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五助さん

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ナミダブクロハマダラカ

14/06/25 コンテスト(テーマ):第六十回 時空モノガタリ文学賞【 涙 】 コメント:2件 五助 閲覧数:886

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「博士ー」
「どうした」
「かゆいよー、蚊にかまれた。お薬塗って」
「つばでも塗っとけば良いよ」
「ばっちい、なんかないのー」
「かけば良いじゃないか。かゆいんだったら」
「そう言うんじゃなくて、裏ワザ的なものー」
「ないね。蚊にかまれた、かゆみは、ほっとけば消えるものだから、何しても一緒だと思うよ。何か他のことでも考えたら」
「身も蓋もないよー。蚊ってなんでこんな意地悪するんだろう」
「卵を産むためだよ。血を吸わないと卵を産めないんだ」
「へー」
「こういう生き物は他にもいてね。マイマイカブリなんかもそうだよ。普段からカタツムリは食べるんだけど、他にミミズとかも食べるんだ。だけど、カタツムリを食べないと卵巣が成熟しなくて卵を産むことができないんだ」
「ふーん」
「どうだい、少しはかゆみは治まったかい」
「まだ」
「そうかい、じゃあ、変わった蚊の話をしよう。日本よりずっと暖かい地域に住んでいる、ナミダブクロハマダラカという蚊なんだが、卵を動物の目に産み付けるんだ」
「えっ! 目の中に!」
「いや、下まぶただよ、人間で言う涙袋に産みつけるんだ」
「それで、ナミダブクロハマダラカっていうのね。人間にも産み付けるの」
「もちろん、でも、基本は牛だったり豚だったり、四つ足のほ乳類の方が多いね。人間に産みつけるのはまれだよ。似たような生物で、主に犬猫の目に卵を産みつける東洋眼中という寄生虫もいるけどね」
「でも、わかっちゃうでしょ、目に卵を産み付けようとしたら」
「うん、そういう時もあるようなんだけど、普通の蚊より軽いんだ。それにばれにくいよう動物の目尻の方から行くからね」
「どうして目尻なの、目頭じゃだめなの」
「目尻の方が鈍感だからね」
「どうやって目尻と目頭の違いがわかるのかしら」
「それはわかってないんだ。皺の数で判断しているのかも知れないね。ふはは」
「その後はどうなるの」
「孵化した後、まぶたの中で体を固定して、蛹になって羽化する直前まで涙袋の中で成長する」
「えー、いやだ。気持ちわるー。目がごろごろするんじゃないの」
「それがうまいことできていてね。わかりにくいように、体をコーティングしているんだ」
「目の中で何を食べているの」
「目の中の老廃物を食べて大きくなる。研究者の中には、ナミダブクロハマダラカが目の中にいたら目がきれいになると言っている人もおる」
「そうなのー、いいやつじゃん」
「だけどよく考えてごらん。確かに目の老廃物を食べてくれるだろうけど、食べた老廃物はやがて糞になるからね」
「うわっ、ばっち」
「それに、恐いのはこの後だ」
「なに?」
「蛹から羽化する際まぶたから出なければならん。そのまま羽化するとまぶたの中で潰れてしまうからね」
「どうやって出るの」
「そこがこの生き物のすごいところなんだよ。涙を流させて、その涙に乗ってまぶたから外に出る」
「すごーい。でも、どうやって涙を出させるの」
「まぶたの中で刺激物を出す。アンモニアという奴なんだが、それによって、涙を流させ外に出る」
「えらいね。でも、それがどうして恐いの」
「アンモニアというものは目に悪い。だから、涙の出が悪くて蛹を外に出せないと目を痛めることになる」
「こわいねー」
「それからナミダブクロハマダラカの性質を利用して、生物模倣と言うんだが、商品を作ろうとしている会社もあるんだよ」
「生物模倣?」
「生物の体の仕組みをまねして、様々な商品や道具を作る試みだよ。例えばヤモリの足の構造をまねてテープを作ったり、蝶の羽をまねた扇風機だったり、生物の不思議な力をまねっこすることを生物模倣というんだ」
「ふーん、その会社、ナミダブクロハマダラカの何をまねしようとしてるの」
「ナミダブクロハマダラカの卵をまねしようとしているんだ。目の中にゴミが入った場合、目はそれを異物と判断して涙を流すんだが、それでは、ナミダブクロハマダラカは困ってしまう。せっかく産みつけた卵が孵化する前に涙で流れてしまうからね」
「どうするの」
「卵の回りに微少な毛が生えていて、それが涙の成分を絡め取って、違和感を消すと言われておる」
「へぇ」
「これをまねしてコンタクトレンズの接地面に微少な毛をつけ、違和感を減らしたコンタクトレンズをアメリカの企業が開発しているそうだ」
「へー、毛がいっぱい生えていた方が、違和感が少ないって、なんか変だね」
「そうじゃな、わしの頭も、毛がいっぱい生えていた方が違和感が少ないんだがのー」
「……そうだね」
「かゆみの方はどうだ」
「あ、治ってる」


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このストーリーに関するコメント

14/06/26 滝沢朱音

五助さん、こんにちは。

ナミダブクロハマダラカ、初めて知りました。面白いお話〜!
近所の子どもさんと一緒の気持ちで、ふーん、へぇ、って、
興味深く一気に読ませていただきました(*´д`)o

14/07/08 gokui

 読ませていただきました。
 ためになるような気がする雑学でかゆみをとめるとは。一発芸みたいな作品でしたが、楽しませていただきました。

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