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白取よしひとさん

短編集かげろふ、契りの彼方などamazon kindleに掲載中です。

出没地
趣味
職業
性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの記事一覧

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パライソへの航路

16/12/24 コメント:0件 白取よしひと 閲覧数:414

「さぁ!何をしておる船が出るぞ」

侍たちは呆けているボクを甲板に押し上げた。振り返り手摺にもたれると丘には海にこぼれんばかりの侍たちが連なり喝采を送っている。

「おぅら。引くっちゃ!」

水夫たちが気合を上げると共に、数多のマストに昇った白帆は月ノ浦の風を捉え大きく孕んだ。サンファン・バウティスタ号。慶長18年9月ボクは大航海に繰り出すこの船に乗船し・・・

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8年目の聖夜

16/12/15 コメント:0件 白取よしひと 閲覧数:447

 海岸線は弧を描き、日本海を抉(えぐ)りながら西にのびて岬を築く。突端は一際高い丘となり、そこには白亜の灯台が立っている。しかし容赦なく横に薙いで来る雪で霞み、その姿を認められない。

 海鳥が雪に揉まれながら頭上で群れている。私はその悲鳴から逃れる様にアクセルを踏んだ。ワイパーに絡む湿った雪は、ヒーターの甲斐もなくフロントの両端に盛り上がり前方の視野を悪くする。私は亀のように首を伸ば・・・

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桜風 両国浮世絵乱舞の図

16/11/12 コメント:0件 白取よしひと 閲覧数:595

 時は寛永。ひらひらと辻に舞うのは瓦版。我先にと人は群がり話題は蔦屋で持ち切りだ。

「見出しは蔦谷重三郎。おまけに杵屋お初の挿絵を拝めるってぇんだから買わねえ手はねぇってもんだ」  

 通称蔦重は破天荒で贔屓が多い。耕書堂って大層な店構えた指折りの版元だが、つい先だっても春画でお咎めを受けたばかりらしい。江戸っ子は俗な話や色気にめっぽう弱い。蔦重は次から次へと新作奇作を・・・

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雪山美術館

16/11/09 コメント:0件 白取よしひと 閲覧数:509

「浩二。私もう1本滑って来るわ」
 僕は何か飲んで来るよと板を突き立て数歩いて振り返ると、和美はリフトに向けてスケーティングをしていた。強烈な逆光の中、徐々に遠ざかる和美の姿は僕らの状況を象徴するかに見えて、僕はレストハウスの階段へ脱力感と共に腰を降ろした。

 和美と付き合って3年を過ぎた。僕らは美大の同期だ。学生の頃は夢を語っていればそれで良かった。僕は、学生時代コンテスト入・・・

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南国の罠

16/10/10 コメント:0件 白取よしひと 閲覧数:550

 丸い水平線を背景に白砂の波打ち際で燥ぐ子供たちを眺めながら、裸足の足を放り出し妻が買ってきてくれたソーダ水を流し込む。背後には絵に描いた様に濃いビリジアンの葉が時折寄せてくる浜風に揺らいでいる。東京では窮屈な革靴で汗だくになりながら電車を乗り継ぐ多忙な毎日だ。南の島でのんびりと、そんな夢想を思い切った奮発で実現した。
子供たちが歓声を上げ僕の手を引いた。それを傍らで笑う妻。平穏で穏やか・・・

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GUILTY

16/10/05 コメント:0件 白取よしひと 閲覧数:574


辿り彷徨い。どこをどう巡ったか憶えていない。舞台の袖を暗く覆う幕。僕はその陰で出番を待っていた。先行の男は客受けが良いのか次第に笑いを獲り勢いに乗っている。
「良いですか。出番が来る直前にお題を差し上げます。あなたはお客さんにそれをアピールして下さい」

傍らに寄り添う案内人と呼ばれる老紳士は淡々と語る。また歓声が沸き起こった。随分受けている。僕は鼓動が高鳴り脇の下が汗・・・

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たんぽぽ書店

16/09/09 コメント:0件 白取よしひと 閲覧数:840

 アーケードにぽつんとある街の本屋さん。商店街に人通りはあるのに、間口が狭くてうなぎの寝床みたいな店内にお客さんはひとりも見えません。入り口に近いレジでおばさんが何やら片付けをしている様です。

「亜衣ちゃん」
あら、あんまり淋しくてつい口に出ちゃったわ。亜衣ちゃんが帰ってからお店の中は火が消えたみたい。この日くらいゆっくりお話したかったけど用事があるんだから仕方ないわよね。最・・・

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なつの縛霊

16/08/22 コメント:0件 白取よしひと 閲覧数:750

 標高1,300mの山頂ロープウエイ駅は、夏の今もひんやりとした冷気に包まれている。辺りを見回すと頃よく雲海が広がり、ここに高さを譲る峰々の山頂だけがぽっこりとその頭を覗かせていた。それは白き海に島々が浮かぶが如くに見え、まるで僕たちは憧れの島に降り立った航海士の様に胸をときめかせる。
 気流だろうか。下界に敷かれたブナの原生林を覆う雲は、時として火山の噴煙にも似て湧き起こる。それは忽ち白色・・・

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三下り半はあんたの勝手

16/08/20 コメント:0件 白取よしひと 閲覧数:613

「それで彩子は旦那の事を許せるの?」
そう言って和美は三本目のフィルターを灰皿に擦りつけた。

 彼女はバーカウンターZAZAの女バーテン。そして高校以来続く無二の親友だ。
ショートの髪を無造作に片手で掻き上げる。私は思わずそれに見入った。そう彼女は中性的な魅力があり、学生の頃から女子に人気があった。私もその取り巻きの一人だ。
 
 独身の頃、私は会社の帰りZ・・・

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醤油屋マダム咲子

16/08/18 コメント:0件 白取よしひと 閲覧数:674

□咲子
何代も商いを続けてますとね。それは恐ろしい話も塵の様に積もりますわ。
ほほほ。ご興味がおありですか?それではこの大暖簾を潜ってごらんなさいな。
あれもこれも想いを吸い尽くした曰く付きのものばかりよ。
「まぁ。あんたこの世のもんじゃないね」
うちは醤油屋。冷やかしならどっかに散りな。

江戸時代からの老舗に嫁いだのは良いけれど、当主のお父様が亡く・・・

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