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  2. 第130回 時空モノガタリ文学賞 【 失敗 】

第130回 時空モノガタリ文学賞 【 失敗 】

今回のテーマは【失敗】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2017/04/24

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 募集中
コンテストカテゴリ
投稿期日 2017/02/27〜2017/03/27
投稿数 81 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
総評

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投稿済みの記事一覧

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しゃちょうのお仕事

17/03/26 コメント:0件 miccho

 幼稚園のころ、父の仕事が「しゃちょう」だと聞いた。当時の僕はそれを聞いてすぐに、「出発進行!」と言いながら駅のホームで敬礼する父を思い浮かべた。お父さんはなんて格好良いんだ。子どもながらにそう思った。
 「しゃちょう」とは「社長」であって「車掌」とは全くの別物らしいと知ったのは、小学校に入学後のことだった。格好良い制服姿の父を想像した僕は、とても落胆した。
 社長という職業が具体的に・・・

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愛を抱いて生きている

17/03/26 コメント:2件 みや

三時間目の体育の授業の為に体操服に着替えようと体操服袋を覗いて、小学六年生の結衣はため息が出た。真っ白なはずの体操服がデニムと一緒に洗濯をされたせいで薄くブルーになっているからだった。
「ごめんごめん、白いのんと色もんと一緒に洗濯したらあかんのにまたお父さんやってしもうた。失敗や」
そう言っていた父を思い出して、何べん失敗したら分かるねん、と腹を立てながら結衣は仕方無く薄くブルーがかっ・・・

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朝焼けに映える涙

17/03/25 コメント:0件 ドーンヒル

 急患を知らせる連絡が入ったのは、五時を少し過ぎた頃だった。雲の切れ間から顔を覗かせた太陽が、空を紅黄色に染めていた。烏の囁きが、遠くから聞こえてきた。
 「いつになく綺麗な朝焼けね」
 暁は、苦笑いを浮かべて、少しばかりしわになった、白衣に袖を通した。
 患者は、既に到着していた。睡眠薬の多飲による自殺を図った、若い女性だった。発見が迅速だったことと、薬自体がそれほど強力でなか・・・

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些細な失敗、些細な傷、些細な成長

17/03/25 コメント:0件 霜月秋介

 インスタントコーヒーの粉をひとさじ分マグカップに入れ、ポットのお湯を注いだ。注ぎ終わってから、ポットの湯を最後に取り替えたのが五日前だったことを思い出した。捨てるのが勿体無いのでそのコーヒーを飲んでみた。くそ不味かった。

 好きな漫画の続きがはやく読みたくて、毎月購読している月刊ヤングジャボンという漫画雑誌を発売日当日に書店に走って買いに行った。最近は立ち読みできないように、その雑・・・

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世話焼き

17/03/25 コメント:0件 デヴォン黒桃


 今日は学校の遠足。山登りで疲れて汗ばんだ肌に、涼しい風。
 遠足の楽しみの一つ、お弁当の時間。皆が色とりどりのお弁当箱を開けては、自慢し合う隅っこで、くすんだ半透明のタッパーを隠すようにして開けていた男子がいた。
 ソノ男子は、両親が離婚しておばあちゃんと二人暮らし。
 今日の遠足のお弁当も、恐らく自分で作ったか、おばあちゃんが作ったかだろう……
 私は、なんとな・・・

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僅か目盛ひとつ分

17/03/24 コメント:0件 七瀬

 夏の暑さが始まりかけた頃、私はいつもの様に買い物を済ませ、裏路地の日陰をゆっくりと歩いていた。いつもなら気にもしない道端のゴミやうたた寝をしている猫に混ざって、一つのラムネ瓶が落ちていた。そのラムネ瓶を見て、中に座り込む老人と目が合わなければ、きっと私はそのまま帰路へと就いていたのだろう。その時老人と話すことになったのは、まったくの偶然だった。
「何か、用でしょうか」
 しばらく老人・・・

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結果

17/03/24 コメント:0件 糸井翼

失敗してもいいって人は言いますね。
うちの親もそうでした。
失敗してもいいんだよ、トライするまでの過程が一番大事だ、なんて言ってね。
まあそういう部分もあるのかなと思いますよ。ズルして成功したって、何も得るものはないし、後ろめたいでしょう。
でも。
現実はどうなんでしょうね。
成功した者だけが大きな顔をして、活躍していますね。成功体験談を好きなように語れますね。・・・

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カツサンドの味

17/03/23 コメント:0件 雪見文鳥

「黄色い道みたい」
 初めてその絵を見た時、私はそう呟いた。丸い月が、黄色く柔らかい光で夜の海を照らす様子が、水彩画独特のタッチで柔らかく描かれてあった。田舎町の小さな展覧会で、他にも色々な絵が飾られてあるのに、私はその絵の前から動けなくなってしまった。当時7歳だった私は、誰が描いたのかも分からないその絵を、まるでスケッチでもするかのように見つめ続けた。

 目の前に、水張りを済・・・

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わらいもの、それから

17/03/22 コメント:0件 秋 ひのこ

『ううう、顔だけ良くてすみませんんん』
 アイドル顔負けの童顔をくしゃくしゃに歪め、半泣きで決め台詞。スタジオがどっと笑う。「失敗芸人」として一気に躍り出た「ムーちゃん」の顔が画面いっぱいに映る。
「ムーちゃん昔からああだったもんね」
「ムーちゃんがいたから笑いが絶えなかったな」
 同窓会という名目で頻繁に集まる地元の飲み会で、20年来の元級友たちは懐かしそうにムーちゃんこ・・・

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day break

17/03/21 コメント:0件 黒丞

『アナタの失敗買取ります。』
そんないかにも怪しくて胡散臭いサービスがスタートして早十年。この世界には『失敗』がなくなった。
試験や就職活動で泣きを見ることもなければ、恋愛だって思った通りに成就してしまう。とっても理想的で、素敵な世界になったというわけだ。
失敗の買取りシステムはとても簡単。ネット環境があれば誰でも申し込み可能だ。ホームページの所定のフォームから、自分が予測する最・・・

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喜び一番

17/03/21 コメント:0件 木野太景

 三月の暖かいある日、まだ十代の若い女性が、駅前広場のベンチの前でしゃがんでいた。春の風が吹くと、彼女の長い髪は自由に踊り、髪の結び目に添えられたアネモネの花飾りも一緒に揺れた。彼女は顔にかかる髪を鬱陶しそうに手で払いながら、地面の上の何かを探していた。
 数分前まで、彼女は嬉しかった。大学が休みの間に新しい春服や靴を少し揃えようと街で買い物をしていたら、あと一点しかない素敵なワンピースに出・・・

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くるくるホットケーキ

17/03/21 コメント:0件 ハギムー

 いつだったかホットケーキは回って食べるべきだと考えたことがある。
 お皿に乗っていたそれがふと、月に見えたのだ。それなら私はそれを食べることで月を欠けさせていく存在。月が欠けるのは地球が回るからで、じゃあ今それを目の前にして私が回らないわけにはいかないと昔考え付いた。
 そして今数年振りにホットケーキを目の前にして考えることはいつぞやのそれと全く同じだった。
 前に座る夫に続き・・・

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真矢の決断

17/03/21 コメント:2件 田中あらら

聡子の話
 私の理想は、夫が生活や将来の不安がないぐらい十分に稼いでくることが基本である。そのために私はサポートをする。共通の趣味である美術館やコンサートに行った後、洒落たレストランで食事をし、たまには遠くに旅行する。穏やかに言葉を交わし、微笑み合う生活だ。
 今の私といえば、生活を支えるための仕事をしている。夫が起業して社長夫人でいられた時期もあったが、ほんのいっときだった。娘の教育・・・

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キンセンカの花束をあなたに

17/03/20 コメント:1件 黒猫千鶴

 大きな花束を抱いて、屋上に続く階段を一つずつ上がって行く。革靴が音を立てる度に、嫌な声が再生された。

『こんなことも出来ないのか!』

 怒鳴る上司の声。

『これもやっておいて』

 仕事を押し付ける先輩の声。
 僕を非難する声が響く。直せと言われたから直したのに、文句を言われる。どうして、また意見を変えるんだよ。疑問をぶつけても答えても・・・

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かみきりインザモーニング

17/03/19 コメント:0件 浅月庵

 黄緑色のカーテンを、ユリが勢い良く左右へと開く。
 カーテンレールから流れるシャッという小気味良い音は、夢から帰ってきたばかりの僕の体と心をシャンとさせた。
 ベランダに繋がる大きな窓。そこから広がる景色が朝を告げる。名も知らぬ山々を遠くに眺めながら伸びをしていると、ユリが古新聞を何枚か広げた。
「これ被ってね。髪の毛おちるから」ゴミ袋の底の部分を半円形にチョキチョキ。お手製の・・・

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呪い

17/03/19 コメント:2件 くまなか

 さくらの飛沫を浴び、ビールが詰まって重いスーパーの袋を持ち替えながら、僕は”お母さんは大丈夫だから、将来お嫁さんがきたらうんと大事にしてあげて”最期に聞いた母の言葉を思い出していた。時刻は午後の四時、待ち合わせは午前十時だったはずだ。幾ら女性が身支度に時間がかかるといっても、流石にドタキャンだろう。十二時を超えた辺りから携帯を一時間に一度鳴らすも”おかけになった電話は電波の届かないところに……”・・・

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流れる時間の真ん中で

17/03/18 コメント:2件 しーた

 今日、ニ00八年三月九日だけが、××の世界のすべてだった。来年度から通うはずだった高校のことも、体調の優れなかったペットのことも、毎週欠かさず見ていたドラマの内容も、この日を境に、××にとってどうでも良いものと成り果てた。
 太陽がのっそりと顔を出し始めた頃、××はゆっくりと玄関の扉を開けた。舗装されたコンクリートの地面に視線を落としながら、物憂げな表情で待ち合わせの場所へと向かう。

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失敗したなぁ

17/03/18 コメント:0件 秋澤

喉がカラカラに渇いていた。まだ夏など遠い春だというのに。空に輝くのは焦がすような日ではなく淡やかな月だというのに。
煌々と輝く月が眩しい。白い光を、彼女の白い首が反射していた。失敗した。こんなはずではなかったとわかっているのに、思わず肌の上の花弁に見とれる。ハッとして彼女を抱きかかえる。未だ身体は暖かい。けれどその身体は軟体動物のように、あるいは精巧な人形のように力なく弛緩していた。あたりを・・・

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A Whole New World

17/03/18 コメント:2件 藤光

「おれのは失敗やったなあ」
「なにがですか」
 先輩が応じるまでもなく、家保さんは話しはじめた。注がれだばかりのビールのグラスにまだ水滴はついていない。
「結婚や、ケッコン」
『よし来』の店内は客の多い割に静かで、間接照明に照らされた打ち放しのコンクリート壁も落ち着いた雰囲気を醸し出している。煮しめたような杉の一枚板の上にグラスが三つ。突き出しはオクラと豆腐の和え物だ。ぼく・・・

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生きていたい

17/03/17 コメント:0件 リードマン

またしくじってしまった。
満足のいく人生だった筈なのに、死に際で取り乱した。
囲む家族の中で笑顔で息を引き取った。
けれど、無に帰る直前になって恐怖に負けたのだ。
そうやってまた繰り返す。

私は未だ一度も、人生を終えた事が無い。

始まりは孤独だった。
見渡す限りの暗闇の中、浮かび上がるように生まれた自分。
何も無い事よりも、誰もいない・・・

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自業自得

17/03/17 コメント:4件 ハギムー

 K星の住人は、今、人類と交情を深めようと画策していた。
 数年前、××という研究者が、K星と酷似する環境を持つ、地球と、H星を発見し、両方に手紙を送呈した。すると、地球がそれに返事をし、これを機に交流が始まった。
 K星の住人はそれを知り、とても歓喜した。
 彼らの星は今、隕石との衝突の危機に曝されているからだ。だから彼らは、地球に移住すればどうにかなると、最終手段としての望み・・・

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大実験

17/03/16 コメント:0件 猫春雨

 小学校の頃、いかがわしい雑誌で得た知識で魔術を実践したのが研究の始まりかもしれない。
 その魔術が、科学に置き換えられたのはより理論的なものにすがりたかったからか。
 ともかく僕には成し遂げたい偉業があった。
 だから結果をより確かなものにするために本を読みあさり、勉学に打ち込んだ。
 でもいくら研究をしたって生まれるものは理想とはほど遠い。
 ……いや、別の研究者・・・

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望んだ失敗

17/03/16 コメント:1件 笹山美保乃

 まずはネットで情報を探る。薬か、縄か、転落か、はたまた集団か。どれをとってもリスクは避けられないし、必ず誰かに迷惑をかける。それでも、もう私には選択肢がなかった。
 最初に目をつけたのは薬だった。うまくいけば気づかぬうちに終わるらしい。だが思ったよりも量がいる。薬局では一度に多くを買うことができないし、出費もかさむ。できるだけ手元に金は残してやりたい。
 次に気になったのは転落。準備・・・

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ちゃんとお祝いできなくて

17/03/16 コメント:0件 こあら

今年のお母さんの誕生日には、私が美味しい料理を秘密で作ってあげる作戦をたてた。
毎日布団にもぐって、計画を立てる。メニューはハンバーグ、作り方は何度も復習した。五時半くらいに作り終わったら、次はテーブルを飾る。六時に帰るお母さんを、リビングに連れて行ってびっくりさせるんだ!流れを頭の中で確認しながら、眠りについた。

いよいよ来たこの日。友達に捕まって遅くなってしまった。走るとカ・・・

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猫と彼女と勘違い

17/03/15 コメント:1件 深山 悠花

ちょっと待て。どうした、何が起こった?
今、目の前には、一人の女の子。どう見てもかわいい部類に入る。その彼女が、俺に向かって手紙を差し出している。「受け取ってください!」のセリフ付きだ。
 これってもしかして、告白ってやつ?いや、ありえない。だって俺は、学校でも一二を争うダサ男だよ。成績だって中の下くらい。背だってそんなに高くないし、顔だって普通じゃないだろうか。見た目に関しては、自信・・・

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クリスマス空いてますか?

17/03/15 コメント:1件 茉莉花

 人はいつの頃から、インターネットやメールという便利なものを利用するようになったんだろう? 
もっとも口下手な僕は、この便利なツールのおかげで何とか人とのコミュニケーションをとることができている。
全く便利な時代になったもんだ。
欲しいもののほとんどがネットで注文すれば、翌日か翌々日には配達してくれる。
昨日は、ネットスーパーで米5sにコカ・コーラ、ちょっと風邪気味だったの・・・

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教訓

17/03/15 コメント:2件 秋 ひのこ

拝啓
突然の手紙をお許しください。
あなたが近く内田鮎雄さんと結婚すると偶然耳にし、大変驚き、また困惑し、いてもたってもいられず筆をとりました。

アユオさんはあなたに私という存在のことをどれだけ話していたのでしょう。
あなたに「略奪」という自覚がどれほどあったのでしょう。
正直、私には知る由もありません。

単刀直入にお聞きします。
あなた・・・

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テストでは高得点を取らないほうが褒められる

17/03/14 コメント:0件 上村夏樹

 とある日の放課後、高校に入学して最初の中間テストの結果が配られた。
 うちの学校は、全教科の答案用紙の返却後、テスト結果が一枚に集約された紙が配布される。どの教科が何点だったかその一枚でわかるので、親に渡してテスト結果を報告しろと担任は言っていた。
「こんなテスト結果、母さんに見せられねぇっての……はぁ」
 嘆息し、その紙に視線を落とす。
 英語83点。古典80点。世界史・・・

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期待

17/03/14 コメント:0件 宮前月子

 駒江さんは社会人一年目の二十三歳だ。愛想がよかったり悪かったりする普通の子だ。
 駒江さんは作業着であるウィンドブレーカーを羽織って、ボブヘアーを掻き上げる。要領さへ掴んでしまえば、誰にでもできる仕事を早速退屈そうにこなす。規則的にパソコンのキーボードを叩く。駒江さんは話しかけるとそっぽを向いて返す。先輩だろうが、上司だろうが、中々その大きな黒目に捉えられることはない。だけれどお客さんとし・・・

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有翼猫飛行

17/03/14 コメント:0件 ナマケモノ

 朝日に、錆びついた飛行機が照らされる。その飛行機の翼から飛立つ影があった。
 猫だ。
 小さな猫が青空を目指し、体を大きくジャンプさせている。だが、彼が大空へ飛びたつことはなく、その体は重力の法則に従って地面に叩きつけられた。
 失敗した。猫のライトはまたもや飛行に失敗したのである。
 通算5555回目の失敗であった。

 
 ライトの猫だが、鶏の心を持・・・

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失敗だらけの人生

17/03/13 コメント:0件 深海映

 思えば俺の人生は失敗だらけだった。
 40近くになっても彼女はできない、それどころか友達すらいない、体も病弱、とどめに先週仕事もクビになった。もう生きてる価値なんかないんだと、思うには十分すぎた。

 だから俺は、死んでやることにした。このくだらない人生に終止符を打つことにしたんだ。

 「だから死んだの?」

 俺はビルから飛び降りた――ような気がした・・・

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完璧なる旅人

17/03/12 コメント:0件 瑠真

 時は光の速さで進むという、仮説があって、
 その速さを操ることで、誰もが「時の旅人」になり得るという、楽天的な科学者の考察があって、
 あとはそれを可能とする装置さえあったならと、願う人間もまた、幾らかいてーー

      ×        ×

 「お前は俺にとって、確かに良き友だった。でもな、」

 ーー?

 「ーーそれ以上に、・・・

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打牌選択

17/03/11 コメント:0件 浅月庵

 ◇
 人差し指と薬指で麻雀牌を捉える。俺の祈りが神様に届いたか問うように、牌に彫られた絵柄を親指で数回なぞった。牌を見ずとも感触だけで種類を判別できるのだ。

 だがその瞬間、俺は椅子ごと泥沼に突っ込まれた気分になった。冷や汗が急激に浮かび、背を伝う。
 俺の勝ちは刹那でこの手を、するり擦り抜けたと確信した途端、対面の「ツモ」の声が緊迫した空気を震わせた。

・・・

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失敗は成功のママ

17/03/11 コメント:0件 むねすけ

 風の向きを決めるのは僕じゃないとまず断っておいてからこのお話を語る。
 命のろうそくに向かい風が吹いていたことに気が付くのは、起こってしまってからなので、僕のせいじゃない。

 ユウヤにとっての失敗はゲームのスタート。ママ髭危機一髪のスタート。
 ママのドッカーン、大爆発でいつもユウヤの失敗は成功になる。
 七歳四か月前のおねしょも、本当の理由は恐ろしい夢を見たせい・・・

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水泡に帰す

17/03/11 コメント:1件 冷雨

人間、必ずしも失敗するだろう。
実際に、今日。私は失敗したと後悔をしている。
学校に行くために前日に準備した体操服を家に忘れたのだ。気付いたのはバスに乗ってから。
定期だから、降りて取りに行こうかとも考えた。
しかしそれでは間に合わない。
何故なら先ほど、起きる時間が遅くなったからだ。いつも乗っているバスより2.3本は遅い。
これを下りればおそらく遅刻だろう。<・・・

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人生シンキングタイム

17/03/10 コメント:0件 翔音

 「僕は、人生に失敗した。」
 一杯百円のやっすいビールを飲みながら今日幾度となく吐いたセリフを同じように吐いた。同じように聞き手のいないそのセリフは居酒屋の散らかった空気に溶けてゆき、消える。
 人生の選択をどこで誤ったのかと聞かれればはっきりとは答えられない。今となってはすべての選択を誤ったようにさえ思えてくる。
 人生における岐路に立たされたとき必ず現れるヤツがいる。真っ・・・

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与えられた餌を食わぬ犬を蹴るなよ泣けてくる

17/03/10 コメント:5件 クナリ

 絵を描くことが趣味だと、クラスでバレてしまったのは失敗だった。
 中学二年生の僕らにとって、足が速いことはカッコいいが、絵がうまいことは往々にして嘲笑の対象だということは、周知の事実だというのに。
 七月頭の、今日の放課後のHRで、秋の体育祭のための横断幕を各クラスの生徒が描くことが知らされた。すると、一人の同級生が
「先生、コスギくんが絵が得意です」
と言い出した。小学・・・

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実は二つの失敗談

17/03/10 コメント:0件 葛城潮

 「前からずっと好きでした!私と付き合ってください!」
大学に入学して半年が経ったある日、自宅アパートの玄関先で見知らぬ女の子が顔を真っ赤にしてそう告げた。告白なんてものをされたのは人生で初めてだった俺は気が動転してすぐに言葉が出てこない。数秒の間を置いてようやく捻り出した答えがこれだった。
「一週間後にまた来てもらえる?返事はその時にするから」

年齢イコール彼女無し歴。・・・

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破滅的失敗

17/03/10 コメント:0件 まー

「いいんですよ。気にしないでください」
 何度も頭を下げながら謝罪する店員に、青年は朗らかな笑顔で応じた。
 つまずいた拍子に、注文されたコーヒーを青年のズボンにかけてしまった店員はどこかあたふたしている。一見、青年の風貌に柄の悪さを感じるからだろう。
「い、いえ。本当に申し訳ありません。火傷とかなさってないですか」
「大丈夫大丈夫。なんともないですよ」
 実際はコー・・・

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社会的成功者の転落

17/03/10 コメント:0件 まー

 名門私立K大学を首席で卒業し、大手証券会社に勤めて三年になる高峰望は、上昇志向が強い性格の持ち主だ。
 そう言えば聞こえはいいのかもしれないが、その実、望は他者と自分を比べ優越感に浸る傾向が極端に高かった。毎日書店に行っては自己啓発本を片っ端から読破し、それを実践していく。そうすることで自尊心は更に肥大し病的レベルにまでなっていた。
 そんなある日、仕事帰りにいつものように書店に立ち・・・

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化け猫奮闘記

17/03/10 コメント:6件 石蕗亮

 時は江戸の頃
百物語が流行し巷では化け猫の存在は広く認知されていた。
猫を飼う際には「飼うのは〇年」と最初に猫に告げ、それを過ぎると野良にしたり、化ける前に妖力の元であろう尻尾を切ったりなんて風習もあった。
 そんな折、江戸を騒がせる怪事があった。
騒動は瓦版で瞬く間に広まった。
『怪奇、人面猫現る!魚売りが魚を奪われる!その姿は身体は猫だが顔は人間だった!』

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あと2ミリ キミ/あなた に届かなくて

17/03/10 コメント:0件 かわ珠

僕/
 右手の小指の端がチリチリとむず痒くて暖かい。
 僕のこの右手の小指のすぐ横、2ミリほど隙間をあけた隣には、クラスメイトの森笠さんの左手がある。
 白くて細い、華奢な手。
 僕は今日も、この彼女の左手に触れられなくて、その勇気を出せなくて、溜め息を吐く。
 彼女を好きになった瞬間は鮮明に覚えている。
 あれは雨上がりの校庭だった。
 コンクリートの濡・・・

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可哀想

17/03/09 コメント:0件 

「私、さっきのテスト98点だったー」

掃除時間、教室を掃いていた私に偶然その言葉は耳に入った。
ぱちりと目を瞬き、廊下を覗く。
クラスメイトの梶本さんが他の女子たちと談笑している。
明るい、クラスのムードメーカー。
運動もできて勉強もできるクラスに一人か二人はいる子。

「やっぱり?
一番、梶本だと思ったんだ、頭いいもん」
「クラスで9・・・

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ブルーベリー

17/03/09 コメント:0件 .jp


 男が痛みで目覚めたとき、彼は人々の下敷きになっていた。仰向けのまま体のあちこちを延々と踏みつけられ、起き上がることもできなかった。
 彼には記憶がなかった。自分がなぜこんな状況に陥っているのか見当もつかなかった。最後の記憶は、自宅の冷蔵庫にあったブルーベリーをひとつまみしたこと。でもそれが今日なのか昨日なのか、1週間前なのか1ヶ月前なのか、それがわからない。
 人々の隙間から・・・

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白線渡り

17/03/09 コメント:2件 ちりぬるを

 二時間以上前に起きてはいたが、布団の中から出れずにずっと携帯で小説を読んでいた。我慢していた空腹が限界に達し、ようやく起き上がったのは正午をとっくに回った頃だ。寝間着にしているスウェットの上からダウンを羽織る。ポケットに手を突っ込むとちょうど弁当を買えるくらいの小銭が入っていたのでそのまま家を出ることにした。
 アパートを出てすぐのところにコンビニはあったのだが、僕は歩いて十五分くらいの別・・・

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17/03/08 コメント:0件 ちほ

 夕方5時からパブ『ロビン』の店主ピートは休憩時間をとる。幼い息子ウォルターとの夕食のためだ。調理室の続きの間に小さな畳敷きの部屋があり、そこを『ごはん部屋』と呼んでいた。ちゃぶ台があり、幼い手が皿を並べていく。二人の大切で楽しい憩いの時間だった。それでも客が声をかければ、ピートはカウンターへ飛んでいく。
 夕食前の忙しい時間に、ウォルターは父に黙ってひよこ豆の入った麻袋にそっと手を伸ばし、・・・

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ミサイルマンの憂鬱

17/03/07 コメント:2件 ちりぬるを

 自分が「ミサイルマン」と呼ばれている事を男が知ったのは扉が閉まる間際に白衣の男達が話していた雑談が聞こえたからだった。もっとも自分がなんと呼ばれようと、外出が一切禁止されていようとこの生活に男が不満を持つ事はなかった。
 男の朝は八時のアラームで始まる。朝食をとり、歯を磨き、顔を洗い、メディカルチェックを受け、九時ちょうどに扉一枚隔てた職場へ入る。
 真っ白な六畳程の部屋には中央にモ・・・

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女の鎖は永遠に。

17/03/07 コメント:6件 のあみっと二等兵

ファミレスの前まで来てから、深い溜め息を吐く。給料が出る訳でも無いのに。何でこんな無駄にしか思えない時間を過ごさなければならないのか。憂鬱感丸出しのオーラを纏いながらドアに手を掛けると、店員よりも早く私を呼ぶ声が一番奥のテーブルから届く。
「愛ー!!! こっちこっち!!!」
あーはいはい。あんた達の会話とか声のデカさで、もう何処に居るのか解るって。
「ラブちゃん、遅かったね。何飲・・・

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榎竹子はそれでも諦めない

17/03/06 コメント:1件 鯨幕村中

 僕、夏水聡の目の前に形容し難い色合いの形容し難い物体が蠢いている。
 時折奇妙な声もあげていて、べちょべちょと音を出しながら僕に襲い掛かろうとしていた。

「……竹ちゃん、コレなに?」

 この物体Xを持ってきたクラスメイトの榎竹子こと竹ちゃんに僕は恐る恐る訊ねた。

「何って、調理実習で作ったクッキーだけど?」

 竹ちゃんはさも当たり前の・・・

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無知

17/03/05 コメント:0件 石田大洋

 長い長い長い数式。出来うる限り、僕はその黒板が白版になってしまう前に、それをノートに書き写していた。
 自分の部屋に帰ったら、この数式をゆっくり眺めようと思う。もしかすると、一生かかっても一ミリも理解できないかもしれないが、片道数時間かかる田舎道を飛ばしてきたのだ。
 先生は、僕の家庭教師だった。相変わらず、話がいきなり訳の分からないところで明々後日の方向に向いてしまう。おかげで僕は・・・

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対面の少女

17/03/05 コメント:0件 忍者の佐藤

ヒグラシの鳴く夕暮れ時、俺がいつも通り窓際の席に陣取り本を読んでいた時のことだ。
ふと椅子を引く、木で床をこする音がしてテーブルの対面に誰かが座るのが分かった。
あと30分足らずで閉館するこの田舎の図書館に人が来るなんて珍しいなと思いながら、ふと本から顔を上げて相手の顔を確認する。
その瞬間 俺は息を飲んだ。
それは未だかつて見たことがないほど整った顔立ちをした少女だった。・・・

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リセット

17/03/05 コメント:0件 瀧 千咲

「どうです、そちらの方は?」
モニターと睨めっこしている彼に同僚Aが声をかけてきた。
「んー、前よりかは長いこともってるけど、さすがに80億年は持たなさそうですね」
「あー、やっぱり?こっちもちょっと厳しめです。というかほぼ無理ですね」
「そうなんですか」
「ちょっと、核戦争始まりそうな予感がしてて」
「あらまー。うちもこれのひとつ前は核戦争で滅びましたよ」

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呑みすぎ

17/03/05 コメント:4件 風宮 雅俊

 カウンターの席には、私一人。他の席には・・・、闇に埋もれる様に片隅で一人静かに酒を飲む客がいるのかも知れない。しかし、そんな事を気にする者はいない。ここに来る客は一人になる為に来るからだ。
 この店では混ぜた酒は出て来ない。完成したものに手を加える必要はないからだ。毎日々々愚直に繰り返される作り手の技が積み重なる。石造りの倉の中でゆっくりと熟成する事で時代が刻み込まれていく。本物を知れば小・・・

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その怪獣

17/03/05 コメント:4件 W・アーム・スープレックス

 その怪獣には、二種類の能力があった。
 ひとつは口から吐き出す破壊光線によって文字通り、地上のあらゆるものを破壊することができるのと、あとひとつは、あてると何もないところから生命を育むことのできる生成光線だった。
 最初のうち怪獣は、まず破壊光線で地上のごつごつしたところ、あるいはいびつに捻じ曲がったところなどを形も何ものこらないまでに破壊しつくし、そのあとに百花繚乱の花々を育てあげ・・・

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恵方巻き

17/03/05 コメント:0件 林一

 二月三日。
 仕事帰りにスーパーに寄ると、半額に値引きされた恵方巻きがずらりと並んでいた。
 そういえば、節分の日に恵方巻きを食べるって、いつから始まったんだっけ。俺が子供の頃はまだなかった気がする。まあどうせ、金儲けのためにどっかの業界が無理やり流行らせたのだろう。バレンタインデーのようなものか。
 しかし、最近の恵方巻きは色々な種類があっておいしそうだな。オーソドックスな太・・・

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ペースメーカー

17/03/04 コメント:0件 Simple Life

『どうして決められたペースを守らない?いつも言っているだろう!』
 又、監督の怒号が飛んだ・・

 定期会議のいつもの見慣れた光景だ。
 最近はその回数も増えてきた感は否めないが、こちらにもこちらの言い分はある。

 若い担当者が細やかな反論する。
 『私自身は守ろうと努力はしているのですが・・クライアントがすぐ暴走してしまうのです』

 それ・・・

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人類の選択

17/03/04 コメント:1件 かわ珠

 終わることのない戦争、絶えることのない食糧難、尽きることのない欲望。果てのない泥沼に、人は明るい未来の青写真を描けなくなってしまっていた。人は、いつからか進歩することを、前に進むことを忘れてしまっていたのだ。さらに、人が破壊した地球の環境は人の手に余るものになってしまった。もはや人類に星の修復は不可能となってしまっていたのだ。そうして、進化に行き詰った人類が、星を穢した人々が最後に縋ったのはAI・・・

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煙に巻く彼

17/03/03 コメント:0件 十文字兄人

 彼に初めての手料理を振る舞うことになった。

 ダイニングキッチンから彼のことを覗くと、テレビの画面に夢中になっている。
 私がちょうど鍋に火をかけた時、ふと彼のほうから声をかけてきた。

「ねえ、おか……いや、なんでもない」

「ん? なんか言った?」

 正直なところ耳の良い私は、今の彼のちょっとした失言を聞き逃さなかった。あれは確実に私・・・

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あいちゃんとおてつだい

17/03/03 コメント:2件 こぐまじゅんこ

 あいちゃんは、三さい。
 おかあさんのてつだいをしたくて、いつもおかあさんに、くっついています。
 おかあさんが、せんたくものをほそうとベランダにでると、あいちゃんもテレビをみるのをやめて、あわててベランダにでてきました。
「あれあれ、おてつだいしてくれるの?」
 おかあさんは、やさしく言います。
 でも、あいちゃんがてつだってくれると、かえって時間がかかるので、小・・・

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子ブタが三匹

17/03/03 コメント:2件 林一

 昔々あるところに、子ブタが三匹とお母さんブタが住んでいました。
 ある日お母さんブタは、子ブタ達を集めて言いました。
「あなた達もそろそろ自立しなさい。これからは自分の家を一人で建てて、そこでそれぞれ独り暮らしをするのよ」
 いつまでもお母さんブタと一緒に暮らしたかった子ブタ達は、みんな反対しました。しかし、お母さんブタの意志は固く、最終的には子ブタ達が折れて、家を出ていくこと・・・

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四月一日

17/03/03 コメント:2件 林一

 二年前。四月一日。彼の部屋。
「はい、プレゼント」
 彼は私に、青色のリボンがついた黒い箱を渡してきた。
「ありがとう。開けていい?」
「いいよ」
 何が入ってるんだろう? この大きさだと、アクセサリーかな? そんなことを考えながら箱を開けると、中からカエルが飛び出してきた。
「キャー!」
 彼は驚く私を見て、いたずらっぽく笑っている。
「大丈夫。・・・

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セカンド・プロポーズ

17/03/02 コメント:0件 ぴっぴ

「永遠の愛って本当にあると思うか?」
居酒屋トークには合わない重厚さに戸惑った。外資系の先輩に失恋の愚痴を聞いてもらおうとバーのカウンターに二時間前から並んで座っている。客は自分たちを入れても五人ほどである。
「結論から言おう! 答えは『ある』だ!」

瞬間の愛もなかったのに永遠の愛なんて論外だよ。先輩。

「では、一つ踏み込んで『永遠の愛の作り方』を教えてやろ・・・

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掌中の命

17/03/01 コメント:0件 家永真早

「俺のこと殺してくれよ」
 煙突から上る白い煙を見上げる神田の耳に、先輩の声が残っていた。
「もしも俺が植物状態とかになって、自分じゃ生きられなくなったらさ」
 驚いて目を丸くした神田に、先輩はそう言って笑った。
「……縁起でもないこと」
「まあまあ、もしも、もしもだ」
 神田が顔をしかめて咎める様子にも、先輩は尚もお軽く笑っていた。
「お前にしか頼めない・・・

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万能なカギ

17/02/28 コメント:3件 蹴沢缶九郎

泥棒である男が仲間にカギを見せて言った。

「これは苦心の末、やっと完成した万能カギだ。このカギさえあれば、この世のどんな物でも開ける事が出来る」

男の説明に、仲間は「そんなバカな話があるか」と疑う。

「お前が疑うのも無理はない。百聞は一見にしかずだ」

と、男は大小様々な金庫を用意し、万能カギを使い全ての金庫を開けてみせた。

「こ・・・

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17/02/28 コメント:2件 蹴沢缶九郎

「もうこんな時間か、そろそろ寝るかな」

時計の針は深夜の二時を指していた。ここは博士の自宅兼研究室である。博士はその日の仕事を切り上げ、寝室へ行こうとしたところへ、研究室に来客を知らせるインターフォンが鳴った。

「一体こんな時間に誰だ」

博士が研究室のドアを開けた途端、突然来訪者が室内に飛び込んできた。来訪者は懐から取り出した刃物をちらつかせ博士に言う。<・・・

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神様の眼力なんていらない

17/02/28 コメント:0件 笹峰霧子

 人は他人の心の中を見ることはできない。顔とか声とか、自分に向けられる表面的な好意とか、他人にしている行為などを通して相手の人となりを推察するのである。
先ず顔を見る。顔の中でも眼を見ることが多い。そして風貌に眼を配る。

判断力が疎い人間は、最も薄っぺらな相手の取り繕ったうわべを見て相手を判断するのだ。

 何年間にわたって良い人と思って付き合い、十年あまり経ってよ・・・

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そして死体は三つに増えた

17/02/28 コメント:0件 氷室 エヌ

 服や化粧品などが雑多に置かれている、女性らしい寝室。その中心に鎮座しているキングサイズのベッドに、中年の男は眠っていた。
 いや、眠っているのではない――彼は死んでいた。殺されていた。僕が殺したのだ。
「ちょっと、どうすんのよこれ」
 視線をあげれば、声の主である女性と目があった。気の強そうな赤い唇にときめきつつ、僕は言葉を返す。
「いやだから、今どうするか考えてるんだよ・・・

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部屋の外、ホテルの中。

17/02/28 コメント:0件 むろいち

 柳田はビジネスホテルにチェックインした。
 片手には買ってきたビールやツマミ、弁当をぶら下げている。
 今日は地方出張にやってきた。
 日帰りも可能だが、たまには誰にも干渉されない一人の時間が欲しく、地方出張の際には妻に何かと言い訳をし、泊まっている。
 部屋で一人、ビールを飲むのがささやかな楽しみだった。

 何の変哲も無いビジネスホテルの一室。
 自・・・

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致命的な失敗

17/02/28 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

 かれらに私は見えない。ただ、感じるのみだ。それはこの地上に存在するすべてのものたちも例外ではない。
 原始的な生き物たちには、私を感じとる意識も希薄なため、相も変わらず地べたにはいずりまわり、また海のはるか底の暗闇のなかに茫洋としてうごめいているにすぎない。
 私を強く感じとることのできるものは、その身を、進化とともに私の姿に似せていく。それはこの地上の、いや、あまねく全宇宙の生き物・・・

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17/02/28 コメント:0件 白沢二背

 私の名前は靴子です。今日も御主人様の足許を護ります。
 ヌバックレザーで出来た私には、御主人様を護る方法が御在ません。
 何と言っても、今日は雨の日ですから。
 ◆
 或る晴れた日の事でした。御主人様は斯う仰られました。
 靴子さん、今日は天気予報に拠ると雨が降るらしいよ。
 僕は君を履いて行くのを已めようと思う。
 私の一日等はかないモノです。靴箱の中・・・

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飛行自転車は少女と夢を見るか

17/02/27 コメント:2件 海見みみみ

 これはとある異世界のお話です。

 ここはオルコ島。
 この小さな島のはずれに、変わり者で知られる男が住んでいました。飛行機オジサンこと、ヤンさんです。
「ヨヨ、しっかり見てろよ」
 島のおくにある森。そこでヤンさんは自分が作った飛行自転車の試運転をしようとしていました。
「また失敗するんだからやめときなよ」
 切り株に座りながら少女、ヨヨはそうつぶやき・・・

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彼は悪くない

17/02/27 コメント:0件 戸松有葉

 サッカーでは、時間内に決着がつかなかった場合、PK戦で強引にでも勝敗を決める。強引だ。これまでの競技とは離れていると言っても過言ではないミニゲームで、勝敗が決まってしまうのだから。PK戦は心理戦やゴールキーパーの腕が影響するとしても、トータルで考えれば、「運」の一言に尽きる。普通であればゴールは決まり、キッカーが失敗するまで続ける――いつか誰かは失敗する――という、残酷なゲーム。古くから問題視さ・・・

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花粉症伝染列島

17/02/27 コメント:0件 相葉俊貴

【以下、20××年に発生した未曾有の花粉災害に関する手記】――――――
『26.5%』――日本におけるスギ花粉症の疾患者数の割合である。日本国民のおよそ三千万人以上がスギ花粉に文字通り涙していた。
 日本には広葉樹を含めた多種多様な樹木があった。高度経済成長の折に、建材として木材の需要が大きく成長し、『真っ直ぐに伸び、生育も早いスギやヒノキなどの針葉樹』が大量に植林された。安価な海外材・・・

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虚妄という枷を外す術は。

17/02/27 コメント:4件 のあみっと二等兵

外は酷い嵐。窓を激しく叩く雨音。どれだけ叫んでも届かない。誰にも。例えそれが恐怖におののく悲鳴でも、抵抗する為の懇願でも、私に対する愛の言葉だったとしても。
「何か思い出しましたか?」
カウンセラーの問いに、瞼をゆっくり開いた。そのまま黙り込む私を認めて、彼女は短く息を吐く。それが溜め息なのかどうか。別にどうでもいい。興味が無い。
「雨は嫌いですか?」
嫌いじゃない。言葉に・・・

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失敗

17/02/27 コメント:4件 ツチフル

 まともに生きることに失敗。
 やけになって人を殺そうとして失敗。
 自分を殺そうとして失敗。
 もういちど懸命に生きようとして、大失敗。
「まったく何て人生だ。やることなすこと全て失敗に終わるんだからな!」
 私はどうでもよくなって、銀行から全財産を下ろしてナンバーくじを買う。
 もちろん、すべてはずれだった。
 無一文になった私は、公園でホームレスを・・・

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落書きの向こう側 〜無限地獄〜

17/02/27 コメント:1件 宙 加不紀

 ボクは、朝の地下道を駅へ向かっていた。求職中のため、普段ならハローワークに行くところだが、きょうは映画の日だったので映画を見るためだった。途中、壁の落書きが目に入り足を止めた。
『仕事ある』
 とあったからだ。ボクは、どこの事かな……? と考えながらトイレに入った。そしてまた壁の前を通ったが、また足を止めてしまった。
『ココに仕事ある』
 に変わっていたからだ。ボクはコン・・・

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駆け落ちは強い男の必須条件!

17/02/27 コメント:0件 ちほ

 昨日、ウォルターは5歳の誕生日を、父や友達や父の店・パブ『ロビン』のお得意様に祝ってもらい嬉しかった。大人になれたと思ったので、7歳のアリアに愛の告白をした。彼女は、ばら色に頬を染めて頷き、こっそりウォルターの耳に囁いた。
「駆け落ちしましょう」
「カ・ケ・オ・チ?」
「えぇ、愛しているなら駆け落ちよ。2人だけで生きていくのが大切なの。明日の夜6時、桜の木の下で待ってるわ。お父・・・

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大石内蔵助の疑問

17/02/27 コメント:0件 戸松有葉

 大石ら赤穂浪士に踏み込まれ、刀を向けられている吉良は、黙っていられなかった。
「おのれ貴様ら、狂ったか! 主君が殺し損じたから代わりに完遂する……それが貴様らの忠義だとしても、主君の無念を晴らすには、より優先すべき相手がいるだろう。被害者の私を襲うなど、狂気の沙汰に他ならぬ!」
 吉良の言う「優先して恨むべき対象」とは、将軍綱吉のことだ。将軍本人を殺せないにせよ、浅野の処分に携わった・・・

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錬金術の失敗

17/02/27 コメント:0件 戸松有葉

 昨今は、十代の可愛らしい錬金術師が増えているという。

 その年頃の女性には才能があるとの話が広まっており、ある少女も流行りに乗って錬金術師となった。
 錬金術師には、名のある錬金術師のもとで修行をするとなれる。修行中の身でもすでに錬金術師だ。
 中年男性の錬金術師――少女の師匠は、「まずはこれからだ」と、少女に分厚い書類を手渡した。
「何ですかこれは」
「錬・・・

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タイムマシン

17/02/27 コメント:2件 八王子

「できちゃった、タイムマシン」
 塩川エミリ26歳――特に知識もないのに作れてしまったタイムマシン。
 場所は研究室やなんかではなく50歳を過ぎた両親と一緒に暮らす築20年を数える一軒家――そのトイレの個室。
「こんな簡単にできていいのだろうか」
 始まりは100日ほど前に遡る。

 その日、残業で帰宅が遅くなった私は、実家暮らしの甘えもあり夕飯に問題はなかった・・・

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Flare

17/02/27 コメント:0件 家永真早

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 好き者の君のせいで僕はいつも忙しい。君はいつ僕を休ませてくれるんだろうね? 君ももう休むべきだと僕は思うんだがね。……ああ、そうかい。
 ほらほら、君のご所望で何も知らないいたいけな子がまた僕のところへやって来たよ。さっきっからひっきりなしだ。ここへ来るまで会う奴会う奴に服を脱がされてさ、とうとう最後の一枚だ。これを僕が脱がせば生まれたままの姿になっちゃうんだぜ。
・・・

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