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第139回 時空モノガタリ文学賞 【 旅 】

今回のテーマは【旅】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2017/08/28

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は3作品とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2017/07/03〜2017/07/31
投稿数 84 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数 3
総評 アイデアにオリジナリティが感じられ、着眼点がユニークな作品もあって面白かったですが、全体的にはやや苦戦気味だった気がします。一般的で書きやすそうな間口の広いテーマと思いきや、2000字に収めるのは少々難しいテーマだったかもしれませんね。完成度という点では他のコンテストに比べ、少し甘い作品が目立ちました。逆にまとまりはよくても、内容的に既視感を感じる作品も多く、この両者を比較しての評価は好みの部分もありなかなか難しいところでした。最終選考作品の『そして帰途へ』は「ネット募集の銀行強盗計画」に加わった二人の、テンポのいい洒落た会話と、そこに微かに漂う空虚感とふと帰りたくなる刹那が印象的でした。ストーリー性よりも、場の空気感や会話の描写が他作品にはない印象を残す、四島さんらしい作品だと思います。『旅の浮き木』は、雁の浮木の逸話を彼女の仕事をうまく例えとして用いているところが良かったです。誰かの役に立てることは彼女にとって嬉しいことだったのだと思います。『組み立て式の夢』は、殺風景な近未来的風景を背景に、若者の未来への期待や失望が繊細に浮き上がってくるようでした。謎の少女アサヒの存在と彼女の謎ついては、過去から来たのだろうという推測ができるくらいではっきりとは分かりませんでしたが、雰囲気と世界観が魅力的だと思います。『river』は、新しい自分の名前を受け入れる過程に説得力を感じました。川が徐々に水質や名前を変えるように、人間も、少しずつ変化を重ね留まることはないのでしょう。人生という旅と自転車での小さな旅、二重の意味で旅のテーマが生かされているのも良いですね。『君の鳥は海を泳げる』は、突然日常に紛れ込んだ違和感がうまく表現されていると思います。「ペンギン」は鳥なのに空を飛べず、海なら高速で泳げるという摑みどころのない、面倒さと愛嬌さを兼ね備えた、曖昧だからこそ受け入れがたい存在(あるいは内面的な葛藤)なのでは、と読みながら想像しました。そうした白黒つけがたい事象は日常においてかなり多いような気がします。ペンギンの不在を連想させる溶けゆく氷と飛行機のラストシーンも印象的でした。『感覚シェアデバイス』は、「冒険」の「感覚」を他人とシェアするというSF的な設定から連想されるポジティブなイメージを裏切る内容でした。「感覚」への対応の仕方は個人差があり、その快不快を決めるのはその人個人の資質によるのですね。「冒険」というのも、一般的には素晴らしいことのようですが、冷静に見れば単調さや苦しみの連続だと言えるのかもしれません。次回も良作を期待しております!

入賞した作品

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時計のない旅に出る

17/07/30 コメント:4件 みや

その駅は銀色に光り輝いていた。まさしく近未来と呼ぶに相応しいスタイリッシュなその駅は、列車で宇宙旅行に行ける駅だ。

列車で宇宙旅行だなんて、遠い昔に古いアニメーションで見た記憶があった。レトロな列車で宇宙を旅する少年、と彼を見守り導く美しい女性ー
思い出すだけで中年の私も少年の頃に戻った様に胸が踊る。そんな夢物語が、今では現実のものとなっている。そのアニメーションの作者は未来が・・・

6

旅人の哀歌

17/07/29 コメント:9件 待井小雨

 物置部屋で一幅の絵を見つけた。
 手前から奥に向かい、遠くの山への道が長く伸びるだけの絵だ。その道に、馬を連れてこちら側に背を向けて歩く男の姿が描かれている。これは旅人の絵だ。
 何となく惹かれ、書斎に飾る事にした。
「傷んでいるな」
 長い事放置されていたのだろう、くすんだ色が気になった。空しい色合いの絵に指を伸ばす。と、触れた部分が仄淡く色づいた。
「しまった」・・・

1

マザー

17/07/03 コメント:4件 瀧上ルーシー

 蒸し暑い放課後、校庭で数人の生徒が丸まっているぼくの背中を何度も蹴りつける。身体で覆い被さって黒いランドセルを守った。この中には絶対にお母さんに見せなければいけない物が入っているのだ。敵達にランドセルを取り上げられたら、高い確率でそれは破り捨てられる。ぼくは敵達が飽きるのを待った。背中は痛いが彼らは限度というものを弁えている。やり過ぎれば親に密告されるということを知っているのだ。背中を踏みつけら・・・

最終選考作品

1

そして帰途へ

17/07/31 コメント:2件 四島トイ

 歌とか歌ってよ、と助手席の女子高生が不貞腐れる。
 夜の山道には街灯の一本もなかった。ガードレールすら途切れ途切れの不慣れな道には、微かに不吉な香りが漂っている。こんな夜更けだというのに、どこかでサイレンが聞こえたような気すらする。サイドミラーにはただただ暗闇しか映っていない。ハンドルを握ったまま「歌と言われても」と口にした自分の声の自信のなさが、泣きたくなるほど滑稽だった。少女の膝に置か・・・

3

旅の浮き木

17/07/31 コメント:9件 むねすけ

 私は寝てばかりいた。
 目のきかないあたしのことを、父さんはかわいそがってなにもさせなかったから、あたしは日がな寝っ転がって遠くに音を探したり、歌を唄い過ごした。
 外に出たいと、言ってみたこともある。家の仕事を手伝いたいと言ったこともある。だけど、父さんはなにもさせてはくれなかった。あたしのためだ、という言葉を強く押し付けてきたけれど、あたしにはどうにも、あたしのためのようには感じ・・・

5

組み立て式の夢

17/07/30 コメント:5件 入江弥彦

 空から降ってきたみたいな煙突が何本も並んで、そのどれもがごうごうと煙を噴き上げている。
 何かを燃やして出たものなのか、はたまた水蒸気か、もしかすると出ているように見えているだけで空の成分を吸い込んでいるのかもしれない。工場は十年前――二〇七七年だったと記憶している――に完全に機械化されてしまったので、本当のところはわかりっこない。
 防犯意識の欠片もないがばがばの有刺鉄線の間を潜り・・・

6

river

17/07/27 コメント:4件 野々小花

 中学三年の夏休み、僕は誰とも遊ぶ気分になれなかった。黙々と机に向かい、宿題を片付けていく。最後に、作文だけが残った。テーマは「旅」だ。クラスの皆は、家族旅行の話でも書くのだろう。そこには、楽しい思い出が綴られているはずだ。でも、僕にはそんな作文は書けない。
 夏休みに入ってすぐ、僕の名前は変わった。両親の離婚に伴い、母親の旧姓を名乗ることになった。十三年間「杉原秀一」だった僕は、一週間前か・・・

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君の鳥は海を泳げる。

17/07/22 コメント:2件 

 僕が知っているその鳥は海を泳げる。
 僕が知っているその鳥は、地面をよちよちと歩く。人間なら二、三歩でつける場所に、彼らはえっちらおっちら、十歩も二十歩もかけて歩く。
 僕の方から触ってみたい気もするけれども、それは条約違反になってしまうからできない。そう言う意味では、僕はここに居てはいけない。
 鳥ではあるけれども、空は飛べない。
 僕は時々それを不憫に思うのだけれど、・・・

1

感覚シェアデバイス

17/07/03 コメント:0件 風宮 雅俊

 モニターアンケートで当たった『感覚シェアデバイス』を装着するとベッドに寝転んだ。スイッチを押すと、起動画面に続いて星の海に浮かぶ地球とその横にメニューが表示された。
「ようこそ、バーチャルトラベルです。本日より『冒険家コース』の選択が可能になりました。免責事項をよく読んだ上、『同意』のボタンを押してからお楽しみください」
 抑揚のない音声出力が免責事項を読み上げている。いよいよ、この・・・

投稿済みの記事一覧

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たびたびすみませぇん、たびのものですが…

17/08/01 コメント:0件 霜月秋介

 S市にある富便町の列車の本数は三時間に一本ほど。路線バスは午前と午後の二回だけ来る。僕はそんな交通の便が悪いこの町の観光案内所に勤めて三年になるが、いつも思う。海と山の美しさだけが売りのこの町に、観光客達はわざわざお金を払ってまで何を求めて訪れるのだろう。自然が豊かな町なんて、この町以外にも沢山ありそうなものなのに…。僕はお金が勿体無いので、自分で旅行なんて行こうとは思わない。

 ・・・

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誕生日を覚えてる。でも、伝えるすべもない。

17/07/31 コメント:3件 滝沢朱音

 古びた誕生日占いの本をめくる。三六五日それぞれの頁にはあちこちに名前が記されていて、どれも旅の途中で会った友達≠フはずだけど、正直あまり覚えていない。だけど今日、八月三十一日の頁だけは別だ。
 航くん――旅の途中で私の誕生日を尋ねてくれたのは、彼だけだった。

 転校生として紹介されるとき、いつも私は無愛想を演じた。あの夏の日もそうで、チャイムが鳴ると私は周囲に構うことなく鞄・・・

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道草しながら、馬の旅

17/07/31 コメント:0件 冬垣ひなた

 私は人間が苦手ですが、馬はとても好きなのです。
 トロくてドジな私ですが、馬はひゅうひゅうと私を乗せて気持ち良く駆けてくれます。
 私がバカで分からずやでも、馬は愛くるしく長い顔で頬ずりしてきます(たまに鼻水や涎をつけて服を台無しにしますが)。
 風になびくたてがみや滑らかな体毛に、しなやかな筋肉質の体躯と力強いひづめ。馬は時に、俺様といわんばかりに我が儘で、誰もいないとヒヒー・・・

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見つからず

17/07/31 コメント:1件 タック

一年前、母を亡くしました。やせ衰えた病死で、私を育てた苦労が体を蝕んでいたのだろう、そう思わせる末期でした。父を亡くし、母一人、娘一人の寂しい家庭でしたから、半身を千切られたような思いがし、目を腫らして日々を過ごしました。私は三十三になりますが、友人もおらず、恋人もおらず、苦痛を明かせる親しい人もいません。そのために人生をともに過ごし、心を許せた唯一の相手だった母を亡くした衝撃は、計り知れないほど・・・

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バナナを食べる熊

17/07/31 コメント:0件 そらの珊瑚

 とある日曜日。秋の空は気持ちよく晴れ、秋の雲も気持ちよく整列していた。溜まっていた洗濯物をベランダに干し終えた時だった。網戸越しにドアチャイムが鳴るのが聞こえた。
 部屋へ戻り、キッチン横の壁に付けられたモニターの通話ボタンを押す。
「はい」
「おはよう。ビビアン。ちょっと近くまで来たから寄ってみたんだけど」
 モニターの小さな画面に映っていたのは、ニューヨークヤンキー・・・

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さっさと戻れ

17/07/31 コメント:2件 宮下 倖

 光と衝撃と闇を一気に感じたあと、恐ろしいほどの静寂がやってきた。
 おそるおそる目をひらくと、俺のまわりは真っ白な世界だった。
 あ、死んだなと思う。
 今までずいぶん無茶と好き勝手をしてきた。十代で死ぬとは思わなかったが、これも寿命かと妙な諦めがある。よく憶えていないが事故に遭ったのだろうか。
 まあ死んでしまったものは仕方ない。ずいぶん殺風景だがここが地獄か?(俺が天・・・

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モテない奴には旅をさせろ

17/07/31 コメント:2件 plum

 もしもあなたが独身で、異性との出会いを求めているならば、旅を強く勧めたい。友人に紹介を頼んだり、結婚相談所に登録したり、合同コンパや婚活パーティーに参加する必要など全くない。ただ気軽に旅へ出ればよいのである。少々のお金があれば他に何もいらない。必要なものは全て旅先で手に入る。ましてや異性との出会いなんてありすぎて、必要以上と言ってもよいぐらいだ。
 私自身がその証拠である。スマートフォンの・・・

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週末ヒロイックサーガ

17/07/31 コメント:1件 小高まあな

「はい、お土産ー。まわしてー」
 週明け、少し憂鬱な月曜日の会社。隣の席の米原さんからお菓子の入った箱を渡された。読めない記号のような言語でかかれたパッケージだが、その下に小さく日本語が書かれている。
「ゴブリンが作りますです、アクリーセスのクッキー」
 読み上げる。
「日本語、不自由だよね。でも美味しいよ、試食して買ったし」
 米原さんは、いつもの朝と同じようにゼリ・・・

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地平線を越えろ

17/07/30 コメント:2件 本宮晃樹

 既知宇宙の最果てで〈マジックマッシュ〉は今日も繁盛していた。宇宙はあまりにも広く、人びとはあまりにも腰抜けだからだ。
〈マジックマッシュ〉は〈プロスペクター〉たちを相手にまずい安酒を出す憩いの場である。年季の入った太陽光発電システムを全方位に貼りつけ、空気はここ数世紀ほど二酸化炭素フィルターを通った再使用のみ、水は客が足した用を失敬してろ過したしろもの。まさに自給自足だ。
「おい、俺・・・

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エンカウンター

17/07/31 コメント:0件 夏野夕暮

 『勇者』。
 それは剣術と魔術を極めし救世主とされている。
 太平の世が長く続き、この言葉も形骸化していた。だが悪しき力で世界を掌握せんとする『魔王』が現れ、その手先である魔獣が各地で跋扈するようになった。
 世界は危機に貧し、人々は勇者の到来を待ち望んだ。

 私の旅の相棒、ヴァン。若き天才と名高く、彼の剣術と魔術の冴えには並ぶ者が居ない。正式に勇者と認められるの・・・

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旅の行く先

17/07/30 コメント:2件 日向 葵

 私は、からっぽの人間でありました。
 どこかに人間らしさというものを置いてきたのか、お前には何もないと昔から言われて参りました。
 
 「人を知りなさい」

 父から告げられた言葉は、もうこの家に私の居る意味は無いのだと悟るには十分でありました。そんな厄介者の私が家を追い出されるのは、むしろ自然なことであったのかもしれません。
 ただ、両親にも一匙ほどの良心が・・・

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旅の記憶

17/07/30 コメント:0件 つつい つつ

 嘘みたいにガタガタと揺れ、キーキーとものすごい音を立てながら進む列車に、僕はネジの二、三本もはずれてんじゃないかと心配になった。乗り合わせた人達は気にならないらしく何事もないように大人しく座っている。
 降り立った村はガイドブックにも載っていない、ただ果樹園が広がるだけの辺鄙な村だった。これまでリュック一つで外国のいろいろな町や観光地を巡ってきたけど、ふと、全く何の情報もないところに行って・・・

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旅人

17/07/30 コメント:4件 田中あらら

 彼は詩人であり、思想家であり、旅人だった。招かれればどこへでも行き、詩を朗読し、彼を招いた熱き思いの人々と語り明かした。出された食事や酒は、ささやかであろうと豪華であろうと、なんでも感謝して食べた。持ち物は少なく、ずた袋に入っているものは着替え1組、手帳、数冊の本が全てであり、定住地はなかった。タゴールの「我家のないものは、全世界を住処とすることができる。友無き者には他人はいない」の詩文に感銘を・・・

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旅する男ディン・ディディン ―ディン・ディディン旅行記を書く

17/07/30 コメント:0件 mokugyo

私はディン・ディディン。世界中を旅している者だ。旅では、主に歩く。喧噪の街中も、灼熱の砂漠も、極寒の大地も、きらめく海辺も、自分の足で歩いてみるのがいい。車や電車も飛行機も捨てがたいが、やはり「自由に歩く」という行為は人類に許されたぜいたくの一つだろう。健康にも良い。


私は大都会の街中を歩いていた。大通りには、ミュージカルを観終えた観客たちの群れがリズムカルに歩く。街の片隅、・・・

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着いたところは……

17/07/30 コメント:1件 忍者猫

 物心付けば、粛々とレールの上を流れている状態だった。いや、動く歩道の方が正しいか。
 進路に自分の意思は無く、ただ流れるに任せるだけだ。
 気付けば何もかも誂えられ、与えられ、でもそこに何一つ自分の思想は無く、与えられるまま身に付けるしかなかった。
 もうすぐここを出て行くが、それすら自分の意志ではない。
 さてはて、この先自分には、何かを自分で選ぶ事は出来るのか、いや自・・・

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彼のために旅に出る

17/07/30 コメント:10件 あずみの白馬

――7月某日 土曜日 午前7時40分 東京駅20番線

「美菜子さん、元気でね!」
「ありがと!」

 ホームには、白いボディに銀と青のラインが光る新幹線「はくたか553号」7時48分金沢行きが発車を待っている。
 その前で、大学の文芸サークルで一緒だった、大学2年、同級生の美菜子が友達の見送りを受けていた。急に家業を継ぐことになり、中退することになったらしい。・・・

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恋すれば旅の始まり

17/07/29 コメント:2件 忍川さとし

 姫のバッグを、今誰かが持ち去ろうとしている。
 だから俺はホームを飛び降りたが、線路を越えながら、迫る電車に仰天した。
「ぎゃあっ――――!!!?」
 そして人々の視線が痛いのが、俺が間一髪対岸のホームに飛びつけた事を教えてくれた。
「ふうっ…………」
 ともかくバッグは無事だった。少し向こうに、走り去る犯人の背中が見えた。俺は構わず、やや大きめの桜色のボストンバッ・・・

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11のたび

17/07/29 コメント:1件 いちこ

あるところに、足袋を履いた猫がいた。
彼はマタタビが大好物だった。
あまりに好きすぎて、あるとき、彼は旅に出ようと考えた。
隣町の猫に、片開きの戸から出てきたおじいさんがとても上質なマタタビをくれたと聞いたことがあったからだ。
彼は、自分もそんなマタタビを得て、度々自慢してくる隣町の猫をを見返してやろうと思った。
いや、何やかんやと理由をつけても、結局はマタタビがほし・・・

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ツイスミ不動産 物件2:八季庵号

17/07/28 コメント:0件 鮎風 遊

 真夏の昼下がり、サファリキャップを粋に被った紳士と、キャペリン帽子のつばの奥から微笑む貴婦人がツイスミ不動産を訪ねて来た。Iと名乗るこのシニアカップル、子供たちはとっくに巣立ち、親の介護も昨年終えたという。きっとこの歳に至るまで色んなことがあったに違いない。だが今は人生終盤の自由を満喫しているようだ。
 応対に出た笠鳥(かさとり)課長とスタッフの紺王子(こんおうじ)を前にして、夫人はおもむ・・・

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旅の始まり

17/07/28 コメント:0件 榊真一

普段から使っているスマートフォン。
私は今まで付いていたSIMカードを抜き取りもう一枚のSIMカードを差し込んだ。
メールを確認した私は迷いもなくアウトストラーダを北西の方角へと進む。
「ありがとうございました、さようなら」
有料道路は如何にもといった機械的音声で私を一般道へと送り出す。
ミラノマルペンサ空港から一時間程のドライブはこの「コモ」が目的地であった。

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ご婦人とやさしさのたび

17/07/28 コメント:0件 日向夏のまち

 和室の隅に黒々の仏壇がひとつ。
「……。」
 手を合わせる白い和服のご婦人がひとり。
 ため息をひとつ。初夏の陽気に溢れかえる縁側を見やります。光と影、モノクロのコントラストに、目を細めました。
 そうして、四分と二十六秒ののち。
 ずばっと音を立て豪快に立ち上がったご婦人は、半世紀も前に新婚旅行で使って以来の旅行かばんを引っ張り出しました。

 翌日の・・・

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内向的旅行

17/07/27 コメント:2件 篠崎ショウ

 旅行が趣味の友人がいる。彼は凄くフットワークが軽い。国内だけじゃなく海外までも時々足を運んでいるのだから。
 何故そんなに旅行するのかと聞いたら、彼曰く「新しい発見があって楽しい」からだそうだ。
 そんな彼を私は羨ましく思う。だって、私には未知の土地へ足を運ぶ勇気なんてないから。
 私は自他共に認める出不精だ。外に出て行く先は近くのコンビニやスーパー、ドラックストアぐらい。たま・・・

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自分を探す旅

17/07/27 コメント:0件 t-99

三年間勤めた会社をやめた。
わずらわしい人間関係にピリオドを打つ。
バックパック片手に、自分探しの旅にでた。
ホームに到着した列車に飛び乗る。
どこに向かうべきか、自分自身に問うていた。

【そうだ、海外へいこう!】

ヒッチハイクで金髪女性と運命の出会い。
そして、困難を乗り越え互いに愛を誓う。
これこそ、フォー・エヴァー・ラブ。

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無粋な旅の前に

17/07/25 コメント:0件 

 近所の書店。猫耳フードのパーカーを着て旅行ガイドの棚で唸っているのはわたしの友達のネコミちゃんだ。
「ふむー。……あ、ラッシー。おはよー」
 そばまで寄ったわたしに気づく。
「おはよー、ネコミちゃん。どーしたの、眉間にしわを寄せて唸っちゃって」
「えっ! わたし、眉間にしわが寄ってる?」
「口なんてへの字に曲がってる」
「ふむー。実はわたし、旅に出ようと思って・・・

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Golden good morning

17/07/25 コメント:0件 和泉結枝

 初めまして。このメッセージを読んでくれているということは、僕はもう動けなくなっているね。このメッセージに興味を示してくれた、あなた。あなたがどこの誰なのか、僕には知ることが出来ないのが残念だよ。でも、わがままだと思うけれど、僕はあなたに、僕について知ってほしい。ちょっとした贈り物もあるから、どうか暇つぶしか何かと思って、このメッセージに最後まで付き合ってくれると嬉しい。
 僕は、今はもう遥・・・

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タビダチノウタ

17/07/25 コメント:2件 犬塚比乃子

 息を吐いた。それは鈴木勝彦自身のこれから人生における生命活動には不必要なことだった。
 自発的に呼吸をすることが難しくなってから数年。病に臥せってからというもの酸素マスクをはずしたことがなかった彼にとっての最期の呼吸は深く、長く。しかし、街に唯一の入院施設がある大学病院の寝台(ベッド)の周囲にはべる周囲の人びとからしてみればひどく短いものに感じられた。
 五十二歳の彼は、中学校で数学・・・

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テンジョーさん 〜リカちゃんとちゃうで

17/07/25 コメント:0件 秋 ひのこ

 どこをどうみてもリカちゃん人形なそれが、野太いおばちゃん声で喋った。
「長旅お疲れさんでした。この度は『テンジョーさん』のご利用おおきに、ありがとうございます。最初に言うとくけど、リカちゃんちゃうで。マイちゃんや」
 ロサンゼルス国際空港で、アサミは人形を片手にスマホでアプリを起動させたところである。
「今日から5日間お世話させてもらいますよって。早速やけど飴ちゃん食べる?」<・・・

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夢の国のアリス〜瞳に映る憧憬〜

17/07/23 コメント:2件 浅月庵

 虚ろ目。浮遊感。私は横たわり、目蓋がシャッターを切ってそのまま開くことをやめてしまいそうな視界のなかで、両親の後ろ姿を見つめた。

 そろそろ旅行にでも行きたいわねぇとママが呟き、今にも吐き出されそうな溜め息を、ビールで喉に流し込んだ。
 今度の大型連休に海外でも行くかと、パパが煙草を咥え煙を吐き出すと、宙へと燻らせた。

 テレビ番組に触発されたのだろう。画面には・・・

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ナビゲイター

17/07/23 コメント:0件 木原式部

 長い旅になりそうだな、と僕は助手席に座っているリカに声を掛けた。リカはうつむいたまま何も言わない。すっかり無口になってしまって、と僕は思った。

 出会った頃のリカはこんなに大人しい娘ではなかった。僕が初めてリカを見たのは大学に入学したばかり頃だった。学生の波でごった返すキャンパスの中でリカは笑いながら他の女の子としゃべっていた。僕はリカの笑顔に一目ぼれして、どうやって声を掛けようか・・・

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逃げ水と逃げない水

17/07/23 コメント:0件 入江弥彦

 ポケットにいれた小銭が、じゃらりと擦れる音がした。
 光が差し込むたびにホコリが舞っている様子が見えて、息を吸い込めば湿ったカビのにおいがした。額を流れた汗がぽたりと床に落ちる。僕は耐え切れなくなって冷たいお茶を飲んだ。お母さんが、出かける僕を水筒と一緒に見送ってくれたのだ。
 僕よりもたくさんの汗をかいている体の大きなアキヨシは、僕とエリの顔を見てから地面すれすれにグッと拳を突き出・・・

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「いいね!」の先に何がある?

17/07/23 コメント:0件 キップル

「SNSに写真をアップねぇ…。インストールしたけど、何を上げたらいいんだろう?」

友達に勧められて、今流行りのSNSを始めた。あまりピンと来なかったけど、とりあえずペットの犬の写真を上げた。何か反応があるかとドキドキしてたら、すぐに通知が来た。

「いいね!」

SNSを勧めた友達からだった。その調子で次々と反応があり、「いいね!」の数は10を越えた。なんだか・・・

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カタクリの花

17/07/23 コメント:0件 miccho

 かれこれ一時間は歩いただろうか。幸の顔色も出発前より土気色が増している。
「このあたりで少し休むか」
「頂上までもう一息よ。一気に登ってしまいたいの」
 幸は変なところが強情だ。こうなったら意地でも頂上まで登りきるつもりだろう。
 康男は自分の胸ポケットに手を当てた。僅かな凹凸の感触が返って来た。出発前、主治医の中川から「もし途中で容態が悪化したらこれを」と渡された薬があ・・・

2

感情の旅

17/07/22 コメント:2件 アシタバ

 田村玲二はかつて喜怒哀楽の感情を切り捨てるのに成功した。そして、高校に行かなくなった引きこもりである。
 心配する母親とも顔を合わせない彼は、今、部屋のベッドに横たわり、じっと目を閉じていた。笑い方も泣き方も怒り方も忘れて、とうとう動くことすら忘れてしまったかのようにも見える。
 しかし、これには理由があった。彼の頭の中では今、ある旅の光景が映っているのである。

 事の・・・

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卒業旅行

17/07/21 コメント:2件 八王子

 日曜日のアウトレットパークはどこの店も混雑している。
「ごめんね、付き合ってもらって」
 ミチルはここまで車を出してくれたソウタに申しわけなさそうに謝る。
「別に構わないよ。ミチルが新しい一歩を踏み出すための大切な準備なんだから」
「そう言ってくれるのはソウタだけだわー。ほんと愛してる」
「はいはい」
 軽い愛の言葉を手を振るようにして払うと、ミチルが笑顔で手・・・

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ライフツアー

17/07/21 コメント:0件 猫春雨

 危篤です。
 そう連絡があって、おじいちゃんの居る病院に、お母さんと駆けつけた。
 やつれた口元には酸素マスクが取り付けられ、おじいちゃんの胸がゆっくりと上下している。
 表情は穏やかで、とても危篤状態なんて信じられなかった。
 それでも先生は今夜が山でしょうとつぶやくように言う。
 私とお母さんはおじいちゃんの手を握ったけれど何も口に出すことが出来なかった。

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trip

17/07/20 コメント:0件 薬包紙

 あとは406号室か、智は踊り場から向かい合わせに建つ四号棟を見た。
 薄汚れた年代物の社宅である。当世風の瀟洒なマンションなどが周囲に立ち並ぶ中、くすんだ外壁の社宅はいかにも前世紀の遺物めいている。
 だが、部屋の窓には灯りがともり夕食時の和やかな活気があたりの空気にも満ちていた。食器のガチャガチャとぶつかり合う音、香ばしい焼き魚の匂い、テレビをみている子どもの笑い声。そんなものが漂・・・

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悔しいけど愛、ということ 

17/07/19 コメント:0件 秋 ひのこ

 東名高速を東京から西に下ると、新幹線と違い富士山がほぼ正面に見える。大井松田ICの手前にきたところで、すっきりと晴れ渡る空に悠然と現れた名峰に並子はわざと「わあ、富士山」と声をあげ、ちらりと隣を見やる。
 中二の娘、彩は脇目もふらず、スマホに夢中だ。
 東京から京都に行くにあたり、何を思ったのか車で旅することにした。1泊2日、母娘のドライブ旅行である。
 富士川の河口に開ける富・・・

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サソリのサラダ

17/07/19 コメント:0件 maimo

「何か、違うんだよなあ」

その企画書は、私が金曜の夜から週末にかけて取り組んだ自信作だった。書類がデスクにぽんと返されたとき、褒められることしか想定していなかった私の頭は、真っ白になった。

「きみらしく全体的にはとてもよくできてるけど、何と言うか、面白味がない」
と、上司は言った。

春に三十歳になった。ゴールデンウィークはどこへも行かなかった。仕事に・・・

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輪廻という旅

17/07/19 コメント:0件 篠崎ショウ

 少女には母の記憶にいい思い出が全くない。
 その日もそうだった。少女が数学の小テストでで56点という芳しくない成績を出したことが、母親の逆鱗に触れた。
 少女は母親に無理矢理車に押し込められ、車はそのまま発進した。
 車中では少女に対し母親はありとあらゆる否定の言葉をかけ、少女を罵る。いつものことだ――少女が物心ついたときからこのヒトはいつもこうだ。
 少しでも少女が口答・・・

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初恋は、時空を越えて…

17/07/18 コメント:0件 月影輝

その生徒は、いつも窓に腰を掛けて、空を眺めていた…
「ねぇ、そこにいると危ないよ?落ちちゃうよ?」
私が彼にそう言っても、
「平気、こんなの落ちないって!」
「やめて!危ないから!」
彼は、足だけを窓の下に掛け、逆さまになり…
「ほらね!落ちてないだろ?」
心配する私をよそに、悪戯っぽい笑みを向けた。他の生徒は、『またか…』と一瞬チラッと彼を見るが、また元・・・

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一緒に見たかった景色

17/07/17 コメント:0件 要崎紫月

 三年生に進級する前の春休み、僕は父の勧めでアメリカ旅行に単身で行く事になった。
「リョウタ君はスゴいのね」
 学校帰り、並んで歩くヒナコちゃんが言う。
「一緒に行けたら良いのに。でも駄目ね」
「動画撮って見せてあげるよ」
「ううん、やっぱり自分の目で見たいな」
 そう言うと、子供っぽくにっこりと笑った。
 僕達は付き合っていなかった。けども、お互いの事を・・・

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旅芸人の娘

17/07/16 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

 僕が小学校3年のとき、白戸かなえという女の子が転入してきた。くるまえから、その子が旅芸人の子供だと、生徒たちは教室で噂しあっていた。僕の家から、河ひとすじ挟んだ向かい側にある、イゲタ座という大衆演芸場に、芝居公演にやってきた一座の娘なのだ。
 みたところは、小柄で、とてもおとなしそうな生徒だった。
 イゲタ座は、いつも向こう岸にみえているので、どんな建物かはしっていた。遠方からも、こ・・・

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無限に広がる旅の一つ

17/07/16 コメント:0件 村崎紫

僕は絵を描くのが好きだ。
思うままに描ける魅力がある。自分で生み出したものが目に見えて分かる。何より楽しい。そういう所が好きだ。

数日間見知らぬ地に宿泊し、そこの風土、歴史を集団で学ぶ。そう、今日は修学旅行である。初めての修学旅行ということもあって、周りはそわそわしながら大きな船に乗った。こんな大きな船で大丈夫なのだろうかと不安になったが、現代の技術が発達していることを信じて僕・・・

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花束の代わりに君に

17/07/16 コメント:0件 かわ珠

 週に一度、僕はお見舞いにいく。それはここ三カ月、一度も欠かしたことはない。
 蛍光灯の明かりが反射するリノリウムの床も、消毒液の匂いも、カラカラと医療器具を運ぶ音にも、随分と慣れた。人の多いロビーを抜けて、やたらと大きな音で動くエレベーターに乗って、五階で降りる。ナースステーションの前を通って、見慣れたいつもの看護師さんに挨拶をする。そのナースステーションの前に飾られていた花の香りが、ふわ・・・

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いちのためのいち

17/07/15 コメント:0件 屋根裏

 これは、僕が僕を、あなたがあなたを探す旅。
 
 
 蒼
 
 例えば、ひとつの絵を完成させるのに、どれだけの色が必要なのだろうか。
 例えば、その絵に落とされる蒼をつくるのに、どれだけの色が必要なのだろうか。
 例えば、その蒼を選ぶまでに、どれだけの悲しみが必要なのだろうか。
 例えば、その悲しみを得るまでに、どれだけの喜びがあったのだろうか。<・・・

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日記という名のタイムマシーン

17/07/14 コメント:1件 笹岡 拓也

母さんの葬式が終わり、四十九日の集まりもひと段落ついた頃、姉ちゃんが実家の片付けを一緒にやろうと声を掛けてきた。しばらく有給を取っていなかった俺は、これを機に5日ほど実家に帰って姉ちゃんと片付けることにした。
「結局さ、この家管理できないから売ろうと思ってるんだよね。悠太はそれでもいい?」
姉ちゃんは結婚してからサッパリした性格になった。元々何も捨てることができなかった人間が、愛着溢れ・・・

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旅に出よう

17/07/13 コメント:1件 つねこたり


旅に出ようって言われたから、嫌だよって答えた。

「たったの三日間でも? 」
「三日間でも嫌だよ」
「親から逃げられるんだよ」
「親は嫌いでも家は私を守ってくれるから」

「あと、別に親は嫌いじゃないよ」そう付け加えた。
彼は黙ってしまった。表情を一切変えずに。
旅は嫌いだ。家から離れなければいけないから。生きるために必要な外出ではない・・・

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連絡船の幽霊さん

17/07/13 コメント:2件 あずみの白馬

 北海道と本州を分け隔て、何処か寂しさが漂う、津軽海峡。かつて青函連絡船が函館と青森を結んでいた。

 私、松嶋美咲は、高校に通う傍ら、東京にある実家のお寺で巫女をしている。亡くなった方の供養と、霊を成仏させるのが仕事だ。
 今日は、檀家さんから除霊の御礼にと旅行券を頂いたので、せっかくなら遠くへと思い、初夏のさわやかな風がほほをなでる、函館までひとり旅に来ていた。

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砂漠の夜話

17/07/12 コメント:0件 忍者猫

 砂漠のど真ん中、野営の火を焚きつつ数人の人間が座っている。
 東から、交易品を運んでいる途中の隊商の面々は、何やら疲れたような怯えたような雰囲気で、黙って炎を見ている。
 今朝までは、砂嵐に閉じ込められ破棄された村で二十人ほどの集団で野営していたが、先を急ぐ彼らは砂漠へ出て行ったのだ。
 ある程度距離を稼いだ後、野営跡を見つけた彼らはそこで休みを取った。食料はやや心もとないが、・・・

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旅の写実

17/07/12 コメント:0件 ケイジロウ

 眠くなったら寝袋にくるまり、腹が減ったらおにぎりをかじって、喉が渇いたら水を飲み、寂しくなったら花を見て、星を見ながら架空の人物との論戦をブツブツと繰り広げる。そして、朝が来たらまた靴ひもを結び、痛い足を引きずるようにして歩き出す。
 そこにたどり着いたところで何もないことなど知っている。
 「彷徨」って単語を用いれば僕の歩くという行為が社会になんとなく受け入れられそうで、なんとなく・・・

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帰らない

17/07/11 コメント:0件 紫藤


「ねえ、あんた。気付いてないの?それって犯罪よ」

 女が言った。俺に向かって言ったのだろうか。今ここには女と自分しかいないのだから、そうなのだろう。ただ、俺には全くもって身に覚えのない言葉だった。
「何ですか急に。犯罪とか、別に俺、何もしてませんけど」
 答えた俺に、女は鼻の頭に皺を寄せて、まるで汚物を見るみたいな目で睨みつけては「フン」と鼻を一つ鳴らした。

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旅の醍醐味とは

17/07/10 コメント:0件 忍者猫

 地球から千六百年光年先にある、ダリア星系まで行くにあたって、当然恒星間旅客船に乗るのだが、それにあたって、連れが疑問を呈してきた。
 曰く、
「パーッと、一気に向こうの星系まで行くんじゃないの? 途中で待ち時間があるって、なんか航空旅客機黎明期みたいだ」
 どうやら連れは、辺境星域探査船や一部星系の軍船みたいに、ワープとかジャンプ航法で一気に飛ぶものばかりと思っていたらしい。<・・・

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夜汽車

17/07/09 コメント:0件 井川林檎

 「さっ、謝って」

 車掌は言う。

 この人は、あんたより大変な目にあいながら、頑張って生きている。だから。
 「そこをどいて座らせてあげなさい」

 夜行列車の窓の外は暗黒である。
 ぼんやりとした白い灯りの下で、車両は複雑に揺れている。
 真夜中の汽車だというのに、どういうわけか満席だ。

 わたしはロングシートに座っている・・・

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オレンジ色の切ない記憶

17/07/09 コメント:0件 喜久之湯

 毎年夏になると、ふとしたことでに脳裏に浮かぶ遠い日の思い出。私は記憶をたどり、時間旅行を楽しむ。何故か覚えているのは、ちょっと切ない場面ばかりなのであった。かつての自分の姿を背後から見守っているかのような、まるで見送りでもしているような視点の立ち位置が、そう感じさせるのであろうか。

 ギラギラと白く眩しく照りつけていた日差しは、お盆を過ぎる頃になると少しオレンジ色っぽい優しい輝きに・・・

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私の心の旅

17/07/09 コメント:0件 seika

いつか私は旅に出るんだ・・・。洗いざらしのジーパン穿いて、男物のシャツ上着代わりに羽織って、長い髪を靡かせて、そしてボストンバック持って・・・
いつの頃からかわたしはそんなことを夢見ていた。いつか私は旅に出るお姉さんになると・・・。

家には戸舞賛歌がいる。戸舞賛歌はドイツ文学者。クラシック音楽を聴きながら、珈琲を入れながら、ベートーベンを聞きながらいつでも本を読んでいる。そして・・・

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コウノトリの旅

17/07/09 コメント:0件 林一

 コウノトリが、赤ちゃんを背中に乗せて飛び立った。約10カ月に及ぶ、長旅のスタートだ。

 旅の出発から2カ月後、コウノトリに一本の電話がかかってきた。
「もしもし、こちらコウノトリです」
「あのー、うちに赤ちゃんを届けてるって本当ですか?」
「ええ。あとだいたい8カ月くらいでそちらに到着すると思いますが」
「困ります。私、赤ちゃんなんていりませんから」
・・・

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利府の水神

17/07/09 コメント:0件 浦田かず

 宮城県の利府という町にあるゴルフ場からホームページ作成の依頼が来た。我妻幸太郎がゴルフに精通していることで話は早く決まり、翌日打ち合わせとなった。
 幸太郎は昨年、残業が多く、休みの少ないWEB会社を退社し独立した。趣味の時間を持てるようになり、フォトコンテストに応募するようにもなった。最近は流行りのインスタグラムに日常のふとしたものを撮影し投稿することにはまっている。
 利府へは名・・・

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仕事

17/07/08 コメント:0件 

 簡単なことです、と管理官の男は言った。
 「穴を掘って、埋めるだけの作業です。それを三回、繰り返しているだけなんです」
 目の前には巨大な穴が開いている。血を吹きだしているように、時折、赤黒い土が飛んでくる。
 「全て、手作業で、ですか?」
 普通、このサイズの穴を掘るなら、ブルドーザーやバックホウが必要になってきてもおかしくない。しかし、ここに居る従業員はみな、曲がって・・・

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冬空の旅人

17/07/08 コメント:1件 文月めぐ

 寒い寒い冬の空。星々は分厚い雲に覆われて、その光は地上へは届かない。夜になると北風が一層冷たく吹き、四人の旅人たちはコートの襟を掻き合わせ、少しでも風をよけようとした。
 先頭を歩く長男の淳一郎は、みんなの風よけになっているといいな、と思っていたが、身長が低いせいで、実際あまり役に立っていなかった。
 次男の康二郎は、後ろの二人がついてきているか、振り返りつつ歩いている。
 三・・・

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透明すぎて何もつかめないほど好きになることがあるかい

17/07/08 コメント:2件 クナリ

 彼女は、気がつくと、知らない小屋の中にいた。
 手の中には不思議な形の錠前がある。
 それを置いて、彼女はふらふらと外へ出た。目の前に、レンガ造りのベーカリーがあった。
 記憶がひどく曖昧で、彼女が覚えていることは少ない。しかし、自分は確かベーカリーで働きたがっていた気がする。
 彼女は戸を叩いた。人の良さそうな夫婦が、不思議な顔をしながら、見覚えのない十代後半と思しき・・・

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Secret Seaside

17/07/08 コメント:1件 しおん

波の音が遠くにきこえる。だんだんと近づいてくるようだ。頭の中に砂浜が思い出されて、そこから見える水平線を思った。近づいてくるように聞こえたそれは、私の虚ろだった自我がはっきりとした輪郭をもち、音を鮮明に認識できるようになったからであった。目を開くと、そこにあるのは青い空でも青い海でもなく、真っ白な天井だった。

「あら、おきたの」

少し鼻にかかるような甘い声で耳をくすぐら・・・

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旅の最後、あるいは最後の旅

17/07/08 コメント:0件 ちりぬるを

 目を覚ますと運転する彼越しに見える風景が見慣れたものに変わっていて、私は昔聞いた「家に帰るまでが遠足です」という常套句を思い出した。
「起きた?」
 私が起きることをあらかじめ知っていたかのようなタイミングで彼が尋ね、寝起きの私は黙って頷いた。
 同棲して二年になる彼が突然有休を取って旅行に行こうと言い出した時には驚いたが、三泊の温泉で日頃の疲れは癒されたのだから彼には感謝しか・・・

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旅重なる運命

17/07/06 コメント:1件 残飯

夏休み。俺は陽炎という悪魔に撮りつかれた道路を這うように歩いていた。
蝉が五月蠅い。五月の蠅も五月蠅いが七月の蝉はもっと煩い。
「あと少しで駅だ....」
自分に言い聞かせるように独り言を発しながら向かう。
―この夏、俺は旅をします。そこで新たな景色、雰囲気、匂い。いろんなことを感じいろんなことに出会いたいので―
なんて書置きを家において、俺は今駅に向かう。
「・・・

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かえりみないかえりみち

17/07/07 コメント:1件 蒼樹里緒

 がらごろ、がらごろ。石畳の上を、旅行鞄の四隅に付いた小さな車輪が回ります。その音や拍子が歪に聞こえるのは、鞄を引いて歩く私の機嫌が反映されているせいでしょう。
 姉の困った声が、背にかかりました。
「ねー、なんで怒ってんの? あんたのハムをあたしが食べたから?」
「違います。それは譲ったでしょう」
「じゃあ、あたしが鞄の鍵を前の街に忘れてきて、宿で壊して開けたから?」

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日記の中の旅と女

17/07/07 コメント:4件 W・アーム・スープレックス

 夫に日記をつけろといったのはたしかに私だけど、あんなにこまめに毎日記すとは、さすがに思ってもいなかった。
 IT関係の会社を定年退職した後、家でなにもすることなくぶらぶらしている彼にみかねて、なにか夢中になれるものをといろいろすすめたなかで残ったのが日記だった。   
 とにかくこれだけは二度とみたくないと、長年IT企業でいやというほどパソコンとにらめっこしてきた彼がいうので、それな・・・

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運命の糸

17/07/06 コメント:1件 蹴沢缶九郎

家を出て目の当たりにした光景に驚愕した。道を行く人々の小指に赤い糸が繋がっているのだ。中には糸のない者もいたが、一体これはどういう事だ。人々は平然と歩き、糸の存在を認識していないようだ。どうやらこの糸が見えているのは僕だけらしい。
赤い糸の話は僕も知っているが、これがその糸なのだろうか。ふと、自分の左手の小指を確認すると、いつの間にか自分の小指にも赤い糸が繋がっていた。女性に縁のない人生を歩・・・

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3駅の旅

17/07/06 コメント:0件 しおこんぶ

 「あなたたちが持つ学歴はあなたたちにとって武器にもなるし、重荷にもなる。」
 この言葉を教授から告げられた時私はまだ大学生になったばかりで、この言葉が持つ重みをそれほど理解できていなかった。
 
 大学受験とは本当に無慈悲な制度だと思う。たった18歳の若輩たちがこれから先の長い人生を決める選択をしなければならないのだ。将来使うかどうかもわからないような膨大な量の知識を頭に詰め込・・・

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ねんねの旅

17/07/06 コメント:0件 こぐまじゅんこ

 あつい夏がやってきました。
 はるくんの保育園でも、プールがはじまりました。
 つめたい水のなかにはいると、とっても気もちいいです。
 はるくんは、プールがだいすきです。
 水をパシャパシャかけあって、ともだちとキャーキャー大はしゃぎ。
 プールがおわると、お昼寝の時間です。
 みんなが、スースーねむっているのに、はるくんは、なかなかねむれません。
 も・・・

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最後の出張

17/07/05 コメント:0件 風宮 雅俊

 改札を抜け、人通りが少ない商店街を歩いて行く。使い込まれたビジネスバックと出張先のスーパーで買ったご当地商品をぶら下げて、住宅街のはずれにある我が家まで。あと、もう少しだ。
 この道を歩くのはいつも暗い時間、夜が明ける前に家を出て帰りは暗くなってから。近所にどんな人が住んでいるとか考えた事がなかった。これからは挨拶ぐらいして顔見知りぐらいにはなりたいものだ。
 でも、その前に女房に楽・・・

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東寺の神隠し

17/07/05 コメント:2件 浦田かず

 ゴルフ観戦の帰り、最寄りの近鉄京都線寺田駅から京都行きに乗った。写真が趣味の私は電車に揺られながら、これからどこに行って写真を撮ろうかとスマホで検索した。名古屋からの日帰り旅行なので、遠方まで足を延ばすことはできなかった。京都駅近くの観光名所で検索すると、京都駅の一つ手前の駅、東寺駅に五重塔で有名な東寺があることがわかった。五重塔へ行くのは、小学校の修学旅行以来になるので、二十年近く前になるかと・・・

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夢のような北海道への旅

17/07/04 コメント:2件 笹峰霧子

私はこの年までいわゆる旅といえる旅行をしたことがなかった。生まれた土地にずっと住みついていて、その地方から出るといえば何かのことで行かざるを得ない事情がある時だけ出かけて行った。ところが去年の夏私は初めて思いもしない場所へ旅をする経験をしたのだ。
その地は「北海道」。北海道のことはSNSで交流のあった方々からずっと聞いていたので憧れていたが、まさか私のような旅に臆病になっている者が北海道まで・・・

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人生という名の旅路

17/07/04 コメント:0件 空 佳吹

 秋の、ある午後……
 二十数年間も音信不通だった友人からの荷物を持って、ある人が訪れた。
 私は、一身上の都合で引っ越しを繰り返し、半年ほど前に今の住まいに落ち着いた。
 そのため、その人は、何年も色々な都府県を旅して回り、ようやく私の所在を突き止めたという。
 私は、その友人からの手紙を渡され、ドキドキしながら封を開けた。

 『前略、元気ですか?
 ・・・

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小さな小さな恋のものがたり

17/07/04 コメント:0件 ちほ

「あのね、ボク、アリアちゃんのこと好きなの」
 アリアが隣村に引っ越すと聞いた一週間前から、ウォルターは彼女に心を込めてこの言葉を伝えてきた。そして、とうとう彼女の出発は、明日の早朝と迫った。
「……ごめんね」
 アリアも、いつも同じ言葉を返す。仲の良い二人だった。5歳のウォルターは、亡くした母の代わりに、7歳のアリアを母親代わりにしていた。アリアは、それでも彼が大好きだった。二・・・

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赤土の少女

17/07/04 コメント:1件 ツチフル

 少女は赤土の舞う道の真ん中で、空を見上げている。
 ぷかりと浮かぶ雲に手を伸ばしてみるけれど、つかまえたのは乾いた風だけ。
 照りつける太陽に中指を突き立てて、口癖になった卑猥な言葉を吐きつける。
 ひび割れ破けた唇に、黒く濁った血が滲む。
 おかしくないのが、おかしくて。
 咳き込みながら笑いだす。
 かつて見た夢は、雨を待ちながら枯れ果てた。
 かつ・・・

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ジャーニー・イズ・ライフ

17/07/04 コメント:1件 miccho

 ジャーニー・イズ・ライフ。旅こそ人生さ。
 遠くで汽笛の音が聞こえる。俺を呼んでいる。
 ジャーニー・イズ・ライフ。ジャーニー・イズ・マイ・ライフ

「それ、何ていう歌ですか?有名な歌、なんでしょうか」
 一通り歌い終わったらしいタイミングを見計らって、聞いてみた。
「良い歌じゃろうが。俺が作ったんじゃ」
 そう言いながら運転席のおじさんはガハハ、とつ・・・

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