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かわ珠さん

自分の好きな作家さんの言葉のチョイス、並べ方、区切り方、リズム、テンポに少しでも近付けるような文章が書けるようになりたいです。

性別 男性
将来の夢 世界平和
座右の銘 愛は時空を超える

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お ま じ な い

17/03/07 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:0件 かわ珠 閲覧数:1095

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 今、私のクラスではおまじないが流行っている。
 けれどもきっと、このクラスの女子でこのおまじないブームに乗っていないのは私くらいのものだろう。
 別に、おまじないが嫌いというわけではない。おまじないに入れ込む彼女たちを見て、間違っているとは思わない。好きなものやのめり込むものは人それぞれだ。彼女たちがおまじないに一喜一憂するのは傍から見ていれば、わりかし楽しいものだし。けれども、積極的に取り組もうとも思わない。何かほかのものに自らの願いを託すというのが、自分の性に合わないのだ。自分の願いや目標は何にも頼らず自らの力だけで成し遂げるのが私は好きだ。
 このおまじないブームの中心にいるのは、教室のやや後方、窓側に座る鈴原さんだ。ごく最近まではそんなに目立たない、大人しい女の子だったのだけれども、おまじないの知識がすごい、しかも彼女のおまじないの効果がすごく効く、ということで、今やクラス中で引っ張りだこの人気者だ。
 けれども、今は彼女の席の周りに人はいない。というか、今の教室には私と彼女しかいない。私は部活の朝練があると勘違いしてしまって、学校に来てしまったのだけれども、彼はこんな朝早くに一体何をしに来たのだろうか。
「おはよう、鈴原さん」
 と、彼女に声を掛ける。そういえば、こうやって彼女に声を掛けるのは初めてかもしれない。
「あ……おはよう、えっと……朝比奈さん」
 と、彼女はこちらにギリギリ届くくらいの声で挨拶を返す。このまま暇を弄ぶのももったいないと思い、鈴原さんとお話をしよう、と彼女の机の隣の席に座ってみる。
「鈴原さんはこんな朝早くから、どうしたの?」
「あ、うん、えっと、おまじないの……準備」
「あ、そっか。もしかして、私お邪魔だった? おまじないって、人に見られたら効果がない、みたいなのもたくさんあるよね?」
「ううん、大丈夫」
 そう言って、彼女は私の方を見る。
「朝比奈さんもおまじない、なにか教えてほしいの?」
「え、私?」
 確かに、今のこの状況はこっそりと彼女におまじないを教えてもらう為に、朝早くに来た、という風に見えなくもない。
「あはは。ううん、私はおまじないいはいいや。今日はちょっと朝練があると勘違いしちゃってたんだよ」
「そうなんだ。朝比奈さんはおまじないとかに興味ないの?」
「うん、まあね。なんていうか、私には合わないっていうか……」
「そう、それならそのほうがいいわ」
 と、背筋に走る悪寒。
 彼女の口調が変わった……?
 自分が唾をのむ音が、私と鈴原さんしかいない教室内に響いたのがわかった。
「朝比奈さんはいい人だから、本当のことを教えてあげる」
 そう言って、彼女は微笑む。マネキンのように。
「朝比奈さん、おまじないって、漢字でどう書くか知ってる?」
「……知らない、けど」
「そう。あのね、おまじないってね、漢字でこう書くんだよ」
 と、彼女はノートを一冊取り出して、その端にペンを走らせる。
 そこに書き出された文字に、私は絶句する。
「え?」
「ふふ、驚いたでしょ。そう、おまじないってね、漢字で書くとこんなにもおぞましい文字になるの」
 もう一度、そのノートに書かれた文字を確かめる。間違いない。そこには“お呪い”と書かれていた。
「おまじないって、呪いなの?」
「そうよ。つまり、このクラスの女の子はみんな、笑顔で呪いを振り撒いているのよ」
「……どうして? なんでこんなものをあなたは広めているの?」
「そんなの、復讐に決まっているじゃない」
 当然でしょ、と彼女は溜め息を吐く。
「だって、あの子たちはみんなで寄ってたかって私を虐めていたんだから」
「え?」
「朝比奈さんは部活でいつも忙しくて、周りが見えなくなるくらいに部活に熱中してたみたいだから、気付かなくて当然かも知れないけど」
「そんな……」
「で、そんな私が唯一出来る復讐がこのおまじないだったってわけ。いじめの主犯格の松林さんが好きな人が居るっていうから、私がおまじないを教えてあげたら、それでその好きな人と仲良くなれたって、馬鹿みたいにはしゃいじゃってさ、それからはもう『こんなおまじない教えて』『あの人と恋人同士になりたいの』とか、もうおまじないの虜よ。呪いだと知りもせずに。そして、気が付けば教室中におまじないが広まっている。人を呪わば穴二つっていうけど、今のこの教室には一体いくつの穴があるのかしらね」

   *   *   *

 それから教室内の空気が重く、苦しいものに変わるのにそう月日はかからなかった。
 今や教室内にはアイツとアイツが別れますように。だとか、あの子に不幸が降り注ぎますように。とか、そういった願いばかりが飛び交うようになった。クラスはもう崩壊しかかっている。
 その呪いの中心で鈴原さんはニタリ、と嗤った。


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