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ツチフルさん

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異星人

17/03/13 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:2件 ツチフル 閲覧数:1474

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【『私は異星人です』と打ち明けたその男は、どこから見ても我々と変わらない姿をしていた。
 彼が語る彼の世界はなるほど、確かに我々と異なる文明を築き上げ、独自の発展をしてきたようであった。
 しかし、それらはすべて男の【妄想】だと一笑に付すことができるし、事実、私はそうした。
 だが、その嗤いはすぐに凍りつくことになる。
 男は私が信じていないとみてとると『これ、脱ぐの大変なんだけど』と呟きながら、我々の皮膚を【脱いだ】のである。
 下から現れた姿を見た瞬間、私はその不気味さに悲鳴をあげてしまった。
 以下にそのイラストを掲載する。完全再現とはいかないが、おおよそのイメージはつかめると思う。
 男の話を信じるならば、我々の世界には既に多くの異星人たちが【我々の皮膚】を纏い、何食わぬ顔をして生活をしていることになる。
 そして彼の姿を目の当たりにした私は、それを妄想だと笑うことはできないのである】
 


「ね、すごいでしょ?」
 記事を読み終えた私が顔をあげると、そこには目を輝かせたアキがいた。
「この世界には、もう異世人が住んでいるんだって」
「へぇ…」
「へぇ…って。驚かないの?」
「驚いてるよ」
 こんなホラ話を本気で信じる、あなたに。
 私は異星人を見るような目つきでアキを見る。
 授業の合間の貴重な休み時間を浪費して私が(強引に)読まされたのは、有名なオカルトサイトの 《Sの体験談》 という記事だった。
 このサイトは【T駅の三番線にある秘密通路】やら【足音だけがついてくる路地】やら【手足が二本しかない女】など、いわゆる都市伝説と呼ばれる話をあたかも実体験のごとく掲載しており、一部の熱狂的な支持者と、ネタとして楽しむ多くのファンによって成り立っている。
 今回は【我々の世界には既に異星人がいて、我々の姿を模して暮らしている】というもので、このずいぶんと古い都市伝説を、Sは “実体験” として取り上げていた。
「このクラスにも異星人がいるかもね」
 アキは期待に満ちた目で、授業前の騒がしい教室を見渡す。
「ほら。さーちゃんとか、トッポとか怪しくない? さーちゃんは言葉づかい変だし、トッポは歩き方がぎこちないし」
「それを言うなら、アキも怪しいよ」
「私? …なにか怪しいところある?」
「おもに脳の働き。かな」
「ひどい!」
「だって、こんなホラ話を真に受けるなんて、脳がどうかしているとしか…」
「ホラ話じゃないって。Sさんは実体験しか書かないんだから」
「だいたい、本当に異星人が来てたらもっと大騒ぎになるはずでしょ。なのに、ニュースのひとつも流れないじゃない」
「それは秘密裏に来てるからだよ。誰にもばれないように」
「じゃあ、なんでSに正体を明かすわけ?」
「それは… こういうサイトを持って活動しているんだもん。異星人は信用するよ」
「一番信用できないと思うけどなあ」
「ほら見て。イラストだって、こんなに正確に描いてあるじゃん。実物を見てなければ描けないよ」
 アキは記事の終わりに載せられている、異星人とおぼしきイラストを誇らしげに指し示す。
「あのさ。本当に見たなら、普通イラストじゃなくて実物の画像を載せると思う。そのほうがはるかに説得力あるし」
「う、それは……」
「まあ、今は合成でそれっぽいの幾らでも捏造できるから、どっちもどっちか」
「ほんと、リカって疑り深いよね!」
 憤慨するアキに、私は笑って答える。
「アキが単純過ぎるだけ」 
「もういい。リカに見せたのが間違いだった。さーちゃんに見せてくる」
「え、大丈夫? 異星人かもしれないよ」
 アキは私を睨みつけてから、さーちゃんの席へと駆けていった。
 残された私は、何となく自分のメモリで【Sの体験談】を呼び出し、記事の終わりのイラストをもう一度見る。
 彼の描く異星人の姿は、いかにも架空の異星人らしい異星人だった。 
 目も鼻も口も一カ所に集中しており、手足とおぼしき部位は異様に長く、その先端は五つに分かれている。
「都市伝説の女みたいね」
 私たちとかけ離れた造形にすることでグロテスクな印象を与えることには成功しているけれど、生物としては欠陥だらけだ。
 これが実在するとしたら、
「生きづらいだろうなぁ」
 私はつぶやいて苦笑する。
 と、そのイラストの隅に小さな吹き出しがあることに気づいた。
 吹き出し部分に焦点を合わせると、そこにはS氏の自筆らしき文字でこう書かれていた。

《彼らは自らの存在を次のように呼ぶ。文字に書き表すことができないので、音声で確認してほしい》

 私は指示されるままに文末の音声マークにアクセスする。
 わずかな沈黙。
 やがて、S氏とおぼしきしゃがれ声がたどたどしい発音でその言葉をつぶやいた。

【ニ・ン・ゲ・ン】     了


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このストーリーに関するコメント

17/04/02 光石七

拝読しました。
主人公が異星人というオチを密かに予想していたのですが、はるかに深いオチでした。
面白かったです!

17/04/21 ツチフル

読んでいただき、ありがとうございます。

人の姿は本当に合理的なのかなと思いつつ書いたのですが、楽しんでもらえれば幸いです。

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