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  2. 第128回 時空モノガタリ文学賞 【 自転車 】

第128回 時空モノガタリ文学賞 【 自転車 】

今回のテーマは【自転車】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2017/03/27

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2017/01/30〜2017/02/27
投稿数 89 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評 今回の「自転車」というテーマは、アナログ的で具体的なテーマであるため、個人的で身近な世界に親和性が高かったのだろうと思います、エッセイあるいはエッセイ風に素直に感情を綴った作品、あるいはホラーテイストの作品に印象深いもの多かったですね。一方で作品のバリエーションを出し、ダイナミックなストーリー展開をさせるには、やや難しいテーマだったろうと感じました。最近は、アイデアの“かぶり”は少なくなっているのですが、今回は、映画「E.T.」を扱ったものが結構多かったです。おそらく空飛ぶ自転車のラストシーンの幻想的でロマンティックな印象が魅力的だったのと、それによって、狭くなりがちな世界に広がりを持たせる意図があったのでしょう。ただ残念だったのは、殆どの作品が、その引用の意図が曖昧で掘り下げが少ないため、作品全体の印象もイメージ的・表層的なところに留まってしまっていたということです。なぜE.T.でなければならなかったのか、その理由をもっと明確に意識すべきだったのでは、と思います。どのテーマでもそうですが、作中に入れ込んだ要素のどこに惹かれ、また何を伝えたいのか、一旦立ち止まり意識していく作業が必要ではないかと思います(必ずしも全てを文章で説明する必要はないとは思いますが……)。そうすることによって、具体性や深み・広がりが出てくるのではないでしょうか。安定的に入賞される作者は、やはりこうした内容的な面でよく考えていると、作品を読んでいて感じます。最終選考の『月と自転車』は、今回ETを扱った作品が多かった中では、その意図が明確であるという点で、うまさを感じる作品でした。空を飛ぶ自転車の引力からの開放感と、「地続き」の身体の重さという、物理的な面の対比によって、心理的な揺らぎがうまく表現されていたと思います。『ケイコク』は、秋さん自身のコメント通り2000字には難しいが内容だったかもしれませんが“盗る”ものを思ってもみない場所へ運ぶ自転車という、SF的かつホラー的な設定と、それとは異質な道徳観を感じさせる独特の世界観に、不思議なオリジナリィがあったと思います。『白いワンピース』は、「自由で自発的」だった母の少女時代と、身体が不自由になった老年期が、自転車にまつわるエピソードを通してリアルに対比されていて、一人の女性の人生と避けられない老い・家族の思いについて考えさせられました。『褐色のアギス—あの日座り心地の悪いベンチでぼくら』は、団地という狭い場所と、そこに止められた自転車という限定的な空間を舞台に、ヒリヒリとしたあやういような十代の恋愛を凝縮された形で描きだされていて、テーマの扱い方がいつもながらうまいと感じる作品でした。『坂をのぼれば』は、親の死への悲しみを無意識に抑圧した少年が、坂道を登ることで母の死に向き合うという展開にはやや既視感はありますが、スッとした読後感が残りました。身体的な動きへの没頭が抑圧の解放をもたらすことは、確かにあるのだろうと思います。『トラウマバイセコー』は、巷で実際にあった事件を下敷きにした、軽快で読みやすい作品でした。当事者であれば困惑するような事件でも、はたから見ればコメディになってしまうことはよくありますね。主人公のあくまで現実的な対応が、シュールな展開を支える軸となっていたと思います。難しいテーマであっても、全体としてはよく練られた作品が多かったと思います。次回以降も期待しております!

入賞した作品

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自転車とたんぽぽ【エッセイ】

17/02/27 コメント:4件 宮下 倖

 春の草が土手をやわらかな緑に染めている。そこに自転車が一台横倒しになっていた。
 赤いフレームに添うようにたんぽぽがいくつも咲いている。
 緑と赤と黄色のコントラストを見下ろしながら私は唇をつよく噛んだ。
 もしこの自転車が話せたなら、私になんと声をかけるだろう。

 * * * 

 東日本大震災において、私は中途半端な被災者だった。
 私の実家・・・

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おばあちゃん

17/02/26 コメント:1件 いありきうらか

母に子供が出来たことを報告したとき、母は、私もおばあちゃんか、と感慨深く呟いていた。
そうか、母は私の子供からすればおばあちゃんになるのか、そんな当然のことを頭の中で反芻した。
私は、窓の外に置いてあるすっかり茶色に錆び付いた自転車を見つめた。

おばあちゃんは孫の私にとても優しくしてくれた。
おばあちゃんは自分の家から2時間ほど離れたところに一人で暮らしており、私が・・・

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壁のない箱庭の中で、わたしたちは

17/02/19 コメント:6件 秋 ひのこ

「スズ、お茶淹れてくれ」
 畑から戻ってきた舅が汗を拭いながら台所に顔を出した。そのタオルをスズの鼻先に押しつけてくる。
「ほれ、男の臭い」
 スズは思い切り眉を寄せて顔を背けた。舅は「興奮するなよ」とニヤけ、スズの尻をパンとはたく。
 毒があればとっくに仕込んでいる。スズは急須に湯を注ぎながら、唾でも入れてやろうかと口内を舐める。
 次いで、姑がやってきた。
・・・

3

坂の自転車屋

17/01/31 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

坂の途中に店を出す自転車屋に、その少年はやってきた。
ひょろりして、病み上がりと思えるほど顔色もわるかった。その少年の押している自転車は、そんなに大型ではなかったがそれでも彼にはふつりあいなまでに重く大きく感じられた。店主は、整備していた自転車から顔をあげると、店の前で黙っている少年を訝しげにみやった。それはついさっき、ブレーキの具合が悪いといって立ち寄った少年だった。店主は自分で自転車に乗・・・

最終選考作品

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月と自転車

17/02/27 コメント:2件 そらの珊瑚

 ナポリ湾を見渡せる小高い丘に、ステファンのピザ屋はある。
 夜、店仕舞いをして、ステファンが運転する自転車の後ろに私が乗り、アパートまで一緒に帰るのが習慣だった。たとえけんかしていても、雨でなければ。
「わあ、見てごらんよ、ハナ。満月だぜ」
 山なりに沿ったゆるい坂道を、ライトを点けた自転車が下っていく。時折耳障りなブレーキ音がする。
 ステファンの腰にぎゅっと両手をまわ・・・

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ケイコク

17/02/23 コメント:2件 秋 ひのこ

『盗らないでください。乗る時は、ひとり1回まで』
 自転車の前かごには、そのような貼紙がついていた。歓楽街から1本入った路地に、青く輝く車体がぽつんと一台。
 そこへもんどりうって駆け込んできた男がひとり。
 背後でひとの叫び声がする。スリがバレた。昨日まで刑務所にいたとはいえ、腕が落ちたものだ。
 貼紙など目にもくれず、キダはこれ幸いと自転車に飛び乗った。
 いたぞ・・・

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白いワンピース

17/02/08 コメント:2件 田中あらら

 母は72歳で自動車免許を返上した。前年、脳梗塞で左足が不自由になったからだ。
 田舎で暮らすものにとって、車が運転できないということは、好きな時間に出かけられないということだ。それでも実家は、徒歩10分以内に銀行、病院、スーパーがある田舎の中心部だったので、まだマシだったかもしれない。
 足は不自由なもののまだ元気だった母は、人より時間をかけ歩いた。

 ある時、母はガレ・・・

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褐色のアギス――あの日座り心地の悪いベンチでぼくら

17/01/31 コメント:9件 クナリ

 北条アギスは、私と同い年の、褐色の痩せた少年だった。
 私と同じ古くて汚い団地の、向かいの棟に住んでいた。
 最初に知り合ったきっかけは忘れてしまった。中学生の今では、休日の昼間や、休日ではない日の昼間に、こっそりと会う仲になっていた。
 夜は、一人ずつでいた方がいいような気がしたので、会わないでいた。
 アギスには、夜が似合いすぎる。それが少し怖い。

 ア・・・

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坂をのぼれば

17/01/30 コメント:4件 海見みみみ

 ユウタくんのお母さんが亡くなったのは、今から一週間前のことでした。乳がんによる長い闘病(とうびょう)生活の末、亡くなったのです。
 お母さんのお葬式(そうしき)では、たくさんの人が泣いていました。お父さんに、弟と妹。あとは親せきの人たち。
 そんな中、ユウタくんだけが一人なみだを流せずにいます。ユウタくんはそんな自分を『冷たい人間だ』と思いました。

 お葬式も終わり、ユ・・・

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トラウマバイセコー

17/01/30 コメント:4件 浅月庵

 朝の澄んだ空気が好き。スズメの忙しない鳴き声も好き。そのなかを毎朝、自転車で走るのが好きだ。

 玄関近くにママチャリが置いてあって、毎日高校への登下校にそれを使うんだけど、今日はなにやら様子がおかしい。

「え、なにコレ!」
 自転車のサドルが行方不明で、元々サドルが挿さっていた支柱に、なぜかニンジンが紐で巻き付けられている。うーん、横向きにしたら確かにサドルっぽ・・・

投稿済みの記事一覧

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謎々

17/02/27 コメント:0件 ぽこ

 人間界で有名な謎々。
『朝には四つ足、昼には二本足、夜には三つ足で歩くものは何か』
この謎々を出されたとき、ボクにはさっぱり分からなかった。
『答え』を聞いても、やっぱりいまいちピンとこなかった。
何せボクは、三輪車。車輪界の生き物だからね。
でも、何にも知らなくて、これから人間界でやっていけるか不安になってきた。
そんなボクを見て、ママチャリ母さんは「人間の・・・

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夢見

17/02/27 コメント:3件 日向夏のまち

 瞬間息を呑む。ぱっと目を見開けば、闇が広がっていた。生ぬるい向かい風。顔をしかめまばたきを繰り返すと、闇になれた視界に森の入口が浮かび上がる。
 深緑をざわざわと鳴らす木々。その間に、道がある。風はそこから吹き付けている。
 生温かく、どこか生臭い。
 息を、しているようだと思った。
 こんなにも強い向かい風であるのに、耳元は静かだ。矛盾にくらくらする中、遠くでキリキリと・・・

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無人の自転車はアマリモノ

17/02/27 コメント:0件 むねすけ

 深夜二時過ぎ、月のない夜を選んで僕は自転車散歩。
 公園の柑橘は夜目に眩しいけど、あれは柚子なんだろうかみかんなんだろうか、いつか近づいて見ないと判然としないままだね。
 ジャングルジムの錆びは知っててほくそえんでいるだろうか。
 綺麗になった駅前は歩道が広くなって、野良の黒猫は居心地が悪そうに見えた。ウィンクしてやると、ちゃんとウィンクを返したよ。
 深夜に明るいのはコ・・・

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自転車泥棒

17/02/27 コメント:1件 泡沫恋歌

 古いイタリア映画に『自転車泥棒』いう作品がある。自転車を盗まれた男が探し歩くが見つからず、困ったあげく自分も自転車泥棒になってしまうという話だ。
 七十五年間、まっとうに生きてきた、このわしが今日初めて犯罪に手を染める。
 理由はお気に入りの自転車をパクられたせいじゃ!
 わしの自転車は黄色と黒のタイガースカラー、ハンドルにミラーを付けて後ろもよく見えるし、ペットボトルホルダー・・・

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アオイトリ

17/02/27 コメント:1件 冬垣ひなた

「諦めないで、意外と近くに青い鳥がいるものよ」、就職戦線に放り出され四苦八苦する私にくれた、先生の慰めの言葉だった。
 アオイトリ、なんて素敵な響き。
 でも先生。
 私、夢を鳥籠に飼いたい訳じゃないんです。
 どうか飛び立って、お願い……。


 専門学校の卒業式を迎えるだけとなった冬の終わりは、私にとっては憂鬱だった。図書館からの帰り道に、川沿いのサイ・・・

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もういちど、無敵モード

17/02/27 コメント:0件 游魚

自転車をこぐと、無敵モードのスイッチが入る。
体育の授業が苦手で、空き地の野球でもボールを落としてばかりいるショータだったが、自転車で風をきって走っているときだけは、まるで自分が無敵のヒーローになったみたいに感じることができた。

ショータは最近、オレンジ色に輝く愛車で三角山の上までのぼっていき、そこから一気に駆けおりてくる遊びに夢中になっていた。

その夏も例年どお・・・

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自転車の共有

17/02/27 コメント:0件 木野 道々草

 南東アフリカの日差しの下、学校帰りの子どもたちが、自転車で赤土の道を並んで走っている。道の両脇に緑色の草と木が広がり、その景色の奥に山々が続く。快晴の空。この鮮やかな色彩の中で、子どもたちの制服の白いシャツが一番生き生きと輝いている。
 十年前、この光景は見られなかった。子どもたちの住む地域から最も近い町の学校までは距離があり、徒歩での通学は困難だった。アフリカの他の地域はいざ知らず、彼女・・・

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黒いのはオフレコでお願いします

17/02/27 コメント:0件 にぽっくめいきんぐ

続いての話題です。
2015年の改正道路交通法により、傘をさしての自転車走行が出来なくなりました。「傘を固定してもダメ」とのことで、雨の日に乗るにはポンチョを着ることになります。
そんな中、とある企業が、新しい自転車を発表しました。「カサチャリ」という商品です。
取材班は、その開発者に、お話を伺ってきました。

取材班(以下、「Q」)「今日はここ、日比谷公園に来ていま・・・

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『ばいせくる』の遺言

17/02/27 コメント:5件 光石七

 美術室で一人、石膏の胸像をモデルにデッサンを繰り返す。美術部には十人ほど在籍しているが、半分は幽霊部員で残りの連中も気が向いた時しか来ない。真面目に活動しているのは僕くらいだ。顧問の美術教師は基本放任主義、でもこちらが助言を求めればちゃんと指導してくれる。今週は三者面談で忙しいらしく、まだ一度も描いた絵を見てもらっていない。
 かく言う僕も今日が三者面談だった。第一志望に書いたT大医学部は・・・

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自転車管理のお仕事

17/02/26 コメント:0件 上辺 練

 南米エクアドルの大地で、オレと上司の澄須(すみす)さんは【自転車】に乗っていた。

「また寒波が来てるらしいね。日本海側は雪になるらしい」

 助手席に座っている彼が、手に持ったスマートフォンの画面を見ながら言った。天気の情報でも見ているのだろうか。

「そうですか」
「まぁ、この国は2月でも平均気温は15度だからね。雪の──」

 ピピッ!・・・

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あの頃世界はそれだけだった

17/02/26 コメント:0件 恋竹真雪

背後から軽快なチリリンというベルの音が聞こえて咄嗟に道の片側に寄りながら振り返る。
この真冬に見るからに薄着の小学生二人組が笑いあいながら駆け抜けて行く。
猛烈にペダルを漕ぐ二人の足元はまるでコマ仕掛けのようにくるくると良く回る。
あんな風に全力でペダルを漕いだのはもう何年前だろうか。掬い上げられた思い出が色鮮やかに脳裏を過る。

「かっちゃん、えりちゃん後で公園集合・・・

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井戸の底の深い工務店

17/02/26 コメント:0件 相葉俊貴

 蜘蛛男は恋をした。とても暗く寂しい恋を。
『井戸には近づいてはならぬ。井戸は骸を打ち捨てるためにあるのだから』
 井戸の上でのお触れである。井戸の上の屋敷では、たくさんのお触れがあるが、井戸の中に棲む蜘蛛男には関係なかった。
 蜘蛛男には仕事がある。井戸に投げ込まれる骸を井戸の奥へ運び、管理しながら土に還す仕事が。
 井戸に棲み始めた頃より、腰はぐったりと曲がり、光をあま・・・

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ころび地蔵さん

17/02/26 コメント:1件 冬垣ひなた

 昔々、という程ではないけれども、まだこの鄙びた村に車が通っていなかった頃、村の入り口に『ころび地蔵』と呼ばれる地蔵さんがあった。
「地蔵さん、どうかうちの坊を転ばせないで下さい」
 こう言うて、這っていた赤ん坊が歩くようになると、家族の者は地蔵さんにお参りするようになる。ころび地蔵は童たちの成長を見守る、優しい地蔵さんじゃった。


 その頃、村には勇(いさお)とい・・・

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暗黒

17/02/26 コメント:0件 麦食くま

間もなく日が沈もうとしている街中に、一台の自転車を漕ぐ音が鳴り響く。青年が乗っている自転車は急いでいる訳でもなく、スローでもない速度で商業地と住宅地が混在している街中をひたすら走っている。「確かこのあたりと聞いたが、一体あの店はどこに?」青年はある店を探すために自転車を走らせていた。その店は、日が沈むと開店し、夜の間営業し続けて日の出とともに閉店するという。その為毎日の開店・閉店時間が異なり、冬と・・・

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PTA安全パトロール   

17/02/26 コメント:0件 沓屋南実

 当たりくじを引けば普通なら喜ぶところだけれど、それがPTA役員となれば、ガッカリである。断固拒否して、保護者間でトラブルになることもあるらしい。私には拒否するほどの勇気はない。非難されるなど、よけいに面倒なことになるだろう。
 覚悟してはいたものの、役員決めで当たりを引き、さらに委員長も当たってしまったときには、自分のくじ運を呪った。周りの安堵のため息や冷笑のなか戸惑う私に、本部役員の・・・

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告白免許

17/02/26 コメント:0件 因幡雄介

 史織さんと恋人になるには、自転車免許が必須だった。
 父親に聞いたけれど、昔は自転車を乗るのに免許は必要なかったらしい。だけど車の交通事故に比例するぐらい事故が多くなったときから、国はとある法律を制定した。自転車免許制の導入だ。
 国民の反対を押し切って作られたこの法律により、十歳以上の者が自転車学校の入学を認められるようになった。不便だと皆思ったけれど、無料バスやタクシーの充実によ・・・

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チェーンの外れた自転車

17/02/26 コメント:0件 ケイジロウ

 大型客船がゆっくりと、しかし力強く、大きな川を進んでいた。
 僕は自転車を止めてしばらくその船を眺めていた。
 船に乗っている人たちが見えた。なんだか楽しそうである。幸せそうである。しかし、それらの笑顔の中から笑顔を見出すことはできなかった。太陽の光がさんさんと降り注ぐ真っ白なオープンカフェでコーヒーを飲む人たちに、必要に迫られた大衆的な汗臭さは全くと言ってよいほど漂っていなかった。・・・

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茜さす

17/02/26 コメント:0件 リードマン

私は今日も自転車をこいでいる。
いつもアイツが直してくれる自転車を。
私は自転車が好きだ。
アイツの事も、嫌いではない。
私は人よりホンのちょっぴり力が強い。大抵のものの扱いが究極的に下手な私は、
なんでも直ぐに壊してしまう。それは当然愛車も例外ではない。ルールを守って走っているつもりだ。それでも、私の力に耐えきれず、あっという間に摩耗し壊れてしまう。
それでも・・・

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オーダー

17/02/25 コメント:4件 OSM

 小学生の女児を滅多刺しにしてみたい。文化包丁でもダガーナイフでも日本刀でも、凶器はなんだって構わないから。
 滅多刺しをする際には、当然のことながら、奇声を上げるべきだろう。具体的にどんな声を発するかは、その日その時の気分で決めればいい。
 言うまでもなく、顔・首・胸を集中的に刺すべきだ。滅多刺しの滅多というのは、刺す場所を選ばないという意味ではない。手加減をせずに刃を振るうという意・・・

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ノセル

17/02/25 コメント:0件 みや

私の使命は”乗せる”事。ご主人様を乗せて何処へでも行く事が私の使命である。
私のご主人様の莉央ちゃんが無事に志望高校合格を果たし、通学の為に自転車が必要となった時に私はこの高岡家にやって来た。自動車、電車、飛行機、ありとあらゆる交通手段の中で私は一番手軽で一番働き者だと自負している。

「この色すごく綺麗、この自転車が良いな」
自転車屋に並んでいる数々の色や形の自転車の中か・・・

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未確認生物――ワイルド・バイシクル

17/02/25 コメント:0件 鮎風 遊

 今年は大雪でした。しかし世の常、時は巡り行き、早くもあちらこちらから桜の開花宣言が聞こえてきます。きっとそのせいでしょうか、ビンサラ、いわゆる貧乏サラリーマンの小生の心もそこはかとなくウキウキと、なりにけりです。そんな時にですよ、唐突窮まりない電話、「直樹、花見に行かないか?」と浩二から掛かってきました。
 まことにびっくり三年柿八年。というのも学生時代、未確認生物発見同好会のリーダーだっ・・・

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キヅイタラ、マケ!!!

17/02/25 コメント:3件 のあみっと二等兵

下校時。自転車の前で、動きが止まる。勿論、思考も。目の前で起きてる事態と、状況を理解出来ない。
サドルが無くなり、代わりに刺さっているのは、ブロッコリー。
何故だ? そんな疑問や、自問自答を繰り広げた所で意味など無い。それで状況が変わるのならいくらでもそうする。
それよりも、これをどう打破するのか、という方が重要だ。
鞄をとりあえずカゴに入れて……周囲を恐る恐る見回した僕・・・

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サドルおじさん

17/02/25 コメント:0件 


 冬が春一番に吹き飛ばされた頃、学(まなぶ)は再就職のため新天地にやって来た。愛車のロードバイクを連れて来たのだが、それを見た同じマンションの住民からは不気味な噂しか立たない。

「サドルおじさんには気を付けなさいよ」

 大家さんも隣のおばさんも、ピカピカで高価な愛車に対する称賛はなく、耳慣れない警告ばかりであった。
 しかしながら学の一抹の不安は、部屋の整・・・

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悪意が疾走する

17/02/24 コメント:0件 Fujiki

 クラスメイトの長田の死体は通学路沿いにある土手に転がっていた。喉笛がパックリ裂かれ、夏服の白いシャツが血液で真っ赤に染まっていた。警察は彼を連続通り魔事件の新たな犠牲者と断定した。鋭利な刃物を用いた手口も、夜更けの犯行時刻も一連の事件と一致していた。通りの防犯カメラには自転車に乗って走り去る黒ずくめの男が映っていたらしい。
 全校集会で校長が長田の死を報告し、僕らは一分間の黙祷を捧げた。黙・・・

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僕と自転車

17/02/24 コメント:0件 鴻田さつき

 「これはね、どこへでも連れて行ってくれる魔法の自転車だよ。」
お婆さんはそう言って、一台の自転車を僕にくれた。普通の自転車だ。それでも、お婆さんのその言葉にドキドキしたし、ワクワクした。最近、補助輪を外して乗れるようになった僕にとって、なんとも嬉しいプレゼントだ。これに乗ってどこへ行こう。たかし君の家まで行こうか。買い物のお手伝いも楽しいかもしれない。モクモクモク。想像が膨れては、千切れて・・・

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巡る、車輪

17/02/24 コメント:0件 ナマケモノ

 カラカラと自転車の車輪が回っている。
 自転車を横倒しにした状態で、少女が手でペダルを回しているのだ。大きな眼をぱちくりとしばたたかせながら、少女は回る車輪を見つめる。
 春の陽光を受けて、車輪は銀色の閃光を放っていた。
 その閃光の中に少女は人影を見た。
 自分にそっくりな、小さな女の子だ。その子が補助輪のついた自転車に乗って、土手を走っている。自転車の後方には、1人の・・・

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PERFECT WOMAN

17/02/23 コメント:2件 つつい つつ

 一ノ瀬麗(うらら)は、完璧な女性である。であるからして、彼女は誰よりも綺麗で、誰よりも優秀でなければならない。
 今日も彼女は幼稚園のお歌の時間に、Twinkle,Twinkle,Little Starと、ネイティブで美しい歌声を披露し、注目を集めた。友達のみんなは、こぞって「麗ちゃん歌手みたい」、「麗ちゃんすごい上手」、「麗ちゃん、英語も出来るんだ」と、はやしたてた。
 しかし、彼・・・

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まほろばの手前で

17/02/23 コメント:0件 待井小雨

 あの坂道を真っ直ぐに行けば父母のいる場所に辿り着く。山から見下ろすのは岬の町。――まほろばは海の向こう。

 小学校に上がる春、祖父母の家に自転車が届いた。使用人をそっと呼び出す。
「自転車が届いたって本当ですか」
 両親を亡くして引き取られたばかりのこの家で、僕は心の拠り所を見付けられずにいた。厳格な祖父母の元で、僕の暮らしは激変した。狭いアパートは蔵を持つ屋敷となり、・・・

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盗んでほしい

17/02/22 コメント:0件 かめかめ

 高校の通学用にと母が早々と自転車を買ってきた。受験すらまだなのに気が早いと父が笑うと、母は絶対に合格するからと言って美和に笑いかけた。美和は曖昧な笑みを返して自室に入り鍵をかけた。
 部屋の鍵は先月やっとつけてもらった。それまでは母がいつでも勝手に部屋に入ってきた。美和はいつもびくびくしながら机の前で勉強しているふりをした。本当は漫画も小説も読みたかったけれど、母に見つかると取り上げられた・・・

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ヘルメット

17/02/22 コメント:0件 小高まあな

 転校して一番驚いたのがヘルメットだった。
 中学一年の夏、転校した先の学校では自転車に乗る時、学校指定のヘルメットをかぶるのが義務だった。今でこそ、ヘルメット着用の中学生を多く見かけるようになったが、その時はあまり主流ではなかった。失礼な話、さすが田舎と思った。
 真っ白いヘルメットは大きくて、頭でっかちに見えて、正直クソダサいと思った。
 しかも、
「小学生かよ、だせぇ・・・

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新聞配達の少年

17/02/22 コメント:0件 まー

 夜中、冬の寒さで目を覚ますも、時刻は午前四時半だった。当然いつもなら寝ている時間帯だ。
 だが何を思ったか、洋服を着こむと私は散歩へ出かけることにした。少し歩けば足元は温かくなる。そうなったら早々に引き上げて再び布団の中に入ろうという算段だったのである。エアコンやストーブをつければよさそうなものだが、あまりの寒さに苛立っていたのだろう。なぜか気温に対抗するような気になっていた。

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春の訪れ、飛び跳ねるミカン達

17/02/21 コメント:0件 霜月秋介

 日曜の朝。部屋の窓を覆うカーテンの隙間から、温かい日差しが差し込んでいる。私は伸びをしながらカーテンを開けた。するとまぶしい光が私を照らした。窓の外には、雲ひとつない青空が広がっていた。地面を覆っていた雪はすっかり解け、庭のあちことにはフキノトウが咲いている。春だ。寒い冬が終わり、暖かい春が今年も訪れたのだ。心が躍る。こんな日に、家に引きこもっているのは勿体無い。
「ミカコ!朝食できてるわ・・・

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おにぎり

17/02/21 コメント:0件 栗山 心

夏の始めのことだった。バイトからの帰り、駅の駐輪場に置いた僕のカナリアイエローの自転車の前カゴに、きっちりとラップに包まれたおにぎりがふたつ、ごろんごろんと入っていた。
ギョッとした。蛍光灯の薄明かりの下、海苔やふりかけもない、ただのおにぎりはやけに真っ白い。温かいまま包んだのか、暑い中置かれたためか、ラップの中のおにぎりはじっとりと汗をかいていた。
人通りの多い道に隣接する駐輪場は、・・・

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2月のある日

17/02/20 コメント:0件 伊藤 亜佐美

 ごうごうっ。耳元で風を切る音が騒々しい。車道を走るときはいつも緊張する。前を行くロードバイクのホイールを見つめる。言われたとおりにホイールが擦れるくらいに近づこうとペダルの回転数を上げるが、少しでも気を抜くとすぐ離れてしまう。手元のメーターを見る。時速28キロ。なかなかスピードに乗れない。一年で最も寒いこの時期の風は凶器だ。ネックウォーマーで口元まで覆い耳あてをしたうえでヘルメットをかぶる。アウ・・・

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おとぎ話のエビデンス

17/02/20 コメント:0件 本宮晃樹

〈エスぺランザ〉がどこにあるのか、正確には誰も知らない。
 伝承によれば〈断絶の砂漠〉を越えた先に、肥沃な大地が広がっているという。とても本当だとは思えないが、それがどうした? わたしはそのたわごとに賭ける気になった。死に絶えるのを待つだけの保守的な故郷にうんざりしたのだ。
「この地図によれば」ガリウム‐ヒ素型太陽光パネルが静かに電子を循環させている。「さらに東へ七十キロか」
「・・・

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The Heart of the PEDAL.

17/02/20 コメント:1件 のあみっと二等兵

僕はガレージに寄り添うように並んだ自転車を暫く見つめた。
シルバーと、赤い自転車。僕と、彼女の物。久しく乗っていなかったから、サドルを撫でると砂埃のジャリっとした感触が掌に伝わる。
僕は赤い自転車をガレージから出して、またがった。やっぱりサドルが低い。当たり前なのだが。
高さはそのままに、ペダルを踏み込みながら、僕の頭に浮かんだのは、彼女の言葉。
「木曜日は卵が安いんだよ?・・・

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九官鳥と自転車

17/02/20 コメント:0件 日向 葵

『わたしが前輪で、あなたが後輪。――』
 自転車を見ると思い出されるのは、そんな彼女の言葉。疾うの昔に交わしたその言葉を未だに覚えているのは、きっとそれが世界の見方が変わった瞬間だったからに相違ない。



 このペダルを漕げば、どこまででも行ける気がした。
 夏休みに入ると同時に買ってもらった新しい自転車が、日差しを受けて早く色々な場所に連れて行って欲しいと・・・

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失恋とサイクリング・ロード

17/02/19 コメント:1件 あずみの白馬

「恋なんて、簡単に終わるのね……」
 新幹線から見える景色は、山あいの白さに包まれて、ここがいつもの場所じゃないことを思わせてくれる。

 私はひとり、ふらっと傷心旅行に出ていた。元彼とは婚約までしていたのに、その親がかたくなに反対した。私が高卒なのが気に入らなかったのだ。
 家の事情でやむを得なかったと、何度話し合いをしても相手の言い分は変わらず、交渉の席で彼は黙っている・・・

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星空自転車

17/02/19 コメント:0件 塩らーめん

流星群を観に行こう

空がオレンジ色に染まる中、先輩はそう言って笑った。
私は緩くなってしまう口もとを抑え、悟られないように、悟られないようにとうつむきながら、先輩の自転車の後ろに座る。
そして先輩の細い腰に手を伸ばした。
出発の合図だ。

どんどんと加速してゆく。
あたりはすっかり暗くなっていて、冷たい風が私の頬と耳をかすめた。あたたかい先輩の背中・・・

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おばあちゃんのくれたもの

17/02/19 コメント:0件 タキ

「俺のチャリが…無い」
公園の池で釣りしてる間に、剛の自転車は盗まれていた。放心したようにつぶやく剛を見て僕は驚いた。体が大きくいつも強気の剛がこんなに弱々しい顔をするなんて。付き合いの長い悟が厳しい顔で言った。
「ばあちゃんの形見なんだ」
僕は納得した。小6が乗るにしては窮屈な24インチの古い自転車を、なぜ家が裕福なはずの剛が大事に乗り続けていたかを。

仲間の太一・・・

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電動自転車

17/02/19 コメント:0件 林一

 長年愛用していたママチャリが壊れてしまった。かごが大きくて買い物に便利な、お気に入りのママチャリだったのに。
 車を持っていない俺にとって、自転車がなくなるのは死活問題だ。俺は慌てて近くのホームセンターまで走った。
 一万円くらいで買える安いママチャリをと思っていたが、ここで俺はこいつと運命的な出会いを果たす。
「十万円!」
 こいつの値段を見た瞬間、俺は思わず声に出して・・・

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その空気を

17/02/18 コメント:0件 レマドア

 幼い頃の私は、自転車に乗るのが苦手だった。
「いいよいいよ、その調子! そのまま、落ち着いて漕いでみて!」
 楽しそうに嬉しそうに、父は笑顔で私を励ましていた。その声援も、私は苦手だった。成功させないといけない空気を感じる。ここで失敗したら、父を失望させてしまう。幼いながらに、いつもそんなことを考えてしまう私がいた。
 がしゃん、と音を立てて自転車が倒れる。何回転んだのか、数え・・・

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ブルードルフィン

17/02/17 コメント:0件 むろいち

 どこにだって行ける気がしていた。
 ブルードルフィンだったら。

 「ブルードルフィン」、日本語だと「青いイルカ」。
 高校生の時に乗っていた自転車の名前。
 名付けたのは僕ではなく、サドル下の斜めの管部分に最初から「Blue Dolphin」とシールが貼られていた。
 イルカが飛び跳ねる海みたいに濃い青の車体。夏は涼しげでだけど、冬には寒々しい青。
<・・・

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キィコキィコ

17/02/16 コメント:2件 デヴォン黒桃


 幾つもの個人店が軒を連ねた町の商店街。屋根の隙間からは、お日様が光の筋を差し入れる。それでもヤハリ商店街のアーケードは、昼間でも薄暗い。
 私は、土曜のお昼過ぎに、お母さんに連れられて此処へ買い物に来る。

「あら、桜子ちゃん、コンニチハ。今日もお母さんとお買い物ね」
 同じクラスの千鶴ちゃんのお母さんが、私に微笑みかける。
 千鶴ちゃんは、赤いスカートを揺・・・

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キャンバスに描くもの

17/02/16 コメント:0件 こあら

 白いキャンバスを前に、僕は固まってしまった。
 最後の美術のお題は「中学三年間をあらわすもの」。

 クラスメイトたちは、すらすらと思い思いのものを描いている。
 野球部のやつはグローブ、吹奏楽部の女子はクラリネット。そういう分かりやすい部活のやつはいいよなぁと思う。
 他を見渡すと、友達の似顔絵を描いている女子の集団もいて、美術室はわいわいとしている。

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メル

17/02/16 コメント:0件 まー

「わき見運転とかマジでねーわ。事故ったらどう責任とってくれんの?」
「うっさい! っていうか見通しのいい一本道なんだから事故るわけなくない!?」
 ムッときた私は、思わずハンドルの辺りをグーでゴツンと殴った。......さすが鉄、こっちの方がダメージ半端ない。
「はぁー? 逆切れした挙句暴力? もはや人として有り得ねー。あ、もしかして近々俺をどぶにでも遺棄するつもり? やべぇこえ・・・

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思い出の自転車

17/02/15 コメント:2件 甘咲アユミ

「ねえ、レイヴン。ワタリガラスって神さまの使いなんでしょ?私を学校まで連れてってよ」
「また無茶なワガママを言いだしたな、娘よ」
娘は、朝食のパンを持ちながら、くちびるを尖らせ、自転車のカギをくるくると回している。
「いくら私がワタリガラスの鳥人だからと言って、そんな魔法みたいなこと…」
「ワタリガラスって、スゴイ神話が色々あるじゃん?やってみたら案外できるかもよ?」<・・・

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青空

17/02/15 コメント:0件 ちりぬるを

 ぎゅっと目をつぶって、ゆっくりと開いたらあの夜に戻れないかな。そう思いながら目を閉じた。

 ガチャッという嫌な音がしたなと思ったら案の定自転車のチェーンが外れていた。ダイエット中にも関わらず夜中に突然アイスが食べたくなってパジャマのままコンビニへ向かった天罰なのかもしれない。
 ちょうど家とコンビニの中間くらいの場所だった。このまま手ぶらで帰るのも悔しくて、私はギコギコと不快・・・

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日々は憂鬱

17/02/15 コメント:0件 永木 忍

 私は憂鬱だった。
 金曜日は大学が選択授業の一コマしかない。しかも、今日はその授業が休講になったため、私は平日の全休を満喫するはずだった。実際に、私は欲望に身を任せて昼まで惰眠を貪り、目が覚めてからもしばらくベッドの上で携帯をいじって、きちんと時間を無駄にしていた。しかし、その夢の時間は、香菜子から送られてきたメッセージよって無情にも終わりを迎える。
 それは「由美、課題やった?」と・・・

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恋のアンバランス

17/02/15 コメント:0件 高塚由宇

私は小さい頃から何度練習をしても自転車に乗る事ができなかった。そもそも、どうやったら自転車のようなバランスの悪い物に乗る事ができるのか、自転車に乗る事ができる人達が不思議でしょうがない。

右に体重をかければ右に倒れるし、左に体重をかければ左に倒れてしまう。そのバランスを取りつつ、前に進む。しかもペダルをこぎながらだなんて……。

私は一生自転車に乗る事などないと自分では信・・・

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夏の朝、自転車で

17/02/13 コメント:0件 桜坂ゆかり

 桜が見ごろを迎えた3月下旬のある日の夕方、吉村聖夏は自宅玄関にて、大好きな祖父の訪問を受けていた。
 聖夏の祖父は嬉しそうに言う。
「そうそう、危うく本題を忘れるところじゃった。中学卒業おめでとう! わしから卒業祝いのプレゼントがあるから、ちょっと来てくれ」
 プレゼントと聞き、ますます嬉しくなる聖夏。
 祖父の後に続き、玄関のドアから外に出た聖夏が、そこに見たものは自転・・・

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暁に叫ぶ

17/02/13 コメント:0件 タキ

私は私立探偵。
私は推理しない。事件は私の周りで起こらない。
名探偵に憧れて始めたこの仕事も、来るのは浮気調査ばかり。密室殺人でも解いてみたいが、これが現実だ。

その依頼もまた浮気調査だった。30代夫婦、子供なし。「やりたい事がある」と言い出した妻と大喧嘩して家を飛び出した夫から、「妻がどうしているか知りたい」という内容だった。「早朝が怪しい」のは珍しいケースだ。
・・・

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ロマンを求めて

17/02/13 コメント:0件 かわ珠

「私は、自転車で虹を渡りたいの」
 と少女は頬を膨らませた。彼女には悪いけれども、年相応の可愛らしい表情に、少しホッとする。彼女の歳は知らないけれども、多分幼稚園の年長くらいだと思う。正確な年齢は聞いていない。小さい子供だとはいえ、レディに年を訊ねるのは失礼だろう。
「でも、雨は降っていないし、降りそうにもない。きっと、しばらく虹は現れないと思うよ」
 そんな少女に対して、僕はひ・・・

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私の中の自転車

17/02/12 コメント:1件 笹峰霧子

 ここ数年足腰が弱くなったので小型の自転車を買った。
近くの広場で毎日練習しようと思ったのだが、三日坊主でやめて今は車庫に置いてある。
子供の頃からずっと自転車には乗り慣れていたのに、30代半ばに車の運転をするようになってから自転車には乗らなくなっていた。足腰が弱ったのも車ばかりで移動していたせいだと思う。
自転車はジムの自転車こぎにも取り入れられているぐらいだから、運動機能にも・・・

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僕の頭の中身

17/02/11 コメント:0件 享楓

ハァ、ハァ…
口から漏れる息は白く湯気のように暖かい。それも、そのはず自分の持てる力全てを使って自転車のペダルを踏んでいるのだから。予定ではゆっくりと自分のペースで目的地に行くはずだった。だけど、まさか寝坊するなんて。彼女との約束ギリギリに目が覚め、急いで支度をすると飛・・・

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春と夜

17/02/11 コメント:0件 黒丞

真っ先に風を切る。ぼくはいつもそこに座っているだけ。今日も彼はぼくをそこに乗せると、いつもと同じスピードで坂を上りはじめたのがわかった。ぽかぽかする柔らかな太陽の光に目を細める。やっと大嫌いな寒い季節が終わったのだ。安堵のため息を漏らすぼくの目の端では、草や花が我こそはと言わんばかりに咲き乱れていた。のそのそと活動をはじめた生き物たちも映りこむ。新緑色のバッタが草むらで飛び跳ねた。
今日はど・・・

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華のない、そんな僕だけど。

17/02/11 コメント:0件 りんご◯

「今日も遅くまでご苦労様でーす」
僕はこの一言の為に生きていると言っても過言ではない。
地味で目立たない事務の仕事に、趣味も特技もない地味な生活。
学校で表舞台に立つことは無く、いつも廊下を真っ直ぐ行った突き当たりの、小さな部屋にいる。
そんな僕に毎日声をかけてくれる一人の生徒。
名前はヤマトさん。
毎日校門でお互いに帰る時、自転車ですれ違うだけ。
それだ・・・

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僕らは過程を生きている

17/02/10 コメント:2件 入江弥彦

 昔は子供が速く移動するための乗り物があったらしい。
 そう言いだしたのは歴史好きのトモヒロだった。彼のこの発言で、県内の子供全員が僕たちのもとに集まった。全部で五人。トモヒロと僕、アツヤ、エミカ、それからホノミだ。僕はホノミのことが密かに好きだった。一番年上のアツヤが、年上らしく恐縮してトモヒロに尋ねた。
「トモヒロさん、移動するための乗り物って車や電車のことかい?」
 それを・・・

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自転車の練習

17/02/08 コメント:1件 風宮 雅俊

「まず、ブレーキの使い方だ。少し押すから、ブレーキをかけてごらん」
 下り坂で、息子の背中を軽く押すと、自転車が進む。
「よし、ブレーキ」
 掛け声と同時に、キュッと音がして停まる。息子のホッとした気持ちが後ろからでも分かる。


 自分が子供の頃、学校が終わったら自転車で遊びに行く。自分の頃はそれが当たり前だった。友達と待ち合わせをして、ザリガニを捕まえに行っ・・・

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サンタさんと空飛ぶ自転車

17/02/08 コメント:0件 こぐまじゅんこ

 サンタさんは、こまっていました。
 クリスマスまでに遠い日本に行かなければいけないのに、ソリをひいてくれるトナカイさんが、かぜをひいてしまったからです。
「サンタさん、ぼく、かぜをひいててもがんばって走ります!」
 トナカイさんは言うけれど、ゴホンゴホンせきがとまりません。
「いやいや、ムリしちゃいかん。日本にはなにかほかの方法で行くことにするよ。」
 サンタさんは・・・

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一台の、自転車

17/02/06 コメント:0件 白沢二背

 昔、寝物語にした話である。
 白前町には戦争があった。
 農村地区の人々と商業地区の人々とである。
 或る時、一台の自転車が街を救った。
 其れは、今尚語り継がれる伝説である。

 農村地区には予算が無かった。自前のトラクターの修繕費も、で、ある。
 商業地区にはロードローラーが、あった。最低1000万円はする代物で、此れも錆がきていた。
 二つの・・・

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アンドロイドの移動法

17/02/05 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

モリオは空をながめた。彼にため息をつくという機能はなかったが、つけるものならつきたい気持ちだった。
処女惑星に宇宙船が着陸し、建設用ロボットたちによって基地が造られ、その基地にいる人間たちの指示によって、モリオをはじめとする数十台のロボットたちが地上の探索にでかけたのがいまから三時間前のことだった。ほぼ人間とおなじ背丈だが、のっぺりとした顔に、愛嬌も何もない目の穴が二個あいていて、ものを食べ・・・

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俺と自転車

17/02/04 コメント:0件 浅木

最近俺の自転車が喋り出した。

比喩とか俺の頭がおかしいとかではなく
本当に言葉を発するのだ。

事の始まりは1ヶ月ほど前。
夜暇潰しにコンビニに行こうと自転車に跨ったら
声が聞こえてきた。

「子供がこんな遅くに外出とは感心せんな。」

周りを見ても誰もいない。まさかと思いつつ
どうせ空耳だろうと漕ぎ出すとまた話しかけてくる・・・

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無償の親切

17/02/05 コメント:0件 Yutanun

僕を構成する心と体の時は、小学生の低学年に遡る。小さな体で、半ズボンに青いセーターを着ていた記憶がある。冬の時で、少し鼻水をたらしていた。僕は薄汚れたスーパーマーケットの前の駐車場に、自転車を停めていた。その日のその時間はほとんど客が居なくて、僕の自転車の周りに、同類はほとんど存在しなかった。

見た目がやや焦げた独特のたれがかけられた唐揚げを買った後、自転車に乗ろうとした。しかし、自・・・

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私の相棒

17/02/04 コメント:2件 上木成美

私が自転車に乗れるようになったのは、小学2年生の時だった。早い子は幼稚園でマスターしており、なんとか友達に追いつこうと練習したのだが、膝や肘に擦り傷を作るばかりで上達しなかった。毎日のように近所の広い駐車場で、少し年の離れた兄に後ろを支えてもらいながら、辺りが暗くなるまでペダルを漕いでいた。小学校に入り急に身長が伸びた私は、それまでの自転車が小さくなってしまい、まだ乗りこなせないにも関わらず・・・

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二輪車の発明から数十年

17/02/04 コメント:0件 笹岡 拓也

「こんなことできるってすごいね!」
小さな子どもは目を輝かせてその姿を見つめている。

立ち乗り自動二輪車が発明されてから数十年が経ち、街中でも乗っていない人がいないほどの乗り物となった。ついに人間は歩かなくても行動できる生物となった。
朝起きると同時に二輪車に乗る。昔で言うならスリッパの役目を二輪車が果たしている。そして会社に向かう時は外出用の二輪車に乗り換える。最近の二・・・

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秘密の自転車屋さん

17/02/04 コメント:0件 白沢二背

 或る風の便りに聞いた物語である。
 此の白前町には、秘密の自転車屋さんが通る。
 曰く、カスタマイズドが便利だの、魔法の仕掛けを組み込んである、だの。
 惜しむらくは其の自転車屋さんは風の様に早いんだとかで、十二年も此の街に住む私も一度も御目に掛かった事が無い。
 自転車屋さんの朝は早い。
 うっかり寝過ごそうモノなら、俟っては、くれない。
 八時十五分。登校・・・

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BICYCLE THIEVES

17/02/03 コメント:4件 泉 鳴巳

「お前、『自転車泥棒』って映画は観たことあるか?」
 そいつは僕のクロスバイクを撫で回し、にやつきながら言った。
「商売道具の自転車を盗まれ、失業の危機に陥る。やっとのことで犯人を見つけ出すも証拠不十分で放免。自棄になって自分も自転車を盗もうとしたら警官にすぐ取り押さえられる……そんな話さ」
 僕は応えない。応えられなかった。
「悲しい。可哀想。不条理だ。大多数のやつはそう・・・

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くらむ

17/02/03 コメント:2件 十文字兄人

「……ねえ、三組の山田君が、水島さんと一緒に帰ってたってるところ、見ちゃったんだけど」

「ああ、なんか最近、付き合い始めたみたいだね」

「え、あんた知ってたの?」

「まあ、風の噂で聞いただけだけど……」

「そう……。しかもその二人、自転車で二人乗りしてたんだよ。山田君がこいでる自転車の荷台に水島さんが乗って」

「掴まってた?」<・・・

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何処迄行けるか

17/02/02 コメント:0件 白沢二背

 祖父が倒れた矢先に一台の自転車が有った。
 兄は「御前の物だよ」、と、暇を設けた。
 祖父の枯れ木の様な腕からは力無くキーが齎され、病室の一廓で私は泣いた。
 未だ母が幼かった頃、其の小さな腕で一所懸命おねだりしたという。

 今じゃこれっぽちも嬉しくない。自転車。――だって家にはスクーターが有る――。それでも誰かが引き継がなければ、ならない自転車。

・・・

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迷宮の商店街

17/02/02 コメント:0件 スタンピード喜多見

 まさか真昼間でしかも、商店街で出くわすとは想定外だった。
 この場所では人目が多く、力業でどうするわけにはいかない。ひとまず人がいない裏路地にでも逃げなければならない。
 人の合間をすり抜けながら小走りで駆けた。車椅子のヤツは追従速度が遅いために、距離は簡単に開けることができた。というより、追いかけてきてすらいない。
 ヤツの動きを確認しながら、店と店の間の小道を見つけて足をそ・・・

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go round

17/02/01 コメント:0件 じゅんこ



 街灯の下にできた青い陰を、避けるように歩いていた。
 この時間になると、道路は寛大になる。
 僕の情けない足音さえも鼓膜に届けようとするから、自然と早足になった。
 まわる。
 僕を見下ろす月と、あの忌まわしい自転車の車輪と、僕と、記憶が。
 病院からの帰り道は特に、どんな些細な風景もあの事故のことを思い出す引き金となる。きっと今、メリーは笑っている・・・

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自転車で宇宙まで

17/02/01 コメント:0件 るうね

「俺は、いつか自転車で宇宙に行くのが夢なんだ」
 それが私の幼なじみの口癖だった。
「自転車で宇宙へ?」
「おう」
「自転車にロケットでもつけるの?」
「それじゃ、自転車じゃないだろ」
 彼は、にかっと笑い、
「もちろん、足でこいで宇宙まで行くのさ」
 その笑顔を見て、私は、ああ馬鹿なんだなこいつは、と思った。
「行けるわけないじゃん、そんなの・・・

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首なし自転車

17/02/01 コメント:0件 キッド

 ちょうど今頃の、冬の寒ーい時期の事でした。
 高校2年。当時イッコ上の知子さんと仲良くなりたくて、彼女の家まで自転車で送って行ってた日々がありました。残念ながらその恋は実りませんでしたが、代わりにこんな思い出が残りました。

 知子ちゃんの家は私の住む街の端っこ、山際の本当の北端にありました。まわりは里山にカキ畑。田んぼ。果樹園と用水路、時々民家。そんなド田舎です。その中を最近・・・

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陸のいるか

17/02/01 コメント:4件 文月めぐ

 五月になって昼間は暑く感じられるようになってきたけど、夜になると闇が昼間の熱気を取り込んでしまったみたいで、少し肌寒い。だけど、一台の自転車に二人でまたがって、海斗くんの背中に寄りかかっていると、じわじわと体温が伝わってくるから、一人で自転車に乗っているよりあたたかい。
 周りに人影はなく、私たちの自転車のタイヤがコンクリートとこすれてしゃりしゃりと回転する音しか聞こえない。
 部活・・・

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月とETと自転車

17/01/31 コメント:2件 深海映

 西陽が岩肌へと鋭く射し込む夕暮れ。私は海岸沿いの曲がりくねった坂道を自転車で登っていった。目的地は、この山の上にある灯台。

 ゆっくりとペダルを踏みしめる。
 ハルくんはあんなに軽々と自転車でこの坂を登っていたのに、いざ私がやってみると全然前に進まない。自転車に乗るのにも、やっと慣れたと思ってたのに。

 小さい頃から自転車に乗れないことがコンプレックスだった。<・・・

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遠い彼女

17/01/31 コメント:0件 八王子

「あのさ〜、あれあれ。あれだよ、あれ」
 麻衣佳がミニストップのソフトクリームを舐め、あれあれと空を見上げながら言う。
 十二月の夜は寒くて堪らない。
 麻衣佳はマフラーと手袋、コートの下にも重ね着しているにも関わらず、寒空の下でソフトクリームを食べている。
 俺は自転車を押して、麻衣佳の歩調に合わせて歩く。
 学校帰りの寄り道はいつものことだが、冬の夜は早く訪れるし・・・

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過去を見た少年

17/01/30 コメント:1件 空 佳吹

 その日、田舎の高校生の僕は、いつものように放課後、野球の部活が終わると自転車で帰路についた。
 これまた、いつものように練習が長引いて、陽は完全に隠れていた。
 僕が通っている学校は、大きな森の向こうに在り、その間の道には街灯は皆無だった。
 僕は校門を後にすると、森に添って続くガタガタ道を、ひたすら自宅に向ってペダルをこぎつづけた。
 ライトは壊れているが、通い慣れた道・・・

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自転車のおせわって、とってもたいへんなの……

17/01/30 コメント:1件 ちほ

「こっちに来て、ウォルター。あなたの自転車よ。素敵でしょう?」
 子ども用のひよこ色の自転車。母の新しい恋人ピートが手に入れてくれたそうだ。ウォルターは、背の高いピートを背伸びして見つめる。ピートは、笑顔で右手を軽く振った。この人は、いつも笑顔を向けてくれる。優しい人かもしれない。
「……ありがと」
 ウォルターは、ちょこんと頭を下げた。そして、初めての自転車を家の前の道へ引っ張・・・

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