1. トップページ
  2. コードネームではありません

むねすけさん

ブログで創作をやっていましたが、誰にも相手にしてもらえないため、こちらに辿り着きました。 面白い物語、少しほっとしてもらえるようなお話を書きたいと思っています。

性別 男性
将来の夢 作家になりたいですが、 それが無理でも、何かの原案家とか、 自分の考えた物語が世に出ること。
座右の銘 我思う、故に我在り。

投稿済みの作品

0

コードネームではありません

17/04/01 コンテスト(テーマ):第132回 時空モノガタリ文学賞 【 浦島太郎 】 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:634

この作品を評価する

 2220年、地球は人類滅亡の危機に陥っていた。終焉の始まりは一匹の鳩だった。皮肉なことだ。平和の象徴たる鳩。オリンピックの開会式で空に放たれるあの鳥が、人類を滅ぼすことになるとは。
 一匹の鳩から突然変異的に生じたとしか判然としない謎のウィルスは空気を伝いなぜか人間だけに感染し、寿命を奪い去った。感染してからその個体に残されていた余命の丁度百分の一の日数で死に至る。研究によってそこまでつきとめたが、対応策は何もなく、ウィルスの発見から数年で、世界の人口は百分の一以下になった。
 ウィルスに感染すると、鼻の脇に丁度鳩のように小さないぼが二つできる。方策として現状、世界には鳩はいなくなったというのに、ウィルスは空気上に消失することなくのさばってしまい、研究を重ねても判明しない、人の中の何か、と共鳴して感染する。
 感染した者は運が悪い、と言う者もあれば、日頃の行いや信心が影響するのだと言う者もいた。しかし、無垢なる誕生直後の赤ん坊までもが感染したことで、もう何も言う者はなくなった。これは世界の終焉である。幸い、この死に至る寿命短縮の病には痛みも、苦しみもなかった。短縮した寿命が尽きるとそのまま、眠りの延長で死に至るだけ。だから、人の中には穏やかな世界の終焉を歓迎する者まであった。
 しかし、人間は諦めない。世界の終焉などに呑まれてなるか。必ずやこの謎のウィルスに対抗しうる特効薬が存在するはずだ。研究所では日夜、研究者達が解決の糸口を追い求めていた。

「局長、見つかりました。このウィルス、ピジョンDを無効化する植物エキスです」その日、極秘の会議が、局長の下仁田と、研究チーフ、西島の二人によって行われた。二人にはまだ鼻のいぼは存在しないが、研究員の中にはすでに感染者もいる。日々減っていく研究者、追いかける解決策との競争は、この日終わりを告げた。
「なんと、お見事だ、西島君。これで世界は終焉から救われるのだね」
「そのはずです。所長」
「よし、見せてくれたまえ」
「いえ、所長。ございません。その植物は今から百年前、2120年に絶滅しています。人類の環境破壊によりです」
「なんということだ。やはり我々人類は、自分たちで自分たちを滅ぼしたのだな。しかし、西島君それならばなぜそのような報告を、嬉々として私にするのだ?」
 研究所の小会議室に二人。ホワイトボードには誰かの残したドラえもんの落書きがそのままに残されている。
「局長、2120年以前に生きていた人間に、持って来て貰えば良いのです、現在に、その植物を持って」
「西島君、君はSFの読み過ぎだ」
「いいんです。SFは僕の暗い思春期に居場所をくれました、いえ、所長。いたのです、そのSFが可能な人物が」
「タイムマシンが開発されたのかね?」
「いえ、浦島太郎です」
「ふむ、教えてくれたまえ、そのコードネーム浦島なる人物は一体どのような者かね」
「いえ、所長。コードネームではありません」
「君が怖くなってきたよ、西島君。続けたまえ」
「この危機にNASAが開示した数々の驚天動地な能力、開発済みのマシーン。その中の超時空念波の能力者を使います」
「ふむ」
「念波の内容はこうです。君が竜宮城に行くことがあれば……」
「待ちたまえ、そもそも浦島太郎は実在する人物だったのか?」
「はい、存在し竜宮城に行って玉手箱を貰い戻って来ています。証明済みですが、長くなりますので割愛しますね」
「うむ、そうか居たのか、なんか嬉しい」
「局長、念波の内容はこうです。君が竜宮城に行くことがあれば、そこになんとか十四日と八分十二秒滞在してくれ、その際植木鉢にて指定の花を育ててくれ、頼む、君に世界がかかっている」
「素晴らしい。浦島がこの研究所に現れるまでの、竜宮城での正確な滞在時間までわかったのか」
「はい、証明済みです。長くなりますので、省略致しますね」
「わかったぞ、西島君。これで世界は救われたのだね?」
 小会議室のホワイトボードに局長は鳩の絵を描く。勝利の宣言のつもりだった。しかし絵が稚拙過ぎて西島には、局長が何をしたかったのかイマイチよくわからない。
「いえ、しかし、問題がありました」
「なんだね」
「竜宮城の存在位置です。それが未だ判明しないために、念波能力者が念波を送れないのです」
「西島君、君はどうしてそう地獄と天国をごっちゃにした表情で話すんだね。結果それじゃ、我々は救われないのかね?」
「いえ、局長。私も昨日まで絶望しておりました。なぜだ、なぜもう一歩のところまで来てと」
「と言うと」
「はい、さきほど、浦島太郎が現れたのです!!」
「なんと、竜宮は何処にあったのだね?」 
「いえ、見つかっておりませんでした、念能力者の当てずっぽうだそうです」
「当てずっぽう」
「はい」 
「当てずっぽう」

 


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン