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W・アーム・スープレックスさん

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将来の夢
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戦うサンタクロース

12/11/12 コンテスト(テーマ):第十九回 時空モノガタリ文学賞【 クリスマス 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:2473

時空モノガタリからの選評

最終選考

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 その年の秋、各国から集まったサンタクロースたちが、だれもしらない無人島で、緊急会議を開いた。便宜上サンタ1号、2と呼んでおく。総勢14名がそろった。クリスマス当日、わずかそれだけで世界各地をまわれるのかと、疑問におもう人もいるかもしれないが、なにも全部かれらがいかなくても、レプリカサンタは街にあふれている。
 しかしきょうこの島に集合した連中は正真正銘、れっきとした本物のサンタたちだった。
「えらいことになった」
 リーダー格の1号が、それぞれの橇にすわって円陣をくむサンタたちに、うかない顔をむけた。
 すかさず3号が、髭におおわれた口をひらいた。
「みなまでいいなさんな。わしらはみんな知っている。サンダークロス星人のことだろ」
「さすがに耳がはやいな。そのサンダークロス星人たちが、今年のクリスマスの日におそろしい計画をたくらんでいる。わしらサンタクロースになりきって、プレゼントをまちわびる子供たちにちかづき、圧縮空間がしこまれた袋に無警戒の子供たちを吸収してしまうという大胆かつ狡猾な計画だ。捕獲された子供たちは、何光年も離れた惑星につれていかれ、いずれ地球侵略のための戦士に改造されてしまうのだ」
 さすがにそこまではしらなかったものたちの口から、愕きの声があがった。
「それは大変だ。すぐにも子供たちに、その事実をしらせないと」
「それができれば苦労はない。我々が人々のまえに姿をみせられるのはクリスマスの日をおいてない。かりに別の日に出たとしても、だれの目にも映らないし、声さえ伝わることはない」
 これまでほかの日にあらわれた経験がないだけに、そのことをしらないほかのサンタたちが地団太をふむのをやりすごして1号は、なおも続ける。
「そんなことより、サンダークロス星人の話だが、クリスマスまであと二か月足らずしかない。それまでになんとか、サンダークロス星人の計画を阻止しないと、のっぴきならないことになる」
 それには全員、うなずいた。平和と博愛の象徴ともいえる、我らサンタクロースになりきって、なにもしらない子供たちを誘拐するとはもってのほか。憤りがかれらの顔を真っ赤に染めた。
「なにかいい知恵でもあるのかね」
 腕組みしながら12号がたずねた。1号はちゃんと、奥の手を用意していた。
「わしがしらべたところではかれら、サンダークロス星人にはひとつ、致命的ともいえる弱点をもっていることが判明した」 
「それは―――?」
 みんなは身をのりだして、1号の返事をまった。

 トナカイのひっぱる橇に乗り、サンダークロス星人たちが宇宙空間に姿をあらわしたのは、12月24日のクリスマスイブの日だった。かれらがまったく自分たちと同じいでたちをしているのをみて、あらためてサンタクロースたちは目をみはった。これでは子供たちがだまされるのも無理もない。何頭ものトナカイが吐き出す息吹が大気となってかれらの周囲をとりかこんでいる様子さえ、そっくりだった。
「いくぞー」
 1号の掛け声に、すべてのサンタクロースたちが、トナカイに一鞭くれた。宇宙空間にかれら、本家本元のサンタクロースたちがのりだした瞬間だった。
 警戒すべきは、サンダークロス星人たちのかつぐ袋だった。袋の中には、圧縮空間のための超極小ブラックホールがはいっていて、ちかづくものはなんであれ、うむをいわせず吸収してしまうという危険極まりないしろものだった。サンタクロースの何人かはそれをきいただけで、ふるえあがり、ちょっと用事がとか、このところ動悸がしてとかいいわけしては、すごすごと退散しかけたものもいた。だがリーダーには、名案があった。
「きたぞ。みんな、用意はいいか」
 いっせいにすべてのサンタクロースたちが、袋の口をいっぱいにあけた。なかからもうもうとふきだしたものが、サンダークロス星人たちのもつブラックホールの引力にひかれてたなびきはじめた。
 サンダークロス星人たちが、爆発的なくしゃみにみまわれだしたのは、そのすぐあとのことだった。かれらがとびきりひどい花粉症のもちぬしだという情報を入手していた1号が、南半球が受け持ちのサンタにいまを盛りの花粉を急遽集めさせみんなの袋につめたのはつい昨日のことだった。
 サンダークロス星人たちは、それからもながいあいだくしゃみをしつづけるはめにおちいり、結局今回の計画は断念ということになってみな、彼方の惑星にひきかえしていった。
「わしもなんだか鼻がむずむずしだしたぞ」
 しかしサンタたちにはそんなことでてまどっているひまはなかった。
 花粉をはらいおとした袋にプレゼントをつめて、さっそく子供たちのところに飛んでいった。

 今年のサンタは、マスクをかけていたぞ。
 子供たちの間で、そんな噂がとびかったりしているうちに、ぶじクリスマスは過ぎていった。


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