1. トップページ
  2. るうねさんのページ

るうねさん

出没地
趣味
職業
性別
将来の夢
座右の銘

投稿済みの記事一覧

0

自転車で宇宙まで

17/02/01 コメント:0件 るうね 閲覧数:250

「俺は、いつか自転車で宇宙に行くのが夢なんだ」
 それが私の幼なじみの口癖だった。
「自転車で宇宙へ?」
「おう」
「自転車にロケットでもつけるの?」
「それじゃ、自転車じゃないだろ」
 彼は、にかっと笑い、
「もちろん、足でこいで宇宙まで行くのさ」
 その笑顔を見て、私は、ああ馬鹿なんだなこいつは、と思った。
「行けるわけないじゃん、そんなの・・・

0

内藤新宿顛末記

17/01/17 コメント:0件 るうね 閲覧数:255

 なんでい、おめぇは。
 瓦版の版元?
 内藤新宿廃止の真実を知りたい?
 ご苦労なこったね、どうも。
 ああいいよ、話してやるさ。
 それを公にするかどうかは、おめぇさんの器量次第だ。
 そうさね、あれはもう四年も前、享保三年のことになるのか。
 当時の内藤新宿は宿場としちゃあ新しかったが、その分、勢いがあった。
 旅籠屋や茶屋の数も多く、昼夜問わ・・・

0

優しい牢獄

17/01/03 コメント:0件 るうね 閲覧数:336

「ここから逃げ出そう」
 僕の言葉に、彼女は小首を傾げた。
「どうして? ここには何でもあるわ。食事にも困らないし、寝るところだってある。病気になった時は、親身になって世話をしてくれる人だっている。こんなに優しい世界、他にはないんじゃない?」
「そんな優しい世界だからさ」
 僕は言葉を吐き捨てる。
「こんなところにいれば、きっと僕らは駄目になる。身も心も腐ってしまう」・・・

3

ごめん

17/01/02 コメント:0件 るうね 閲覧数:254

「304号室なんて、だいっきらい!」
 そう言って、弥生は外に飛び出していった。
 僕はそれを追いかけることができない。
 なぜなら、僕は部屋だから。


 部屋に人格が認められたのは、もう百年も前。
 AIが組み込まれ、食事の支度から掃除、洗濯までありとあらゆることをこなせるようになってからだ。
 いまでは、部屋との結婚も認められている。
 ・・・

0

五分間ロボット

16/12/27 コメント:0件 るうね 閲覧数:252

 わたしが目を開けると、そこは薄暗い部屋でした。
「目が覚めたかね」
 わたしの寝ているベッドの横に、一人の人物が立っています。
 データ照合……この研究所の所長であるアサマ博士と声紋その他の特徴が一致。
「アサマ博士、ですか?」
「そうだ」
 重々しくうなずく博士。
 ……うーん?
「わたしに関する研究は凍結されたはずでは?」
「正確には凍結・・・

3

募時間、お願いします

16/12/20 コメント:2件 るうね 閲覧数:315

「募時間、お願いしまーす」
「恵まれない子供たちのために、募時間お願いしまーす」
 駅前で、学生たちがそんなことを叫んでいる。
 首からは、妙ちきりんな機械を下げていた。
 気になった俺は、会社に向かう足を止め、学生たちに近づいた。
「募時間、お願いできますか」
 にこやかに言ってくる学生に向かって、
「募時間てなんだい」
 と、問う。
「ご存・・・

0

ぼくのクリスマスプレゼントがうんこだったわけ

16/12/17 コメント:0件 るうね 閲覧数:237

 うんこが漏れそうだった。
 トナカイの曳くソリの上で、サンタは必死にうんこを我慢していた。
「ぬうう、あと少しでプレゼントを配り終えるというのに」
 とは言っても、すでに限界を突破している。
 もはや、肛門から
・∀・ノこんにちは
 状態だ。
 だが、もし服やソリにうんこをつければ上司にこっぴどく叱られることは目に見えている。さらに、同僚からはうんこマン・・・

1

マッチョなサンタと拳で語らう聖夜

16/12/16 コメント:0件 るうね 閲覧数:244

 上半身裸のサンタと、俺は対峙していた。
 人里離れた山中である。人目につく場所は避けたいとサンタが言ったので、ここまで足を伸ばした。
 サンタの構えに隙はない。両腕を上げて、前傾姿勢で静かにこちらを観察している。
 俺はサンタに対し半身を向けて、腰を落とした。
「こうしていると、よく分かるぜ。あんたが十年前に言った言葉の意味が」
「ほう。わしは何と言ったかね」

0

サクラは笑い、芸人は泣く

16/10/10 コメント:0件 るうね 閲覧数:283

「もしもし、え、ゆうかい? 俺は、ゆう、なんて名前じゃありませんけど」
 わっはっはっはっは!!!
 俺のネタに、おやっさんは大声で笑う。
 その笑い声に、俺は悲しくなる。
 まただ。
 また、サクラの笑いだ。
 俺ではおやっさんを本当には笑わせられない――。


 俺とおやっさんが出会ったのは、二十年以上も前。
 まだ、俺が芸人として無・・・

0

甘夏とはっさくとドリアンの違い

16/09/27 コメント:0件 るうね 閲覧数:465

「はいどうもどうも」

「こんにちはー、甘夏です」

「みかんです」

「二人合わせて」

『甘夏みかんです』

「さあ、始まってしまいましたけれども」

「そうですね」

「最近、困ったことがあるんですよ」

「ほうほう、なんですか」

「この漫才でなにをしゃべろうかな、ってね」
<・・・

2

革命歌は六甲おろし

15/12/04 コメント:2件 るうね 閲覧数:496

 がちゃり。
 ドアが開いた。
 その隙間から差し込む明かりに、ずっと暗い部屋に閉じ込められていたカレンは思わず目を細める。
「杉山……くん」
 ドアを開けた者の姿を認めて、カレンは思わずつぶやいた。
 杉山は無表情に部屋の入り口、あるいは出口に立っている。
 右手に拳銃を握っていた。
「残念だよ、カレンちゃん」
 その言葉は、顔と同じように無表情だ・・・

1

宝石職人の石

15/11/16 コメント:2件 るうね 閲覧数:487

 俺は石。
 なんの変哲もない石だが、よく宝石を磨くのに使われている。
 いわゆる他山の石だ。
 毎日毎日、宝石を磨き、その輝きを増させる毎日。そんな日々に、少しずつ不満が溜まってきていた。
 ある時、俺は、俺を使う宝石磨きの職人に言ってみた。
「たまには、俺も表舞台に立ちたい」
「なら、そうすればいい」
 職人の許可をもらい、俺はいざ宝石たちの社交場、オ・・・

1

国語のテスト

15/11/16 コメント:2件 るうね 閲覧数:491

『問 次の空欄に漢字を一文字ずつ入れて、意味が通るようにしなさい』

A「先生、他○の○とするって、どういうこと?」
B「こら、声が大きい。当人が聞いていたら大変じゃないか」


 俺は今日あった国語の小テストを採点していた。
 正解は、もちろん「他山の石」。

A「先生、他山の石とするって、どういうこと?」
B「こら、声が大きい。当人が・・・

2

他山の石

15/11/16 コメント:2件 るうね 閲覧数:441

「また駄目だ」
 他山征四郎は自分の作品を前に、肩を落として嘆息した。
 彼は彫刻家であった。
 訂正しよう。
 売れない彫刻家であった。
 彼が彫るのは石である。石を様々な形に彫るのだ。
 下手ではない。
 下手ならば、まだ救いがある。
 芸術というものはおかしなもので、下手なら下手なりに他人はそこに幾ばくかの芸術性を見出してくれる。
 他山・・・

0

ちんこ侍

15/11/02 コメント:0件 るうね 閲覧数:625

 あるところに侍がいた。
 名を、阿良多惣三郎といった。
 父はとある藩の藩士だったが、平凡という言葉の見本のような人間で、特に歴史に名を残すこともなく、四十過ぎで流行病にかかって死んだ。家禄を継いだ惣三郎も父と同じで、特に功績を立てるわけでもなければ、大きな失策を犯すわけでもなく、平々凡々と日々を過ごしていた。母は惣三郎が幼い頃に亡くなった。兄弟もおらず、嫁も、もちろん子供もいない。・・・

0

ロック魂

15/11/02 コメント:0件 るうね 閲覧数:522

 ジャガガジャーン!

 突然、真昼間の公園に騒音が響き渡った。
 周囲の人間が驚きの表情で、騒音の源の方を見る。
 騒音の源は、一人の男。彼の持っているギターだった。
 周囲の困惑にも我関せず、といった様子でギターを弾き続けている。テンガロンハットに、カウボーイ風のいでたち。
 五分ほども演奏を続けていただろうか。ようやく彼はギターを弾くのをやめた。周囲に集ま・・・

0

じいちゃんの宝物

15/10/19 コメント:0件 るうね 閲覧数:556

 じいちゃんが死んだのは夏だった。
 アブラゼミの声が雨のように降りしきる中。真っ白い病院の真っ白い病室の真っ白いベッドの上で、息を引き取った。
 看取ったのは僕一人。
 当時、小学生だった僕は毎日のようにじいちゃんを見舞っていた。父と母は共働きで、病院に来ることはほとんどなかった。もともとじいちゃんと父母の折り合いは良くなかったせいもあり、じいちゃんを見舞いに来るのは、一ヵ月に・・・

0

三すくみ

15/10/19 コメント:0件 るうね 閲覧数:533

 冒険者たちの目の前には一つの宝箱があった。
 だが、冒険者たちは動かない。互いに疑念の眼差しを交わしている。
 洞窟の中の空気はひんやりとしていた。どこかで、ぽたり、と水滴が落ちる音がした。
 冒険者のうちの一人、戦士が他の二人に向かって口を開いた。
「どうしても譲る気はないのか」
「それはこちらのセリフです」
 と、僧侶が言う。
「この宝を、わたしに譲・・・

1

わたしが飼っていた曖昧

15/10/05 コメント:2件 るうね 閲覧数:552

 わたしは曖昧を飼っている。
 曖昧とはなにか、と問われることは多いが、いつも説明に窮する。外見上の、あるいは内面上の特徴を訊かれるが、特徴がある時点で、それは曖昧ではないだろう。
 なので、問うた相手に、わたしはいつも曖昧を見せてやることにしている。すると、相手は非常に微妙な表情になり、ううん、たしかにこれは曖昧だね、と納得するのである。
 曖昧はなんでも食べる。逆になにも食べ・・・

5

この曖昧な世界に終止符を

15/10/05 コメント:4件 るうね 閲覧数:937

 僕の彼女には顔がない。
 正確には、僕には彼女の顔が見えない。全身の姿形は分かるのだが、顔の造作だけが見えないのである。目も鼻も見えず、のっぺりとした顔面が目に映るばかり。まるで怪談ののっぺらぼうのようだ。彼女だけでなく人間の顔全てがそう見えるのだ。
 子供の頃から何度か医者に診てもらってきたが、原因は分からなかった。人間以外のものは普通に見えるので、生活に支障はない。
 ただ・・・

0

すねこすりの憂鬱

15/09/21 コメント:0件 るうね 閲覧数:687

「おっとっと」
 男は足をもつれさせ、危うく転びそうになった。
「大丈夫ですか、お父さん」
 男の後ろを歩いていた息子が、心配そうに問う。
「気をつけてくださいよ、このあたりにはすねこすりという妖怪が出るらしいので」
「すねこすり、ねぇ」
「人間のすねのあたりをこすって、歩きにくくしてしまうという妖怪です」
「歩きにくくする……それだけかい?」
「え・・・

2

満足

15/09/21 コメント:2件 るうね 閲覧数:692

 なぜ、俺の人生はこんなにつまらないんだろう。
 会社からの帰り道、口中につぶやく。
 生きるために仕事に行き、金を稼ぐ。ただ死ぬのを先延ばしにしているだけの人生。両親はすでに亡く、妻どころか彼女もいない。こんな人生に意味などあるのか。
「もし」
 そんなことを考えていた俺の背中に、声がかかった。
 振り向くと、そこには一人の老人。
 見覚えはない。
 俺・・・

1

精神科医は忙しい

15/09/21 コメント:2件 るうね 閲覧数:721

 精神科医は忙しい。
 このところ、精神を病む人間が増えてきた。
 患者にはいろいろな症状の人間がいる。
 たとえば、先日、こんな患者が来た。


「憂鬱になりたいんです……」
 その患者は、そう言った。
「憂鬱に?」
 精神科医はその患者をまじまじと見つめる。
 三十代前半の男性である。
「……? なんですか?」
 問い返し・・・

1

狭山を沖縄だと言い張る男の話

15/09/07 コメント:2件 るうね 閲覧数:620

「ここは沖縄だ! 沖縄だぞ!」
 とある公園で、一人の男が叫んでいる。
「やあ、イリオモテヤマネコだ。珍しいなぁ」
 どう見ても、普通の三毛だ。
「やあ、これが有名な屋久杉か」
 ヒノキだ。
「ちんすこうが美味いなぁ」
 ちんすこうだ。
 はっきり言って気味が悪いことこの上ないが、警官である以上、高松は男に声をかけざるを得ないのだった。
「あの・・・

2

歓声は、はるか遠く

15/09/07 コメント:2件 るうね 閲覧数:611

 もうどれぐらい、ここでこうしているだろう。
 すみ子は小高い丘の上から、海を眺めていた。夕日が水平線に溶けていく様子を、ただ眺めていた。宵闇が、足元から忍び寄ってくる。風は涼しい。
 こうしていると、かつて、ここで米軍との激しい戦闘があったことが嘘のように思えてくる。
 遠くから、歓声が聞こえていた。
 ふと。
 足音が聞こえて、すみ子はそちらを振り向いた。背広姿の・・・

2

ゆんなちゃんは俺の嫁!

15/08/24 コメント:4件 るうね 閲覧数:692

 ちゃらららーん、ちゃらららーん、ちゃらら、ちゃらら、ちゃらら、ちゃらら、ちゃらら、ちゃーらーらららららー、らーらら、ららら♪

 メンデルスゾーン作曲の結婚行進曲≠ェ流れる中、俺は教会の中を歩き始めた。隣には、俺の嫁、神崎ゆんなちゃん――の3Dアニメーション。アニメキャラだ。そう、俺はアニメキャラと結婚するのである。
 アニメキャラとの結婚を認める法律が国会で成立したのは、も・・・

2

アニメの世界に入ったところで、主人公にはなれないのよ?

15/08/24 コメント:2件 るうね 閲覧数:740

「あー、アニメの世界に行きて―」
「なに馬鹿なこと言ってるのよ」
 独り言のつもりだったぼやきを、隣を歩いてきた幼なじみが聞きとがめたようだ。
「んだよ、美佳」
「アニメの世界に入りたいって、卓郎、それ本気?」
「悪いかよ」
「アニメの世界に入って、どうしようってのよ」
「そりゃもちろん、可愛い女の子たちとキャッキャウフフするに決まってんだろ」
 俺・・・

1

アニメだらけの世界で

15/08/24 コメント:4件 るうね 閲覧数:662

 田島は新聞のテレビ欄を見て、顔をしかめた。
 アニメだらけ。
 お笑い番組やニュースなど、ほとんどない。
「いつから、こうなっちまったんだろうな」
 視聴率の下落に悩まされてきたテレビ局が、ある程度視聴率が見込めるアニメ番組を、こぞって流し始めたのはもう十数年も前。それはエスカレートし、いまでは朝から晩までテレビはアニメづくしである。あのN○Kですら、新聞のテレビ欄はアニ・・・

1

祈願

15/08/11 コメント:2件 るうね 閲覧数:745

 時は江戸時代。
 旅人がある村を訪れると、村人たちがせわしなく立ち働いていた。そこかしこに、のぼりも立っている。
 旅人は近くの村人に尋ねた。
「これは何をしているのですか」
「祭りですよ」
「祭り?」
「ええ」
 村人が語ったところによると、豊作祈願のお祭りだということだった。
 旅人は興味深そうに、
「見物させてもらっても?」
「ど・・・

2

勝負

15/08/10 コメント:4件 るうね 閲覧数:758

「来たか、坊主」
「来たぜ、おっちゃん」
 俺とおっちゃんは、そう言葉を交わすと、にやりと笑い合った。
 夏祭り。
 くじ引きの屋台の前である。
 俺とおっちゃんの間には、ひも付きのくじ引きが置かれている。それぞれ商品にひもが付いていて、客が引っ張っると商品が持ち上がる、という縁日でよく見かけるタイプのくじ引きだ。もちろん、どのひもがどの商品に付いているかは分からない・・・

1

15/07/27 コメント:4件 るうね 閲覧数:685

 ビルの屋上に陣取った俺は、ライフルのスコープを覗きながら照準を調整していた。
 風は――東南東に三メートルといったところか。
 一度、スコープから目を離して、肉眼で標的を確認する。確認、と言っても、六〇〇ヤードも先、オフィスビルの一室だ。標的自体は豆粒よりも小さく見える。
 この界隈を仕切るマフィアのボス。これを射殺するのが、俺への依頼内容だった。
 ……また、このライフ・・・

0

風が吹けば

15/07/27 コメント:0件 るうね 閲覧数:678

 男は、きっかけ殺しを生業にしている殺し屋だった。
 部屋のドアがノックされる。どうやらお客が来たようだ。
「どうぞ」
 殺し屋が返事をすると、気弱そうな初老の男性がオフィスに入ってきた。
「どうぞお掛けください」
 男性は促されるまま、椅子に座る。
「さて、今日はどんなご用件で?」
「実は……私の妻を殺して欲しいのです」
 男性の言葉を聞き、殺し屋・・・

4

おとりの条件

15/07/13 コメント:6件 るうね 閲覧数:905

 同一犯によるひったくり事件が続発していた。
 マスコミは、ひったくり犯を捕まえられない警察を糾弾する。
 業を煮やした警察は、一計を案じた。おとり捜査である。婦警をおとりにして、犯人をおびき出そうというのだ。婦警は、いかにも一般人といった服装で、ひと気の少ない道を歩く。だが、犯人が現れることはなかった。その間も、おとり捜査の間隙を縫うようにして、事件は起こり続けた。
「くそう、・・・

1

チョコレートに潜む罠

15/07/13 コメント:2件 るうね 閲覧数:744

「はい、これ。チョコレート」
 そう言って、由香里は翔太にラッピングされた箱を差し出した。
 翔太は、いぶかしげな顔をする。
「……今日って、バレンタインデーだったけ?」
「別に、バレンタインデーじゃないと、チョコレートを渡しちゃいけないってことはないでしょ」
 ちょっと頬を膨らませる由香里。
 翔太は、はいはい、と肩をすくめる。まあ、彼女が気まぐれなのは、いま・・・

0

好きな

15/07/13 コメント:2件 るうね 閲覧数:734

 あいつを罠にはめてやろうぜ、ということになった。
 あいつというのは、坂巻哲哉。いつもクールな鉄面皮で、動揺するところなど見たことがない。
 その哲哉を、クラスの男子数人で罠にはめてやろうというのだ。
 決行は、修学旅行の初日の夜。
 いわゆる、「好きなやつ、一人ずつ言っていこうぜ。パスはなしな」という、甘酸っぱい青春の一ページだ。ここで罠を仕掛けて、哲哉の鉄面皮を崩して・・・

2

恋と魔法と宣戦布告

15/06/29 コメント:2件 るうね 閲覧数:697

「ふーむ」
 痩せぎすのその魔法使いは、とんぼのような眼鏡の奥からこちらを見つめてきた。
「この写真のように、顔を変えてしてほしい、と?」
「はい」
 また「ふーむ」と言って、魔法使いは手元の写真に視線を落とした。
 そこには一人の女性の顔が写っていた。不細工、というほどではないが、決して器量は良くない。
 再び、魔法使いがこちらに視線を移す。
「正直に申・・・

1

予想外

15/06/29 コメント:2件 るうね 閲覧数:711

「というわけで、社長。我が社の研究開発部が総力を挙げて開発した新しい化粧水がこれです!」
 そう言って、男は小さなガラス瓶を取り出した。中に、無色透明の液体が入っている。
 社長は、ふむふむと興味深そうにガラス瓶を手に取り、中の液体を観察した。
「で、いったいどこが新しいのかね。しみやそばかすが、溶けるように消えてしまう、とか?」
「いえいえ」
「では、肌の張りが蘇る・・・

2

価値観

15/06/29 コメント:2件 るうね 閲覧数:728

 女は自分が不美人だという自覚があった。
 そこで、タイムマシンを開発することにした。昔と今では美人の基準が違うという話を聞いたからである。しもぶくれの顔が美人とされた時代もあったらしい。ならば、自分のような顔が美人だとされる時代もあるかもしれない。
 女の執念は凄まじい。長年の研究の結果、ついに女はタイムマシンの開発に成功した。
 それに乗り込み、まず明治時代を目指す。だが、そ・・・

3

文字掃除機

15/06/15 コメント:6件 るうね 閲覧数:921

「自分の家の敷地にどんなものを置こうが、俺の勝手だろうが!」
 ゴミ屋敷の主はそう声を張り上げた。
 市の職員である俺はため息をつきつつ、
「ですから、臭いとか景観の問題とかがですね……近隣の住民から苦情も来ているんです」
「知ったことか!」
 取りつく島もない。
 俺は一緒に来た後輩とともに、ひとまずゴミ屋敷から離れた。離れても、ぷんと臭いが漂ってくる。

2

掃除しなさいよね

15/06/15 コメント:2件 るうね 閲覧数:1147

「ちょっと男子、掃除しなさいよね」
 わたしの言葉に、当の男子――日向太陽はあっかんべーをした。
「やーだよん」
「あっ、こらー」
 止める間もなく教室から駆け出て行ってしまう。
 まったくもう、あいつときたら。
 仕方なく、一人で机を片づけ始める。掃除当番は男女一人ずつなので、あいつが逃げた以上、わたし一人でやらねばならないのだ。
 あー、むかつく。なん・・・

3

最期の掃除

15/06/15 コメント:2件 るうね 閲覧数:803

 俺は公園のベンチに腰かけたまま、数年前の夜のことを思い返していた。


『やあ』
 夜の公園で掃除をしていた俺に、そいつは親しげにそう声をかけてきた。
 外見はクラゲのようだが、頭に二つ、緑の目がついている。その目は理知的な光を放っていた。
 宇宙人なのだろう。
 上空にはUFOらしきものも、ぷかぷか浮いていたりするし。
 俺が黙っていると、その宇・・・

3

未来動物園

15/06/01 コメント:2件 るうね 閲覧数:1215

 俺がタイムホールを抜けると、そこはどうやら動物園のようだった。
 独特の獣臭が鼻をつく。
「よしよし、これは都合がいいぞ」
 思わず、独りごちる。
 生物学者である俺は未来の地球の生態系を調べるため、時空を歪めるタイムマシンを開発し、こうして未来にやってきたのだ。出口が動物園に繋がっているとは、幸先がいい。
 俺は辺りを見回し、おや、と思った。
 周囲にはいく・・・

1

サルの親子

15/06/01 コメント:2件 るうね 閲覧数:777

 ちょっと昔の話になるんだけどね。
 とある動物園にサルの親子がいたんだ。
 とっても仲睦まじい母ザルと子ザルでね。
 どこへ行くにも、いつも一緒。毛づくろいするのも、飼育員にエサをもらいにいくのも。
 ああ、そうだ。その動物園には温泉があったんだけど、そこに入るのも一緒だったな。
 ところがある時からね、母ザルが子ザルを邪険にし始めたんだ。
 うん、子ザルが近・・・

1

特集『人間〜地球という名のサル山で〜』

15/05/31 コメント:2件 るうね 閲覧数:697

 今回の『ダーウィンが来るかもしれない』の舞台は地球。
 そこには人間という奇妙な生き物が住んでいます。
 二本の足に二本の手。頭はたった一つしかないんです。目は二つで、種類によって青だったり黒だったり。肌の色は白いものもいれば、黒いものもいます。不思議なことに、この色によって人間の世界における地位が高くなったり低くなったりするんですね。
 また、人間はお札という紙切れやコインと・・・

3

将軍同士でデスゲーム

15/05/28 コメント:4件 るうね 閲覧数:728

??「はーい、江戸幕府歴代将軍の皆様、おはこんばんちわ。これから皆様には殺し合いをしてもらいます」
家康(初代)「なんじゃ、どういうことじゃ?」
秀忠(二代目)「殺し合いだって?」
??「ルールは簡単。この中で死ぬのはたった一人。それを話し合いによって決めてもらいます」
家光(三代目)「話し合いだって?」
??「歴代将軍の中で最も不要だと思った人を多数決で決めてくださ・・・

1

お犬様

15/05/25 コメント:0件 るうね 閲覧数:733

「さて、弥五郎よ。なぜお主をここに連れて来たか分かるか」
 いいえ、お代官様。
「先日、お主は犬を殺しただろう」
 な、なぜそれを。
「お主の子が口を滑らせたのだ。犬を殺して喰ろうたとな」
 太助のやつが。
「子を責めるでないぞ。子供の口に戸を立てようとするのが、土台無理な話なのだ」
 お、お許しを、お代官様。今年は飢饉で食べる物がなく、仕方なしに……。<・・・

3

時代の終わり〜西南戦争前夜〜

15/05/18 コメント:2件 るうね 閲覧数:975

 明治十年のある夜、大久保利通は静岡の徳川慶喜邸に招かれた。
「よく来てくれた、大久保」
「は」
 行燈のともされた慶喜の居室に入り、彼と相対した大久保は自然と頭を垂れた。将軍職を辞し、この静岡に蟄居してから十年になるというのに、いまだに大久保の頭を下げさせる何かが、この慶喜という男には備わっていた。
「今日呼んだのは他でもない。西郷のことよ」
 西郷隆盛。
 ・・・

3

大便が繋いだ絆

15/05/10 コメント:8件 るうね 閲覧数:983

 うんこがしたい。
 六時間目の途中から、俺は便意をもよおしていた。
 教壇では先生がなにやら鎌倉幕府の成立について語っているが、そんなことよりうんこがしたい。
 壇ノ浦の戦いだ? それがどうしたうんこがしたいんだ、俺は。
 時計を見ると、授業の終わりまであと十五分はある。
 ……やばい、改めて時間を確認したら、便意がよりいっそううんこがしたくなってきた。
 気・・・

2

僕のシンデレラは、あほかわいい

15/05/09 コメント:6件 るうね 閲覧数:946

「シンデレラってさ」
 真佐美が唐突に言った。
 GW。
 ゴールデンウィーク。
 出かける金も気力もない僕たちは、同棲している六畳一間のアパートでうだうだと気だるい午後を過ごしていた。
「ツッこみどころが多すぎると思わない?」
「なにさ、唐突に」
「唐突じゃないわよ。わたし、常日頃からそう思っていたの」
 思っていたから唐突じゃない、とはどんな理屈・・・

2

誘拐

15/05/04 コメント:4件 るうね 閲覧数:960

『蓮沼真一だな』
「そうだが……誰なんだ、君は」
『誰でもいい。お前の息子は預かった。五体満足で返して欲しければ、三時間以内に一千万円用意しろ』
「な、なんだって?」
『三時間以内だぞ、分かったな?』
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
 プチッ。
 ツーツーツーツー。


「どうかされましたか」
「い、いえ」
「顔色がすぐれない・・・

2

三匹の子狼

15/04/28 コメント:4件 るうね 閲覧数:1016

 死の床についていた母狼は、自分の死期を悟ると、三匹の子狼を呼んで言いました。
「もう、母さんは長くありません。これからは自分たちの力で生きていきなさい」
 涙ぐむ子狼たち。
 母狼は、続けて、
「いいかい、外に出たら豚と山羊に気をつけるんですよ。父さんを殺してシチューにして食べてしまったのは豚。叔母さんの腹に石を詰めて井戸に突き落したのは山羊なのだからね」
 一度、・・・

1

三豚志

15/04/28 コメント:2件 るうね 閲覧数:897

 狼国の斥候部隊を撃退した英雄、三匹の子豚はいま、敵味方に分かれて争っていた。
 原因は、三男であるウ・ピッグの増長にあった。煉瓦の城を建て、狼国の斥候部隊を撃退する立役者となったウは、その手柄を背景に権力の中枢へと手を伸ばし、長兄のブ・ピッグと次兄のフ・ピッグを軽んじるようになったのである。
 これに、ブとフは反発。自分たちに付き従う者たちを連れ、豚国の地方都市にて反乱を起こした。だ・・・

2

某日、喫茶店にて

15/04/28 コメント:2件 るうね 閲覧数:895

 私が喫茶店で文庫本を読んでいると、祖父と孫らしい二人連れが入ってきた。
 私とその二人連れ以外に客はいない。
 席に座ると、孫が祖父にこう尋ねた。
「ねぇねぇ、海の水はなぜしょっぱいの?」
 祖父は笑いながら答える。
「それはね、悲しい時に海に行って泣く人が多いからだよ。その涙が集まって、海になるのさ」
 なかなか詩的な答えである。
 思わず私は微笑んだ・・・

3

彼女と俺の汽水域

15/04/22 コメント:6件 るうね 閲覧数:911

 汽水域≠ニいう言葉を知っているだろうか。
 簡単に言えば、川の水と海の水が混じり合うところのことである。
 淡水魚は汽水域より海の側には行けないし、その逆もまた然り。
 そんな境界線。


「……田村?」
「え」
 俺の呆然としたつぶやきに、サングラスの少女が視線を上げる。
「さ、相良……」
「お前、何やってんだ、こんなとこで」

1

潮騒

15/04/20 コメント:2件 るうね 閲覧数:761

 潮騒に、小十郎は意識を取り戻した。
 うっすらと目を開けると、茅葺きの天井が目に映る。
「気付かれましたか」
 声。
 そちらを見ると、初老の男性がこちらを見つめていた。草鞋を編んでいたものだろうか、手元に藁束があった。
「ここは……」
「玄界灘沖の名もなき島です」
「私は」
「今日の昼、砂浜に打ち上げられていたところを娘が見つけましてな。とりあえ・・・

6

一番賢い豚

15/04/06 コメント:14件 るうね 閲覧数:1364

 あるところに豚の一家が住んでいました。
 その日は子豚たちの独り立ちの日でした。
「外には狼が出ますからね。気をつけるんですよ」
「はい、お母さん」
 そう言って、三匹の子豚は家を後にしました。
 そして、長男豚は藁の家を、次男豚は木の家を、三男豚は煉瓦で家を造りました。
 そこに狼がやって来ます。
 藁と木の家は、あっさりと狼に吹き飛ばされてしまいまし・・・

2

甘美な復讐の香り

15/03/23 コメント:4件 るうね 閲覧数:908

「あなたが……ケイジロウさん?」
 新宿の裏路地。亜加梨は現れた人物を見て、眉根を寄せた。セーラー服を着た少女だった。
 ふふ、と少女が笑う。
「なにが可笑しいの」
 馬鹿にされたような気になって、亜加梨は声を尖らせた。
「いえ」
 と、少女は笑みを崩さぬまま。
「わたしを初めて見た人は、必ずそういう反応を示すので」
 当然だろう。
 亜加梨は・・・

5

コーヒーを一つだけ

15/03/23 コメント:10件 るうね 閲覧数:1083

 また、彼女はコーヒーを二つ頼んだ。
 健司がコーヒーカップを二つ、テーブルの上に置くと、ありがとう、と彼女は微笑む。
 とても寂しげな笑み。
 その理由を、健司は知っていた。
 以前まで、この喫茶店に彼女は彼氏と二人で来ていた。いつも頼むのは、決まってコーヒーを二つ。見ている側がつい微笑んでしまうような。とても仲睦まじいカップルだった。
 その彼氏が交通事故で亡くな・・・

6

現実的な異世界譚

15/03/09 コメント:8件 るうね 閲覧数:1515

 将来、何になりたい?
 そんな質問に、子供の頃の僕は必ずこう答えていた。
 ――異世界に行って勇者になりたい!
 当時読んでいた漫画やゲームの影響だとは思うが、まあ幼い回答である。
 それでもあの頃は、本気でそう思っていた。
 自分は大人になったら異世界に行って、勇者になるのだ、と。
 だが、いつしかその夢も薄れ、小学校を卒業する頃には、現実の中に埋没してしま・・・

6

ジェラシックパーク

15/02/25 コメント:9件 るうね 閲覧数:1200

「昨日、あの娘とデート、だったんだ?」
 ちょっと上目づかいでにらむような仕草。
「そ、そうだけど」
 そんな彼女に気圧され、思わずどもってしまう。
 彼女は、ふーん、と面白くなさそうにつぶやいた。
「ふーんふーん」
 ふーんを繰り返す彼女。教室の窓から差し込む西日で、その整った顔立ちが半分だけ照らされている。
「デート、って言っても、ちょっと買い物に付き・・・

5

信長の遺産

15/02/06 コメント:8件 るうね 閲覧数:1162

 地球の戦国時代にタイムトラベルしていたヒポポタマス星の王、ドナイヤネン三世は天正十年、西暦にして一五八二年、宇宙歴にすれば八七六五年の本能寺にて織田信長の手の者に捕まってしまった。
「くぅ、機械類の故障さえなければ」
 唇を噛むが後の祭り。
 地球の歴史に名高い本能寺の変を間近で見ようと高度を下げたのがいけなかった。時空船の光学迷彩に異常が出て、信長に見つかってしまったのである・・・

0

セッション

15/01/13 コメント:0件 るうね 閲覧数:771

「うー、寒い寒い」
 宿直室を出た僕は、夜気の冷たさに背を丸めた。今夜はやけに冷える。
「さっさと見回りを終えてしまおう」
 一人つぶやき、懐中電灯をつける。
 夜の学校は、なんとも言えぬ不気味さがある。
 一階を一通り回った後、二階に上がる時に異変に気付いた。
 音だ。
 二階の奥の方から、かすかな音が聞こえてくる。
「な、なんだろう」
 思・・・

2

アイデンティティーの捜索

14/12/02 コメント:5件 るうね 閲覧数:858

 朝起きると、僕のアイデンティティーがなくなっていた。
「アインデンティテイー?」
 呼びかけてみるが、何の応答もない。
 昨日までは、たしかに隣にいたはずなのに。
 僕は部屋中を探し回った。
 いない。
 どこにもいない。
 僕は不安で仕方なくなる。
 アイデンティティーの喪失。自分が何者であるかという確信が持てない。
 会社に行く時間になっ・・・

2

吾輩は小説である

14/11/09 コメント:2件 るうね 閲覧数:832

 吾輩は小説である。
 題名はまだない。
 吾輩の前で座って、うんうんと唸っている男は、吾輩の作者である。万年筆を握りしめたまま、もう二時間もこうしている。その間、一文字たりとも筆が進んでいない。灰皿に、煙草の吸い殻ばかりが増えていく。
 と、おもむろに万年筆を原稿用紙の上に放り出し、作者はううんと背を伸ばした。
「仕方ない。気分転換でもするとしよう」
 そうつぶやく・・・

0

最後の八月三十一日

14/11/09 コメント:0件 るうね 閲覧数:847

 八月三十一日がなくなるという。
 地球の公転の周期が変化して、一年の日数が一日少なくなったらしい。削る日をいつにするか。いろいろと高度に政治的な判断とやらがあったみたいだが、結局のところ、それは僕にとって亡き妻との決別を意味していた。


 最後の八月三十一日。
 八月としては、だいぶ涼しい日だった。
 僕は例年通り、自宅から車で三十分ほどの距離にある霊園にや・・・

2

始まらなかった異世界譚

14/06/03 コメント:1件 るうね 閲覧数:687

「一緒に行こう、昇」


 白い部屋だった。
 白い壁に、白いカーテン。白いベッドにかかったシーツも限りなく白い。まるで病室のようだ。当然である。ここは病室なのだから。
 蛍光灯の白色の光に照らされた室内で、昇は一人、ベッドに横たわっていた。酸素吸入器をつけ、苦しそうに呼吸している。
 死期が近かった。
 と。
 不意に、部屋のドアのあたりに影が差し・・・

4

温泉卓球

14/05/02 コメント:7件 るうね 閲覧数:968

 かこん。
「なぁ」
 かこん。
「なに?」
 かこん。
「一つ、賭けをしないか」
 かこん。
「なによ、突然」
 かこん。
「いいだろ、別に」
 かこん。
「いいけど、別に」
 かこん。
「俺が勝ったらさ」
 かこん。
「うん」
 かこん。
「結婚しようぜ」
 かこん。

 か・・・

0

天邪鬼の勇気

14/03/16 コメント:0件 るうね 閲覧数:757

 昔々のことである。
 ある村に、天邪鬼と呼ばれる子鬼が住んでおった。天邪鬼というと現代では、ひねくれ者とかつむじ曲がり、という意味で使われることが多いが、本来の天邪鬼は人の心を読みその人の口真似をするなどの悪戯をしかける妖怪であった。その村に住んでいた天邪鬼もそのような妖怪で、村人の口真似をしてはけたけたと笑う。村人たちは、そんな天邪鬼に苦笑いしながらも、心の底からは憎めないでおった。

3

小豆洗いの感傷

14/03/11 コメント:3件 るうね 閲覧数:817

 しょきしょきしょき。
 沢に降りると、そんな音が聞こえた。
「小豆洗い、か」
 ぽつりとつぶやく。
 小豆洗い。
 川のほとりで小豆を洗う妖怪。その音に気を取られていると、知らぬ間に川べりに誘い出され、落とされてしまうという。
 子供の頃、祖母が語る話を聞いて、夜にトイレに行けないほど怖がったものだ。成長したいまなら、それが子供が不用意に川に近づかないようにす・・・

0

短冊に願いを

14/02/16 コメント:2件 るうね 閲覧数:703

 料理している理穂を、浩一はぼんやりと見つめていた。
「もう少し待っててね」
「うん」
 うなずく。
 部屋には、ほどよく冷房がきいていた。普段は気温など気にならないが、今日は冷風が心地よい。本格的な夏はまだ先なのに、今夜はひどく蒸す。
「はい、できたよー」
 理穂が料理を運んでくる。チゲ鍋。
「……あのさ」
「ん、なに?」
「今は七月だよ。な・・・

1

「正義」のヒーロー

14/01/13 コメント:4件 るうね 閲覧数:891

 強くなりたくはないかい、と
 その男はユウキにそう声をかけてきた。
 病院の廊下でだった。夏のある日。蝉が鳴いていた。
 その時、ユウキは恋人の見舞いに来た帰りだった。恋人は目が見えない。見えなくなった。世界征服をたくらむ悪の組織の陰謀に巻き込まれたのだ。
 ユウキは傍にいながら、何もしてやれなかった。護ることが、できなかった。
 だから、ユウキは男の誘いに乗った。・・・

2

昭和先生

14/01/05 コメント:4件 るうね 閲覧数:1187

「廊下は走るな、といつも言ってるだろう! 何回言えば分かるんだ!」
 克也が注意するとその男子生徒は、すみません、と頭を下げた。不承不承という言葉が、しっくりくる態度だった。それが、克也の癇に障る。
「大体、お前らはだな」
「あの」
 その男子生徒は最新型のスマホを取り出して時間を確かめると、そう口を開いた。
「そろそろ部活の時間なんで、行ってもいいですか」
 ・・・

5

さて、もう少し生きてみようか

13/12/30 コメント:8件 るうね 閲覧数:924

 落ちていた。落下していた。
 屋上から飛び降りたのである。二十五階建ての高層マンション。たとえ人生が十回ぐらいあったとしたって、俺はここに住むことなどできないであろう高級マンション。
 その屋上からの落下。もう助からない。
 死ぬ間際には走馬灯のように過去の記憶が蘇ると言うが、まさしくその通りだった。時間が引き延ばされたような感覚。過去のいくつかのシーンが脳裏をよぎる。
・・・

3

食糞

13/09/28 コメント:3件 るうね 閲覧数:1222

 21××年。
 異星間交流も盛んになった地球では、地球人と宇宙人のカップルも珍しくなくなった。とはいえ、やはり宇宙人との恋路には、いろいろと問題も多い。なにしろ、文化どころか、身体の作りそのものが違うことが多々あるのだ。一度などは、地球人の口にあたる位置に生殖器があるという相談を受けたこともある。その時は、オーラルセックスと考えれば良いでしょう、というアドバイスで相談者は納得してくれたが…・・・

1

うんこしない

13/09/13 コメント:0件 るうね 閲覧数:1388

 アイドルはうんこをしない。
 そんな都市伝説を真面目に信じた少女がいた。少女は、さらに考えを推し進め、逆説的に一つの結論に達した。すなわち、
 うんこをしなければアイドルになれるに違いないわ。
 さっそく、少女はうんこが出ないよう、いろいろ試してみた。まず最初に絶食。これは一週間ほどで挫折した。いくら食べ物を食べなくても、水分を取ればうんこは出るし、何より、ずっとものを食べなけ・・・

1

神様ゲーム

13/08/11 コメント:0件 るうね 閲覧数:1281

>神様だーれだ?

 ネット上のルーレットが回り、神様が決まった。
 皆が、次々に『願い事』を書き込む。

>お金ちょうだい!
>パンとジュース買って来いよ(笑
>この宿題やっといて

 この神様ゲームは王様ゲームとは真逆で、クジで選ばれた『神様』が皆の願い事を一つずつ叶えなければならない。どんな理不尽な『願い事』にも逆らうことは許されないのだ・・・

  1. 1
ログイン
アドセンス