「でも確かに竜宮城に行ったぞ。これが証拠じゃ」
 そう言っておじいさんが取り出したもの。それは虹色に輝く真珠でした。あまりの美しさにカケルは「わあ」と声をもらします。
「これで信じてもらえたかな?」
 おじいさんの言葉に、カケルが頷きます。
 さて、おじいさんが浦島太郎だということはわかりました。それではなにを質問しましょう。カケルは悩みました。
「悩んでいるなら、わしから質問、というより問題じゃ。なぜ浦島太郎は玉手箱を開けるハメになったか、わかるか?」
「そりゃ、竜宮城から戻ってきたら何十年も時が過ぎてて、玉手箱を開ける以外なにもできなかったからだろう?」
「うむ、それも正しいが、わしが聞きたいのはちょっと違う。浦島太郎が玉手箱を開けるハメになった、その本当の理由。わかるかな?」
 その質問にカケルはすっかりうなってしまいました。すると、おじいさんはガハハと笑います。
「答えは、大切なものを無視したからじゃ。浦島太郎には家族がおった。それなのに浦島太郎は家族を忘れ、竜宮城で遊びほうけた。その罰が下り、玉手箱を開けるハメになったんじゃよ」
「結局、浦島太郎が悪いんじゃん」
「ほう。ではそう言うお主は大切なものを無視してはないか?」
 おじいさんの言葉。
 その時、カケルの脳裏にある記憶が蘇ります。

『これ、わたしのLINEのID。連絡、待ってるから』

 マナミが引っ越しをする最後に渡してきた紙切れ。それを無視してカケルは過ごしてきました。大切なものを無視した、これは浦島太郎と同じといえるのではないでしょうか。
――このままでいいのか。いや、ダメだろう、俺!
「……俺、行かなきゃ」
「おう、行ってこい」
 カケルが浜辺から駆け出します。その姿を見て、おじいさんはガハハと笑いました。

 町へと向かいカケルは駆けます。途中、一緒にいた友達とも再会しましたが「後で話す!」と言って先に進みました。
――俺、なんでマナミのこと無視してたんだろう。本当は俺だってマナミと話したかったはずなのに。このままじゃ、浦島太郎と同じ。手遅れになって、玉手箱を開けるハメになっちゃう!
 カケルが町を駆けます。息は切れ、心臓がバクバクと音を立てます。しかしそれを無視してカケルは走りました。
 ようやく家にたどり着き、あの時履いていたズボンのポケットを探ります。洗濯されクシャクシャになっていましたが、紙切れは残っていました。
 カケルは紙切れに記されたIDをスマートフォンに入力し『俺だ、カケルだ』とメッセージを送ります。
 待つこと一分。永遠に続くかと思われた一分でした。するとスマートフォンの画面にこう表示されます。

『……遅いぞ、バーカ』

おしまい


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このストーリーに関するコメント

17/04/09 まー

この年代の男の子は素直になれない一面をもってますよね。
こんな浦島太郎のおっさんに出会えるとみんな大切なものが何かを思い出せるのかもしれません。(え?)

17/04/09 海見みみみ

まーさん
ご覧いただきありがとうございます!
そう、小学生の頃の男の子ってなぜか好きな子に素直にな」ないんですよね。
私もこんな浦島太郎に会ってみたいです( ´∀`)
感想ありがとうございました!

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