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あずみの白馬さん

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サンチアゴ航空513便事件【エッセイ】

17/02/27 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:1件 あずみの白馬 閲覧数:1161

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 1989年10月12日、ブラジルのポルト・アレグレ空港に、正体不明の飛行機が近づいてきた。
 管制官はすぐさま無線連絡を試みる。
「正体不明機、こちらポルト・アレグレ空港。この空港に着陸するには許可が必要です。貴機の機体番号もしくは便名をどうぞ」
「……」
「正体不明機、緊急事態でしょうか? もし受信可能であれば、トランスポンダで応答してください」
「……」
 管制官の呼びかけに応じることの無いまま、この飛行機は着陸し、滑走路上で停止した。

 機体には「サンチアゴ航空」の文字があり、ロッキード・スーパーコンステレーションという古いタイプの旅客機であることが確認された。
 すぐに機内を調べると、驚くべきことに、なんと乗員乗客92名、全員が白骨死体となって発見された。

 フライトレコーダーを調べた結果、同機は1954年9月4日、西ドイツのアーヘン空港からポルト・アレグレ空港に向かっている途中、突然消息を絶って行方不明になっていた「サンチアゴ航空513便」であると判明した。なお、同航空会社は1956年に廃業している。

 この事件は、35年の時を経て消えた航空機が帰ってきた「逆バミューダ・トライアングル現象」と報道された。

 ***

 既にご存知の方もいらっしゃるかも知れないが、これはアメリカのタブロイド紙、ウィークリー・ワールド・ニュースが、1989年11月14日号で報じた「サンチアゴ航空513便事件」の概要である。

 ここまで読んで、読者の皆様はどのように感じただろうか? 信じる人も居たかも知れないが、おそらく半信半疑に感じた方が多いのでは無いだろうか?

 この事件、改めて検証してみることにしよう。

 ***

 まず、事件にあったとされる、ロッキード・スーパーコンステレーション。これは実在する旅客機だ。1951年に登場したL−1049G型機は、航続距離を大幅に向上させ、大西洋、太平洋を横断していた船舶航路を衰退に追い込んだことで知られている。

 ところが、そのほかのことを見ると、次々と疑問点が浮かび上がってくる。

 まず、パイロットが死亡していたのに、どうやって着陸出来たのか?
 自動操縦では? と思われるかもしれないが、ちょっと待ってほしい。
 当該機が行方不明になったのは1954年。この頃の自動操縦は、あくまで機体制御が主で、自律的な着陸までは出来なかった。世界初の自動操縦による着陸は、1966年。当該機は、手動でなければ着陸出来なかったのである。
(余談であるが、現代の自動操縦による着陸も、パイロットが装置を使うための資格を得て初めて可能になる)

 また、フライトレコーダーを調べたとあるが、これは1954年に発生したコメット連続墜落事故の際、当時これが無かったため、原因調査が難航した反省から取り付けられるようになったもので、同年9月に行方不明になったとされる当該機に付いているはずはない。

 さらに、行方不明、発見の双方の日に航空事故の記録は無く、サンチアゴ航空という会社も存在した証拠が無い。

 そして、このニュースを報じたのはウィークリー・ワールド・ニュースのみ。

 同紙はこういった創作記事が多い。後日、日付などを変えただけで中身が同じ記事が「報じられた」こともあるのだ。

 日本では「ムー」の1990年3月号、2001年9月にTBS系列「USO!? ジャパン」で取り上げられたが、元ネタの引用に過ぎない。

 よって、この事件自体がフェイクと結論づけられる。

 蛇足だが、最初の交信記録は筆者の創作であることを記しておく。

 ***

 ここまで、この「事件」を読み解いてきたが、これを現実のものと考える者も少なからずいる。これはなぜか?

 まず「嘘の中に少しだけ本当のことを混ぜる」と、信ぴょう性のある嘘が出来る。

 サンチアゴ航空513便事件では「スーパーコンステレーション」「フライトレコーダー」など、実在するアイテムが登場するが、これが「少しだけ本当のこと」に該当する。著名なジョークニュースサイト「虚構新聞」でもよく使われる方法だ。
(2011年に話題になった「フォロワー300人以下は強制退会」と言うフェイクは同サイトが元ネタだが、ツイッターでは釣られる人が多かったらしい)

 そして、新聞、雑誌、テレビで報じられたと言うと、現代人は信じてしまうことが多々ある。それらが合成された時、都市伝説は一人歩きを始めるのだ。

 今、世の中では様々な都市伝説が語られている。それは本物のような作り話がほとんどだが、未知なるものに人は魅力を感じるものだ。

 都市伝説は、人々の間で語られるひとつの娯楽として、存在価値があるのでは無いかと私は思う。味気ない世界を彩る、ひとつのスパイスとして。


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このストーリーに関するコメント

17/02/27 あずみの白馬

【参考資料】

wikipedia
「サンチアゴ航空513便事件」
「ロッキード・コンステレーション」
「オートパイロット」
「コメット連続墜落事故」
「虚構新聞」

自動化による安全性の向上:
ヒューマンファクタの視点からの考察
(稲垣敏之)
http://www.css.risk.tsukuba.ac.jp/pdf/vol2_no2_2008.pdf

航空機の「ブラックボックス」は事故の原因をどうやって解明するのか?
https://www.google.co.jp/amp/gigazine.net/amp/20160620-airplane-black-box

99%がウソ記事!?──「虚構新聞社」の社主が語る、ノンフィクションな本音
http://ascii.jp/elem/000/000/079/79432/

それでもやっぱり…虚構新聞の嘘記事に釣られるTwitterユーザー
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/459918.html

フォロワー300人以下は強制退会 SNS化を徹底
http://kyoko-np.net/2011071101.html

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