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第143回 時空モノガタリ文学賞 【 約束 】

今回のテーマは【約束】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2017/10/23

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は3作品とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2017/08/28〜2017/09/25
投稿数 81 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数 3
総評 今回のコンテストは、残念ながら、全体的に印象に残る作品が少なかったです。「約束」というとやはり個人的な狭い世界が舞台となることが多く、どこか工夫をしないと平凡な内容になってしまい、他作品と差別化されにくい内容になってしまいがちなのでしょう。必ずしも完成度が高いものばかりではなかったですが、最終選考以上の作品は、時間的・空間的な広がりや、あるいはちょっとした価値観のズレなどの要素を含んでいたりと、そのようなちょっとした工夫があった印象です。『ハリネズミの恩返し』ーーー伝統的な鶴の恩返しならぬハリネズミの恩返しですね。ハリネズミが機を織る様子が絵的に可愛らしく、主人公の“僕”の実直な生き方も魅力的でした。チクチクしていても身を守ってくれる母のマフラーやハリネズミの布に込められた優しさが素敵でした。『夜明けの約束』ーーー「人間そのものが苦手なのかもしれない」という主人公の侑史と孤独な過去を持つ結菜。彼らが相手と距離を保ちながらも、気遣い合う関係に繊細な魅力を感じました。相手を縛らない、しかし再開を予感させる緩やかな“約束”が彼ららしいと思います。『暗黙の了解との絶妙な距離について』ーーー虫のように増殖していく社会の“リョウカイ”。定時の就業を無効化する謎の理論を展開するベテランや、なぜか頑なに仕事を教えようとしない先輩。確かにこういう人たまにいますね。全ての“リョウカイ”が悪いわけではもちろんなく、暗黙の“リョウカイ”によって社会が維持されている現実を受け入れつつも、「一本のロープの上で踊る」バランスの中で生きようとする決意がユニークでした。これは確かにクレイジーな世で生きる知恵なのではないかと思います。『ゴースト・グラヂュエーション』ーーー幽霊との恋の切なさが、透明感のある映像的な描き方の中で生かされている作品ですね。幽霊の本質である「透明」さと、卒業までの短い時間の非永続性、若く繊細な感受性が相まって、透き通るような 空気感が漂っていると思います。『ロマンチックな約束』ーーー身に覚えのない約束になすすべもなく飲み込まれていく展開が、シュールレアリスム的な作品だなと思います。日常の中で起こる非論理的な出来事や、思考を拒む不思議な力に抗えない無力感。耽美的な空気感とマゾヒスティックな要素も同時に漂っている気がします。彼女の思いの理由は最後まで定かではないですが、シュールな作風が徹底しているので、全体としてはまとまりのよい作品だと思います。『執念』ーーーこれもまた身に覚えのない約束事に振り回される内容ですね。非現実的な事象に巻き込まれつつも、動じることなく自分の道を歩もうとする主人公の現実的な対処が、この作品の場合は魅力的でした。途中までテンポが良く面白いだけに、最後、約束の内容が明らかにされないままなのは少し気にかかるところですが、彼女(?)の内的な面が作品のメインテーマの作品だと捉えるとその点は許容範囲ではないかと感じました。

入賞した作品

4

あしたの約束

17/09/25 コメント:2件 宮下 倖

 窓から見える空は鈍色、食卓には鮭と納豆、テレビの星占いは11位。
 いつもと変わらない朝。本当に、まったくなにも変わらず、同じ朝だ。
 昨日も一昨日もくり返した同じ一日を、俺はまた始めようとしている。
「いってきます」
 ため息まじりの俺の声に、母は「いってらっしゃい」と昨日と寸分違わぬ笑顔でこたえた。
 
 高校への通学路も朝のクラスの様子も、何度も観た映画・・・

4

【 お・や・く・そ・く 】

17/09/25 コメント:7件 泡沫恋歌

映画やアニメを観ていると、あるセリフを登場人物がいうと必ず発動する展開というものがあります。
画面を観ていて、「あっ! 言っちゃった!!」と思ったら、その後は予想通りに話が進んでいって……ああ、言わんこっちゃない! たいてい最悪の結果となる。
――だが、そうなってしまうのは、抵抗できない。【 お・や・く・そ・く 】という謎の法則のせいなのだ。
特にホラーやサスペンスものなどで多く・・・

1

約束しない

17/09/15 コメント:2件 小峰綾子

今日二人が揃ったのは21時で、比較的早めの時間だった。金曜の夜、毎週定時前後でメールを送りあい、今日は何時に仕事が終わりそうだとか、今日は別の友人と飲むことになったから行けないとか、連絡を取り合うようになってもう何年目だろう。

明子と優は高校の同級生、同じクラスの時によくつるんでいた友人たちの中の2人だ。お互いに大学進学のために東京に出てきたのだが、大学時代はお互いの生活が忙しく二人・・・

1

とかげ

17/09/08 コメント:2件 向本果乃子

 その年の夏は煮えたぎるように暑かった。息を吸うと湿った空気が喉にべったりとはりつき、汗なのか湿気なのかわからない生ぬるい水滴が身体中を覆った。じっとり湿った大気を突き抜けて届く鋭い太陽の光が、通りを歩く人々にジリジリと容赦のない紫外線を浴びせている。その人々の中に、まだ十五歳の私がいた。
 夏休みの新宿駅南口前、午後2時。暑さもピークだというのに何の用があるのかあふれんばかりの人、人、人。・・・

最終選考作品

3

ハリネズミの恩返し

17/09/25 コメント:3件 そらの珊瑚

 「決して中をのぞかないでください」

 そう云って彼女はトイレに入ってドアを閉めた。しばらくすると部屋の中から音が聴こえてきた。
 ――トントンカラリ、トンカラリ、トントンカラリ、トンカラリ……。
 こ、この音はもしや機織りの音では? そしてこの展開。ものすごい既視感。日本人なら誰でも知っているだろう、あの有名なお伽噺の『鶴の恩返し』そのものではないか!

 ・・・

2

夜明けの約束

17/09/21 コメント:2件 野々小花

 自分の父親のことを、侑史は知らない。誰が父親なのか、母自身、わかっていなかったのかもしれない。母はそういうひとだった。小さな町の、駅前にある時代遅れのスナックで働いていた。客の男と関係ができると、侑史と暮らすアパートには、滅多に帰って来なくなった。
 男に夢中になると、子供の存在など忘れてしまうのだろう。度々、電気やガスや水道が止まった。滞納を知らせる通知書を握りしめて途方に暮れる。仕方な・・・

1

暗黙の了解との絶妙な距離について

17/09/18 コメント:0件 ケイジロウ

 次郎が職場に戻ると、ベテランのお局が仁王立ちで待っていた。
「ちょっと、あなた、遅いわよ」
 次郎は壁にかかった時計を慌てて見た。しかし、まだ12時50分だった。昼休みは13時までだ。
「おわんないわよ。全く、近頃の若いのは」
「スミマセン」
「とにかく、速く速く。すぐにAラインに入ってちょうだい。神田さんがいるから、神田さんと一緒にやってちょうだい」
「あ、・・・

3

ゴースト・グラヂュエイション

17/09/16 コメント:1件 泉 鳴巳

 冬の空は橙から深い藍色へ駆け足で向かい、長く伸びた机や椅子の影たちは次第に形がぼやけていく。
「卒業、おめでとう」
 僕は眼を閉じて、誰もいない空間へ向かって呟いた。



 偶然という言葉で片付けるには、「彼女」との出会いは衝撃的すぎた。

 あの日もちょうど今日みたいな、静かな冬の夕方だった。
 宿題のプリントを忘れてきてしまった僕は、・・・

1

ロマンチックな約束

17/09/13 コメント:1件 吉岡 幸一

 サスペンス映画を観終えた後、ハンバーガーショップに立ち寄ったふたりは映画の感想を言い合いながらポテトをつまんでいた。
 殺害された恋人の後を追って女が海に入っていくシーンで映画は終わった。あの世で結ばれよう、と死の直前に恋人と交わした約束を果たすために女は海に身を沈めたのだった。
「約束を守ることって大切なことよね」
 彼女はうっとりと目を閉じて美しい女優の顔を思い浮かべるよう・・・

1

執念

17/08/29 コメント:1件 井川林檎

 「その約束を白紙に戻さなくてはなりませんよ」
 友人の知り合いの霊能力者の女性から、そう言われた。

 このところ、何もかもがうまくいかない。仕事も人間関係も、果ては朝起きてから家を出るまでの些細な日常に至るまで、歯車がうまくかみ合っていないような、ぎこちない流れが続いているのだった。

 (なんだか変だ)

 必ずと言っていいほど、通勤の運転時、職場ま・・・

投稿済みの記事一覧

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鯉昇る夢に賭けて〜ヒロシマの約束〜

17/09/25 コメント:2件 冬垣ひなた

 明日を生きるのも困難だった頃、数少ない国民の娯楽は野球だった。
 道具をこさえて、投げて、打って、走って。
 自由への渇望はスポーツに変わり、人々はこぞってプロ野球の選手に夢を託した。
 地面に目を向ければ焼け野原。
 高く打ちあがったボールの吸い込まれる空の青さに希望をつなぎ、誰もが上を向いて生きる。そんな時代に、復興の象徴として広島カープが産声を上げたのは1950年(・・・

1

明るい洞穴

17/09/25 コメント:0件 葉山恵一

 娘がくしゃみをすると鼻水と一緒に、舐めていた飴玉が口から飛び出してアスファルトの上に転がった。妻が慌てて鞄からティッシュを取り出し鼻にあてがうと娘は顔を顰めた。
「あめ落ちた」
「いいから、自分で鼻かんで」
 僕は二人のやり取りを視界の端に置きながら飴玉を眺めていた。唾液で溶けたその表面は円形を保ったままいかにも甘ったるさを強調するような黄色で覆われていた。僕は娘に目線を戻し声・・・

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赤とんぼコンツェルトシュテュック

17/09/25 コメント:2件 沓屋南実

「耕筰、謝れよ、向こうに行ったら、ロベルト・シューマンに」。
 これが奴との今生の別れの言葉だった。
 いい年をして、したたかに酔っていた。俺は愛人と別れたばかりで投げやりになっていたのか、うっかりと「おう」と応えた。
 奴は「約束だぞ」と言い、嬉しそうな顔をして高価なブランデーのボトルを俺の名前で入れてくれた。
 彼が謝れと言っているのは、巷で騒がれている「赤とんぼ」のこ・・・

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約束は破らない

17/09/25 コメント:0件 むねすけ

「昨日は三つ目のヒットマンから守ってくれてありがとうね。ピストルで五発も撃たれちゃって、目覚め悪かったんじゃない?」
「まぁ、夢の中で殺されたことは一人の時もあったし。男は女を守るもんだしね」
「かーーっこいーい」
 僕と谷川さんの通学時間十五分のこのような会話は、誰かに聞かれていればとても奇妙なはずだけど、通学路に漲る会話の表面張力は排他的で強靭らしい。
 僕と谷川さんは・・・

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愛するあなたとずっと一緒に

17/09/25 コメント:0件 いちこ

 ああ、かっこいい。どうしてあんなに魅力的なのかしら。目の保養ね。
 あ、今目があった気がする。
 いけないわ、彼に気付かれちゃダメなの。だってそういう約束だから。
 あの日彼とあたしは約束したの。よく分からない知らない男が同席して、そのスーツ男はあたし達の立会人だったのだろうけど、きっちり約束したもの。あたしは彼に近づいてはいけない、彼の交際相手に嫌がらせをしてもいけない、って・・・

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ポンテ・ヴェッキオの恋人たち

17/09/25 コメント:0件 冬垣ひなた

「さあ、ジジ。戻って欲しければ約束を守ってちょうだい。ポンテ・ヴェッキオで待ってるから」
 おお、愛しのリリアーナ。俺の部屋から荷物をまとめて出ていこうなんて、そんな酷い話はないぜ。情熱の国イタリアに生まれてこのかた25年、一途に愛してきたというのに何たる仕打ち……。
「出会ってまだ2年だけど」
 可哀想に、心に氷河期が到来したんだね。今抱きしめて温めてやろうじゃないか……。待て・・・

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水沼君との約束

17/09/25 コメント:0件 海音寺ジョー

 ラーメン屋の閉店業務が終わると、深夜番のバイトの水沼君といつも長話をしていた。というのも、僕は始発の時間まで帰宅できないし、水沼君はここのバイトが終わると牛乳配達のバイトがあるので1時間ほどタイムラグがあるので時間調整でだらだらと、ぼくの始発待ちに付き合ってくれたのだ。
 長話と言っても40前のぼくと20代後半の水沼君とでは、共通の話題は少なくてバイトの女の子の話とか、店長への不満とか仕事・・・

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夢魔、ママになる

17/09/25 コメント:2件 あずみの白馬

 私は夢魔。人間の夢の中に理想の人として現れて精気を吸い取り、それを糧として生きてきた。

 しかし最近、少子高齢化のせいでまともな食事にありつけず、今、ものすごくお腹が空いている。

 目の前のマンションの一室に、寝息を立てている15歳ぐらいの少年を見つけた。背に腹は代えられない。早速彼の夢の世界に入る。

 私はアパートの一室らしき場所にいた。外見は人間でい・・・

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宛先のない手紙

17/09/25 コメント:3件 そらの珊瑚

 秋の虫が鳴いています。なぜか物悲しい気分になります。キミもどこかでこのささやかな鈴の音を聴いていますか? 虫の声を愛でる民族は世界でも日本人だけだとか。『枕草子』に描かれているように、そこに、もののあわれを感じるDNAを私達が受け継いでいるからなのでしょう。テクノロジーが進歩し社会がどんなに変わっても、平安の昔から人の心はそんなに変わっていない気がします。
 蝉の声はもうどこからも聞こえて・・・

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老人の森

17/09/24 コメント:0件 みや

「迎えに来てね、お婆ちゃん待ってるから」
「迎えに行くから、お婆ちゃん待ってて」
それが孫と交わした最後の会話だった。

私は住み慣れた家を離れ家族と別れて、”老人の森”に入所する事になった。森の奥深くにあるその建物は高く広く巨大なホテルの様で、夏の始めに入所した私は蝉の大合唱に迎えられて、子供の頃に育った田舎を思い出させた。老人の森とは政府認定の老人施設の様なもので、家族・・・

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若人の丘

17/09/24 コメント:0件 みや

「迎えに来てね、お婆ちゃん待ってるから」
「迎えに行くから、お婆ちゃん待ってて」
それが祖母と交わした最後の会話だった。

僕は住み慣れた家を離れ家族と別れて、”若人の丘”に入所する事になった。小高い丘の上にあるその建物は広く大きくて僕が通っていた大学に良く似ていた。若人の丘とは政府認定の若人向けの婚活支援の様な施設で、家族との接触は月に一度だけ電話のみのやりとりが許可され・・・

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明日の約束をしよう

17/09/24 コメント:0件 小高まあな

 彼は約束をしたがらない。
 それは約束を破ることが怖いからなのだ、と最近気づいた。
 契約をすることにためらいはないようだ。仕事として何かを請け負うことにためらいはないし、それがどんなに危険なことであっても普通の顔で引き受けている。
 それはおそらく、契約は破ったらペナルティが発生するから。相手側からの制裁という、目に見えた罰があるから、彼は契約をすることは厭わないのだろう。<・・・

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Monstrum est salvificem diaboli.

17/09/24 コメント:0件 黒江 うさぎ

 僕には、叶えたかった約束があります。
 叶えたくて叶えたくて…でも、叶えられなかった約束が。
 ええ、僕のこの力、喜んでお貸ししましょう。
 この化け物染みた力は、その為にあるんですから。



 午前二時。ある屋敷、その一室。
 専用のカッターで窓の鍵付近を切り、鍵を開錠、侵入。
 下にロープを降ろす。
 上がってくる反乱軍の仲間。・・・

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要塞プラトニック

17/09/24 コメント:0件 犬塚比乃子

 不随意筋である心拍さえ忘れさせられそうな四角くて真っ白な静寂のうちに塗りこめられたようになっていたもの。それは自分自身だということを今発見した。
 並たいていの人間と比較したさい、作曲家である中村弥生の聴覚はずいぶん鋭い。五十メートル先のしんしんと降った粉雪の中に落ちる縫い針の音すら感知しうるという猛禽類を例えに出してみよう。
 彼等はまず、獲物を、その鋭い視力や頭の後ろにまで到達す・・・

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約束に末路はあるか

17/09/24 コメント:2件 田中色

学生の頃はよく、母といくつかの約束をした。
「煙草は吸わないでね。肺癌になっちゃうから」
「ピアス開けないでね。塞がらないから」
「タトゥー入れないでね。消せないから」
おっとり屋さんな、典型的O型の特徴を捉えていた母はよく僕にそう言ってきた。僕はその度に生返事をして約束を軽く流して交わしていた。
そして二十歳になった今、隣に母の姿はない。
死んだのだ。死因は肺・・・

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Phantom Pain

17/09/23 コメント:0件 待井小雨

 僕にはずっと、誰よりも大切な少女がいた。
 僕の小鞠。僕の特別。

 幼い頃に越してきた田舎の家で、幽霊に出会った。十二歳ほどの姿をした、小鞠という少女の霊だった。
「驚かせてごめんなさい」
 初めて聞いた言葉は僕と両親への謝罪だった。鈴のような声に負の感情はなく、怖くはなかった。それよりも空気に溶けそうで綺麗だな、と僕は見とれていた。
「天に行く道が分からな・・・

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三年後の約束

17/09/23 コメント:0件 むねすけ

 三年前の今日、僕は妹と二人で映画を観に行ってる。テイクアウトのハンバーガーを観ながら食べた。迷惑だったかな。
 三年前の今日、この日は父さんの一時退院の日。母さんが晩御飯なのにホットケーキを焼いてる。父さんの好物。まだ三年前はパンケーキって言ってなかったみたい。

 僕と彼女は夜、ファミリーレストランに毎日を仔細に書いた日記を持って出会う。ドリンクだけでも毎日だと大変なんだけど・・・

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髪結い

17/09/23 コメント:0件 薬包紙

「お寒うございます。今朝もこちらへうかがう道すがら、橋の真ん中で雀が凍え死んでおりましたよ」

「おう、毎日足労であるな。おれも冬は大の苦手ゆえ、朝、床を出るのさえつらい。こうして日髪日剃ひがみひぞり)をきめ込まぬうちには、どうも身体がしゃんとせぬ」

「足労などとおっしゃっては。それが廻り髪結いの生業でございますゆえ――では失礼をいたしまして」

「しかし、ぬ・・・

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彼岸花

17/09/23 コメント:0件 栞〜Si·o·ri

街中を抜け、どれくらい走っただろうか
辺りはすっかり田園風景になっていた。
たわわに実る黄金の稲穂が
重そうなと頭を深々と垂れ
刈り取りを待っている。

しばらく走ると「彼岸花群生地」の昇り旗
メディアの効果もあり、平日にも関わらず
駐車場には結構な台数の車が停まっていた。
「みんな暇なんだなぁ」と一人呟くボク。
車を降りてその花の咲く方・・・

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マスク

17/09/22 コメント:0件 みーすけ

 あの人はいつもマスクを着けている。
 何故だろう? 風邪をひきやすいのか、それとも花粉症か。
 会社で見かけるその女性。私とは別の部署で働いている。初めて見たその日から、彼女はいつもマスクを着けている。
 鼻から下は見えないが、瞳はいつも潤んでいる。光彩は澄んだ茶色だ。私の視線はいつもそこに惹きつけられてしまう。彼女の瞳を見ていると、不思議と心に忘れかけていた感情が蘇る。彼女の・・・

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アインシュタインの約束事

17/09/22 コメント:0件 本宮晃樹

 うちの研究部門にはアインシュタインに刃向う身のほど知らずがいる。
「いよいよですね」わたしはその身のほど知らず(槇村さんという名のおじさんだ)と一緒にモニタをのぞき込みながら、「加速器稼働まで一分を切りましたよ」
「うん」気もそぞろに壮年の研究者はうなずいた。「うん」
 彼がわたしを空気がなにかみたいに扱うのも無理はない。超光速粒子であるタキオンの検出実験がいままさに、海底を貫・・・

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人生オワタのボンバーズ

17/09/22 コメント:0件 伊川 佑介

 十何年ぶりかの電話で、出てみると安斎さんだった。僕が学生時代、三軒茶屋のポルノビデオ屋でバイトしていた時の先輩である。辛うじて彼である事は認識できたが、フガフガと何を言っているのか分からない。きっともう歯とかも抜けて無くなってしまったのだろう。髪や髭は伸ばしっぱなしで、ビンテージと称していつも同じ服を着ていた。部屋に遊びに行けば当時から抜けていた歯の隙間から、よくマリファナの煙を吐いていた。それ・・・

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人間不信者に対して約束とは

17/09/22 コメント:0件 田中色

約束とは果たされることの方が少ないだろう。
約束という言葉の意味はどこにあるのだろうか。
ふと調べてみると、約束というのは相手に対して取り決めを行うことであり、口約束というのがまさに声だけで交わされる取り決めのことを指すらしい。
否、言葉自体に微々たる嘘が常にあるのだ。口約束という言葉があるのだから、書面上や何かしらの方法を使って約束を交わしても破られるものは破られる。
婚・・・

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我が子の未来は輝いている……と思いたい

17/09/21 コメント:0件 ちほ

 僕は、このパブ『ロビン』をいつか息子のウォルターに譲る。ここは僕の大切な場所。あの子にとっても、そう悪くないはずだ。もし、他に夢があるなら、そちらへ進むのもいいけれど、できればこの店を大好きな場所として大切に思ってほしい。
      ◇
「きのう、お父さんがお話ししてくれたことは、ほんとなの? ボク、気になってなかなか眠れなかったの」
「店のこと? うん、あげるよ。約束しただ・・・

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こうして天使が産まれた

17/09/20 コメント:2件 デヴォン黒桃

 
 涙を零す少女が一人。煤ダラケの頬に伝い流れ、灰色に染まった。
 かろうじて肩に引っかかった服は、焼け焦げている。
 傍らに佇む白装束の年寄りが、其の少女へ声を掛けた。

「よく頑張ったね。辛かったろう。熱かったろう。苦しかったろう」
 少女は、灰色の涙を手の甲で拭い、老人の顔を見上げた。
「大丈夫……弟のコウタを助けられたから」
 老人は、細い・・・

1

臨時列車

17/09/18 コメント:0件 小街

 まだ部屋には日中の熱がこもっている。今年89歳を迎えるミキは、縁側にある籐のリクライニングチェアに深くもたれる。夕日が部屋の奥を薄いオレンジ色に染めている。涼しく乾いた風が心地良い。
 鉱山技師の北見さんが私のいる事務所を尋ねて来た時もこんな夕方だった。“私と東京に行く許しを父からもらった”なんてニコニコしながら言いに来た。でも、何て言って父を説得したのかしら 。微笑むミキ。次の瞬間、その・・・

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ヒトを強くするモノ

17/09/17 コメント:0件 栞〜Si·o·ri

惹かれるものに、理由があるのかな。
何をしていても気になるカレのこと。
特別、格好いいわけでもなく
特別、面白い訳でもなく
むしろほんとに普通なんだけど...。

出会いは今年始め。
仕事でSNSに投稿した記事に
反応してきたカレ。
そこから友達に追加して
カレがリクエストしてきたページに
いいねした。

第一印象がよか・・・

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とはいえ

17/09/17 コメント:0件 田中あらら

 彼は父親の意思を継ぐべく、法曹界入りを目指していた。司郎、父親がつけた名前にも司法の司が入っていることから、司郎は父親の期待を背負っていた。
 父親が死んだ時、彼は高校1年生だった。父親が経営していた法律事務所は、敏腕の弟子に引きつがれ、株主である小野家の収入源となっていた。そして司郎はいずれ、そこの経営に関わるつもりだった。
 そもそもが小学生の頃、尊敬する父親に向かって「僕、T大・・・

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口を閉じる

17/09/17 コメント:0件 秋 ひのこ

 帰宅してトイレに入ると、洗浄剤の香りがふわりと鼻先をかすめた。
 便座の蓋が閉っている。床に落ちていた髪の毛と埃がなくなっている。
 台所へ進むと、薄明かりのもとで夫のハヤトがひとりビールをあけていた。
 惣菜の容器と菓子袋の下に散らばる請求書やチラシと等しくぞんざいに置かれた離婚届が白紙のままであることを横目で確認し、スミレは自分の分の弁当を袋から取り出す。
「食べてこ・・・

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初恋の答え

17/09/15 コメント:0件 瀧上ルーシー

 私には仲のいい友達がいた。川原武尊という男子だ。彼は眉にかかるくらいでカットされたさらさらの前髪と丸い眼鏡が特徴的で、勉強はできるがスポーツができなくドッチボールではいつも標的にされていた。
 彼の学習塾がない週三日程、私は図書館で勉強を見てもらっていた。もう何年も続いている習慣だった。彼は私には到底答えがわからない勉強をしている。それでも向かいの席で勉強している私がわからない箇所に当たれ・・・

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ロートレアモン伯爵と住職の白

17/09/14 コメント:0件 吉岡 幸一

 旅は解剖室の人体模型に似ていると男は思っていた。それがどんな意味なのか考えなかったが、焼いた大蒜の臭いよりはマシなような気がした。
 黒い醤油の雨が止んだ後も車を泳がせ続けていると、百万の玉ねぎが空から降ってきて車体に凹みを増やしていった。男は目的の地に向って迷うことなく走っていった。クラゲの道はよく跳ねて、ツバメの心臓は発情した子犬のように波打っていた。
 明かりのない真っ暗なトン・・・

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夜の青空

17/09/14 コメント:0件 マサフト

「いつか見たい夢があるんだ」

この部屋に酒を飲みに来るのはこれで何度目だったろうか。木曜の夜はこの部屋に来るのが習慣になってしまった。もう半年ほど通っているか。薄暗い白熱球の明りが薄い影と濃い影を作る、古いアパートの一室。築何年だ。

「いつか見たい夢があるんだ」

相槌を打たなかったせいか彼は同じ台詞を言った。

「なんだい、夢って。夢見るような・・・

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機械仕掛けの約束

17/09/14 コメント:0件 FRIDAY

 科学技術の発展と相反して資源開発と環境問題が限界を迎え、人類が叡智を絞った宇宙船に乗り地球を離れ、約千年。地球に残った者たちは、わずかな土地を守りつつ少しずつ地球を再生し続けていた。『償いの浄化』と計画された地球の再生は困難を極めたが、しかし残された者たちは決して諦めなかった。いつか旅立った人々を迎えるために。
「……だがそれも、昔の話さ」
 蜜蝋の灯りが小さく照らす酒場のカウンター・・・

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あなたを傷つけないための武器

17/09/12 コメント:0件 蒼樹里緒

 人間が『凶器』の姿に変わるようになったのは、五百年ほど前の出来事が始まりなのだと言われています。
 十年以上も続いた戦争が終わり、人々が新しい暮らしを始めようとしていた頃。ある貧しい若者が、お金持ちのおじいさんを短剣で刺し、持ち物をすべて奪ってしまったのです。
 死んでしまったおじいさんは、その刃物と全く同じ姿になりました。若者は驚き、おじいさんだった短剣を拾って逃げました。身を護る・・・

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しろくんとオレンジちゃん

17/09/11 コメント:0件 薬包紙


――ああ、もうからだじゅうあっちこっち爛れて痛痒くてしかたねえな。尾びれも背びれもボロボロ、じっとしてることしかできないくらい熱もって疼きまくりだし。おまえもつらそうだな、オレンジ。ほかの奴らもみんないなくなっちまって…そろそろ俺たちの番かなあ。

――ん……。

――なあ、覚えてるはじめてここへ来た時のこと? 2年前、俺たちまだ赤ん坊だった。狭くて窮屈なビニール袋・・・

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人と鬼の約束

17/09/10 コメント:0件 アシタバ

哀れな村を険しい山々が取り囲む。
まるで牢獄のようだ。
村人達は山に棲む一匹の鬼を恐れていた。
鬼は物見やぐらに匹敵する巨体の持ち主で、怪力ながら知恵もある。人の言葉を操り、村人に身の回りの世話をさせた。
そして、時折食うための生贄を差し出させるのである。
鬼がその気になれば村は簡単に全滅するだろう、それを理解している村人達は恐ろしい鬼の機嫌を伺って日々を生きてきたの・・・

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最後のデート

17/09/10 コメント:0件 与井杏汰

街は日が暮れた。
約束の時間まで後わずかしなかった。
彼は時計を見ると、イライラしたように赤信号に視線を戻した。

 「明日、大事な話があるから、必ず来てね」
最後に電話で彼女はそう言った。
何を聞かされるのか、なぜ遠くの店で会うのかも言わなかった。
ただ、いつも明るく快活な彼女の声が、わずかに緊張していたと感じたのは、気のせいだろうか。

し・・・

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あの日の指切り

17/09/09 コメント:0件 木原式部

「じゃあ、将来、私と結婚してくれる?」
 彼女はそう言うと、僕に向かって小指を差し出した。
「もちろん」
 僕も彼女に小指を差し出し、僕たちは固く指切りをした。


 彼女と結婚の約束をしてから、何年経っただろう。
 僕は着慣れない礼服を着て、結婚式場に来ていた。そう、今日は彼女の結婚式だった。
 僕が控え室のドアを開けると、彼女はイスに座って結婚式・・・

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夕陽が沈む頃

17/09/09 コメント:0件 ひーろ

 夕陽が沈みはじめ、鮮やかに輝いていた空のオレンジ色が、ほんのり赤みがかった暗い闇色に変わる頃。

「ママ……ぼくが大人になったら、有名な博士になれるって言ってくれたよね……? 博士になって、タイムマシンを発明できるって、約束してくれたよね……?」
 先刻まで燃え上がるように輝いていた少年の瞳は、暗く悲しげなものに変わっていた。
 母親は、心配そうな表情を浮かべながらも、す・・・

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強風の夜の怪人

17/09/09 コメント:0件 クナリ

 昭和のある時代、東京の片隅に、ひとつの全寮制中学校があった。
 生徒には外国人やハーフが多く、純粋な日本人の方が少ない。
 ハインツ・コイルフェラルドは二年生のある秋の黄昏を、レンガ造りの寮のロビーで紅茶を飲みながら過ごしていた。
 風の音が、外で強く鳴っている。

「ねえハインツ」
「……フィア。一応ここは男子寮なんだけどね」と小声で答える。
「さっき・・・

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綿あめ

17/09/08 コメント:0件 鷺くじら


 叶うことのない約束は綿あめのように降り積もってゆく。

 そう彼女は言った。僕は何も答えることはできず、食事の手を止めてただ彼女の目を見つめた。彼女はフォークで器用にパスタを巻いている。
「降り積もった約束はやがてね、ベトベト体に張り付いて身動きができなくなるの」
 そう言うと、フォークを口に運んだ。薄いピンクの唇にクリームソースが付く。それを舌で拭って、顔はパス・・・

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紫色の薔薇

17/09/08 コメント:0件 雪見文鳥

 若草がそよそよとたなびく草原に、一輪の紫色の薔薇が咲いていました。その花びらは揚羽蝶のように美しく、絹糸のように滑らかでした。
 その薔薇には見た人すべてを惹きつける魅力がありました。「天国に咲く花のように美しい」と、もうすぐ6歳になる男の子は言いました。「僕のおじいちゃんも、今頃こんな薔薇を眺めているかもしれないぞ」
 ある朝、草原に一人の美女が現れました。もっともその美女は、みず・・・

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鳩と波止場

17/09/08 コメント:0件 

 今、静かな時間が流れている。わたしは波止場のベンチでひとり、プリッツェルを食べている。
 ぎゃーぎゃー騒ぐ人のいない空間。鳩がぽっぽっぽっぽと音を立てて、歩いている。
 わたしに近寄ってきた鳩の目の前で足を蹴ると、ばさばさ、っと鳩胸らしい強靱な音で、その鳩は飛び去っていく。
 ぎゃーぎゃー騒ぐ、なんて言葉にするとネガティブかもしれないけど、悪い意味でも、暗い意味でもなくて。騒ぐ・・・

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アイスティ

17/09/07 コメント:0件 kina



 私の瞳から涙が零れ落ちると、ファストフード店のがやがやした雰囲気の中、椅子を引く音が異様に大きく響いた。バツが悪そうに、光石が立ち上がったのだ。何かボソボソと光石は私に喋りかけていたが、聞こえない。カウンター席に隣り合って座り、腕や体の動きを眺めていると、たゆんだ世界の輪郭に頭がくらくらする。心も波打つように不安定に揺れていた。
 でも、椅子から離れて光石が鞄を肩に引っ掛け・・・

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ママとの約束

17/09/07 コメント:1件 笹岡 拓也

「一緒に頑張って東国大学に行こうね!約束しましょ」
私が小学5年生だった頃、ママは私に言った。その日から私とママは約束を果たすために頑張った。
私はとにかく塾や家で勉強を、ママは私に合った勉強方法を探していた。私とママを見てパパは
「もう少し気楽にやればいいんじゃないか?」
と言ってくれていた。それでも私とママは約束を守るために努力した。
塾の友達はみんな休み時間にな・・・

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ズルい彼女の最後の言葉

17/09/05 コメント:0件 かわ珠

 目が覚めると、枕元に妻が立っていた。
「……おはよう」
 その妻に向けた言葉は、そんな素っ頓狂な言葉だった。
「おはよう」
 彼女の挨拶は少し懐かしく、そして、あまりにいつも通りだった。彼女と結婚してから約五年の結婚生活の間、毎日のように聞いていたあの頃と何一つ変わらない、平凡な挨拶。懐かしさが蘇ると共に、これが現実ではないような気がした。いや、むしろ夢だと言われた方が納・・・

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死にたい生きたい

17/09/04 コメント:0件 全世界りなちゃん戦争

 明日になったら絶対に死んでやろう。

そう思いながら家を出た。
今日が最後の日だ。私が私で生きられるのは今日が最後。
雨が降っていた。雨は大好きだ。
濡れるのは大っ嫌いだ。傘は模様がかわいくて買った水玉模様。

 どこに行こう…

何にもないのに、歩いてるだけで周りの人たちが私のことを避けてるように思える。
笑い合うカップルも、どこかへ・・・

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願掛け

17/09/04 コメント:0件 PURIN

近所のおじさんの話。
おじさんが若い頃。都会での仕事にもだいぶ慣れてきた矢先。故郷にいる先生の兄弟から、お母さんが体調を崩して入院したという連絡がきた。
慌てて仕事を休んで教えられた病院に行ってみると、ひどくやつれたお母さんがベッドに横たわっていた。
おじさんの知るお母さんは、いつも元気すぎるくらいに元気な人だったからこの上なく衝撃を受けたという。
そんな状態なのにいつも通・・・

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魔女の家族

17/09/04 コメント:0件 黒猫千鶴

「必ず迎えに行くから……」

 それが、母からの最後の言葉だった。

『速報、我らの聖なる炎で魔女を滅した』

 一枚の紙が街中に貼り出されて、ようやく皆は歓喜の声を上げる。私は深くフードを被って、民衆の中に混じっていた。

(魔女じゃないのに……)

 踵を返して、静かに離れて行く。誰にも気付かれないように、足早に森の奥へと帰る。

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Accu Asus a41-x550a

17/09/03 コメント:1件 kopenaccu

Augustus vorig jaar zagen we de eerste paar gaming laptops met 120Hz beeldschermen hit de scène, naast de invoering van Nvidias 10-serie Pascal graphics. Nu iets meer dan een jaar later, Accu Asu・・・

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愛の国から幸福へ

17/09/03 コメント:0件 峯岸メイ

ひと昔前に、幸福ゆきの切符というのが流行ったことがあった。確か北海道のローカル線に『愛国』駅と『幸福』駅があり、その区間の乗車券は、『愛の国から幸福へのパスポート』だと噂されて、当時若い女性を中心にして何百万枚も売れたという。
ブームになったのが七十年代だから、それを知っている人間は、その時代に青春を送っていたわけだ。
すなわち、今やいい歳のおっさんおばさんになってい・・・

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忘れていた約束

17/09/03 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

 夕刻の、会社帰りの人々でごったがえすビル街の歩道を歩いていた宗友は、その青の野球帽に同色のブルゾン姿の男性とすれちがったとき、ふとなにかがひっかかった。刑事の勘というやつだ。
 ふりかえるとその人物は、家電専門店のなかにちょうど入るところだった。年の頃は四十前後、身のこなしが敏捷で、人々の間をじつに巧みにすりぬけてとおった。顔はたえずうつむき加減で、宗友の目からみれば、他人の視線を避けてい・・・

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僕は凡人なので、多分そこへは行けない。

17/09/02 コメント:0件 浅月庵

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 創作者は常に孤独だ。

 それ故に、僕にとって高校の文芸部は、一時の休息を求める手段だった。部員同士で好きな作品を語り合い、手を叩く空間はまさにぬるま湯。
 このなかで、本気で小説に向き合っている奴は僕しかいないだろう。そう確信していた。

 ーーそんな馬鹿げた優越感を打ち砕くためなのか、ある日お前はハンマーを持って、僕の元へ現れたのだ。

・・・

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レールに敷かれた人生

17/09/02 コメント:0件 林一

 俺の父親は、会社の社長だ。いずれは俺も、この会社を継ぐことになる。いわゆる、レールに敷かれた人生ってやつだ。
 レールに敷かれた人生なんてつまらない、なんて言う奴もいるが、俺は満足している。頑張って勉強して一流の大学に入れたとしても、一流企業の会社に就職できる保証などない。だが俺は、会社の社長という人生を約束されている。レールに敷かれた人生は、本当に素晴らしい。
 
 ある日の・・・

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約束の日

17/09/02 コメント:0件 林一

 昔々ある村に、牛の世話の仕事をしている彦助と、機を織って服を作る仕事をしている織子が住んでいました。
 二人はいつしか恋に落ち、やがて結婚しました。
 しかし、二人は仲が良過ぎました。二人は仕事をさぼりがちになり、いつも一緒に遊んでばかりになりました。
 村人達は困っていました。彦助が仕事をさぼるせいで、村の牛達は病気になってしまい、織子が仕事をさぼるせいで、村人達の服は古くな・・・

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約束を破ったひとり

17/09/02 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

 賢者は、いつかはこういうときがくるだろうと思っていた。
 ここにいる四人もまだ幼かったときは、誰もみな同じように見えた。毛の色や、手足の長さは異なるものの、木によじのぼって実をかじり、若草を頬張ったりするのはみんな似たようなものだった。
 かわりだしたのは、成人になったあたりからか。なにより、考え方にちがいが出はじめた。ガッチリは、なにかと興奮しやすく、誰彼なしに喧嘩をふっかけた。血・・・

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ずっと、待ってる

17/09/02 コメント:0件 ファリス

「丘の上の木陰で待ってるからね」
「だから何度も言ってるけど、あなたは誰なのよ」
「寝坊しちゃダメだよ!じゃあね!」
「待って……!」

またこの夢だ。今日も追いつけなかった。
夢の中の景色は輪郭がはっきりせず、いつも私に声をかけてくるあの少女も、近づこうとするほど遠ざかるようで、逃げ水を追いかけているような気分になる。
誰なんだろう、あの子。
知っ・・・

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約束(エッセイ)

17/09/02 コメント:0件 ワタナベ

 物凄く大きな約束を破られた事がありました。
相手はネットで知り合った目上の方で面識はないのですが、お互い思っていることが阿吽の呼吸で分かるくらい信頼し合える仲になれたのです。
 そして、あるとき大きな約束をし合ったのですが、最後の最後でその約束を破られてしまいました。その後、相手の非と自分にあったかもしれない非を秤にかけ心の中で落としどころを探っていきました。
 もし逆の立場だ・・・

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繋がり

17/09/01 コメント:0件 セレビシエ

「君はひどく疲れている顔をしているね」
実際僕は疲れていた。それで僕は返事をしないままで机の上に頬っぺたをくっ付けて睡眠態勢に入った。彼女は何も言わない。僕も少し黙っていた。
顔は見えないがなんだか彼女は不貞腐れているみたいだった。それでも僕は顔を上げなかった。
「結衣は疲れてないの?」
机に突っ伏しながら僕は言った。
「疲れていないよ、だって君と一緒だもん」
・・・

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ばあばとはるくんのやくそく

17/09/01 コメント:4件 こぐまじゅんこ

 はるくんは、ばあばといっしょにくらしています。
 ねるときも、いつも、ばあばといっしょです。
 ばあばが、
「はるくん、きょうは、よるの九時にねようよ。やくそくしよう。」
と、小指をだしてきました。
 はるくんが、きょとんとしていると、ばあばは、はるくんの小指をそっとからめて、
「ゆびきりげんまん うそついたら はりせんぼんのーます ゆびきった」
と、う・・・

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戻らない

17/09/01 コメント:0件 ファリス

目を覚ますと、そこは僕の部屋ではなかった。
白くて冷たい、そんな感じだ。
ここは……?
「マサ……?」
誰かが呼んだ気がした。
「マサ、気がついたのね!」
母、さん……?
「よかった!先生に伝えないと」
……母さんは電話のようなもので誰かと、たぶんその「先生」と、少しだけ話をした。その後すぐに白い人が部屋に入ってきて、ここが病院だとわかった。
・・・

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化け物

17/08/30 コメント:0件 セレビシエ

近所にある古い森の中、 その奥には化け物が棲んでいる。そんな噂話がひそひそとクラスの間で語られていた。噂はだんだん膨らんでいき学校中に広まった。そうなればもちろん、誰かが森の中に入ることになる。そしてそれはもちろん、立場の弱い奴から、つまりイジメられている、僕からだった。
「お前だったら化け物とも友達になれるだろ」
渡辺が言った。そのあとに蹴りが1発。涙で目が熱くなった。

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わたしのお母さん

17/08/30 コメント:0件 ちほ

アリアは、母のアーニャが村で特別な存在として扱われていることが不思議だった。母の営んでいる雑貨屋がないと村人の生活は成り立たないが、そんな理由ではないようだ。
ある冬の夕方、店の暖炉に2人で当たっている時、母はアリアの疑問に答えてくれた。
「お母さんは、あなたと同じ10歳だった。そして、彼は6歳だったの──」
    ◇
「あなた、だれ?」
アメリーが胡散・・・

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茉莉の愛の約束の契り

17/08/29 コメント:0件 葵 ひとみ

 ――指切りげんまん、嘘、ついたら「針千本、飲〜ます」――



遠くの古い民家の睨みあいの松と呼ばれる憎しみ合った花魁と武士が祀られた二本の松の敷地から幼き子供達の優美な遊び声が聞こえる……



時は江戸時代、京都の先斗町の百花繚乱の花魁、茉莉には恋焦がれる客がいた、

青龍藩の幻夢城の跡取り息子の永田平 潤之介(ながだいら じゅんの・・・

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そのドアの向こうは、希望か、呪縛か。

17/08/28 コメント:0件 かわ珠

 約束は、希望だ。
 たった一つの約束を心の拠り所にして、困難を乗り越え、前へと進む原動力になるのは珍しい事ではない。
 約束は、呪縛だ。
 たった一つの約束が行動を縛り、そこから動けなくなり、雁字搦めになってしまうのは珍しい事ではない。
「必ず、帰ります」
 と、彼は十中八九叶うはずのない約束を交わした。彼の配属先は最前線。激戦は必至。生き残ることができたのならば、・・・

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あの日の紅葉のたえまの光は唯々、眩し過ぎて

17/08/28 コメント:1件 葵 ひとみ

 キリトは今年岡山から大阪へ進学した19歳の専門学校生、生まれてこの方女性とは御縁のない人生をおくっている。
彼女ほしさに学校の授業にはほとんど出席せずに、合コンや相席居酒屋にでかけたり兎に角、女性の集う場所に繰り出す毎日を送っていた。
そのお金は授業を休んで高額のバイト代が頂けるデリヘルのドライバーからのバイト代から捻出していた訳だ……

ここでも、お店の待合室の女性達か・・・

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あなたと食べたいチェリーパイ

17/08/28 コメント:0件 ちりぬるを

 玄関から話し声がする。彼が家に人を連れてくるなんて珍しいどころか、おそらく初めてのことだった。
「大丈夫ですか? 白石さん」
 白石さん、と呼ばれた彼より十くらい歳上のスーツ姿の男は酒に酔っているらしく、おぼつかない足取りでトイレに向かった。乱暴にドアを閉める。残された彼はいつも通りリビングの電気をつけて「ただいま」と呟き、まるで見えているかのように私の正面に座った。
 おかえ・・・

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出会い

17/08/28 コメント:0件 風宮 雅俊

「ミヨちゃん、大きくなったら結婚しようね」
 レンゲソウで作った花輪を首に掛けてあげた。
「うん、トヨくんのお嫁さんになる。約束だよ」

 子供の時の記憶なのか? 夢の記憶なのか? 正直なところ良く分からない。子供の頃から、ふと思い出す記憶だったからだ。でも、心のどこかでホントの記憶だと思っていた。だから、ミヨちゃんと将来結婚する事になると思っていた。

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グラデーション

17/08/28 コメント:0件 セレビシエ

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白い光は辺りを包みこんでいて、全ての物が表面を滑らかにコーティングされ、なんだか、優しい風になっていた。ああきっと、この光を感じられるのも今日が最後で、けれど最後だからこそ今、こんなにもこれが暖かく感じるのだろう。私は少し涙が出てきた。
柔らかい、全てが柔らかくて、暖かい。幸せだ。
私は今幸せだ。
これからの生活は幸せではないかもしれない。でも今は幸せだ。ならいっそ、今・・・

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テレポーテーションシンドローム

17/08/28 コメント:0件 浅月庵

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 河西優璃奈は高校卒業後に上京するので「呼ばれれば、いつでも駆けつけるから」と、俺は彼氏らしいことを言ってみる。電車のドアが閉まって、優璃奈の顔が今まで見たことのない表情に歪むけど、ガラス越しでは不鮮明で涙に色はないので、俺は彼女が泣いていることに気づけない。そして、俺は心底馬鹿なので、自分の無責任な発言がどれほど重要な意味をもつ言葉だったかに、その時は気づけずにいる。

・・・

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果たされぬ約束の詰まったソーセージ

17/08/28 コメント:0件 葵 ひとみ

 私の名前は琉生 犀葉(るい さいは)、寒村の谷間で「Aquavit(アクアビット)」というレストランのオーナーシェフをしている。
店名は、大好きな「命の水」という名のジャガイモの蒸留酒から名前をつけた。

世界中からこんな辺鄙な土地までグルメ達が押し寄せる。






スペシャリテは、

温かいサワークリームのスープの中に・・・

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