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ゆひさん

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バスに乗って

12/11/12 コンテスト(テーマ):第十九回 時空モノガタリ文学賞【 クリスマス 】 コメント:0件 ゆひ 閲覧数:1849

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私は今でもお父さんとお母さんがやりなおせばいいと思ってる。

私の心の中の幼い私が、
どうしようもなく泣いている。

きみはあのとき、泣かないことを決めたでしょ?

私はその子にそうやって言い聞かせる。

そうだったね。もう泣かない。

そうやって、幼い私をよしよしとしてあげるのも、
もう手慣れたものだ。

両親が離婚して十年も経つのだし、
もう高校生になったのだから。

「クリスマスは予定あるの?」

母が聞く。

そのニュアンスは、「彼氏はいないの?」に近い。

「うん、あるよ」

そう答えると、母は「おー」とうなって、
うん、うん、とうなずいた。

だけど、残念ながら彼氏はいない。
友達と遊ぶわけでもない。

「お父さんに会いにいこうと思って」

「そっか。でもお父さん予定ないのかしら。
クリスマスだし」

「だから、私と会う予定があるんじゃん」

母は、それもそうねと、屈託なく笑った。

お父さんとお母さんは、今でも仲がいい。
それは私の前だからだろうか。

私の前でだけ、それを演じているなら、
私はそれは心苦しい。

子どもは大人が思ってる以上に敏感だと思うけれど、
ふたりの仲の良さから、心苦しさを感じたりはしない。

私が鈍感なのだろうか。

わからないけれど、とにかくいっしょにまた暮らせばいいのに。

想いは違うけれど、
幼い私と、高校生の私の意見は、一致している。


クリスマスの夜、バスに乗って父に会いに行った。

「迷わなかった?」

会うなり、父は言った。

「何回来ても同じこと言うね。もう高校生なんだよ」

そうやってぶーたれてみるけれど、
私はうれしくてしかたない。

「そうか、そうだね。じゃあ、行こうか」

そう言って、いつもと同じレストランに行く。
そこに行くと、私はなぜか安心するのだ。

「ね、私たち、カップルに見えるのかな」

そう言うと、

「どうみたって親子だよ。親子じゃなかったら、お父さん捕まっちゃうだろ」

そうやって笑った後、

「というか、今日は良かったのか。
クリスマスなのに。彼氏と過ごさないのか」

と聞いた。

彼氏がいたとき、うれしくて父に伝えたのだ。
それを覚えていたみたいだけれど、
残念ながら、彼氏とは別れてしまった。

「別れたよ。人生そううまくはいかないね」

「そうか。残念だ」

「お父さんこそ、彼女いないの」

「いないよ」

「じゃぁ、お母さんと暮らせばいいのに」

と言うと、お父さんはちょっと黙った。
余計なことを言ってしまったかなと、私は気まずくなった。

「別れた彼氏と、またいっしょになろうと思ったら、
すごく大変だと思わない?」

うーん・・・
私が彼を振ってしまった。
それは私が恋を終わらせたということだ。

だから、彼には未練はない。
またいっしょにになんて思えない。

「仲がいいということと、いっしょに暮らせるかということは、別の話なんだよ。
ごめんね。ユウには淋しい想いをさせてると思うけど・・・」

淋しくならないように、父も母もがんばってくれてることを知っている。
だから、淋しいなんてことは言いたくない。

幼い私は、私がなぐさめてあげればいいのだ。

「淋しいよ」

想いとは裏腹の言葉が出てくる。

「そうだよね。ごめん」

「だけどね」

と言って、私は口角をキュッとあげてみる。

「淋しくないよ。お父さんが好きだから」

父は私の頭をよしよしとなでた。

幼い私が喜んでるのがわかって、
私の顔はくしゃくしゃになった。


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