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小高まあなさん

鳥と怪異と特撮ヒーローが好き。 ひねくれつつも清々しい物語がモットー。

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フラグ潰しの女

17/03/13 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:764

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 工藤菊は、買ったばかりの「最新・都市伝説全集 完全版」という鈍器のような分厚い本を読み終えると、うっとりとため息をついた。
「はー、どっかで会えないかなぁ……、怪異っぽいもの」
 この今時「菊」なんていう名前をもっている十五歳の少女は大のオカルト好きである。彼女曰く、「累の怪談」で憑依される少女とか、「四谷怪談」の伊右衛門の末娘とか、「番町皿屋敷」の下女とかに共通して見られる「お菊」という名前には「死者の声を聞く」という意味があって、「菊という名前をもつ私は死者の声を聞かなければ」ということらしい。
 見た目は、完全に今時ギャルなのに。
 幽霊、妖怪、都市伝説……怪異っぽいものならなんでも彼女の守備範囲である。ただ、残念ながら、ゼロ霊感でこれまでこんなに恋焦がれているのに出会ったことはないのだが。
 
 陶酔感で胸をいっぱいにしながら、椅子から立ち上がる。彼女の自室には大きな本棚があり、そこに怪しげな幽霊や都市伝説にまつわる本やマンガがぎゅうぎゅうに詰められている。本棚と本棚の隙間にも強引に本が詰められていて隙間がない。
 ベッドの下にもカラーボックスにいれた本がぎゅうぎゅうに詰まっている。
 先日、脅かそうとやってきた隙間女とベッドの下の男は、入る場所がないので諦めて帰っていった。
「あ、ホコリ」
 隙間にびっしり物を詰めている割に、存外綺麗好きな彼女は、フワフワ浮いている白い物体を見つけると、カーペット掃除用のコロコロですぐさま絡めとった。
 哀れケセランパサランは、今日もこうして捕獲され、粘着テープにくっつけられて捨てられた。
 勉強机に置いたケータイが音を立てる。画面を確認したら、知らない番号だったのでスルーした。
 しばらくしたら止んだが、またかかってくる。それを四度繰り返したところで、面倒くさくなり、ケータイの電源を一旦切った。
 電話には出ないわ、終いには電源を切られて通じなくなるわで、電話をかけていたメリーさんは悲しくなり、ターゲットを変えることにした。

 菊の高校の三階の女子トイレ。そこの三番目の個室には、トイレの花子さんが住んでいるが、悲しいかなこのトイレは彼女が入学した時から故障中である。トイレの全面的な改装が計画されており、それに合わせて修理する予定なんだそうだ。
 ピアスは校則で禁止されているし、痛いのは嫌いなのであけるつもりはない。ピアス穴から白い糸がでて失明することはないだろう。

 意外と家が厳しくて、門限は二十時と早めだ。深夜に走り回っているジェットババアとか、徘徊している人面犬に会うことは無い。
 最近、帰り道に自作の「ポマードソング」(ただひたすらにポマードポマードと繰り返すだけ)を口ずさんでいるので、口裂け女はビビって近づけずにいる。

「はー、明日はなんか出会えるといいなー」
 ベッドに倒れ込み、呟く。
 工藤菊、彼女のこの行動を全て把握している神のような人間がいたら、彼女をこう呼ぶだろう。
 フラグ潰しの女、と。


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