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  2. 第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】

第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】

今回のテーマは【黒板】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2017/09/25

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は3作品とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2017/07/31〜2017/08/28
投稿数 69 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数 3
総評 さほど投稿数が多くなかったにもかかわらず、なかなかの力作が集まっていたと思います。全体的にバリエーションga豊富で、多少似通った内容があっても、それぞれ別の方向からのアプローチで読み応えのある内容になっていたと思います。限定的なテーマであっても、学校時代には身近なものだけに、書きやすかったのでしょうか。 【最終選考作品への感想】 『憂国の授業』ーー 情報統制下の閉塞感と張り詰めた空気が伝わってくるようでした。黒板の、通信ネットワークとは無縁であるという特性が生かされ、全体的にしっかり作りこまれ精読に耐える密度がある作品だなあと思います。「自由」は様々な問題があっても、やはり強制的な単一化された世界よりはずっとマシなのでしょう。残念ながら平和というのは、争いと争いの間の小休止に過ぎないのかもしれませんが、せめてもう少しこの平和が長く続くことを願いたいですね。 『黒板消しよりも』ーーー黒板消しを「ラーフル」と呼ぶ地方があるとは知りませんでした。外来語だと余計に方言だとは気づかないかもしれませんね。鹿児島の他の方言も織り交ぜられ、地域色が出ていて楽しく読める内容でした。 『朱夏の償い』ーー戦争で人を殺す方法を教えなければならないのは確かに辛いですね。教師として大切なことを伝えられない「僕」と、普通に生きることができなかった生徒たちの無念さがストレートに伝わり胸に沁みました。 『正人の憂鬱』 ーーー主人公の正人ほど高度な内容ではありませんが自分も小学校の頃、0から1に飛ぶのが理解できず、「その中間はどうするのか?」と考えたことがあったので面白かったです(自分の場合その後も数学は苦手なままでしたが笑)。「先生」の指摘の通り算数や数学は確かに「ゲーム」と割り切るべきものなのでしょうね。チョークの触感と思考との関係性も、個人的に興味深いものがありました。 『体育倉庫の二律背反ブレイクダウン』ーーー未来の自分と現在の自分との間の感情的葛藤の描写がテンポよく描かれていて読みやすかったです。黒板の使い方もユニークですね。過去の自分にアドバイスして別の選択をと願っても、その時はその時の成り行きでそう感じていたわけで、簡単に納得できるものではないのかもしれません。しかしたとえ妥協の産物ともいうべきラストであっても、現在の彼にとってはやはりこれが最善の選択だったのではないかという気がしました。 『見えたり見えなかったりするもの、なーんだ』ーーー「みんな仲良し」のクラスで「影が薄かった」少年の小説によるささやかな自己主張がなんだか新鮮でした。自分も実際に仲良しのクラスの中で微妙に馴染めなかった経験があり、主人公の少年の気持ちはなんだかわかる気がします。少年の内面を掘り下げるというよりも、ちょっと引いた視点で描くことで、あっさりとしたミステリー風に仕上がっていて読後感が良かったです。

入賞した作品

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夏の隙間

17/08/28 コメント:0件 葉山恵一

小学校にあがってすぐの頃、僕とクラスのある女の子は画家の卵だった。授業が終わると教室に二人残り、黒板をキャンバスにして過ごしていた。性格も嗜好も正反対だったが、ともに母子家庭で放課後を持て余しているということが僕たちを結びつけていた。誰もいない教室での落書きはそんな僕たちのささやかな暇つぶしだった。担任教師も家庭の事情を知っていて特に文句も言わなかった。
その日も放課後の教室には僕と女の子の・・・

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黒板パンデミック

17/08/28 コメント:1件 宮下 倖

 ぼくの学校の黒板はみんな宇宙人です。
 黒板が魔法のような方法で話をするのをぼくは見てしまいました。
 あれは夏休み中のことです。ぼくはプールで泳いだあと、こっそり学校の中に入りました。本当は、先生にことわらずに勝手に入ってはいけないと言われています。
 でも、みんながいない学校はひっそりしていて、ぜんぜん知らない場所みたいで、ぼくは探検してみたくなったのです。
 昇降口・・・

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そこにしか、見えない

17/08/25 コメント:6件 秋 ひのこ

 夫のテラさんがうつ病になった。
 先の見えない休職よりヒキコモリより何より困るのは、喋らなくなってしまったこと。
 ぞっとするほど表情が乏しくなってしまったので、せめて言葉で説明してほしいことが山程ある。おいしいか、おいしくないか、冷たいのと熱いの、どっちがいいか、お義母さんが正月はどうするか聞いてるけど、どうしたいか。
 知り合いの提案で筆談も試してみたが、うまくいかなかった・・・

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だってきみは

17/07/31 コメント:4件 氷室 エヌ

 端的に言えば僕はいじめられていた。
 何をきっかけに始まったのかはもう覚えていない。いじめている男子数人のグループだって、多分覚えていないと思う。そんな些細なきっかけとは対照的に、僕は今クラスの全員から無視されるようになっていた。以前仲良かった友人も、自分がいじめられる標的になりたくはないからと、今では僕とあまり話さなくなっている。
 それは多分、仕方のないことなのだと思う。それを理・・・

最終選考作品

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憂国の授業

17/08/27 コメント:5件 冬垣ひなた

 環境調整区から出て、旧時代型の車で一時間あまり走ると、古い街並みが残るエリアに差し掛かる。
「人の居住が許されなくなって何十年も経つ場所だが、文化保護の目的で国の管理は行き届いているから、比較的状態はいいと思うよ」
 車の運転をする老人の隣で、結城は闇市で買った違法所持のビデオカメラを起動した。かつて「教師」という職に就いていた老人の人生を後世に残す事は、ジャーナリストの使命であると・・・

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黒板消しよりも

17/08/27 コメント:5件 光石七

 私は鹿児島県民である。進学や就職で県外に出ていた時期はあるが、生まれも育ちも今暮らしているのも薩摩半島の片田舎だ。仕事中にも「しもた、ラベルがよんごひんごなった」などと鹿児島弁の独り言が出てしまうような、生粋の薩摩乙女(「乙女」と書いて「オゴジョ」と読む)である。ちなみに「よんごひんご」とは、まっすぐでないこと、歪んでいたり曲がっていたりする状態を指す鹿児島弁である。
 さて、今回のテーマ・・・

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朱夏の償い

17/08/27 コメント:4件 野々小花

 第三次世界大戦が始まったのは、あの昭和の戦争が終ってから、ちょうど九十年目のことだった。
 当時、僕は大学生になったばかりで、将来は教職に就きたいと考えていた。自分が得た知識を伝えたい。子供たちに学ぶことの素晴らしさを知ってもらいたい。そういう、夢を持っていた。

 三年が経っても、戦争は終結する気配を見せなかった。男たちが兵隊として次々と駆り出されていく。僕は最高学府にいたお・・・

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正人の憂鬱

17/08/18 コメント:2件 田中あらら

 正人が書くものは、数式だけではなかった。自室にある一畳ほどの大きさの黒板には、頭に浮かぶアイデアや疑問などがあちこちに書かれていた。真ん中は現在進行中の課題であり、象形文字のような悪筆で主に数式が占領していた。正人は、憂鬱を抱えた数学科の学生だった。

 彼は小学生の頃、少なからず自分の書く字に対してコンプレックスを持っていた。彼はまっすぐにかけず、一つ一つの字もどこかアンバランスな・・・

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体育倉庫の二律背反ブレイクダウン

17/08/05 コメント:3件 クナリ

 朽ちかけた黒板に、僕は白いチョークで『奴を殺す』と書いた。
 すると、ひとりでに赤チョークの文字が、僕の文字のすぐ横に現れた。
『殺すな』



 僕の中学の使われなくなった体育倉庫は、古く、へちまに絡み付かれて、その存在を知る生徒も少ない。
 だから僕が放課後に一人で入りるのに、とても都合がよかった。
 同級生のゴツアキ君仮には学校にいる間中い・・・

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見えたり見えなかったりするもの、なーんだ?

17/08/05 コメント:7件 ちほ

 僕らは中学3年生で、あと10日もすれば卒業する。期末テストも高校入試も無事に終わり、眠たくなりそうな優しい時間に包まれていた。クラスメートと共にいられる大切な時間を誰もが楽しく過ごしていた。もう授業はない。卒業も近く、飛び飛びに休みが入っている。家でのんびりしてもいいのだが、誰もが友だちとのお喋りを楽しみに登校していた。ここでいう『友だち』は『クラスメート全員』のことだ。46人のクラスメ・・・

投稿済みの記事一覧

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ブラックバード・ブラックボード

17/08/28 コメント:0件 むねすけ

 理由はひとつ。
 黒と黒に挟まれて、黒に返る。黒に、帰る。
 黒のジャージに黒い無地のTシャツを着て、僕は高校のプールに入水する。今日は八月の三十一日。明日からの二学期は、天国か地獄のどっちかで転入生かな。
 深夜のプールは、ヌメヌメと死後の境界を暗く反射させていた。素足で履いたスニーカーは軽く、月に手を伸ばして掴めそうな気がしたよ、ジョー・ストラマー。
 ズブスブ。体に・・・

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ブラックボード・ジョーク

17/08/28 コメント:0件 冬垣ひなた

「俺たちって、結構刹那的な生き方じゃないか?無限に書いては消され、その場だけで喜んで……たまに、この生き方でいいか考えるよなぁ」
「あるある」
 ……居酒屋『一家言』に集まったホワイトボード(以後『白板』)と、駅勤務の伝言板。そして黒板は、ひときわ大きな顔で愚痴をこぼす。
 恒例の飲み会のネタはハバネロ並みに世知辛い世の中の話だ。
「『13たす2は18』なんて間違えて答える・・・

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解けなかった数式

17/08/28 コメント:0件 沓屋南実

 品の井駅に続く家々が並ぶ道を智之は友だちとのんびり歩いていた。叔母から頼まれて、畑に花を摘みに行くところだった。
 飛行機が向かってくる、低い音が耳に届いた。ふたりは、足を止め空を見上げた。何機か旋回しているのは、味方ではないことに気が付いた。
 なぜこんな田舎に? 智之がそう思ったとき、駅の方向に爆弾が落ち、火と煙が上がっていた。
 友だちは、駆け出していた。智之も駆け出そう・・・

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図書室の『彼女』

17/08/28 コメント:0件 いちこ

僕の思い出話をしよう。
高校生だった頃の話だ。
あの頃を思い返すだけで、古びた本の匂いが漂い出すような気がする。

僕は不真面目な高校生だった。
スポーツに精を出すわけでもなく、勉学に励むこともなく、かといって不良行為に走るなどもせず、毎日ふらふらとしていた。
クラスの人たちはみんな何かに一生懸命だった。
部活、勉強、友達付き合い。
みんなの中にいる・・・

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PTA役員選挙

17/08/28 コメント:0件 沓屋南実

 教室にいる母親たちの視線は、黒板に向かうPTA選出委員の手にあるチョークに注れていた。
 4年3組の教室は、見晴らしの良い南側校舎の3階。良く晴れているのに、どよんとした重い空気が充満しているのは、PTA役員選挙の結果がもうすぐわかるからだ。
 すでに、それぞれが2名を選び、担任に提出を終えている。ここ一週間というものの、親たちはこの話題一色だった。
 
上田 8票

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黒板の哀しみ

17/08/28 コメント:0件 霜月秋介

 こうして長年、教室の黒板って仕事をやっていると、いろんな先生がいるんだよなぁ。

 とにかく文字を美しく書くことにこだわり、書くのが異常に遅くて、授業の進行が異常に遅い奴。重要なのはそっちじゃねぇだろ。

 常に何かを溜め込んでて、授業のときにそれをぶつけるかのように、物凄い筆圧で俺に攻撃してくる奴。痛いっての!ガンガン突いてきやがって。

 と、今度は筆圧が・・・

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消えない落書き

17/08/28 コメント:2件 plum

 黒板に字が書けなくなったのは、算数の授業中だった。
 学級委員の小林理沙が、分数の割り算問題の答えを書こうとしたのだけれども、黒板にチョークを何度押しつけても、白い線が引けないのである。理沙は窓辺に立って外を見ている細谷先生に言った。
「答えが書けません」
「珍しいな。小林が答えられないなんて。そんなに難しい問題じゃないぞ」
「答えは分かってます。でも字が書けないんです」・・・

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あなたに一番近い場所

17/08/28 コメント:0件 そらの珊瑚

 眼を開くと、私は白い霧の中に浮かんでいた。
「お目覚めですか」声の方を見ると、だぶっとしたサッカーのユニフォームを着た男の子が立っていた。
「ここはどこですか。あなたは誰?」そう尋ねると、男の子は云った。
「ここは通称『通路』です。そしてボクは、たまころがしです。ですが、ころがすのは球ではなく、魂です。死んだ人の魂をころがすのが僕の仕事です」
「死んだ人の、魂?」
・・・

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僕が経済学もキライになった訳

17/08/28 コメント:0件 葵 ひとみ

 現代国語と英語の2科目の数千倍の高倍率の受験戦争を突破して、

晴れて僕は難関校の私立単科大学の経済学部の生徒となった……

まだ、日本が未曾有の危機に曝された地下鉄サリン事件も阪神淡路大震災もおこる以前の
御話である――


僕にとってはウキウキしながらの大学の経済学の初講義、
経済学の世界的権威である講師が教鞭に立つ……

そ・・・

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黒板に書き殴る愛

17/08/27 コメント:2件 みや

今夜はクリスマスイブだから店のメニューの黒板にクリスマスイブに相応しい洒落たメニューをチョークで適当に書き殴った。そんな洒落た料理を小さな洋食屋の店主の私が作れるはずもないのだが、大丈夫。こんなショボい洋食屋にクリスマスイブの今夜、客などきっと一人も来ないはずなのだから。私がメニューの黒板を店の外に出すと、妻が死ぬ十日前に主治医に無理を言って一時帰宅させてもらった時に飾り付けたクリスマスツリーのラ・・・

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黒板が好きだ。

17/08/27 コメント:0件 ワタナベ

 黒板が好きだ。チョーク一つでテーマを整理したりアイデアを自由に広げたり。ホワイトボードもいいが味気がない。やっぱり黒板だ。落ち着く。
 壁に張り付いているのもいい。座って机の上に広げて書くノートのプライベートな世界とは違って、教壇に立ち周囲に向かって壁面で披露していくオープンな世界は、一度味わうと快感ですらある。
 例えるなら漆黒ならぬ深緑の宇宙――自分の脳内にある世界を外へさらけ出・・・

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妖怪児童の黒板

17/08/27 コメント:0件 鮎風 遊

 猛暑続きの夏がやっと終わり、秋風を感じる季節となりました。そんな折に、浩二から誘いがありました、「直樹、お前に預かって欲しいものがあるんだ、だから今晩会わないか」と。
 あいつはいつも唐突。ムカッときましたが、何か特別な理由があるのではと思い、予約済みの居酒屋へと向かいました。

「再会に乾杯!」
 浩二がビールの泡を零しながら生中ジョッキをガチンと合わせてきました。その・・・

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黒板(ブラックボード)の真価

17/08/27 コメント:1件 浅月庵

「勇者よ。よくやった! 世界を混沌の渦へ陥れた大魔王を、ようやくその手で倒してくれたのだな」
「マジ疲れたんですけど。こいつ、重すぎ」
 勇者は背中に縛りつけていた武器を、レッドカーペットの上へと投げるようにして下ろした。
「ハハハ! まぁ、そう言うでない。ワシが託した伝説の武器、その威力はいかがだったかな?」
「見てくださいよ、コレ」
 勇者は防具を外し、服の袖を捲・・・

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先生失格

17/08/26 コメント:0件 つつい つつ

 今日の体育の授業はドッチボールだった。赤チームと白チームに分かれて白熱した戦いになり、赤は裕哉が中心となってよくまとまっていた。相手チームにボールが渡ると、「右からきてるよ」「後ろ、後ろ」「左に逃げろ」と、裕哉がみんなに指示を出し、うまく逃げていた。一方、白チームは龍雅のワンマンチームだった。龍雅は指示や声を出すわけでもなく、それでも小学四年生にしては大きな体格を利用して、強く鋭い球を投げて赤チ・・・

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メタモルフォーゼ

17/08/26 コメント:5件 待井小雨

 僕の卒業式を一か月後に控えた冬の日、先生は黒板になってしまった。
 生徒は僕一人、男の先生が一人だけの小学校。僕の卒業後に廃校になる。

 僕は教室に一つだけの席につき、黒板となった先生を見つめる。
「どうして黒板になんてなったんですか、先生」
 問うと『だって』と黒板にチョークの文字が浮かび上がった。
『寂しいのだもの』
 先生はもう五十歳過ぎ。六年間・・・

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とある物理学科にて-黒板の神秘-

17/08/26 コメント:0件 藤原光

タブレットやプロジェクタなど、テクノロジーの進歩により、電子化が進む昨今。小学校や中学校でさえ、黒板が廃止され、徐々にほかのテクノロジーが大頭してきてきている。

そんな中、未だに黒板を愛用し続けている業界がある。それは、世界の名だたる大学の物理学科である。彼らの建物の中には、黒板とチョークが常設されている。

私光は、アメリカのとある世界屈指の名門大学を訪れた。友人の秀樹・・・

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おまじない

17/08/25 コメント:2件 ファリス

最近、ある「おまじない」が流行っている。
「誰にも見られず黒板に好きな人の名前を赤チョークで書き、その上から自分の名前を白チョークで書くと、恋が叶う」
どこからともなく広まりだしたこのおまじないは支持を得たようで、放課後の教室ではいつも、どこかたどたどしいチョークの音が響いている。
今日もまた一人、想いを胸に秘めた少女が、周りを気にしながらこそこそと教室に入ってきた。
廊下・・・

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伝わらないはずのメッセージ

17/08/25 コメント:0件 あずみの白馬

 どこにでもありそうな田舎町に、元は高校だった校舎がある。
 廃校から五年近く、たまに映画やドラマなどの撮影に使われていたのだが、市議会で道の駅として整備することが決まった。

「次の教室で最後か……」
 僕は市の職員。今日は損傷状況を調査するために校舎に来ている。
 朝方から作業をスタートさせたのだが、事細かに記録していくと、気づけば既に夕方になっていた。
 ・・・

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聖戦

17/08/24 コメント:0件 小高まあな

 なるほど、学校内という特定のエリアにおいて確実に嫌がらせするには、古典的だがいい手段かもしれない。
 黒板いっぱいに書かれた、私への悪口を見たにもかかわらず、私はそんな風に冷静に考えていた。こういうところが可愛げがないと言われるのだろう。
 ヤリマンだのなんだの書かれた黒板を目にして、私がとるべき正しい対応は何だったのだろう。少し遅れてそんなことを考える。怒る? 泣く? 慌てて消す?・・・

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意思と奴隷

17/08/21 コメント:0件 セレビシエ

黒板は先生の奴隷です。
生徒も先生の奴隷です。
教室の中では先生が王さまです。
でも放課後、人がいなくなった教室での王さまは誰でしょう?
お分かりですよね、黒板です。
いつも先生たまに生徒にまでチョークをガツガツ押し当てられたり、生徒には下手くそな落書きをされたり黒板はいつも苛々としていました。
先生が授業をしているときには黒板は体を真っ直ぐにして字・・・

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あの日黒板に書きなぐったのは

17/08/20 コメント:2件 小峰綾子

利用されているだけなのは薄々気が付いていた。弁当の時間になると、いつも通りグループのメンバーから希望のドリンクを申し付けられる。私は他の4人が何か飲みたいものがある時に買いに行く係だ。中学生活に慣れた時にはすでに、クラスの女子は大まかに3つのグループに分かれていて、その中で一番「イケてる」グループに入れただけでも幸運なのだと思う。
「なんで私だけー?たまには誰か一緒に来てよぉ」
ふざけ・・・

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花の伝言

17/08/20 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

 警邏をおえて帰ってきた山田巡査は、ある種の予感に心を躍らせた。しかしわざとその気持をもみけしながら、交番横に自転車を置くと、これまたわざとらしく厳めしい表情で交番に入っていった。
「ごくろうさん」
 巡査部長の黒部が、最近中年太りでふくよかになった顔で、山田を迎えた。その目が、かすかに笑っている。
 山田はすぐに、黒部のいる机の端に目をやった。そこには、青い花瓶に生けられた、数・・・

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だ・い・す・き

17/08/20 コメント:0件 ちほ

 リンブルグ地方の北方ユースチス・レイにリンブルグ初の映画館ができた。若き領主ユキヤは映画が好きではなかったが、領民の強い希望で渋々ながらも受け入れた。
「ユキヤさん、忙しいんじゃないの? ボクと映画みてていいの?」「ブライに君のお守り役をさせようとしたら、苦手だからと逃げられた」「ボクも暗いところは少し苦手なの」「……。(いや、ブライが苦手なのは、いきなり突拍子のないこと言い出す君の・・・

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サヨナラマタネ

17/08/19 コメント:0件 kanza

「君たちは死んでしまったのですか?」

 美術室の窓の向こうに見える姿は、緑に覆われることも、薄紅に包まれることもないまま、校門の横で佇んでいる。

 ねえ、地震で激しく揺れたからなの? 
 それとも津波で塩水に浸かってしまったから?

 私がこの中学に入学して1年が経とうとしていたあの日から、君たちからは力が消えしまったままだ。
 ふと、入学式に校・・・

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Sまち伝言板物語

17/08/18 コメント:0件 秋 ひのこ

 町役場の一角に、S町歴史資料館がある。「館」とは名ばかりで単にだだっ広い展示室があるだけだが、中学の夏休みの課題のため、私は初めてそこを訪れた。
 あまり管理も整理もされていない展示物を見て歩き、あるものの前で足を止める。
 力ずくで記憶が呼び出される。
 それは、駅の「伝言板」だった。



『なわとびのテスト がんばれ! じい』
『ぜんぜんだ・・・

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黒板小説

17/08/17 コメント:0件 浦田かず

 ある日のことでございます。龍太が千代田区の大型書店に入っていきます。入ってすぐ目につくところに売れ筋の本や新刊が置かれています。平台と呼ばれるところにございます。そこに変わった本が一冊置かれています。F8サイズのスケッチブックほどの大きさの本でございます。その本の手書きポップには「今話題の黒板小説」と書かれています。丁度売れ筋なのでございましょう。

 龍太はその本を手に取ります。表・・・

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消えないチョークの文字

17/08/14 コメント:0件 ケイジロウ

 ある日のことだ。教室に入ると黒板がなくなっていた。
 確か昨日まであった。昨日は僕が日直だったのでその記憶は確かだ。
 しかし、昨日僕が消していたチョークの文字は本当に存在していたのだろうか。なぜ自分の記憶に疑いを持ってしまうかというと、教室に入った時、黒板がないこと以外いたっていつも通りだったからだ。貴志はいつも通り難しい顔で難しい話を男子たちとしながら敏子のことをチラチラ見ている・・・

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黒板の授業

17/08/14 コメント:0件 和泉結枝

 私は、黒板に字を書くのが苦手だ。
 思ったことはないだろうか。慣れた筆記用具で慣れた水平面に書くのと、慣れないチョークで慣れない垂直面に書くのとでは、感覚が違い過ぎると。ただでさえ自分の字に自信がないのに、どうせすぐに消されるのに、わざわざ先生とクラスメートの前で披露しなければならないなんて、もはや罰ゲームでしかない。学校生活においてこんなに重要なスキルなら、数学や英語の授業だけでなく『黒・・・

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時間

17/08/14 コメント:0件 

 丁度、円卓を囲んで、僕と母と祖父は朝食を食べていた。
 
 祖父は、三か月前に転んで頭を打って、正気を失った。病気一つしない、元気なじいちゃんだったけれど、今ではへの字によじれ曲がった口の隅から涎を垂らし、震える手で持ったスプーンを必死に口に運ぼうとしている。
 「もうおじいちゃん、片付かないから早く食べてよね」
 母はもう壊れたCDプレーヤーみたいに同じことをまた祖父に・・・

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今日もまた

17/08/13 コメント:0件 村升 青

薄暗い教室に入ると、彼がそこにいる事に気が付いた。
「誰からも見られるのに誰にも見てもらえない。何だか分かる?」
生徒の椅子や机に背を向けて、教卓に腰掛けていた彼はそう言って俺の方を見た。

「正解は、俺」

日も沈んだ紫の暗さの中、彼は黒々とした影にしか見えず表情は到底窺えなかった。
「でもお前は見てたな俺のこと。他の奴とは違って、俺を見てた」
感・・・

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黒板と虚無と変態と

17/08/13 コメント:0件 けこぼ坂U介

 灼熱の日差しの中で、墓石が陽炎に揺れている。耳元のラジオでは火蟻駆除のニュースが流れている。似たような墓に囲まれながら、彼の墓はいつも何処か寂しげだった。傍の小さな黒板を拾い上げて積もりに積もった汚れを叩く。1年前に書いた文字は既に消えてしまっていた。追悼の思いを込めながら、新たにチョークで「渡辺」と書いた。

 仕事に疑問を感じて辞めようかと悩んでいた27歳の夏だった。管轄の女子校・・・

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朝のメッセージ

17/08/12 コメント:0件 木原式部

 ――今日は入学式ですね、楽しい学校生活が待っていますよ!
 黒板に白いチョークで書かれた文字が、僕の目に飛び込んできた。
 中学校の入学式に向かっていた僕は、何気なく通り道にあった洋食屋の「今日のメニュー」と書かれた黒板に目をやり、メニューの横に書いてあるメッセージを見つけた。
 僕は今から入学する私立の中学校まで、電車を乗り継いで通うことになっている。なぜそんなに遠い中学校へ・・・

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17/08/12 コメント:0件 セレビシエ

カツ、カツカツ、カツと小刻みに、リズム良く、チョークが黒板に当たる音がする。
先生は張り切って大きな声をだしているが、回りを見渡すとあくびをしていたり机に突っ伏していたりだった。
私は一番後ろの席からそれを眺めていた。
カツカツカツ、カツカツ。
カツカツ。カツカツカツカツ。
この心地良い音と先生の大きな声が混ざりあって睡魔が襲ってくる。
私はこの睡魔に打ち勝とう・・・

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ブラックホール

17/08/10 コメント:0件 セレビシエ

「黒板ってずうっと見ていると吸い込まれそう」
君がそう言うから僕はじっとそれを見つめてみたが、さっぱりそんな感じはしなかった。
放課後の誰もいない教室。少し開いた窓の隙間から冷たい風が入ってきている。
君はなんだかうっとりした様子でそれを見ていた。
僕はドキドキしてしまって、何を言うべきかわからなくなってしまった。
「ブラックホール」
君が呟いた。
「黒・・・

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王国に花火が打ち上がり、彼女の願いは……

17/08/10 コメント:0件 ちりぬるを

 リカとナナコが友達の範疇を超えて仲が良いのは恐らくクラス中が知っていた。なにを言われても二人共否定しないので、その噂は夏休みが始まる前には学校の生徒が知るところとなっていた。だから蝉の声がうるさい夏期講習の教室で背中に丸めた紙を投げつけられた時も、どうせいつもの嫌がらせだろうとナナコは思っていた。
無視していると次に消しゴムの欠片が背中に当たり、あまりにしつこいので振り返ると二つ後・・・

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ちっちゃな空

17/08/10 コメント:0件 こぐまじゅんこ

 ここは、わくわく森。
 木の切り株の上に、みどりいろの板と、白いぼうきれと、ふかふかした四角いものがおいてありました。
 くまさんが、やってきました。
「なんだろう?」
 みどりいろの板をたたいてみます。
 コツコツ音がしただけです。
 白いぼうきれをなめてみました。
 何の味もしません。
 四角いものをおしてみます。
 ゆびが、ぐーっとうも・・・

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黒板の本当の意味

17/08/09 コメント:0件 ふわふわひかる

白いキャンバスを真っ黒な絵の具で塗りつぶしたような夜。
先程まで多くの生徒が日常を過ごしていた教室は夜になるとそんな作ったような黒色になる。
俺は生徒が1人も残っていない暗い教室で1人立ち尽くしている。
まるで暗闇の海面を漂うカモメのようだ。
俺は十数年も前に先生が言った言葉を思い出していた。


「黒板ってね、虚空板っていう戦前使っていた言葉が変化したも・・・

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特等席

17/08/09 コメント:2件 藍璃



進学校の黒板が、毎日、どんなに酷い目に遭っているのか
あなたは知っていますか?


筆圧の強い教師に、顔いっぱいに文字を書かれ、乱暴に消される。
50分の間に何度も何度も書いては消され、毎日毎日その繰り返し。
あまりの筆圧の強さに、
チョークがパキンと折れてしまうことだって、よくあるのですよ。
教師の唾はシャワーのように飛んで来て、<・・・

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この雰囲気を壊さないために

17/08/08 コメント:1件 笹岡 拓也

私は旭ヶ丘中学校の問題児ばかり集まる3年2組の担任をしている。どうして私はこのクラスの担任を任せられたのか?きっと私を好まない先生の嫌がらせと考えている。
しかし問題児と言っても所詮は中学生。受験を控えて精神バランスが整わないことから、不安になり悪さをしてしまうような子たちだ。そんな不安定な感情を抱く年頃だから仕方がない。そう私は解釈する。
私は3年2組の担任になってから二ヶ月、意外に・・・

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飛行機雲

17/08/08 コメント:1件  浅縹ろゐか

 真っ直ぐに引かれた横線は、飛行機雲のようだった。

 *    *    *

 日直の仕事である学級日誌を書き終えて、ふと黒板を見ると誰がやったのか明らかな悪戯書きが残っていた。この教室には私と彼しかいないからだ。
「黒板、消しておいてよね」
「なあ、一寸見てろよ」
 私の言う事は聞こえていなかったのか、彼は黒板に白く横線を走らせる。これが一体何を意味・・・

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明日からも

17/08/08 コメント:0件 瀧上ルーシー

 呼ばれることは呼ばれていたが、卒業式の後の打ち上げには参加しないで適当に時間を潰してから高校に戻ってきた。今日卒業した三年生の教室は全部で五クラスあって、そのすべてを俺は観に行った。学校独自の臭い、それとは別に精神的な部分で感じる雰囲気。今日は特別な日だった。これから俺達は別々の道を歩いて行く。いつもは見るのも嫌だったが、この日だけは黒板を観るのが楽しかった。
 クラスの卒業生全員の似顔絵・・・

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幸せの青い板

17/08/07 コメント:0件 山盛りポテト

「ちょっと」
俺は突然背後から話しかけられ、驚き体を仰け反らせた。
「ん・・・どうしたんですか」
この敬語は同級生、いや下級生に対しても同じだ。人との距離感を掴めないため、せめて不快にさせまいと常に敬語を使っていたのだが、どうやら余計に奇妙な人間になってしまい、今さらやめることもできず、ずっとこの調子だった。
そして休み時間中にいつも寝たふりをしていたので、さも今起きたよう・・・

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黒板に

17/08/07 コメント:0件 忍者猫

 黒板に向かって、芽衣子はかつかつと書き込む。
「教室でボヤが起きたのは、午後三時。学年末試験が始まっているから、教室にいた人間は居ない筈」
 『ボヤ発生』、『午後3時』、『無人』と書かれた横に、来人が癖のある右肩上がりの字で『採点中の教師』と足した。
「そうでもないよ、他人が居ると集中出来ないとか、字が汚ないのを気にして担任教室で採点やってる先生居るぞ」
 芽衣子は肩を竦・・・

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黒板の数字たち

17/08/06 コメント:0件 Sage.N

 あるところにある、ある学校の、ある教室の黒板に、数字の1が書かれていました。1ばかりではありません。2も3も、4も5も6も、7も8も9も、10まで書かれていたのです。
 その数字たちは、しきりにおしゃべりをしています。数字がしゃべったりするでしょうか? するんです。そこは、まあ、お話ですからね。
「見て、3さん。あの子の貧相な体つき。いまにもポッキリ折れてしまいそうよ」
 いじ・・・

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チョークと先生

17/08/06 コメント:2件 

予鈴が鳴る。
次々と席を立つ人波に紛れ、千紗子も教室を出た。あまり目立たぬように、しかし出来るだけ早く。先生のいる、生物室へ。千紗子は教科書を抱きしめ、早足で廊下を歩いた。
生物室には既に半数近いクラスメイトが移動していた。人の合間を縫うようにして、左端の一番前の席に着く。黒板が見えにくいだとか、何かと不満が多い席だが、千紗子にとってここは特等席だった。
教科書を置き、セーラー服・・・

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ロードムービーみたいなあたしの絵日記

17/08/05 コメント:3件 むねすけ

 夏休みの絵日記に丁度いいわ。
 父さんのスタンドバイミーごっこに引率つかまつろう。
「海外映画と時代劇、父さんとお母さんの娘やなぁ」
 八月の帰省は毎年、母さんの田舎。おばあちゃんが迎えてくれる愛媛県松山市。それにプラス今年は父さんの帰省。
「お母さんは留守番しとくわ、お腹これやもん」
 愛媛のおばあちゃんちは?
「そっちは帰るがね。お腹これでも」
 も・・・

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黒板日記

17/08/05 コメント:3件 文月めぐ

 煉瓦造りが特徴のその古めかしい喫茶店は、僕が約十年前から行きつけにしている喫茶店だ。仕事でストレスがたまっていた当時、コーヒーの香りに誘われるようにふらりと立ち寄ってみたのだが、そのコーヒーがなんとも優しい味だった。それ以来、そこのコーヒーが病みつきになってしまったのだ。
 店名はひらがなで「おたべ」と書く。その名前はマスターの田部正樹さんの名前からとっている。
 僕が「おたべ」に通・・・

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性癖ベクトル

17/08/04 コメント:5件 浅月庵

 ◇
「舐めて綺麗にしてよ」
 あなたはそう言って、唇を結んで微笑むと、大きな瞳を三日月形に歪ませた。
 その言葉を浴びた途端、私の体に流れる血液が、沸沸と煮えたぎっていくのを感じた。

 ◇
「このグラビア、やばくね」
 同級生の男子Aが雑誌の巻頭ページを開いてみせると、他の生徒に同意を求めた。
「俺はスレンダーな方が良いなぁ」
 男子Bが大・・・

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再会したい

17/08/03 コメント:2件 ぴっぴ

大学のキャンパスの目立つ通りに『将来の夢』を書いて下さい……という黒板が現れた。設置当初は学生たちも冷ややかだったものの、最初に『よし君のお嫁さんになりたい』と口火を切ると、2〜3日後には書く場所すらないほど未来の夢と理想で一杯になった。
「見ろよ! 高橋! 弁護士だってよ! ウチに法科ないのになに考えているんだ?」
この企画を立ち上げた山田が黒板を見て笑った。
「こっちも見て!・・・

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あの花に思いをのせて365日の花言葉

17/08/03 コメント:1件 t-99

 
 終業式の朝、いつものように早起きをしました。吐き出す息がもう白くはありません。新聞配達屋さんの運転するバイクが「ブルン・ブルン」と近づいてきます。バイクに追い抜かれないよう、桃花は一飛びで学校に行きました。
 教室には担任の梨花先生がいます。先生は教室の窓を全部開けて、新鮮な空気を取り込んでいました。花瓶の水を替え、教室に花を飾ります。今日は桃花の大好きなマーガレットの花を飾って・・・

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僕らに黒板は似合わない

17/08/03 コメント:1件 j d sh n g y

賑やかなダイニング・バーの店内の黒板にはメニューを兼ねたチョーク・アートが描かれている。

僕は、紗良とテーブルで料理が運ばれてくるのを待っていた。海鮮盛りだくさんの石釜ピザと、チーズとバジルのジェノベーゼパスタ。

僕らはチョーク・アートを眺めながら、休憩時間にした他愛のない落書きについて語り合った。ふざけ半分で描いた相合傘、美術部の本気デッサンなど、出身校は違えど黒板と・・・

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砂浜の黒板

17/08/02 コメント:0件 かわ珠

 僕の学校のすぐ近くには海がある。そこに僕はクラスメイトと一緒に来ていた。
 理由は特にない。彼女とは帰る道が同じ方向だし、一緒に帰る途中、この砂浜でちょっと話をしていくこともよくあることだった。話の内容も、特別なことはない。最近できたカフェのチーズケーキが美味しかったの、と彼女が話せば、昨日のサッカーは凄い試合だった、と僕が話す。その程度の何の変哲もない平凡な会話だ。けれども僕は、こんな時・・・

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黒板に導かれ掴んだ未来

17/08/01 コメント:0件 ちほ

僕の記憶に『弟が生まれた夜』が強烈に残っている。
    ◇
<6歳の貴方は、父上様に命じられて狭い一室に軟禁状態にありました。そして誰とも口をきいてはならない、とも命じられていました。マロリー家の長男として生まれたけれど、望まれた命ではなかったからです。母上と愛人との間に生まれた子だったそうです。父上様は、自分にまるで似ていない貴方を憎みました。次に生まれる子が妹であれば、貴方・・・

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チョークペインティング

17/08/01 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

 昼の休み時間になると、夏也は黒板に向って、せっせとチョークをはしらせた。
 たちまち黒板の上に、クラスの生徒の顔が浮かびあがった。彼はそれからも次々と、クラスメートたちを描きつづけた。それはじつにリアルで、陰影もまた巧みで、なかなかどうしてチョークひとつでよくここまで描けるものだと目をみはるほどの、素晴らしい出来栄えだった。
 しかし教室のみんなは、絵には感心するものの、それの作者の・・・

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書き足した言葉

17/08/01 コメント:1件 月影輝

コツッ…コツッ…コツッ…

指揮棒が、机の上をリズミカルに踊る…

「…。」
「ほー。俺の授業に居眠りね」

周りの視線が痛い!

「そんなに、俺の授業は眠いか?小柳」

昨日夜遅くまである事で考え耽ってたせいで、我ら2A担任の溝口の授業中に…

「いえ…すみません」
「ほんと、お前という奴は…」

不・・・

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黒板は今日も緑

17/08/01 コメント:1件 miccho

「この世は虚構と欺瞞だらけだ!」
 隣で六車正和が騒いでいる。
「いいから早くチョーク片付けろ」
 同じ日直当番としてなすべき行為を指示してはみたが、この男が聞き入れる様子はない。
「青信号なんて言いつつ、青くないではないか!」
 それは日本人が元々青と緑を区別していなかったからでは?
「それに」
 正和は俺にツッコむ暇も与えずまくし立てる。
「黒板・・・

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アナログメール

17/07/31 コメント:1件 八王子

 最初は面倒ごとを押し付けられたものだと思った。
「こらー、高山ー。ちゃんと机くっつけて教科書見せてあげるんだ」
「はーい」
 教師にそう言われて、仕方なく僕は机を引きずって隣の席とくっつけた。
「あ、あの、ありが、ごめんなさい」
 隣の席の阿部さんも遠慮がちに机を引きずって僕の机とくっつけようと寄せるが、僕たちの机の間には手を縦にすれば通るような隙間が空いている。<・・・

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黒板

17/07/31 コメント:2件 風宮 雅俊

「おはよう」
 体育会系の部活の子は、みんな真っ黒だ。
「夏休みの宿題終わった?」
 後ろの席の映美が聞いてくる。
「家でトドをやってた奴に見せる宿題はありません」
 演劇部で色白なのは映美だけだ。文化祭のシナリオを考えるとか言って、炎天下の土手で発声練習している時も来ない。声量を決めるのは体力だと言う事で炎天下のグランドで陸上部と競ったりした時も来ない。そんな奴に見・・・

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万国黒板博覧会

17/07/31 コメント:1件 蒼樹里緒

 おれが生まれてもいなかった大昔、学校の教室には黒板ってもんがあったらしい。
 目の前のでっかい透明なケースの中に、それはかざられてた。クラスのやつらも、すげーとか大きいとか言ってコーフンしてる。そのうちのひとりが、担任の先生に聞いた。
「せんせー。黒板は『黒い板』って書くのに、どうして緑っぽいんですか?」
「最初は黒かったけど、黒板を作るための材料とかの問題で、真っ黒よりも緑色・・・

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