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まーさん

物語作りの基礎としても、ショートショートで腕を磨くべく登録させていただきました。 読んだ作品にはなるべくコメントするようにしているので、ウザいかもしれませんがあしからず(笑)。 よろしくお願いします。

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将来の夢 ラノベ作家、書籍アニメ化
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ナカジーマイッチャッテル

17/03/05 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:0件 まー 閲覧数:862

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 俺の友人の中島は少々変わり者だ。
 身長は180pもある。その上スポーツ万能でこのあいだの全国統一中学模試では一位を取った。だが女子にモテるということはない。いかんせん頭のねじが外れているような奇行に走ることが多いからだ。 まあ、ぶっ飛んだ天才とかみんなどこか風変わりな性質を持っているものだし、中島もその類なのだろう。
 それでもこの日は唖然とせざるをえなかった。夏休み前、ほとんどの生徒が半袖シャツで登校している中、炎天下だというのに中島は学ランを着込んでいたからだ。おまけに学生帽まで被っている。多分コスプレ用のやつだろう。
 何故か身体を震わせながら歩いている中島に俺は声をかけた。
「中島、お前暑くねーの? むしろなんで震えてんだよ」
「これはただの武者震いだ。今、俺の中には涼風が吹きこんでいる。よって暑くない。心は燃えているがな」
「どっちだよ。いや、いずれにしろ暑いよ。汗垂れてんぞ」
「ところで鈴木、俺たち大都市に住む人間は地球環境とどう向き合えばいいか分かるか」
 やたら壮大な話をいきなり展開してくるのはいつものことだ。俺は気にせず続きを促した。
「いいか、地球全体は生きとし生けるものが相互に依存して環境を生み、いわば一つの生命体のように流動している。つまり俺たちも地球の一部というわけだ。それでも天災に見舞われることは人類にとっては悲劇だ。防げる災害は防がなくてはならない。だが考えてもみろ。エコだなんだと言ったところで、地球の自浄作用に比べたら味噌っかすだぞ。そんな中で俺たちがすべきもっと重要なことは何だ、鈴木!」
 拳を握って語り始めたところを見るとテンションがだだ上がりのようだ。少々面倒くささを感じた俺は適当な言葉を並べた。
「さあ……こう何か、深いことなんじゃねーの。奇跡に感謝とか?」
「その通りだ鈴木! 大事なのは近視眼的な活動じゃない! 今、この瞬間、この地球と共に生命を育んでいるという奇跡に感謝することだ! 地球の一部ならば想いはこの物的世界に影響を与えるはずだ! 45億年の歴史を心に描け! うおおおぉぉ!!」
 そう声を上げると中島は帽子を脱ぎ、その場にくずおれた。滝のような汗と涙がコンクリートの地面に落ち、みるみる水たまりをつくっていく。
「愛してるぜ! 地球よ!!」
 そんなこを叫んで中島は地面にしがみつき、キスをした。他の生徒達は中島の異様さにドン引きし、距離をとりながら横を通過していく。目の前の友の奇行を正視することができず、俺は思わず青い空を眺めた。そして何故かこの瞬間、これだけはどうしても声を大にして言わなければならないようなそんな気がした。

「中島イっちゃってる!!」

 〜〜〜

 遡ること約1万5千年前。アフリカの奥地に住まう部族、通称ズガドン族の間では長老自らが行う未念寄せの儀が行われていた。未念寄せとは未来に存在するであろう人間が放つ念を、自身の肉体を媒介にして呼び寄せるというものだ。
 白ひげを蓄えた長老はグロテスクな色をしたキノコを口に含むと、身体を揺らしながらトランス状態へと入っていった。その後、長老は自分の頭の中に見えた映像を言語化し始めた。未来の映像と念は伝説級のものしか受信できないため、側に控える従者がそれを後世に残すべく石板に書き記しているようだ。
「見える……見えるぞ。ダイトシという所に住まう青年だ。漆黒の髪と黒曜石の眼を持ち、黒衣の装束を羽織っている。名は……ナカジーマだ。内容は分からぬが、どうやら彼は生命を育む無限なる愛に感動しているようだ。おお! 彼の身体から大量の水が溢れている! 今度は……大地と口づけを交わしたぞ。側にいるのは子供の従者だな。スズーキという従者が彼を褒め称えている。天を見上げナカジーマイッチャッテルと賛美しているぞ。実に美しい光景だ……」
 すると若い衆は感嘆の声を上げ、口々に唱え始めた。

  イッチャッテル、イッチャッテル、
  イッチャッテル、ナカジーマイッチャッテル、
  ナカジーマイッチャッテル、ナカジーマイッチャッテル、

 長老は頷きながらもそれを手で制し、ゆっくりと立ち上がった。そして深く息を吸うと天を見上げて声を張り上げた。
「我らズガドン族! 未来に成就するであろう伝説の力を貰い受けたり! ナカジーマイッチャッテル!!」
 長老が拳を上げるやいなや、空にはみるみる灰色の厚い雲が垂れこめていき、大地を揺るがすほどの雷鳴が轟いた。やがて辺り一帯はバケツをひっくり返したような大雨になった。
 その年、長年の干ばつにより絶滅の危機に瀕していたズガドン族の村は、長老が未来から呼び寄せた力によって救われた。
 石版に記されたナカジーマのダイトシでの伝説は、 1万5千年経った今も地中深くに眠っている――。

   了


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