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若早称平さん

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ウラシマ、ハマる。

17/03/30 コンテスト(テーマ):第132回 時空モノガタリ文学賞 【 浦島太郎 】 コメント:2件 若早称平 閲覧数:657

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 同じクラスの浦島月子さんは美人で成績優秀な学級委員長で休み時間には彼女の周りには人だかりが絶えない典型的なクラスの人気者だった。教室の隅で孤独に漫画を読んで過ごす私とはまさに月とスッポンだ。
「亀、ちょっといい?」
 一年生の時同じクラスだった女子三人組が教室のドアを荒っぽく開け、私の席を囲んだ。クラスが変わってもまだこの人達にからまれるのか。私は読みかけの漫画に栞を挟み、食べかけの弁当に蓋をして立ち上がった。どうせ屋上に連れて行かれるのだろう。
「あなた達ちょっと待ちなさい!」
 立ち上がる浦島さんの怒り顔を三人組はもちろん、一緒に弁当を食べていた子達も驚いたように呆然と彼女を見ていた。無理もない、私が一番驚いている。
「あなた達が亀山さんを虐めたり恐喝をしているのは知っています。今すぐやめなければ……」
「やめなければ何だよ?」
 リーダー格の茶髪が浦島さんの目の前まで近づいて凄む。
「やめなければ、ここにいる全員を敵に回すことになりますよ?」
 茶髪と同様、私も教室中を見渡す。男女問わずクラス中が三人を睨んでいた。さすがにバツが悪そうに舌打ちをして三人が去って行くと教室内は拍手喝采となった。「ありがとう」と浦島さんに伝えた時、私は自分が泣いていたことに気付いた。

 彼女のようになりたい。同じクラスになり、彼女を知る程にその思いは強くなった。そして今日、彼女は私の憧れから恩人へ変わった。「今日一緒に帰らない?」という恩人からの誘いを断るわけがなかった。
 下駄箱で手を振る浦島さんは私が頭を下げるとそんなにかしこまらないでよと笑った。
「あの、なんで……」なんで助けてくれたの? なんで私に構うの? 聞きたいことは沢山あった。
「亀山さんが困ってそうだったから。困ってる人を助けるのに理由なんている? それとも余計なお世話だった?」
 私は全力で首を振る。誰かの後ろに付いてではなく横に並んでこの校門をくぐるのはこれが初めてかもしれない。
「それに私、実は亀山さんに憧れてたんだ」
 駅に向かう緩やかな坂を上りながら照れ臭そうに言う浦島さんに、今日二度目の青天の霹靂を味わう。
「私も漫画とかアニメ好きなんだけど、そういう話皆と出来ないから。自分の好きなものに対して堂々としている亀山さんみたいになりたいって思ってたの」
 彼女の言葉にまた泣きそうになった私はなんとかそれを堪えて彼女の手を取った。
「ねえ、今週末イベントがあるんだけど一緒に行きませんか? 好きだったら絶対楽しいですよ」
 初めて自分から人を誘った。断られたらどうしようという恒例の弱気を破りたかった。返事を待つ一瞬の間で心臓がはち切れそうになる。
「本当に? 行きたい!」
 子供のように嬉しそうに飛び跳ねる浦島さん。ほっと胸を撫で下ろす私に「その前にお願いがあるんだけど」と急に真顔になった。
「敬語やめよ、あと月子って呼んで。昔さ、太郎ってからかわれてから苗字好きじゃないんだ」
「うん、分かった。でも本当に昔話みたいだよね。私も亀ってからかわれてたから」そう言って私が笑うと、
「助けた亀に連れられて竜宮城……か。でも玉手箱はいらないよ」
 口を尖らせる月子を見てもっと早く仲良くなりたかったと思った。

 好きなアニメをモチーフにしたTシャツにパーカー、リュックとオタク丸出しの私と違い月子はまるで海辺へデートに行くような清楚系のワンピース姿で、やはりいきなりイベントはハードルが高かったかなと思ったが、杞憂にすぎなかった。月子は嬉々として同人誌を買い、コスプレイヤーの写真を撮り、私とお揃いのTシャツに着替えた。

「楽しんでくれて良かった」始発から陽が落ちるまでたっぷり遊んだ帰り道、晩御飯を食べるお金も残ってなくて一本のコーラを回し飲みしながら駅から歩いた。
「うん、とても楽しかったわ! もっと早く仲良くなれば良かったな」
「今度スポスト映画化するじゃない? 一緒に観に行こうよ」
「もちろん! 私今人生で一番楽しいかも!」
 私も同じことを思っていた。私達は学校では今まで通りだったが毎晩のようにメールをするようになった。

 それから二週間程して月子が学校に来なくなった。体調でも悪いのかなと思っていたが、三日欠席が続いた日、私は心配になり授業が終わってすぐに電話をした。電話越しの声は元気そうで病気や怪我ではなさそうだ。「今から会えない?」という親友からの誘いを断るわけがなかった。
 月子の家の呼び鈴を鳴らすとすぐに彼女が出てきた。その姿を見て唖然とする。彼女の長い髪が綺麗な銀色に染まっていたからだ。
「スポストのレイナのコスプレなんだけど……玉手箱のせいかな?」
 気まずそうに銀髪を触る月子。私のようになりたいとか言ってたけど、私なんてもう超えちゃってるよ。


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このストーリーに関するコメント

17/03/31 まー

隠れオタが開花すると瞬く間っていうあるあるですね。
亀山さんが少し引き気味になっている姿が目に浮かびます。いや、憧憬している可能性もありうる(笑)。

17/04/01 若早称平

まーさんコメントありがとうございます☺
あるあるですねー(笑)また違う形で憧れる亀山さん(笑)

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