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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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真実を告げられた日

15/11/11 コンテスト(テーマ):第九十六回 時空モノガタリ文学賞 【 奇人 】 コメント:4件 石蕗亮 閲覧数:641

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 私は魔法使いの弟子である。
師匠は主に夢を扱う魔術師で珈琲好きの悪魔ザランブールと喫茶店も営んでいる。
今日も今日とで喫茶店の手伝いの傍らで魔術の講義を受けている。
一息つこうか、と珈琲を淹れてもらい休憩に入った。
「師匠って超人ですよねぇ。」
ぽつりと零した私の一言に「そんなことはないよ。」と師匠は答えたがその横から
「こいつは奇人だよ。」とザランブールの一言が返ってきた。
「それは酷くないですか?」と私は抗議したが当の師匠は意に介さず「ははは。」と笑って済ませてしまった。
「酷いというお前のほうが酷い。」カウンター席に座る私を見下ろしながらザランブールが言い寄ってきた。
「俺は褒めてるんだよ。」
「奇人のどこが褒めてるんですか。」
「お前、奇人を変人の同類だと思ってるだろ。」
「え…、違うんですか。奇人変人って言うじゃないですか。」
「物知らずな奴め。お前の方がよっぽど失礼だぞ。」
そう言われると何だか師匠に申し訳なくなってきてしまった。
「いいか、奇人変人と簡単に言う奴は単に学の無い奴の言い分だ。単純に見ればそう見えなくもないがな、変人は理解し難い馬鹿をやる奴だ。実に成らないことでも当人が楽しければそれで良いというものだ。
それに対し、奇人とは奇才の持ち主だ。他人が理解し難いという点では一致するがそこには理があり結実がある。故にその奇行にも必ず意味がある。」
ザランブールの説明に私はなるほどと感心した。
「教えてくれてありがとうございます!」
「早計。」
感謝したものの即座に切り捨てられた。
「なんでですか?」
「一を聴いて十を知ったような顔をしてるからだ。」
「え〜!?」
「言葉は正しく理解しないと使えない。それは魔術に於いても同様だぞ。」
ザランブールはそう言うと「今日の講義の後半は俺がやる。」と言い出した。

 「奇とはなんだ。」
ザランブールの問いに私は即答できずに頭を捻った。
奇、それ一文字では中々使わない。
前後に他の文字を足すか動詞を合わせて使うが意味まで考えたことがなかった。
「じゃあお前が普段使っている奇の付く言葉は?」
「えーと、奇数偶数。」
「意味は?」
「割り切れる数と割り切れない数。」
「その通り。つまり割り切るとは整理して納得できること。割り切れないとは綺麗に纏められない、いつまでも余りがあることを示す。故に奇とははみ出しているということだ。
他に奇の付く言葉は?」
「奇遇。」
「今のとほとんど変わりはないが、意味は遇は確率的に在り得ること。奇は在り得ないことで神の思し召しや奇跡。起こった出来事はどちらでしょうねっていう意味だ。」
「あ、奇跡の奇なんですね。」
「その通り。他にも奇観、奇抜、奇怪、奇術、好奇、奇異、奇禍、奇形などある。
これらは全て一般的ではない超常の技、様、運命、感情等を表す。
超常、故に一般人からは理解され難く、故に異端とされ、故に安易に変態扱いされるがその実は奇跡の如くであり決して侮蔑されるものではない。」
ザランブールの言葉を私はメモを取りながら所々でどんな字ですかと尋ね、自分で辞書引けと怒られながらノートに纏めていった。
なるほど、確かに奇人と変人は似て非なるものであることを理解した。
「でもそれなら超人でも間違いないんじゃないですか?」
「あー、奇の中でもな、【奇才】と【奇形】は先天性なんだよ。
それによってもたらされる行動や現象などが奇術や奇襲、奇観になるんだ。
だからお前の師匠は本物の純度100%の【奇人】なんだよ。」
「つまり師匠は生まれつきの魔術師ってことなんですね。」
「生まれる前からな。」
「???…生まれる前…?」
「そこから先は俺が話せることじゃない。いつか当人から教えてもらいな。」
ザランブールはそう言うと「今日の講義はここまで。」と席を離れた。

 「終わりましたか。」
ザランブールと入れ替わりにカウンターに師匠が戻ってきた。
「師匠って奇人だったんですね。」
「あまり一般的な言葉ではないから外ではあまり使わないで下さいね。」
「そうですね。でも奇人ってすごいですね。」
「何を言ってるんですか。あなたも充分【奇人】ですよ。」
にこにことしながらとんでもないことを言われ「ヤだなぁ。私のどこがですか。」と私も笑顔で返すと「霊が視える能力は先天性で、私やザランブールという悪魔から魔術講義を受けるという奇行をしているのですから充分でしょう。」と告げられた。

 あー、確かにそうかも。
気付きたくない真実を突きつけられた日でした。


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このストーリーに関するコメント

15/12/23 光石七

拝読しました。
「奇人」と「変人」の違い、「奇」の意味、なるほどなあと思いました。
主人公の生活がなんだか楽しそうで、羨ましくなりました(笑)

16/01/13 海神

拝読しました。
奇の意味、なるほどと思わさました。
師匠の謎がまた深まりましたね。
いつか描かれる師匠のストーリーを楽しみにしています。

16/01/13 石蕗亮

光石七さん
読んで頂きありがとうございました。
この日常はある意味私の日常でもありますが、楽しいだけではいつもすみませんよ(笑)。

16/01/13 石蕗亮

天神さん
読んで頂きありがとうございました。
夢師のストーリー、いつか描きます!楽しみにして下さいね。

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