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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
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ブルームーンの夜に

12/09/07 コンテスト(テーマ):【 猫 】 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:1572

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 ブルームーンを見ると幸せになるという言い伝え知っている? ブルームーンっていうのは、本来は月が青く見える現象のことなんだけど、天文学的には、ひと月のうちに満月が二回ある場合の二度目の満月のことをいうの。難しいことを言えば月の満ち欠けが平均29日程の周期なのに、グレゴリオ暦の1月の長さは30日余り。だから、月初に満月になると、同じ月の月末に再び満月が巡ってくることになる。
 単なる都市伝説だと言う人もいるけれど、ブルームーンの伝説を私は強く信じていた。私はあの夜、ブルームーンを心待ちにしていた――暑い月が終わるという満月の夜だった。その夜、私は伝説が噂でないことを知った。

 あの夜、私が見上げた月は青くまん丸で、それはそれは美しい形をしていた。私は夜の帳が降りてすぐ、自室のベランダに出て寝そべり天を仰いだ。そこにはブルームーンと呼ぶのに相応しい青い満月が浮かんでいた。あまりにも美しいその姿に見とれた私は我を忘れ時の経つのも忘れていた。どれくらい経ったのだろう、ふと、気配を感じて視線を移した先に、屋根の上に一匹の真っ黒な猫がいる。どこからやってきたのだろう? 黒猫は屋根の上で正座するかのように両手を揃えてチョコンと座っていた。私と同じように月を見上げている様子を見て思わず呟いた。
「お前さんも、粋だねぇ。猫だけど月見するっていい心がけじゃない」
 そのとたん何と猫が私の方を振り向いた。私はびっくりして、思わず愛想笑いを返した。猫も少し笑ったように感じたのはきっとその時すでに私は不可思議な世界へ踏み込んでいたのかもしれない。
 真夜中深くなると、辺りの空気は凛とした静けさが漂い何だか妙に神聖な気分になっていく。その時だった、流れ星がブルームーンのすぐ横に流れた。
「あっ! 願い事」
 でもその瞬間、私の頭の中には願い事でなく、さっき見たばかりの黒猫の映像が浮かんだだけだった。
「ありがとう、僕のために願ってくれて」
 驚いた、何と黒猫が話しかけてきたのだ。私はポカンと口を開け固まったままだ。そんな私におかまいなしに猫は話し続けてくる。
「あぁ、何と言って感謝したらよいかわからないよ。君のお陰でようやく逢えるんだ。今夜逢えなかったら、僕らはもう二度と……」
 黒猫は天を仰いだままで話している。
「ねぇ知ってる? 今夜はあの月にとって100回めのブルームーンなんだ」
「……あの月って、月は一つしかないはず……」
「あぁそうだった、人間は気づいていないんだった。実は月はいっぱい存在しているんだよ。1万周期を終えると次の星雲に移動しなくてはならないんだ。人間のまだ存在しなかった太古からそう決まっているのさ」
「……」
「あの月は藍月と呼ばれているものなんだけど、今夜がその移動日なんだ。僕はそれに間に合って大感激しているんだ。君が流れ星に願ってくれたから僕らは助かったんだ。もう逢えないかと諦めかけていたんだ。君のお陰だ、一緒にぜひ月へ行って欲しいんだ」

 突然、青い月から一筋の光が降り注いだ。光の先頭には、眩い光を放った檸檬色の薄絹の衣装を纏ったうさぎが白い花束を抱えている。頭にはキラキラ輝く星のついた白いベールを被っている。うさぎは真っ直ぐに黒猫のいる屋根に向かって降りてきた。
「逢いたかった黒兵衛さま」
「僕もだ、うさ菜」
 うさぎと黒猫は駆け寄ってしっかり抱き合った。
「今夜、もし逢えなかったらもう結ばれないと思うと、藍月の国でいてもたってもいられなかったわ」
「僕もだよ。逢えてよかった。今夜ようやく僕らの結婚式ができるんだね」
「ええ藍月にとって100回目のブルームーンですもの。ずっと願かけてきた事が今夜叶うのよ。長かったわ、せっかくの巡り合わせの夜に、雨が降った時は涙にくれたわ」
「待っても彗星が来てくれなかったり……いろいろ障害があったけれど、今夜はこの人のお陰で月への招待状が発行された」
 うさぎと黒猫は私の方に向き直って深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。どうぞ私たちの結婚式に来てください。僕らは何回か前のブルームーンの夜に月で出逢ってからずっと愛を暖めてきました。ブルームーンにしか逢えない私たちは、思うように逢えない境遇でした。でも藍月の100回目の今夜、月へ渡ることができれば願いが叶うと信じてきました」
 私はうさ菜と黒兵衛の結婚式に招待されその夜、藍月の国という月へ光に乗って渡った。彼らを待っていた藍月の人々は大歓迎してくれた。式は盛大でとても素敵なものだった。かぐや姫が仲人代わりを勤め、みんなで月の光を集めたという杯で乾杯をした。

 誰も信じてくれないけれど、あれから、私は月ではうさぎと猫が一緒に餅つきをしていると思うようになった。月を仰いで私はそっと呟く。
「うさ菜さん、黒兵衛さん、お幸せにね!」


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このストーリーに関するコメント

12/09/07 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

そういえば先日、ブルームーンでしたね。そのネーミングだけで、このお話のようにロマンチックなことが起きそうな気がします。
(実際には何も起きませんでしたが)
今夜、月が出ていたら、私もうさぎと猫を探してみます♪
かわいいお話に、にっこりしました。

12/09/07 泡沫恋歌

草藍さん、拝読しました。

ブルームーンのお話、とってもメルヘンでロマンティックでした。
こういう夢のあるお話が好きです。
読んでて、心がほっこりしました(笑)

実はブルームーンの日、幸せになれると言う言い伝えを
信じていましたが、月を見上げていて自転車でコケました(笑)

そんなドジな私です。

12/09/08 

草藍さん、拝読しました。

ブルーム−ンのお話しを読みながら、どんどんファンタジーの世界に引き込まれていくようでした。とてもあたたかい雰囲気の中での、黒猫とうさぎのロマンチックな出逢いに笑顔になりました。

12/09/10 草愛やし美

そらの珊瑚さん
コメントありがとうございます。
先月末はブルームーンでした。その夜、家の窓から見上げた月がクリアで青かったことを思いだして書いてみました。月では今も餅つきしていると信じている私です。(汗)でももしかしたら、アメリカ国旗の陰になってよく見えないかもですが……。笑

12/09/10 草愛やし美

泡沫恋歌さま
自転車を乗る時は上を見上げていては危険ということですね。了解しました(笑)
私はロマンティックな大人の方にも読んでいただける童話を書きたいと思っています。嬉しいコメントに思わず笑顔になりました。ありがとうございました。

12/09/10 草愛やし美

鳴海遊砂さま
読んでくださって嬉しいです、感想書いて下さって、感謝いたしております。
私は女性の方に読んでいただけるような、可愛いファンタジーを書きたいと願っていますので、とても嬉しいコメントに喜んでおります。ありがとうございました。

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