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クナリさん

小説が出版されることになりました。 『黒手毬珈琲館に灯はともる 〜優しい雨と、オレンジ・カプチーノ〜』 マイナビ出版ファン文庫より、平成28年5月20日発売です(表紙:六七質 様)。 http://www.amazon.co.jp/dp/4839958211

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将来の夢 絵本作家
座右の銘 明日の自分がきっとがんばる。

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ジェラシカル・パレードハイウェエ

15/03/03 コンテスト(テーマ):第七十八回 時空モノガタリ文学賞 【 嫉妬 】 コメント:10件 クナリ 閲覧数:1399

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いつも通りの朝、私は友達のユッカの家のチャイムを押した。
中学生になってから毎朝の習慣で、もう一年以上も続いていることになる。
おばさんが出て来て、いつも迎えに来てくれてありがとうね、と言って私をユッカの部屋に通してくれた。
ドアを開けると、ユッカが窓から外を見ながら仁王立ちしていた。
「ユッカ、遅れるよ」
「マナミ……やっぱりワシは、いつか世界を征服してしまうような気がする。たとえ地球が終わっても」
ユッカの一人称は、なぜかワシだった。
「うん。いいから、スカート履きなよ」
「むう。ワシが覇権を握ったら、スカートなどというノーガードな履物は絶滅させる。これはその意志表現の一端で」
「ならパンツは履け」

夏、晴れ、アスファルト。
走って学校に行くには、悪条件にも程がある。
「ほらあ、今日もギリギリじゃない!」
「重要なのは、遅れるか否か。遅れなければ、一時間前だろうが三秒前だろうが同じだ!」
「だから、遅れそうだっちっとんじゃああ!」
「そんなに遅刻が嫌なら、学校に泊まれ!」
「何偉そーにしとるかあああッ!」
どちらかと言うとボケ寄りの私が、ユッカといるとツッコミ側に回らざるを得なくなり、ついでに口も悪くなる。
いつも通りの住宅街、いつも通りの通行人。その中を、いつも通りに突っ切る。
けれど今日は、いつもより憂鬱だった。
「ねえ、ユッカ。今日なんでしょ、高宮君に返事するの」
ユッカはふいと視線をはぐらかし、
「……北欧からは、ほとんど人間が非難したらしい。ヨーロッパ他国の人口受け入れも限界らしいから、いよいよ日本にも移民の波が来るぜよ」
「そうね、ニュースの通り、あと五年で地球は滅びるのかもね。だから心残りのないように、あっちでもこっちでも恋の告白よ。で、どうするのよ高宮君は」
「笑止! あんなノー財力のヒヨッ子、これから地球のトップに立って世界を救うワシが構ってられるか!」
言葉の勢いのままに、私達はまだ開いていない商店街の角を曲がる。
「ユッカ、……私に気を遣ってるんじゃないでしょうね」
「笑止!」
「いいんだよ、私は。高宮君に何とも思われてないって、分かってるもん」
「笑止と言った!」
太陽は、徐々に昇って来ていた。私達は、スピードを上げる。
「じゃあ、ユッカはどんな人ならいいのよ。財力が第一なの?」
「そりゃそうだ。ワシら女は、財力でしか男を判断しないからな!」
「そんなわけあるか! 性格とか、それに……私だって高宮君が気になったのは、見た目からだし……」
「で、今は何だ、優しい処か? 優しいのが好きなんか?」
「そ、そうよ。だから財力なんて、むしろ優先順位低いでしょ」
「あほか! 性格? 見た目? 『あの人いい人過ぎて、私とは合わないなー』とか『あの人カッコ良過ぎて、苦手だなー』とかは世の中散々聞くけども! 『あの人お金有り過ぎて嫌いだなー』って言ってる女を、お前は一人でも見たことがあるのか! 金持ちのせいで性格ひん曲がってるからじゃないぞ、金自体が嫌いってのをだぞ!」
「そ、そう言われると……いや、でも……」
もう一つ角を曲がると、あとは学校まで一直線だった。
私達はスパートをかける。
「ユッカ、ごめんね。私しばらくユッカに、変な態度取っちゃうかもしれない。だってやっぱり、二人が付き合わなくても、嫉妬はしちゃうもん」
私はユッカの顔が見られず、道路だけの視界の中を走った。
「こんなことで、ユッカと気まずくなりたくなんかないよ。でも、うまく整理できないって言うか……何でだろう、私、二人とも好きなのに……自分のことは、どんどん嫌いになって行く……」
目の前の道路が、滲んで行く。これでは危ない。
その時、ユッカが私の手を引いた。
「マナミが、ワシなんかに妬きもち妬くなあ!」
いつの間にか、校門まで来ていたらしい。私達は滑り込むようにして学校の敷地内に入った。
昇降口で靴を履き替えると、ユッカの目からも雫がこぼれていた。
「ワシだってお前に嫉妬してるよ! 気ばかり遣って、変人を見捨てもしない、ワシはマナミみたいになりたいんだよ! そのマナミをおお! おのれ高宮アア!」
ユッカはスパーンとドアを開けて教室に踊り込み、席についている高宮君の前に、赤い目のまま仁王立ちした。
「お、おうお早う。返事なら、てか、あれ、泣いてんの……?」
「うるさい黙れその前にとにかく結論として、何かもうお前を殺す!」
「ユッカあああ!」

もうじき地球が終わるらしい。
けれど私達は今日も、泣いたり、笑ったり、妬きもち妬いたり、また泣いたり。
どうしようもないからと、割り切っているわけではない。
むしろ、割り切れないことばっかりで、困る。
それでも私達は、とにかく、私達なりの日々を生きていた。
それはきっと、地球が終わってしまう、その日まで。


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このストーリーに関するコメント

15/03/03 海見みみみ

拝読させていただきました。
ちょっと変わった少女たちの日常。
でもその背景には地球の終末というシリアスなムードが漂っていて……。
一見コミカルなのに、どこか切なさがある。
騒がしい彼女たちの日常はいつまで続くのかと、胸が苦しくなりました。
それでもきっと彼女たちは泣いたり笑ったりしながら過ごすのでしょうね。
とてもいい作品だったと思います。

15/03/04 メラ

拝読しました。
この「ユッカ」という子のキャラクターは面白いですね。少女たちの何気ない日常のはずなのに、ここまで変だとその日常がすべておかしく見えます。「パンツはきなよ」って・・・、ノーパン?そんな冒頭から、ちょっと切ないお話でしたね。十台の少女のこういう一こまを切り取って見るというのは、男としては妙に生生しく感じられます。

15/03/05 クナリ

海見みみみさん>
コメント、ありがとうございます。
ひとつ前の投稿が暗くて気色悪いものだったので、次はひたすらコミカルなお話にッ…、と思ったのですが出来ませんでございました…。
終末が定められてしまっているタイプのお話はいくつも世の中にありますが、どうしてもカタルシスが得づらい性質があると思います。
掌編で一部分だけ切り取れば、その部分の人間的輝きが活かせるかな…などとそれっぽいことを考えつつ形にしてみました。
出来れば何かの間違いで、滅ぶはずの世界が救われるといいなと思います(書き終わってから…)。

メラさん>
内容的に、通学路を失踪するだけのシーンなので、突っ走ってくれる主人公を探しました。
上手い具合に変なやつが見つかってくれて、作品作りが助かりました(^^;)。
そうですね、こやつ冒頭で、ぱんつ履いておりません。
こやつがラストで男子の机に足をダンとかけて啖呵を切り、後ろでもう一人が「あれ、パンツ履かせたっけ!?」とキョドるシーンを入れるかどうかでうんうん悩むあたり、自分の人間としての程度が何だか知れて来て切なくなります(胸を張る←何故)。
コメント、ありがとうございました!

15/03/08 つつい つつ

ユッカのキャラクターに終末の設定と会話の流れのテンポが良くて、おもしろい作品でした。
この設定とキャラなら、もっと長いストーリーになっても、もっとおもしろくなるんじゃないかと感じました。

15/03/08 クナリ

志水孝敏さん>
こう、躍動感のあるアニメっぽい絵を想像しながら書いておりました。
生き生きとした人物造形ができていればうれしいです。
おなじような日常(登場人物はヘンですが!)も、周囲の状況しだいで受け取り方が変わってくるのは面白いですよね。
この話も、世界の終わりを控えていなければちょっと印象が違ったでしょうし。
コメント、ありがとうございました!

つつい つつさん>
会話だけで進行しないように、でも会話が作品全体の構成の肝となるように…と、それなりに考えて書いておりました。
終末の迫る世界なので、その中で努めて明るさを出してる感じにすると、本人たちの意図しないところでの切なさみたいなものが出せるかなあ…と思ったのですが、途中からは作品全体の雰囲気よりも登場人物の特長を生かす方向で構成していきました。
そう、できればもっと長く書いて、彼女たちが世界を救うところまで行ってみたいのですが、はてさて…。

15/03/10 泡沫恋歌

クナリ 様、拝読しました。

ユニークな女の子キャラのユッカさん、中二病の女の子かと思えば、案外、友達想いの
シャイな子で可愛いですね。

地球が終わっても、この子だけは生き残れそうだよ( 〃´艸`)

15/03/14 クナリ

泡沫恋歌さん>
コメントありがとうございますッ。
今回はもうキャラクタ任せと言いますか、世界観だけ用意してあとは登場人物のなすがままで仕上げました。
書き手としては、できればこの人に作品内で地球を救ってもらいたいとは思っているのですけど、果たして…。
他に生き物も絶えた、焦土のような地球の上で、「ぷは―危なかった死ぬとこだったー」とか言ってもらいたいなというのもありますが(^^;)。
ともあれ、中二な人は動き回ってくれるので、書く方としても助かるんだなあというのは発見でしたッ。
あまり色々考えず、こうした作り方をしてみるのも勉強になるものですね〜。

15/03/24 光石七

地球が終わる前でも日常を生きて、いろんな感情が目まぐるしく動く。微笑ましいんだけど、やはり近く終わりを迎える切なさがありますね。
ユッカのキャラが個性的で、魅力を感じます。
“むしろ、割り切れないことばっかりで、困る”という一文が好きです。
素敵なお話をありがとうございます!

15/03/27 クナリ

光石七さん>
「日常」って本当にありがたいもので、できればそれが続いてほしいんですけど、今回の世界では「日常を送っていること自体が、ある意味異常」なことになっておりまして。
そうすると、変な人たちが騒いでいるだけのことも、違う意味を持ってくるかなあ…という狙いもありました。
メインでは、ちょっと個性的な登場人物を好きに暴れさせたいな、というのがテーマだったのですが(^^;)。
ユッカは自分ではあまり登場させたことのない性格の登場人物だったのですが、ほっておけばほいほい話を転がしてくれそうでいいですねこういう人も。
コメント、ありがとうございました!

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