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自己承認欲求

17/04/03 コンテスト(テーマ):第132回 時空モノガタリ文学賞 【 浦島太郎 】 コメント:0件 KEN 閲覧数:906

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 両親が殺されてから5年が経った。犯行当日の雷雨により、血の海と化した家の前には、今でも命日に多くの花が添えられる。通り魔的犯行であり、犯人に繋がる証拠はない。捜査は難航し、世間の同情が僕に注がれた。しかし、僕は犯人を知っている。明日は命日。復讐を決行する時だ
 この1カ月、対象者の人間関係・生活リズムを全て調べあげた。対象者の名前は羽道龍之介。両親はすでに他界しており、妻と高校生の娘が1人。会社では、多くの部下を持つ立場に就いており、エリートとしての道を歩んでいる。人当たりもよく、家族や部下にも慕われているようだ。生活リズムは極めて不規則であり、家に帰らないことも多々ある。待ち伏せして殺すのは不可能に近いが、決行場所は初めから決まっている。あとは羽道をそこに呼び出すだけだ。
 目を覚ますとお昼の3時を過ぎていた。テレビをつけると、未解決である政治家暗殺事件の特集が流れていた。明後日で5年が経つらしい。天気のコーナーでは夕方から雷雨だと言っている。あまりの偶然に笑ってしまう。飯を終え、出発の身支度を済ませると心臓の鼓動が高鳴っているのに気付く。家を出るころには、あたりは薄暗く小雨が降り始めていた。まずは、羽道家の近くの公衆電話に向かう。ボックスに入り、羽道に電話をかける。「お久ぶりです、羽道さん。あなたの家族を預かっています。命の保証は今から15分です。それまでに1人で家に戻って来て下さい。他言は無用です。それと携帯の電源はこの通話が終わったら切って下さい。1つでも約束を破れば家族には二度と会えません。それではお待ちしています。」電話を切り、再び羽道の携帯に電話をしたが繋がらなかった。ボックスから出ると、雨脚が強まっていた。あえて変声器は使わなかったが、僕のことに気づいただろうか。15分を過ぎたころ、1台の車が家の前に急停止した。運転席から飛び出してくる羽道。僕は後ろから声をかけた。羽道は振り返り、僕の顔を見るが誰だか分かっていない。「待ってましたよ、羽道さん。」笑顔で話しかけた。彼は僕の右手に握られた包丁を見て、血相を変えた。「君か…。あの事件の…。謝らせてくれ。」震える声で彼が話す。ようやく僕のことを思い出したようだ。僕は彼に近づいていく。「証拠が何もなかったんだ。私も指揮官として精一杯手は尽くした。だけど…」何を言っているのだろう。「だけど、あの事件のあとに起きた暗殺事件に私や多くの捜査員が回された。君のご両親の捜査本部が半年で閉じたなんて知らなかったんだ。」僕はあまりの衝撃に足が止まった。「君が捜査の状況を何度も聞きに来ていたのも、あとから知ったんだ。ほんとうに悪かったと思っている。謝らせてくれ。」僕は怒りで狂いそうだった。「捜査がされてなかった…」なんとか平常心を保ちながら、羽道に近づく。雷であたりが光る。羽道の恐怖で歪んだ顔が見えた。僕は静かに羽道の腹に包丁を突き刺した。「5年間、待ってたんだぞ……」僕は羽道に呟き包丁を抜いた。
 眩しさで目を覚ました。ぼんやりとしながら、テレビをつける。「次のニュースです。昨晩未明、警察官が何者かに殺害されました。警察官の名前は羽道龍之介。犯人はいまだ不明とのことです……」僕は再び眠りに落ちてしまった。
 壁に貼られた両親の写真の横には羽道の写真が飾られてある。


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