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かつ丼さん

小説やエッセイを書くという事に関しては全くの素人です。私の文章に対して厳しいコメントをお待ちしております。貴重なお時間ありがとうございます。

性別 男性
将来の夢 物書きで食べていくこと。
座右の銘 成功の反対は失敗ではなくやらないこと。

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ワライタケ

16/10/23 コンテスト(テーマ):第119回 時空モノガタリ文学賞 【 お笑い 】 コメント:0件 かつ丼 閲覧数:328

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きょうは俺の教えている学習塾の全国統一テストがあったんだが、とんでもないミスをやってしまって、塾長からコテンパンに叱責を受けて落ち込んでしまった。俺は意外と叩かれ強いんだが、今日のは完全に自分の不注意なんで自己嫌悪に陥ったとでもいうのかな。テストは一教科六十分なんだが、五十分で止めの指示を出してしまったんだ。生徒からは抗議もなかったけど、他の教室がまだテストをやっていたのでミスが分かった。俺は塾に来る前は、一般の会社で働いていたんだけど、何となく居心地が悪くなって辞めてしまった。まあ、自分の勤務態度が原因だと思う。仕事が面白くなかったから真面目に働かなかったからね。今の塾だって金の為と割り切ってやっているので、そういうミスが起こるのだろう。実際、試験の監督は退屈なので、早く終われと思っていたんだ。腹もすいていたし。でも、自分にだって最低限の責任感はあるから、やっぱり一人前に落ち込むのだろう。

こういう時は他の人間だったらやけ酒でも飲むところだろうけど、俺は酒もタバコもやらない。さて、この気を紛らわすのにどうしたものか。やけ食いには限界があるので気が紛れる前に腹をこわしそうだ。旅行に出てもいいのだが、明日はまた仕事だし、大ポカをやった次の日に欠勤ではまずいだろう。それに大体旅行に行く金など貧乏一人暮らしの俺にはない。

色々と考えていたら、どういうわけか家のそばに馬糞が落ちていて、そこに小さなキノコが生えているのを思い出した。そう、ここは名古屋市内といってもかなりの田舎なのである。緑区ね。そのキノコはワライタケではないかと前から薄々感じていて、試してみようかと思っていた。だけどやっぱり怖いので手をださなかったんだけど、やけくそ感がそのハードルを下げてしまった。自分の担当している理科の授業で、「ご家庭に幸せを運ぶワライタケの
お吸い物」などと冗談を言っていたが、実際は試した事はなかった。警察のお世話になるかもしれないしね。でも今日はそんな事はどうでもいい。

早速馬糞の場所へ採集に出かけた。結構たくさん生えていて、集めるのに苦労はしなかった。これがワライタケであるとの確証はないけど、それもまあどうでもいい。よく見ると可愛いキノコだ。それにしてもキノコにはとんでもない猛毒を持ったものがあるけど、なんでなんだろう。生存の為なのだろうけど、菌類なんて胞子でいくらでも増えるんだし、毒の合成のために使うエネルギーがペイするんだろうか。まあキノコの心配なんてする必要ないか。

さて、ワライタケは採ってきたし、あとは食うだけだ、と考えていたら、同僚が家を訪ねて来た。
「落ち込んでると思って慰めに来たんだ。これでも食べな。」
うまそうな焼きそばを持ってきてくれた。持つべきものは良き同僚だと思ったが、目の前のワライタケはどうするか。
「一緒に食べよう。おいしいキノコもあるよ。」
「そうかい、悪いな。珍しいキノコだな。」

二人は嬉々としてワライタケをのせた焼きそばを食した。しばらくして、俺たちは酩酊状態となり、まず怒り、それから笑い、唄も歌ったような気がする。でもそこはワライタケだから、その笑いは狂乱的であった、とは隣の住人が後で警察に話した内容である。警察は家に来たのだが、事件性もないので、注意するだけで帰ったようである。

翌朝、キノコの毒は消えて、気分は爽快だった。落ち込んでいたのが嘘のようだった。同僚はといえば、やはり酩酊状態を楽しんだとみえて、大変感謝された。実は彼も仕事のことで気分がすぐれなかったんだとか。

それからは、悩んでいる人間をみつけたら、ワライタケを御馳走することにしている。馬糞はいつも落ちているし、キノコも大抵生えている。ワライタケのお吸い物も商品化しようかと思っている。


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