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とむなおさん

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もう一人の浦島太郎 〜悪行の果て〜

17/03/29 コンテスト(テーマ):第132回 時空モノガタリ文学賞 【 浦島太郎 】 コメント:0件 とむなお 閲覧数:988

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 むかし……むかし……の×月×日……

 村の浜辺で、悪ガキたちにいじめられていた海亀を助けた、十八歳の浦島太郎は、そのお礼として、はるか沖の、はるかな海底にある龍宮城へ招待された。
 毎日たっぷり楽しんでいた浦島太郎に、乙姫様は、
「奥の間には、絶対に入ってはなりませんよ」
 と強く言い聞かせた。
 しかし、気になって仕方がない浦島太郎は、夜中にソーッと起きだして、その奥の間に入った。
 翌朝、浦島太郎は乙姫様に、
「母親の夢を見た。心配だから村に帰る」
 すると、乙姫様は、
「分かりました。では、この玉手箱は上げましょう。ただし、あなたが本当に困った時でないと、開けてはなりませんよ」
 小さくてキレイな箱を渡してくれた。
「分かりました。ありがとうご座います」
 彼は海亀に乗り、乙姫様や魚達に見送られて龍宮城を後にした。

 なつかしい村の浜辺に到着した浦島太郎は、送ってくれた海亀に礼を言って別れた。
 しかし、浦島太郎が帰った村は、かなり変貌していて、知らない家や知らない人ばかりだった。
「わしの家は……?」
 なんとかたどり着いたが、その実家はただの空家となっていた。
 彼はしょんぼりと、帰り着いた浜に戻って、
「いったい、どうなっちまったんだ……? こんなハズじゃなかったのに……」
 と龍宮城があった方向の、はるか沖を眺めた。
 するとお腹のあたりで、何かが膨らみだした。
 見ると、乙姫様から貰った玉手箱で、どんどん大きくなっていた。
 やがて玉手箱は、一抱えほどの大きさになった。
 浦島太郎は、浜辺の岩に座ると、その箱を開けた。
 すると真っ白な煙が噴出し、彼を包みこみ、あっという間に白髪の老人にした。
 近くの水溜まりでそれを確認した浦島太郎は呆然とし、溜め息をついた。
 すると箱から、
「これで年相応のあなたになりました。八十八歳です。これ以上、年は取りません。この底にある紙を失くさないように……」
 彼がその紙を取ると、箱はスーッと霧のように消えた。
 その時、後ろから、
「おい、お前、太郎じゃねぇなの?」
 振り向くと同じように白髪の男がいた。
「ひょっとして……作治か?」
「おー、やっぱり! お前、今までどこさ行ってたんだ?」
「あー、ちょっとな……。それより五郎や末吉は?」
「みーんな死んだ……。わしも、よぼよぼだが家業を継いで、頑張ってるさ」
「そうか。じゃ、わしに、刀作りを教えてくれないか?」
「あー、いいよ」

 それから十年が経ち……

 浦島太郎は一流の骨董家になり、実家を売却したお金で店を手に入れ骨董商をしていた。
 特に刀類の目利きや制作には、全国的に定評があった。
 そんな彼が、一年という歳月をかけて制作してきた短刀があった。
 それは、ある目的のための極秘の短刀だった。
 彼はその夜、その短刀を着物に忍ばせて、例の浜辺にやってきた。
 そして、玉手箱の底に入っていた紙を取り出した。
 その紙には、龍宮城の使いの海亀の呼び方が書いてあったのだった。
 まず砂浜に大きく海亀の線画を描くと、持参したバケツで近くの海水をくみ、その線画にかけた。
 すると、その海亀の線画がピカッと光った。
 見ると、はるかな沖から海亀が泳いできていた。
 やがて海亀は浜に到着すると、
「こんばんは。お久し振りでございます」
「こんばんはー。元気そうだね」
「はい。では、また龍宮城にお連れいたしましょう」
 彼が海亀に乗ると、龍宮城に向って泳ぎだした。
 この時、彼は、ほくそ笑みながら、
(さー、いよいよやるぞ……)

 浦島太郎が龍宮城に着くと、乙姫様は大歓迎してくれ、またまたタイやヒラメの舞踊りを見ながらの食事会を催してくれた。
 その夜、奥の間に忍び込んだ彼は、飾られている短刀と持参した短刀をすり換えた。
 その短刀は、不思議な魔力のある龍宮短刀だと聞いていたからだった。
 持参した短刀は、竜宮短刀とソックリに制作した物だったのだ。
 翌朝、彼は乙姫様に、
「申し訳ないのですが、体調が悪くなってきたので帰ります。すいません」
 乙姫様は残念がったが、彼は海亀に乗って龍宮城を後にした。

 陸地に帰った浦島太郎が、海亀と別れてから陰で龍宮短刀を出して見ると、ただの枯れ枝になっていたのだった。
 彼が呆然としていると、はるか沖から飛んでくる四角い物があった。
 その四角い物は箱で、だんだんと大きくなっていき、彼の後ろにドスン! と落ちた。
 彼は、その振動でその箱の中に転がり込んだ。
「ウワー!」
 直後、フタが出来て、彼は閉じ込められた。
「ウワー、出してくれー!」
 その箱は、海に向って転がり始めた。
 転がりながら小さくなっていき……小箱になって波の中へと入り、見えなくなった。

 ――了――


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