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水面 光さん

■ホームページ「水面文庫」 http://www.minamo-bunko.com/ 忙しい中でも身を粉にして執筆活動しております。ジャンルとしては現代ファンタジーが中心でございます。よろしくどうぞー

性別 男性
将来の夢 物書きでメシを食う
座右の銘 人の心は変わらないから自分が変われ

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二度と来るか、アホ!

16/10/26 コンテスト(テーマ):第121回 時空モノガタリ文学賞 【 捨てゼリフ 】 コメント:0件 水面 光 閲覧数:642

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女はいくつになってもゴシップ好き。私は噂話をされたからと言って気に病むような人間ではない。「またか」と少々残念な気分にはなってしまうが。だが、考えようによってはそれも人生のお楽しみの一つだ。自分が変わればいいだけのこと。私が本当に残念に思うのは常に機嫌が悪く、たちも悪い、他人のことを慮れない連中の存在だ。それも考えようによってはどうでもいいことだ。特に客商売ではそんなことをいちいち気にしていたのでは仕事にならない。そう店長さんが言っていた。心の広い、とても優しい人だ。仕事の話はしないでおこう。それより今私が気に病んでいることが何一つないことが心配と言えば心配だ。何も問題を抱えていない人間が仮に居たとしよう。そんなやつが語るなって話だろ? もっとも私の場合、繰り返すようだが、心配がないことが心配なので、その意味では問題を抱えている。それによく考えたらアレコレと置き忘れている事柄がいくつかある。それをいちいちここで挙げてもいいが私が言いたいのはそんな些末なことどもではない。──誰か、私に何か求めろとは言わないから、語ることだけは許してほしい。勝手に言ってろと思うかもしれないが、精神科のクリニックの先生は「お前はリスクの高いことを語っている」と私を脅した。一意見に過ぎないとは言っていたが結局のところ自分が気に食わなかっただけだろう。あのお方とは基本的に身分も立場も住む世界もまったく違うので、しかも医者と患者という相容れない関係なので、それは気にするだけ馬鹿を見るというものだ。私は私の考えでやればいいだけの話。リスクとかを考えて行動せねばならないのは死ぬほどわかっているが、たとえそれで命が奪われようとも、「もう少し生きていたかったかな。楽しみたかったかな」というささやかな感想を抱くくらいのものだ。私に失うものがあるとしたらもはや自分の命だけ。そんな人間に対してリスク管理の重要性を語って聞かせたところで何の意味がある? まったくない。「先生は結局のところ、私を脅すようなことしか言わないじゃないですか。私のためを思って言ってくださっているのであれば、私の側は完全に脅しとしか思っておりませんので、私はただ先生のお話を笑って聞き流すだけです」──もしもこう先生に言ってみたらどうなるだろう? セカンドオピニオンでも利用したらどうだとおっしゃるだろうか? もし関係が悪化した場合、いろいろと不都合なことがあり、今の時点では主治医に服従しておくしかない。私は別に二重人格とかそういうのではなく、自分の側のスタンスとしてただ真面目にしておきたいだけなのだ。汚い言葉ならいくらでも知っているし、冗談かどうかの区別くらいつく。笑って生きれるようになるにはそれなりに時間を要し、おそらくいくら時間をかけても、そのスタンスは変わることはないだろう。「どこにあるんか知らんが大学出だから馬鹿にしてやがるのかな?」バイト中にこんな声が聴こえてきた。一瞬暗鬱にはなったが何度も言うようだが私はそんなことでずっと気に病むような人間ではもはやないのだ。気に病むとすれば、向かいの妖怪みたいな歯が抜けて白髪混じりでギョロ目でせむしのクソババアが──そう呼んでいい理由は私に母が亡くなったことに慣れたかとしつこく何度も訊くから──人が来ると必ず、自分に用があって来たのでなくとも必ず、しゃしゃり出て来て、気持ちの悪い声音で話しかけることだ。どうでもいいことだが生理的に受け付けない人間というのはこの世界に必ず何人か存在するものではないか。そういう人間にあの主治医の先生がなりつつある。いや、もうかなり以前からなっていた。生前の母が私が退院する日に白い封筒に包んだ袖の下を渡した。真心からの笑顔でね。──くっそ! あいつは当然のように黙ってそれを受け取った! こういう時の対処の仕方を心得ていなかったのかもしれないが、私はとても憤慨した。母さん、何であんなことをした? する必要は微塵もないじゃないか! 弱者ヅラする気は微塵もないが明らかに弱者はこっちじゃないか! くっそ! これまでに経験したことがないほど最高に悔しい! 挙げ句、母がありがとうございましたと言ったら看護師がこう言い放った。「仕事ですから」──くたばれ! 入院中ある看護師にこう言われた。「あなた笑わないね」──病気の症状に見舞われて「アハハハ!」と笑うやつがこの世界のどこかに存在するのなら、そいつこそがキチガイだろうが! 私をさんざんキチガイ扱いした挙げ句──窓に鉄格子がはめられていて、寝ること、風呂に入ること、食べること、排泄すること以外は何もできないところに缶詰めにして、夜は必ず施錠してあり、寒くて寝付くことができなかったので、毛布をくださいと言ったら、仏頂面で「ほらよ」と言わんばかりに! ──「二度と来るか、アホ!」


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