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藤光さん

趣味で小説を書いています。

出没地
趣味
職業
性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの記事一覧

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小心者の性(さが)

17/10/09 コメント:0件 藤光 閲覧数:51

 買ってもらったばかりの長財布。ファスナーのついた小銭入れに硬貨は一枚もなかった。
 ――嘘だろ。
 給料日前の金曜日。薄くなった財布を見ると寂しい思いをするのは毎月のこととして、そこからお金がなくなったとなると話が変わってくる。
「抜いた?」
「抜くわけないでしょ」
 ネクタイを締め、スーツの上着に袖を通しながら、妻にそれとなく訊いてみたが、馬鹿にするなと言わんばか・・・

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すっぽんと最後の事件

17/10/07 コメント:0件 藤光 閲覧数:70

 A区の路上で発生した通り魔殺人事件の捜査は行き詰っていた。
 現状を打開するために、捜査本部の置かれたA警察署を訪ねると受付で出迎えてくれたのは小柄で半ば白髪となった男性警官だった。古い顔なじみに私が「榊さん、しばらくでした」と頭を下げると、警官は「本庁の捜査一課長にそんな挨拶をされたんじゃ居心地悪いや。よしてくれよ」と恐縮した様子で肩をすくめた。
 私の知っている榊さんは、刑事一・・・

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高坂さん

17/09/10 コメント:0件 藤光 閲覧数:110

 ぼくは何者でもなかった。
 自分の職業に警察官を選んだのも、犯人を捕まえたいとか、町の平和を守りたいとかといった積極的な理由からではなく、単に「ほかになれるものがなかったから」だった。やりたい仕事を見つけることができず、仕方なく警察に就職しただなんて失礼なこと同僚にも話したことはなかった。そのことが一層ぼくの孤独を深めていたのかもしれない。とにかくぼくは鬱屈していた。
 ぼくにとって・・・

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ぼくと彼女とコロとミケ

17/07/14 コメント:0件 藤光 閲覧数:145

 コロはミケに恋をしている。
 窓から明るい光が差し込む朝、目を覚ますとコロがうれしそうにしっぽを振っているところに出くわすことがある。視線を追うとその先にはいつもミケがいる。その時の気分に応じてピアノの上に、本棚の上に、そしてネコタワーの上に。コロが懸命にしっぽを振ってみてもミケが意に介することはほとんどない。ワンと悲しげに吠えると、うずくまった姿勢からちらと薄目を開けてみせるくらいだ。<・・・

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メランコリア

17/05/16 コメント:0件 藤光 閲覧数:245

 やってきた彼は憂鬱そうだった。
 おかしな人間が集まるこのクリニックでも、とびきりおかしな男だった。なにしろ、彼はヒーローをやっているというのだ。
「そりゃもう、間違いないんですよ。先生」
 付き添ってきた年かさの男は、疑われるなんて不本意だと言いたげだったが、ここは精神科のクリニックだ。患者の言葉には耳を傾けないといけないけど、鵜呑みにしていちゃ、僕の仕事は務まらない。まして・・・

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春がゆく

17/05/02 コメント:0件 藤光 閲覧数:210

 先日、我が家の食卓に筍の若竹煮が上った。筍は私が実家の竹やぶに入り採ってきたもので、土から僅かに顔を覗かせたばかりの筍で作る若竹煮はとても柔らかく、かすかな苦みが鮮烈に春を感じさせる一品だ。
 その日、大汗をかいて筍を掘り起こした後、甘い物が欲しくなった私が、実家から自宅への帰り道に買い求めたものが、いちご大福である。

 いちご大福――ご存知だろうか。
 年配の男性には・・・

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竜宮異聞

17/04/22 コメント:0件 藤光 閲覧数:211


 丹後国浦島の浜にその人を見初めたのは、むしろ乙姫の方だったという。「地上に姿を見せてはならぬ」という戒めにもかかわらず、亀に姿を変えて陸の上を窺ったのも、一目その美しい若者を見たいとの思いからだった。
 浜に姿を現した乙姫は、たちまち子供たちに捕えられた。困り果てているところを救ってくれたのが、思い焦がれた若者――太郎であったので、乙姫の想いは一層強くなったのである。
「人の・・・

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A Whole New World

17/03/18 コメント:4件 藤光 閲覧数:504

「おれのは失敗やったなあ」
「なにがですか」
 先輩が応じるまでもなく、家保さんは話しはじめた。注がれだばかりのビールのグラスにまだ水滴はついていない。
「結婚や、ケッコン」
『よし来』の店内は客の多い割に静かで、間接照明に照らされた打ち放しのコンクリート壁も落ち着いた雰囲気を醸し出している。煮しめたような杉の一枚板の上にグラスが三つ。突き出しはオクラと豆腐の和え物だ。ぼく・・・

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