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本宮晃樹さん

ふつうにサラリーマンをしております。 春夏秋冬、いつでも登山のナイスガイ。 よろしくお願いします。

出没地 日本アルプス、鈴鹿山脈、比良山系
趣味 登山、温泉
職業 通関営業
性別 男性
将来の夢 魁! 不労所得!
座右の銘 定時帰社特攻隊長

投稿済みの記事一覧

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メトセラ人、脱ゾンビ生活宣言

17/04/28 コメント:2件 本宮晃樹 閲覧数:65

 友人連中の誰もが反対した。「そんなことしてなんになる?」
 ごもっとも。だがわたしに言わせれば、飼い慣らされた羊みたいな生活にこそなんの意味があるのか教えてほしい。あらゆるリスク――なんという呪わしい言葉だろう――から逃げ隠れする臆病な隠遁者ども。地獄へ失せろ。
 いまでは狂人の聖地として悪名を馳せる上高地に着いたのは、夏真っ盛りの八月下旬。大むかしはあふれかえるほどの登山者でにぎわ・・・

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世捨て人ツアー

17/04/21 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:63

〈世捨て人ツアー〉参加者一挙大募集!
 いまの地球に嫌気が差していませんか? 百十億人を突破した信じられないほどの人口密度、タキオン通信によって過剰に加速するビジネスシーン、はびこる遺伝子組み換え作物、世界中で起きている戦争。
〈世捨て人ツアー〉はタキオン駆動船〈トライアンフ〉(合衆国退役艦払い下げ品)に搭乗していただき、相対論的効果によってまだ見ぬ未来へ一足飛びにお客さまをご案内する・・・

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化学熱力学通勤

17/04/13 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:82

 満員電車の内部エネルギーU=乗員数+エンタルピーΔH ……@
 つまりこういうことだ。上述の式@で俺の感じているストレスがどれほどのものか、一目瞭然であろう。もちろんこれは簡略化にすぎる。乗員数はさらに以下の成分に分解できる。
 乗員数=(新入大学生数ΔG×新社会人数ΔK)の自乗 ……A
 ただしΔGはごみ、ΔKはクズの意味だ。A式が掛け算なのを考慮されたい。連中の不快指数は単・・・

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思い出トレイン

17/04/05 コメント:2件 本宮晃樹 閲覧数:117

 四十年なんてあっという間だ。
 かたちばかりの花束贈呈に続く白々しい拍手のなか、十五時には退社した。いたたまれなかった。みんなの視線は明らかにこう物語っていた。「役立たずの給料泥棒がようやくいなくなる」。
 なんにせよこれからわたしは自由の身になる。第二の人生が始まるのだ。
 ところで、第二の人生とやらはなにをしてすごせばいいのだろう。それもたったの一人で。
 それは帰り・・・

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エンドレス・ウォール

17/04/01 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:93

〈壁〉は高かった、とてつもなく。
「父ちゃん」子どものころのわたしは折に触れて聞いたものだ。「〈壁〉はどこまで続いてるの」
「どこまでもだ」父はしかつめらしい表情で答えたものだ。「終わりなんてありゃせんのさ」
 父は無骨な男で口数も少なく、わたしは小さいながらも息苦しさを感じていたと思う。ようやく自力で〈壁〉にしがみつけるようにはなっていたものの、彼は自分の登攀ペースを乱されるの・・・

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挽回の伊吹山

17/03/27 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:77

 三月と侮るなかれ。滋賀県に鎮座まします伊吹山(一、三七七メートル)程度の低山でも、五合めあたりからはぼちぼち残雪が出てくる。早速アイゼンを装着した。ここから上は伊吹山名物、山頂までノンストップの直登である。
 それにしても諸君。もしや諸君は例の山ガールとかいう都市伝説を信じている口ではなかろうか? ここでひとつ夢を壊して進ぜよう。そうしたものは断じていない! 天地開闢以来、一度も存在したこ・・・

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プロメテウスの火

17/03/16 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:115

 みなさん、いまこそ悪しき科学技術のくびきから逃れるときです!
 産業革命からこちら、われわれは幸せになったのでしょうか? 見渡す限りの田園風景、刈り入れどきの心地よい秋の風、黄金色に輝く稲穂。古きよき日本はどこへいってしまったのでしょうか?
 それらはもはやどこにも存在しません。感受性豊かなわれわれ〈地球環境保全委員会〉と、あなたがた良識ある一般市民のみなさんの頭のなか以外にはね。<・・・

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宇宙人はどっちだ?

17/03/10 コメント:3件 本宮晃樹 閲覧数:142

「宇宙人がきてるんだ」城島は〈ヒョウロク玉〉――肺胞を酸素で満たす飴ちゃん――を口へ放り込みつつ、「そいつらは俺たちとそっくり同じ姿なんだってよ。この町にも何匹か紛れ込んじまってる」
 ぼくがこいつと友だちでいる理由? そりゃもちろん子どもの総数がめちゃくちゃに少ないから、やむをえずそうしてるだけだ。誰が四六時中与太を吹かしまくる脳足りんなんかとつるみたがる?
「どこからだと思う? 驚・・・

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生物学はインスタント食品にあらず

17/02/25 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:159

「よおしわかった」気鋭の生物学者はもう我慢の限界だった。「この水掛け論を終わらせようじゃないか。〈オラクル〉に思考実験をやらせよう。それでいいかい、キリスト教ファンダメンタリストのだんな」
「望むところです。すぐにでも始めましょう」
「そうしたいところだが、あいにく明日の飯にも困る貧乏研究者でね。〈オラクル〉の使用料は誰が負担するんだい。聞いた話によると一秒あたり百ドルとられるらしいよ・・・

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おとぎ話のエビデンス

17/02/20 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:189

〈エスぺランザ〉がどこにあるのか、正確には誰も知らない。
 伝承によれば〈断絶の砂漠〉を越えた先に、肥沃な大地が広がっているという。とても本当だとは思えないが、それがどうした? わたしはそのたわごとに賭ける気になった。死に絶えるのを待つだけの保守的な故郷にうんざりしたのだ。
「この地図によれば」ガリウム‐ヒ素型太陽光パネルが静かに電子を循環させている。「さらに東へ七十キロか」
「・・・

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人間力発電所

17/02/07 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:191

「本日はお忙しいなか、各位には遠いところからお集まりいただきまことにありがとうございます」刑務所長は誇らしげに、「早速全国に先駆けて当刑務所が導入した、最新鋭の超高濃度中性子線原子炉にご案内します」
 各位たちはぞろぞろと所長の後ろについていく。彼らの内訳は官僚や政府系技術者が大半を占め、なかには名の知れた政治家も姿を見せている。常日ごろからなぜ自分の分身がもう三体か四体ばかりいないのかと首・・・

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歌舞伎町リピーター

17/02/01 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:214

「それでお兄さんはどんなお仕事されてるんですか」言葉とは裏腹にとても興味があるように聞こえない。「この近くにお勤めなの?」
 ご名答。この近くにお勤めだ。店内は紫煙と酔客の大げさな笑い声に満ちている。刺すような頭痛がしてきた。無理にでも上司の誘いを断るべきだったのだ(当の本人はべつのテーブルで、一回り以上も年下であろう女の子の胸元と会話している)。
「すぐそこのオフィス街で、貿易関係の・・・

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遺伝子を救い出せ!

17/01/28 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:220

 あえていやみったらしく言うと、わたしは(というより正確にはわたしの一族は)めちゃくちゃに金持ちである。
 なんでもそのむかし、まだ誰も土地に値段がつくなんて考えもしなかったころに強欲なご先祖が、「いいかきさまら、今日からここは俺の土地だ!」と一席ぶったらしい。以後このあたり一帯はわれわれの土地であり、さまざまな用途にリースして使用料を掠め取っているというわけだ。
 ところで今般、わた・・・

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無限の彼女

17/01/24 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:195

 香苗の住まいは四階建てで四部屋の、やけに細長いアパートの三階にある。築十五年も経つ爆破解体前のような建物で、最上階は天気が荒れて強風が吹き荒れるたび、メトロノーム然とした周期的な揺れを観測するというもっぱらのうわさだった。
 彼女は三階の角部屋、三〇五号室にここ数年居ついている(ふつう「四」は縁起が悪いということで避けられる。したがって四部屋あっても角部屋は五号室になる)。
 お付き・・・

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ルールは守りましょう

17/01/13 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:198

「ところでちょっと気になったんだが」宇宙船〈トライアンフ〉号の船長は、ブリーフィングのあとにぽつりとつぶやいた。「いまどのあたりを航行してるんだ?」
「そりゃもちろん」一等星図航海士がホログラムイメージを睨みながら、「紀元前五世紀のベテルギウス近傍ですよ」
「ふうむ、紀元前五世紀のベテルギウスね。なんでそんなところにいるんだっけか」
「しっかりしてくださいよ。あの悪夢を忘れたわけ・・・

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門出

17/01/12 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:234

 すっかり忘れていたはずだった。高校時代は忘却のかなたであり、それがあったのかどうかさえいまや定かではない。
 いまそれが確かにあったのだと、アパートの郵便受けに投函されていた結婚式の招待状によって、疑いようもなく証明されたのだった。
 ずっとわたしのなかで澱のように淀んでいた苦い思い出が、鮮烈によみがえってくる。

     *     *     *

「日・・・

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救われた星

17/01/06 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:244

「あまりにもひどい」担当官はかぶりを振った。「いったいこのエリアはどうなってるんだ? これほど支離滅裂な連中は探したってそうそう見つかりっこないぞ」
「どうしました?」と面倒くさそうに部下。惑星がいかに尊重されるべきかのありがたいご高説が炸裂せねばよいが……。
「見たまえ」担当官はイメージを放射した。
 マルチ・プレーン・デバイスを介在せず、古式豊かなオーガニックウェーヴにこだわ・・・

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遅刻相対論

16/12/28 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:229

 ニュートン物理学の枠組みにおいて、時間は絶対的だった。それが相対性理論によって打ち崩されたわけだが、普段われわれが生活している限りにおいて、それを意識することはまずない。みんな同じような時間流のなかでなんの齟齬もなく生きているのだから。
 にもかかわらず、卑近な例でアインシュタインの偉大な発見を直に感じ取ることは可能だ。われわれはなにも光速に近い宇宙船に乗って何光年も旅したあと、地球へ戻っ・・・

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不撓不屈の人びと

16/12/17 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:236

「幕僚長!」荒々しい足音とともに空佐が駆け込んできた。「すでにお聞きおよびかとは思いますが、中国大陸から多数の航空機が――」
「知ってる知ってる」航空幕僚長はむしろ笑顔を浮かべてさえいる。「参ったなあ。どこに向かって連中、飛んできてると思う。ずばりここ。東京だよ」
「お言葉ですが幕僚長、あまりにものんきにすぎるというか、その」
「だってきみ、どうしろってんだい。五年前の悪夢の日、・・・

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サンタクロース包囲網

16/12/09 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:249

「ねえパパ」五歳になる娘がつぶらな瞳で問いかけてきた。「サンタさんはどこにいるの?」
 そんなものはいないと断言して科学合理主義の化身にしてしまうには、彼女はまだ幼すぎるだろう。「いいかい、サンタさんはよい子の心のなかにいるんだよ」
「ふうん」明らかに納得していないようす。「でもおかしいよ。それじゃあどうやってあたしはプレゼントをもらえばいいの?」
「ええと、そのう……」
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エコ思想はすばらしい

16/12/05 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:210

 今月の電気メーターを前に、わたしは愕然とした。割当量を七ワット「も」超過しているじゃないか! これはまずいことになった。いったいなぜ? 細心の注意を払って電気消費量はセーブしていたはずなのに。
 まるでわたしの焦りがテレパシーかなにかで伝わったかのように、ちょうどエネルギー管理局の職員が駐輪場に自転車を停めたところだった(連中はむろんいけ好かないし、態度だって尊大だ。だが本事例からもわかる・・・

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アドリブ美術館

16/12/02 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:277

「あの、お一人ですか?」こんなもの俺でも描けると驕っているときにいきなり話しかけるやつがあるか。「よかったら一緒に回りません?」
 ひとつ断っておくが、俺に高尚な美術を理解できる素養があるだなんて思ってもらっては困る。そんなものはいっさいない。
 悪いがね姉ちゃん、友だちから賭けマージャンでかっぱらったチケットがたまたまこのくそいまいましい美術館のタダ券だったんだよ。「かまいませんよ」・・・

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量子地獄

16/11/22 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:301

「いまこそ!」合衆国大統領は高らかに宣言した。「全世界に住むすべての人間が、申しぶんなく幸せになるときだ」
 そんなことが可能なのか? 円卓についた各国首脳は不安げにおのおのの顔を見交わした。この会談は定期開催されるざっくばらんなオフレコの集まりである。まったくなんのひねりもないが、〈円卓の騎士たち〉の名で親しまれており、公式にはとても発言できないような議題が飛び交うたいへん刺激のある場なの・・・

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水分子のおよぼすバタフライ効果について

16/11/11 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:369

 聞くに堪えない辛辣な言葉というのは、しばしば本人の意図しないまま反射的に飛び出るものだ。
 その日、非常に些細なきっかけ――たぶん使ったコップをそのまま戻すなとか買い出しを頼んでいた柔軟剤がいつものとちがっていたとか、そのたぐい――で勃発した恒例の夫婦げんかはいつになくヒートアップしていた。
 罵詈雑言が互いの頭上を飛び交い、いよいよボルテージが最高潮に達したそのとき、ほかでもないわ・・・

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そして目覚めると、わたしは肌寒い部屋にいた

16/11/04 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:262

 眠っていた年数を考慮すれば、めくるめく未来が眼前に押し寄せ、わたしを圧倒するはずだった。
 重力波を打ち消す「斥力波」の放射によって無音で浮遊するフロート車両、脳に増設用メモリをインプラントしたマインドサイボーグ、人種混淆が進んで日本人離れした人びとであふれかえる文化的サラダボウルの大都市。エトセトラ、エトセトラ。
 ……などということはいっさいなく、この国は相変わらず閉鎖的で、重力・・・

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平和のレシピにYはいらない

16/10/21 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:321

 聞いてください! ここだけの話、恒久平和はもう目の前なんです。
 Y染色体がいかに野蛮で、下品で、近視眼的で、存在価値がないかはみなさん知るところでしょう。有史以来まさにこの野卑で、品性の欠けた(中略)見るもみすぼらしい染色体を持つ殺人狂たちのせいで、この世界は蹂躙され続けてきました。そんなこと許せますか? 断じて許せませんよね。
 サモア諸島のアピアに逃げ込んだ〈最後の野蛮人〉たち・・・

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一億総理系文盲社会

16/10/18 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:366

 さあさあ、とくとごろうじろ!
 ときは二十一世紀中葉、場所は人びとが奔流となっていき交うメガシティ。具体的な地名? そんなこと特定してどうする? もうこの国には〈都市〉しかないってのに。地方は消滅するか都市に昇格するかしたのだ。おわかりかな。
 そのメガシティのスクランブル交差点。耳をすませば男女の会話が聞こえてくる。
「お前血液型なんだっけ」男の顔を見たかい? 品性がすっぽり・・・

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笑っていますか?

16/10/13 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:333

 終始ぎすぎすしている職場から命からがら脱出し、ふらつきながら薄汚いくそったれビルをあとにした。ストレスが臨界に達している。営業なのにもかかわらず誰も電話に出ない、以前より明らかに仕事量は増えているのに業績は下降線を辿る、ライバル会社どもはこぞって料金を下げ続けて業界全体を自滅へと導く。いったいなにに救いを求めればよいのか?
 こういうときはもちろん、ムードオルガンの出番だ(当たり前だがこれ・・・

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アトラス

16/09/29 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:323

「たった一人の人間が、この惑星に欠くべからざる存在だなんてことがあると思うかい?」
 しけた個人経営のバーである〈マジックマッシュ〉は、週末ということでそこそこ繁盛していた(むろんこの店にしてはって意味だが)。それはいいがよりにもよって一人で飲んでいたいと切に願っている男に、ずけずけと話しかけるやつがあるか?
 若い娘なら大歓迎だが、なにが悲しくて野郎――それもいやになまっ白い――なん・・・

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相対論的逢瀬

16/09/22 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:357

 見るがいい、ちょうどシュバルツシルト半径ぶんだけ星の海が円形に切り取られているさまを! それだけじゃない。X線ジェットがその穴から何光年にもわたって噴出し、星ぼしを切り裂いている。帯域幅を変えて観測すれば、高エネルギーの奔流がほとばしっているのがわかる。ホーキング放射だ。
 直径二十キロもない取るに足りない穴なんか、宇宙からすればそこらをブラウン運動している塵埃以下の存在にちがいない。それ・・・

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メタンのために鐘は鳴る

16/09/15 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:583

 潜水艦(パワードユニット運搬型)の魚雷発射管から射出されるのは、何度経験しても気に食わない。まるで神話時代の非人道的兵器みたいじゃないか(例の〈回天〉とかいうしろものをご存じだろうか?)。
 ヴァイザに表示されたデータによれば、海底は三十五メートルほど下だ。俺を先頭に後続のPU部隊がピンポン玉みたいに次々と撃ち出されていく。降下するにしたがってどんどん視界が悪くなり、海底に降着したときには・・・

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おっさんよ、大志を抱け

16/09/07 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:572

「うちの雑誌はまぎれもなくクソですがね」編集者の若造は俺のネームをチン毛かなにかみたいに思っているふしがある。「だからってそこに載る漫画までクソにしてくれなくてもいいんですよ、日下部さん」
「そんなにだめかな、この内容」
「これのどこにゴーサイン出せる要素があるのか教えてもらいたいもんです」若造はコーヒーをまずそうにすすった。「そんなものがあればの話だけど」
 二十歳近くも下の生・・・

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畜猫伝

16/08/26 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:565

 まことにうんざりさせられることに、またぞろ妻がどこからか例の小動物をくすねてきた。先代の三毛が夭逝したとき、次の飼い猫をどうするかで侃々諤々の議論をやって離婚寸前までいったあげく、もう金輪際飼わないと決めたにもかかわらずだ。
 彼女の弁解は傑作だった。
「気づいたら猫入りのバスケットを乗せて帰路を運転していたの。本当よ!」
 どうやらそれと知らずに夢遊病者と結婚していたらしい。・・・

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訪れなかった冬

16/08/18 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:468

 慌ただしく駆けてくる足音。「艦長!」
 ノックなし、敬礼なし、「サー」なし。ないない尽くしだ。わたしはミサイル管理士官をじろりと睨む。「何事かな?」
「たったいまワシントンが消し飛びました」肩で息をしつつ、「中国の重慶から戦略核を積んだミサイルが発射されたようです」
「今日はエイプリルフールだったかな。こう長いこと深海で遊弋してると季節感がなくなっていかんね」
「艦長、こ・・・

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恒星間ドッジボール

16/08/13 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:364

 電話が鳴った。脊髄反射的に手が伸びて受話器がぶれないよう、がっちりとホールドする。
「お世話になっております」
 これまた脊髄反射的に常套句がこぼれ出る。わたしはうんざりしている。お前なんぞにお世話になっちゃいないという台詞をすんでのところで飲み込んだ。
「その件ですね? 少々お待ちください」
 その件。こいつは傑作だ。毎度本当にばかばかしいったらない。
「はい、そ・・・

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ウルトラプロチョイス

16/08/10 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:444

 子どもにできる限りの恩恵を与えたいと思うことが、果たして倫理に悖るのだろうか? わたしはそうは思わない。
「孵化機のご希望はありますか?」医師はつまらなさそうにボールペンを弄んでいる。ルーチンワークにうんざりしていることを隠そうともしない。「なければ〈イヴ〉にしますが」
 ぞんざいにパンフレットを渡された。〈イヴ〉のほかにも〈アフロディテ〉やら〈アテネ〉やらがあるようだが、どれも幹細・・・

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新生バベルの塔

16/08/05 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:386

「なあ兄弟」年配のロケット技術者は潤滑油の入ったボトルを高く掲げた。「乾杯といこうや」
 今夜は異例に気温が高く、西日本の南部ではぼつぼつ桜の開花が観測され始めている。ここ種子島では本州より一足先に、満開のソメイヨシノが咲き誇っていた。
「お前はいままでよくがんばった。それは俺が保証するぜ」
 H-UA型ロケットは星空の下、天を衝くようにそびえたっている。
「ロシアのソユー・・・

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言葉には気をつけろ

16/07/29 コメント:2件 本宮晃樹 閲覧数:391

「見てくださいよ」部下が首の凝りをほぐしながらモニタを指差した。「えらく急いでますぜ、お偉方」
 俺はでっかいあくびをひとつかまして、「なんだってんだよ、いったい」
 眠い目をこすりながら牢獄もかくやといった作戦室内で大きく伸びをする。どうせ〈アンノウン〉がまたぞろ海王星ラインを越えてきたとか、そういうのだろう。心配ご無用。われらが優秀なる無人艦隊の〈マシーナリー・ナイツ〉たちががんば・・・

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ダンシングジーン

16/07/20 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:423

簡単お見積り! 二人の理想的ベビーを作っちゃおう!
 このページでは遺伝子改変にかかる諸費用を、お客さまがお望みになる形質にチェックを入れていくだけでお手軽に算出することができます。当社では改変項目を次の三グループに大別しておりますので、お見積りの際の参考にしていただければ幸いです。

@生命維持に関わる形質:嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症、ハンティントン舞踏病などの、いわゆる・・・

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敵意のない母

16/07/13 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:338

 宇宙に敵意はあるだろうか。わたしはあると思う。
「太陽風バーストまで残り三分」ハンディ端末が終末までのカウントダウンを告げた。
 世界は完全な狂騒状態に陥っているらしい。殺人、強姦、窃盗、自殺、なんでもござれである。もっともわたしはいま地球にいないので、七分ほどのラグをともなって流れてくるニュースだけが頼りだ。が、それも聞き飽きた。どの局もアーメンしか言わなくなった。
「もうす・・・

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ウルトラプロライフ

16/07/08 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:387

 中絶クリニックの自動ドア――当節の風潮を鑑みて、旅順要塞もかくやといったバリケード――が爆破され、投薬によって完全にラリッた女性強襲部隊が一挙になだれ込んできた。
 彼女らの組織名は〈ライフガード〉。某炭酸飲料と頻繁にまちがわれるのが珠に瑕である。
「全員手を上げなさい!」
 ものわかりのよい患者は即座にそうした。ものわかりの悪い患者や〈中絶テロなんかに屈しないわ!〉などという・・・

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弁当はいくら?

16/07/08 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:395

「これなんですか」後輩の香苗はなぜかショックを受けているようだった。「日下部さんにとってあたしは、その程度の存在だったんですか?」
 わたしは差し出した一万円札――内訳はこうだ。卵焼きは卵二個として二十円(十個百九十円想定)、冷凍食品の魚のフライ二個で五十円(六個百五十円想定)、粗挽きウインナー二本で七十円(一袋六本入り二百円想定)、白米百グラムで四十円(五キロ二千円想定)、その他サラダ油や・・・

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年越し庵

16/07/01 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:409

 落石、ダート、なんでもござれの劣悪林道を安全運転で一時間弱(オールスタッドレス、四駆の完全装備でも滑ること数知れず)、その先は冬季通行止めのゲート封鎖でやむなく徒歩だ。冗談で持ってきたスノーシューが実地で役に立つとは思わなかった。目を疑うほどの積雪である。
 えっちらおっちら、雪に足をとられながら歩くことこれまた一時間弱、ついに〈年越し庵〉のある廃村に辿りついた。打ち捨てられた家屋はすべて・・・

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