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つつい つつさん

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学校に行こう

17/03/11 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:5件 つつい つつ 閲覧数:1160

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 お弁当の時間が終わり、五時間目の社会の授業が始まると、みんなスマホを持ってワクワクしていた。社会の村上先生は高齢で周りのことに気づかないから、みんな堂々とスマホを見ている。
(今日のスパイス ほうれん草のおひたしin酒井のフケ&耳垢まぶし)
 クラスのグループラインに結果が流れると、みんな「うげっ」とか、「最低っ」とか、つぶやいている。これが毎日恒例の行事だ。今まで僕のお弁当に、グランドの土、消しゴムのカス、チョークの粉なんて入れられてきたけど、今日のは最悪だった。よりによっていつも不潔で、常に脂ぎっている酒井君のフケなんて、さっき食べたお弁当が逆流して吐きそうになった。でも、そんなことしたらまた何されるかわかったもんじゃなかった。
 中学二年になり、このクラスになってすぐ、いじめの首謀者の市田君に目をつけられた。市田君は殴ったり、お金を要求することはなかったけど、ゲーム感覚でいろいろ企画するのが好きだった。
 この前はラインに(トイレ我慢選手権開催)って送ると、まず朝のホームルーム前にコーラ500と書き込まれた。そして、授業が終わる度にコーヒー牛乳500、オレンジジュース500と追加され、その分僕は飲まされた。三時間目が終わるころには顔が真っ青になり、じっと座っていられなくなった。クラスのみんなはそんな僕の様子を見て、にやにやしていた。瀬川君なんかは、授業が終わると嬉しそうに近づいてきて「大丈夫か?」って、僕のお腹をたたいた。四時間目が終わる頃には本当に限界で、体がガタガタ震えた。瀬川君や松本君は、それでもトイレに行かせないように体を押さえつけてきたけど、結局市田君がトイレに行かせてくれた。 
 その日のホームルームはすごく憂鬱だった。今度の修学旅行に向けて四人ずつの班分けをすることになっていた。僕はいじめられる以外はただ座っているだけだから、余るのは目に見えていた。担任の野村先生は無駄な元気で、「徳永がひとりだぞ。誰か入れてやれよ」って言うだけなのはわかっていた。シーンとしたままのあの教室のいたたまれない雰囲気を思うと、すぐにでもこの場から去りたかった。でも、実際ホームルームが始まると、すぐに市田君が僕を班に入れてくれた。同じ班になる瀬川君や松本君は露骨に嫌そうな顔をしてたけど、市田君はそんなことお構いなしだった。どっちみち修学旅行先でいじめるつもりなんだろうけど、それでもすぐに班が決まっただけで、誰にも誘われず悲しい気分になるよりは何倍もマシだった。
 ホームルームが終わり、瀬川君が市田君に「徳永と同じ班かよっ」って詰め寄ると、市田君は少し勝ち誇ったような顔で僕の肩に手を置いた。
「徳永は修学旅行に、来ないんだ」
 瀬川君も、松本君も、それに僕も「えっ?」っという顔になった。
「修学旅行当日に、急に具合が悪くなるんだ。な、徳永」
 瀬川君も松本君も大喜びで「やっぱすごいな、市田」って、市田君を誉めていた。
「お前ら、徳永が修学旅行来たら、俺が何かしないか期待するだろ。せっかくのイベントに徳永なんか構ってられないよ」
 市田君がそう言うと、みんな市田君に謝りながら「部屋も広く使えるし最高だな」なんて盛り上がっていた。そう、僕は日々の暇つぶしくらいならいいけど、大事な思い出の日には必要ないみたいだった。僕は「絶対来るなよ」って、何度も念を押された。
 その日の学校の帰り道、僕は何もないところで転んだ。転んだ先には自販機があり、その下に光るものを見つけた。それは真っ赤に妖しく光る十円玉だった。
 赤い十円玉の噂は聞いたことがあった。その十円玉でコイントスをして、表が出れば心の奥底で願う願望が叶い、裏が出ればその場で死ぬ。そういう話だった。僕は迷わず赤い十円玉を親指で宙に弾いた。

 修学旅行の三日間はすごく天気が良かったみたいだ。僕は出発の日、お腹が痛いって喚きまくって、ずっとベットの中でうだうだしていた。たまにママが「大丈夫?」って様子を見に来たけど、大丈夫なわけがなかった。明日学校に行っても、みんな修学旅行の話題で盛り上がるんだろう。もう、学校なんて行きたくなかった。
 夕方になり、もうみんな学校に帰ってきている時間、ママが僕の部屋の扉をバンバンと叩いた。
「バスが。修学旅行のバスが」
 ニュースを見ると、僕のクラスのみんなを乗せたバスが居眠り運転のトラックに追突され崖の下に落ちたみたいだった。
 いつも僕をいじめていた市田君はもういない。
 誰よりも嬉しそうに僕をいじめていた瀬川君も松本君ももういない。
 から元気でいつも見て見ぬふりをしていた野村先生ももういない。
 グループラインを一番嬉しそうに見ていた柳沢さんももういない。
 僕のことを心底軽蔑した目で見ていた長野さんももういない。
 そうだ。明日、学校に行こう。


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このストーリーに関するコメント

17/03/12 まー

迷わずコイントスができる徳永君のような子は将来大物になるようなそんな気がします(笑)。
最後の“そうだ。明日、学校に行こう。”のフレーズは読み手もカタルシスが得られていいと思うのですが、いじめの内容がもっと陰湿であればより際立つ一行になったのかもしれないなと思いました。

17/03/12 のあみっと二等兵

拝読させていただきました。
きっと主人公は、「赤い十円玉」の伝説を信じていた訳では無かったのかも知れないな、と思いました。それでも藁にもすがる思いだったのだと感じました。「毎日の暇つぶし」から解放されるのなら、と。誤れば自分が死んでしまうかも知れないのに……。
イジメと言うのは、いろんな形で人を追い詰めて行くのだなぁと改めて認識させていただきました。ありがとうございました。

17/03/12 つつい つつ

まー 様、感想ありがとうございます。
いじめの度合いというのは、本当に難しく感じます。陰惨であるほどインパクトもあるけど、それだけになりそうで怖いです。

のあみっと二等兵 様、感想ありがとうございます。
自分が単なる暇つぶしの道具だとわかり、反射的に、考えることもなくコイントスしたのだろうと思います。
いじめというのは、誰にも何も残さないんだろうと思います。

17/03/31 光石七

拝読しました。
タイトル、そういう意味だったのですね。最後まで読み、衝撃を受けました。
迷わずコイントスをした主人公は、おそらく自分が死んでも構わなかったのでしょう。それほど傷つき苦しんでいたのだと思うと、胸が痛みます。
しかし、これで本当に主人公は救われたのか? いじめの問題は深くて難しいですね。
考えさせられる内容でした。

17/04/02 つつい つつ

光石七 様、感想ありがとうございます。
主人公は結局全く救われていないのがつらいです。
いじめは、ひどくなってしまえば救いなんて見つからない難しい問題だと思います。

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