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ツチフルさん

お時間があるときにでもお読み下さい。 自宅にネット環境がない都合上、新作を投稿するときのみのアクセスなので、感想などの返信が遅れてしまいます。 申し訳ありませんが、ご了承願います。

出没地
趣味
職業 サービス業
性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの記事一覧

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赤土の少女

17/07/04 コメント:1件 ツチフル 閲覧数:125

 少女は赤土の舞う道の真ん中で、空を見上げている。
 ぷかりと浮かぶ雲に手を伸ばしてみるけれど、つかまえたのは乾いた風だけ。
 照りつける太陽に中指を突き立てて、口癖になった卑猥な言葉を吐きつける。
 ひび割れ破けた唇に、黒く濁った血が滲む。
 おかしくないのが、おかしくて。
 咳き込みながら笑いだす。
 かつて見た夢は、雨を待ちながら枯れ果てた。
 かつ・・・

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ね こ

17/06/28 コメント:0件 ツチフル 閲覧数:117

 マーサは黒猫。私の言うことをちっともきかない、悪い猫。
 カリーは白猫。私の言うことをちゃんと聞く、素直で優しい聡い猫。
 ソソソは三毛猫。いつも見るたび眠ってる、のんきで無精な怠け猫。
 私はマーサが一番好き。マーサは私のことが嫌い。
「ままならないものね」
 カリーが私の足に身体をすりよせてくる。
 ソソソはソファで大あくび。
「みんな自分勝手なんだ・・・

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最 低

17/06/25 コメント:0件 ツチフル 閲覧数:108

 聞こえてくるのは、枯れ枝を踏む音。草木のさざめき。二人の息づかい。
 時おり、鳥たちの鳴き声。
 それから、波の音。
 木々に囲まれた遊歩道は、少しずつ勾配を増していく。
「大丈夫か?」
「うん」
 心配そうに聞く僕に、紗希は額の汗をぬぐいながら笑ってみせる。
「もう少しだからな」
 波の音はますます大きくなる。
 さらに十分ほど歩くと、ふい・・・

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ラブソング

17/06/17 コメント:3件 ツチフル 閲覧数:182

 カーラジオから流れてくるのは、ラブソング。
 吐息が触れあうほど近づいても、その唇に触れられない。そんな恋愛初期のもどかしさを歌っていた。
「こいつの歌、ラブソングばっかだな」
 祐介は舌打ちをして、ラジオを切る。
「ほかに歌うことないのかよ」
「でもこれ、ヒットしてるぞ」
 彰人は助手席から手を伸ばし、切られたラジオをつける。
「俺らもこういうのを歌お・・・

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法則たちの休日

17/06/04 コメント:2件 ツチフル 閲覧数:133

 電池切れの目覚ましが鳴り響く。
 ノノは布団から手を伸ばし、目覚ましを止めようと銀色のセンサに触れる。
「…ああ。今日は休日か」
 鳴り続ける目覚ましと、センサに触れると同時に割れた窓ガラスを見つめてつぶやく。
 今日はあらゆる法則が、その厳格な秩序から解放される『法則たちの休日』。
 原因と結果が手を離し、自由気ままに世界を紡ぐ日だ。
 試しに33階のマンシ・・・

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ただ、静かな日々を

17/05/18 コメント:5件 ツチフル 閲覧数:414

 
 破かずに読んでいただければ幸いです。

 
 204号室様
 ありがとうございます。
 あなたのおかげで月島さんが越してくる前の静かな日々が戻ってきました。
 何しろ、月島さんの犬には私だけでなく近所中が迷惑していましたから。
 散歩に行かないせいでいつも吠えているし、トイレの始末をしないから庭はフンだらけ。回覧板を届けるのが苦痛でした。風向き・・・

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献 身

17/05/08 コメント:2件 ツチフル 閲覧数:171

「好きな人がいるの」
 亜美が頬を染めて打ち明けたとき、私たち三人は一瞬で――相手の顔も性格も知らないのに――亜美がふられる光景を鮮明に思い描くことができた。
 魚のように離れた目。重力に逆らう鼻。腸詰みたいな唇。
 どうひいき目に見ても、亜美は恋愛が成就するタイプの顔ではなかった。
「告白…する気?」
 無茶だよと恵子は目で訴える。私も同じ目をしていたと思う。

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ただ珍しく面白く 月日の経つのも夢のうち

17/04/21 コメント:0件 ツチフル 閲覧数:210

 本来、皇女(みこ)の世話は平女たちの役目だが、いつも同じ顔ばかりでつまらぬと仰るので、しばらく華女が務めることになった。
 三月に及ぶ乙姫の親閲に付き添い、ようやく暇がでたと思った矢先のことである。
 華女がため息をつくのも無理はない。

 さて。世話と言っても、今年で十になる皇女は大抵のことをご自分でなさるので、華女の役目は皇女の退屈しのぎの相手を務めることである。

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Third Car・前日譚

17/03/22 コメント:0件 ツチフル 閲覧数:223

 斉藤宗二はきちんと整えた白髪と手入れの行き届いた口髭が印象的な紳士で、どんなに空いていてもシートに腰をかけず、三両車の扉から入ってすぐのつり革につかまり六駅間を過ごす。
 若い頃はアカペラバンドに所属し、彼の担当はバスだった。
 腹に響く低音と完璧なピッチは今も健在だが、いかんせん披露する場がない。
 一度、雑誌で募集していたアカペラバンドに参加したが、宗二の完璧なベースは彼ら・・・

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異星人

17/03/13 コメント:2件 ツチフル 閲覧数:277

【『私は異星人です』と打ち明けたその男は、どこから見ても我々と変わらない姿をしていた。
 彼が語る彼の世界はなるほど、確かに我々と異なる文明を築き上げ、独自の発展をしてきたようであった。
 しかし、それらはすべて男の【妄想】だと一笑に付すことができるし、事実、私はそうした。
 だが、その嗤いはすぐに凍りつくことになる。
 男は私が信じていないとみてとると『これ、脱ぐの大変な・・・

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失敗

17/02/27 コメント:5件 ツチフル 閲覧数:442

 まともに生きることに失敗。
 やけになって人を殺そうとして失敗。
 自分を殺そうとして失敗。
 もういちど懸命に生きようとして、大失敗。
「まったく何て人生だ。やることなすこと全て失敗に終わるんだからな!」
 私はどうでもよくなって、銀行から全財産を下ろしてナンバーくじを買う。
 もちろん、すべてはずれだった。
 無一文になった私は、公園でホームレスを・・・

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ありふれたオチ

16/08/19 コメント:2件 ツチフル 閲覧数:419

「こうしよう。お互い目隠しをして、その場でぐるぐる回るんだ」
「それで?」
「それで、ミナにストップをかけてもらう。いいかいミナ?」
「うん」
「ストップと言われたら、僕たちは回るのをやめて目隠しをとる。その時ケーキのある方を向いていた者、もしくはよりケーキに近い方を向いていた者が食べる権利を得るってわけだ」
「ちょっとまって。それだとストップを言うミナに決定権がある・・・

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「ウソつく世界」

16/06/02 コメント:0件 ツチフル 閲覧数:503

「おはよう」
「おはよ。今日はトーストとハムエッグよ」
「文句なしだ」
「言わせないわよ」 
 一昨日から降り続く雨はまるで止む気配がなく、今日も不規則なスタッカートを窓に刻み続けている。
 その雨音をBGMにして、イツキとミスミは寄り添いつつそれぞれの時間を過ごしていた。
 イツキはソファにもたれ、専門用語だらけの本を優美な詩のような気持ちで読みふけっている。・・・

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迷子

16/01/23 コメント:0件 ツチフル 閲覧数:428

 近頃、よく迷子になる夢を見る。
 僕はどこか遠い国に旅行にきていて、ぼろぼろになった観光案内のような地図を持って空港を目指しているのだ。
 その日は滞在できる最終日で、僕は焦っている。
 見覚えのない道を歩いていく。
 途中で立ち寄るのは、喫茶店やゲームセンター、映画館、誰かの家。
 懐かしい友人や同級生にあう。
 僕はでも、焦っているので空港までの道を尋ねる・・・

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初恋の後始末

16/01/18 コメント:0件 ツチフル 閲覧数:580

 ノコ先輩は今年で二十七歳。何とかという大手に勤めるエリートさん。
 仕事が生き甲斐とか言って、せっかく美人なのにお化粧もお洒落も興味がない。化粧後こそが素顔の私に言わせれば、超宝の持ち腐れ。
 そんなノコ先輩の持論は「恋愛は錯覚」。
 私が男を作る度に顔をしかめて言う。
「時間の無駄よ」
「でも楽しいっすよ。ノコ先輩も恋愛すればわかります」 
「そんな暇があれ・・・

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そして

16/01/02 コメント:0件 ツチフル 閲覧数:528

『海馬』は脳の部位の一つで、記憶や空間と時間の把握に関わる重要な器官である。
 ここに損傷を受けると新しい情報を処理することができなくなくなり、少し前に話していたことを覚えていない、会った人のことをすぐに忘れるなどの記憶障害のほか、今いる場所や時間の感覚を喪失するなどの障碍を起こす。
 こうした障碍の典型的なものが認知症(特にアルツハイマー型)で、これは海馬の損傷から始まり、やがて脳全・・・

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【ONE】

15/12/11 コメント:5件 ツチフル 閲覧数:647

 型にはまらない奔放なコード進行。
 抽象的で掴みどころのない詞。
 不協和音を突き抜ける絶叫。 
 
 僕らが目指したのは何処にもない、誰にも真似できない音楽。
【ONE】というバンド名には、そんな意味が込められていた。
 初ステージは小さなライブハウス。
 デビュー曲は【エコー】。三分七秒を、一つのコードと一つの言葉で駆け抜けてみせた。
 演奏を・・・

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彼女の、いつもの朝

15/11/24 コメント:4件 ツチフル 閲覧数:869

 目を覚ますのは、いつも目覚まし時計が鳴り出す十分前。
 もう少し、あと五分とすがる自分を説得しながらのろのろと這い出して、愛しいベッドと決別する。
 眠い目をこすりつつカーテンを開き、朝の光を取り入れて大きく伸び。深呼吸。
 次にクローゼットをあけて、その日の気分にあったコーディネート。今日は白の上下にミントグリーンのカーディガン。
 着替えを済ませたら洗面所へ行って顔を・・・

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