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水面 光さん

■ホームページ「水面文庫」 http://www.minamo-bunko.com/ 忙しい中でも身を粉にして執筆活動しております。ジャンルとしては現代ファンタジーが中心でございます。よろしくどうぞー

性別 男性
将来の夢 物書きでメシを食う
座右の銘 人の心は変わらないから自分が変われ

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パ行の法則

16/07/22 コンテスト(テーマ):第114回 時空モノガタリ文学賞 【 パピプペポ 】 コメント:0件 水面 光 閲覧数:765

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パ行ほど私を不安のどん底に叩き落とす象徴はない。パニック発作に見舞われたときのあの死ぬかもしれないと思わせる恐怖の象徴パ。ピンチは逆転のチャンスと言ったところで実際無事で済んだことのない苦い経験を思い出させる象徴ピ。メガ・オプティック・ブラストを食らわされたときのあの絶望感の象徴プ。いつか私もルンペンになるのではないかという不安を猛烈にかきたてる象徴ペ。そして最後は某宗教団体が秘密裏に人をこの世から消すために使っていた合言葉ポアを連想させる象徴ポ。その言葉たちと私が不運にもシンクロしてしまったある日の出来事をこれから語ろう。──私は昨日徹夜したためやや遅めに朝起きた。朝と言ってももうこんにちはと挨拶していい時刻だったが、実はこのところ徹夜続きで、本当のところ日付や曜日の感覚はおろか、一日が明るいか暗いかだけの原始生物なみの感覚しかなかった。仕事はもし合コンに行ったら絶対ドン引きされるような文章を書いて生計を立てていたと言いたいところだが実際は生活費のほとんどを、いやすべてを国から出る年金に頼っていた。なんで若いのに年金がもらえるのか不思議に思う人もいるだろうが世の中には不幸な境遇の人が確実に居るとだけ言っておこう。知らないほうが幸せな場合もあるって法則は信じたほうがいい。そう、知らなければよかったのがあのパ行の法則だ。女子高生の脱ぎたておパンティー、卑猥なピンクチラシでいっぱいの電話ボックス、屁の音、言うのがはばかられる男性器の横文字表記、そして最後は某有名漫画家の大ヒットアニメのオープニング・テーマの歌詞の一節「ポックンは歩く身代金」ときたもんだ。考え過ぎなのは自分でも十分把握済みだからそれはご心配には及ばない。しかしここまで禍々しいものを私に連想させるパ行の法則は世界中をくまなく探したってそうそう簡単に見つかるものじゃない。私がなぜそれに気付いたかは話せば長くなるのでここでは割愛しておくがとにかく私はその日が無事に終わりそうな予感がまったくしなかった。というのも、パ行の法則をあれこれ考えていると結局のところ私の頭の中では悪い兆ししか思い描けないことに気付いたからだ。私はなんとかしてプラス思考にもっていこうと努力はした。アホじゃありませんよ、パーでんねん! どっちにしろ頭がおかしいってことじゃないか! ピーピー泣いたところでお前の本性はモロバレしてるんだよ! プって笑うのは明らかに人を馬鹿にしている! あの愚弟にはヘイトメールの極めつけに漢字二文字で笑笑とだけ打ったくそむかつく画面を見させられた! たんを路上に吐くやつは社会人失格だし、たいていクズに決まってる、親父がそうだった! 生ポを不正受給してるやつらには天罰が下ればいい! 不安はどこまで行ってもないと臆面もなく言い放ったあの母方の伯母はのうのうと余生を送ってるらしいじゃないか! どのみちあのババアの頭のどこかがおかしいことは子供の頃から知ってたがね! 盛り上がってきたところでなんだがこれ以上考えると頭が爆発しそうなのでシャワーを浴びて気分転換することにする。私がパソコンをスリープにして思考をいったんやめることにしたまさにそのときだった。鳥が鳴いてた。しかもパ行のオンパレードだった。しきりにパ行を連呼している。でもその声には害意がまったく感じられなかった。むしろ心地いい。いいやよく考えてみろ。パ行ほどふざけた言葉はないではないか。考え直せ。本当は吐き気がしているくせに強がったところで騙されていることに変わりはない。私はそう自分に言い聞かせ、浴室に向かった。昼だと思っていたが部屋の外はなぜか暗かった。照明をつけていたことも忘れていたというのか? それに昼メシを食べた覚えはないし、もちろん晩メシも。空腹感がない。あの鳥は夜中に鳴くのか? いくつかの疑問点はあるにせよ、とにかくシャワーを浴びてすっきりすりゃ、また私の愛すべき脳ミソちゃんが前向きに回転してくれるはずだ。ところが脱衣所の照明をつけるとまずパと言われ、衣服を脱ぎ始めるとピと言われた。もしかしてと思っていたら、シャワーから出る湯がすべてパ行になっていた。具体的に描写したいところだがとにかくパ行としか言いようがない。死ぬほどの嫌悪感を感じつつも全身をパ行まみれにせざるをえなかった。もし介護士に「気持ちいいですか?」と訊かれることがあったら私はたとえ認知症気味であっても間違いなくこの不快極まりない経験を鮮明に思い出すことだろう。ともあれ、そうそうに切り上げて部屋に戻った私はそうだラーメンを食おうという提案を承認しようとしたが却下した。体の中までパ行にするわけにはいかない。そういうわけで私は眠ることにした。夢の中にパ行が出てきませんようにと祈りながら。──翌日、激しい雨音で目が覚めた。それが何に聞こえたかはご賢察の通りだ。


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