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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

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壁の向こうの男と女 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/02/14 コンテスト(テーマ):第五十回 【 三角関係 】 ターザン山本賞 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:2322

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 OL斬殺事件、その重要参考人として山端郁夫の取り調べが始まった。
「あなたは一流企業の重役候補。それでも部下の、いや愛人の里村綾乃を刺し殺してしまった。邪魔になったのですか?」
 慇懃無礼に問い質していた刑事、今度は「会社は首なんだよ。だから、全部吐露せ!」と頭に血を上らせ、椅子を蹴り上げた。「綾乃との縁を切るつもりはありませんでした。だから私は殺害してません」と山端は声を震わせた。
「ほう、否認するのか。だったら奥さんが、お前たちの三角関係の縺れで、刺したんだな」と取調官が焦点を変えてくる。これに「美月もやってません」と涙声で訴えると、刑事がニヤリと笑う。「そう仰るなら、あったことを全部喋ってもらわないとね、お二人とも殺人罪で起訴することに」と目一杯脅してくる。これで山端の命運は尽きた。フーと息を吐き、低い声で話し始めるのだった。

 綾乃と男女関係になって三年、妻の美月は気付いてなかったと思います。しかし、あの日──妻の言によれば、綾乃という女から電話があり、「私はご主人の愛人。だけどもう限界、そろそろ妻の座を譲ってください。だから私のアパートで話し合いしましょ」と。それは綾乃になりすました電話だったかも知れませんが、それでも美月は出掛けて行きました。
 それにしても、少し変。玄関の鍵は掛かってなかったのです。妻が恐る恐る部屋へと入って行くと、床は血の海。胸を刺された綾乃が倒れていたのです。
 その頃です、「殺される!」と綾乃からのメールを私は受け取りました。心配で、急ぎ駆け付けると、美月が綾乃の亡骸の前で呆然と立っていました。「お前が?」と問い詰めますと、「すでに殺されてたわ。この現場に、私たちは意図的に呼び出されたのよ」と唇を噛み締めました。
 私はパニクってましたが、できるだけ冷静に考えてみました。現在昇進できるかどうかの瀬戸際。今のところ会社は私と綾乃がオフィスラブに陥ってることを知りません。そして現実に綾乃が亡くなってしまった以上、私はこの殺人事件とは無関係の立場を取るのが良いと考えました。こうして私は妻に、お互いに秘密だぞと念押しし、玄関の鍵を閉めました。その一週間後、管理人が異臭に気付き、部屋へ入って仏さんを発見したと聞いてます。

 こんな不届き千万な真実を語り終え、項垂れる山端に、「綾乃さんのケイタイと、凶器のナイフが庭から出てきたんだぞ、お前が隠したんだろ?」と取調官の容赦ない尋問が続く。

 捜査一課の百目鬼 学(どうめき がく)、こんな取り調べをマジックミラー越しに耳をそばだて、目を凝らしていた。そしていきなり「捜査線上から漏れてるヤツがいる!」と吠え、「おい、現場に行くぞ」と部下の芹凛(せりりん)こと芹川凛子刑事に声を掛けた。

 こうして犯行現場を改めて調べ直してみると、「この壁、襖一枚と同じじゃないか。隣人は聞きたくもない物音や声を聞かされてたってことか」と百目鬼が指摘する。
 だが芹凛はよく理解できず、ポカンとしていると、「芹凛はまだお子ちゃまかい。要は、男と女の営みだよ」と百目鬼からの成人教育。その後、眼光鋭く「隣の住人は誰なんだ?」と質問を。芹凛は事件資料を繰り直し、「北本悠斗というフリーターです。事件の1ヶ月前に引っ越して、後はずっと空き部屋です」と報告する。「北本、結構イラッときてたんだろうなあ」と漏らしてしまった百目鬼に、今度は芹凛が「それだけで殺しますか?」と反論。
 確かに! もっと深い恨みがあったのだろう。「とにかく、北本の身柄を確保しよう」と伝えると、芹凛はさっさと関係部署へと連絡を取るのだった。

 一週間が経過し、徐々に北本のことが明らかになってきた。
 北本は入社試験を受けた。しかし、壁の向こうで繰り広げられた秘め事のせいで、試験前夜一睡も出来ず、筆記試験に臨んだ。その上、青ざめたまま面接を受けた。結果は不採用。
 だが意外なことを知った。隣人の女性はその会社のスタッフ、そして面接官は、アパートの通路ですれ違ったことのある隣人の情人だ。
 正社員になるために頑張ってきた北本、壁一枚隔てた向こう側で淫靡な行為に溺れる部長と女性スタッフに、夢は無残にも破壊されてしまった。もう許せない。そして北本は決意したのだ、女には死を、男には破滅の裁きを、と。

 こんな動機で、北本が綾乃を斬殺した可能性が高い。だが雲隠れしてしまった。捜査にも焦りが。そんなある日、衝撃が走る。北本の水死体が上がった。それは自殺か他殺か?
 芹凛は「どちらにしろ、これで事件は藪の中に」と嘆く。しかし、百目鬼は一段と眼光を鋭くさせ、空を睨み付け絞り出す。
「こうなることを一番望んでいたのは、離婚して、過去をすっきり精算させた美月。すべては美月のシナリオ通りなのかもな。さあ芹凛、事件はまだ終わってないぞ」


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このストーリーに関するコメント

14/02/15 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

これはなかなか本格的なミステリーですね。
最後に一番得する人が犯人って訳だから、納得のオチでした。

刑事 : 百目鬼 学はシリーズになりそうだと期待しています。

面白かったです!

14/02/15 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

そうなんです。
これは新しい試みとして、
2000文字のミステリー「刑事:百目鬼学」シリーズをスタートさせようかと思ってます。

しかし、踏み出してみてわかりました。
2000文字では刑事もの、結構難しいです。

だけど真摯に挑戦して行きますので、よろしく。

14/02/17 朔良

鮎風 遊さん、こんにちは^^
拝読いたしました。

三角関係の絡む殺人事件…2000字なのに本格的ですごいです!
こちらシリーズ化の予定なのですね〜。
これからも楽しみにしています^^
面白かったです、ありがとうございました。

14/02/19 そらの珊瑚

鮎風さん、拝読しました。

事件の概要、動機、推理、そしてオチまで2000字にまとまあげた手腕、お見事でした!
「さあ芹凛、事件はまだ終わってないぞ」が百目鬼刑事の決め台詞として
シリーズ化したら面白いんじゃないかなあって思います。
それにしてもインパクト大のすごい名前ですね〜次はセリリンの活躍も期待します♪

14/02/21 草愛やし美

鮎風遊様、拝読しました。

推理する刑事、百目鬼ってぴったりの名前ですね。本格的推理小説として、中・長編に成りうる力作ですね。男女間の特に、三角関係は事件を呼びますね。でも、犯人がここだとは思いつきませんでした。
そらの珊瑚様のコメントに私も同意します。ぜひ、百目鬼シリーズを期待しています。面白かったです、ありがとうございました。

14/02/22 鮎風 遊

朔良さん

読んでいただき、ありがとうございます。

ボチボチとなりますが、シリーズで書かせてもらいますので、
よろしくお願いします。

14/02/22 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

コメントありがとうございます。

芹凛の活躍、私も期待しています。
百目鬼と芹凛のコンビ、いい味がでるように頑張ってみます。

14/02/22 鮎風 遊

草藍さん

コメントありがとうございます。

中・長編の切り売りみたいな形になりますが、
2000文字、それでもそこへ正確に謎解きストーリーを入れなければならず、これ挑戦ですね。

百目鬼に燻し銀のような味が出れば嬉しいです。

15/03/15 海見みみみ

鮎風 遊さん、拝読させていただきました。
次から次へと展開していく物語に引き込まれました。
この短さでミステリーを書き上げるなんて、本当に凄いです。
キャラクターも魅力的ですし、シリーズが長く続いているのも納得ですね!

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