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水面 光さん

■ホームページ「水面文庫」 http://www.minamo-bunko.com/ 忙しい中でも身を粉にして執筆活動しております。ジャンルとしては現代ファンタジーが中心でございます。よろしくどうぞー

性別 男性
将来の夢 物書きでメシを食う
座右の銘 人の心は変わらないから自分が変われ

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夢と現実

17/01/09 コンテスト(テーマ):第126回 時空モノガタリ文学賞 【 304号室 】 コメント:0件 水面 光 閲覧数:586

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「ここだ」──私は玄関ベルの横の表札の上に掲げられた“304”という数字を見てつぶやいた。間違いない。夢の中ではっきりと見えた数字。こんなことはめったにない。数字が夢の中に出てくるはずがないんだ。試験で悩まされていることでもないし、レジでお釣りの計算ができなかったことを気に病んでいるからでもない。この数字には何か意味がある。しかもとてつもなくやヴぁい意味が──。表札には何も書かれていない。躊躇なくボタンを押す。まるでいつもそうしていたように──そして戸を開ける。鍵はかかっていない。チェーンもされていない。中は暗かった。私はなぜか自然にその言葉を吐いた。「ただいま」──一瞬燃えるマグネシウムのような強い閃光が走る。その光に目をつむらされ、開けると明るさは保たれたままだった。そして目の前に家事をしていると言わんばかりのエプロン姿をしたかわいく若い女性が立っていた。「おかえりなさい」──聞き覚えのある声だし、顔も見覚えが。これはなんだ? 私は天涯孤独の身で結婚したことなどない。しかし憶えている。デジャブのような──。「これは?」「これはって?」「いやなんでもない」「夕飯できてるし、お風呂もわいてるよ」「ああ、そう」「どうしたの? 今日ヘン。仕事で何かあったの?」「いや、そんなんじゃない。ただ──」「わかった! あたしの裸想像して1日中仕事が手に付かなかったんでしょ?」「ハハ、それならまだ救いようがある。変な夢を見たんだ」「エッチな夢でしょ!」「違う。数字が──」「数字?」「まあいいか。メシを食う、風呂はそのあとだ」「リョウカイ! 早く上がってよ。他人の家みたいに玄関先で」「ごめん」──私はかわいく若い妻?と食卓を囲んで食事をした。いつも通りのはずだったがこっちのほうが夢のようだった。──そうか! これは夢だ! だったら醒めないで! お願いだ! 「今日何してた?」「いつも通りよ。昼間はパート、帰ってきて洗濯と掃除、夕飯とお風呂の準備。滞りなくね」「カンペキだな」「こんな優秀な奥さん他に居ないよ? しかも若くて美人、あなたのタイプどんぴしゃ」「ハハ、わかってる」──電話がなる。「僕かな?」「出るね──はい、もしもし──」──私は妻?の目を見て自分を指さした。かぶりをふる妻? 「はい、はい、かしこまりました。はい、失礼します」「なんだった?」「あたし帰らなきゃ」「自分のうちはここだろ?」「そういう意味じゃない。在るべき所へ」「ここじゃないか。実家からか?」「さよなら」私は椅子から立ち上がる。そしてそこに立っている妻を思い切り抱きしめた。「たのむ! いかないで、お願いだ」「あなたのこと忘れない。だから放して」私は妻?を抱擁から解き放ち、そして床を見ながらぼそぼそと言った。「さよなら」戸を開けて出ていく妻? インターホンから声が聞こえる。「やつはどうした?」「おっぽりだしたわ」「ふん、マヌケめ。夢の世界より現実のほうが自由度がはるかに高いことに気付いてないらしいな。俺たちの存在も自分が創ったことを忘れてるらしい、ツァハハハ! 傑作だな!」私は戸を開けて外に出た。「おい、待て!」振り返る男女二人。「どうした? トイレはそこじゃないと思うぜ? ツァハハハ!」「おまえらなんなんだ?」「そんなことはどうでもいい。おまえが感じてるすべてが現実だ。それをよく考えてみろ。じゃあな」前を向き歩き出そうとする二人をとめる。「待て!」「なんだ? お前の頭蓋骨の内側は空洞になってやがるのか?」「妻を返せ!」「妻じゃない」「じゃあなんだ」「ただのお前の夢の中に出てきた女だ」「これは現実なんだろ?」「お前は夢と現実の区別がつかないイカれ野郎だってことは自覚してるんだろ? もうわかってるよな? お前は現実で女を口説けるようなやつじゃない。せいぜい夢の世界で満足するくらいのものだろう? それでいい。誰も文句は言わねえさ。俺たちは忙しいんでな。あばよ」「くそったれ!」「ツァハハハ!」──目を開けた。世界が開闢したあとは時間が前に進むだけ。後戻りは絶対にできない。「よお、起きたか?」枕元に体育座りした男。「誰だお前? どっから入った?」「落ち着け。オレはお前自身だ、だからここにいる」「やめろ、もううんざりだ」「ここは現実だ。まぎれもなくな。おっぱじめようぜ」「なにを?」「お前が今見た夢を現実にするんだ」私は鼻で笑った。「よせ。ランボー3怒りのアフガンふうに言やあ──大佐、俺の戦争は終わったんです──だ。私はもう終わってる」「終わったと思ったらほんとに終わる。それだけはやめておけ。お前はまだ生きてる。やれることはたくさんある、まだ体は健康だからな。考えるな。素直になれ。お前の中にわきあがってくる良心と善意に従え」「どうすりゃいい?」「そうだな、まず彼女をつくれ」


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