1. トップページ
  2. 友達になるということ

ひーろさん

ミステリーが好きです。

性別 男性
将来の夢
座右の銘 想像できることはすべて実現できる。

投稿済みの作品

3

友達になるということ

17/12/31 コンテスト(テーマ):第150回 時空モノガタリ文学賞 【 悲劇 】 コメント:4件 ひーろ 閲覧数:399

時空モノガタリからの選評

「日本中の人たち全員と友達になりたい」という願い。一見それは素敵なことのように思える夢だけれども、それが実現したらどうなるか。毎日のように起こる事故や哀しいニュースが溢れる中では、この物語のように悲しみにくれる毎日になってしまうかもしれません。喜びが大きければ、それを失った時の哀しみもそれだけ大きくなってしまうということなのでしょう。一人の人間の持てる感情のキャパシティーは、それほど大きくはないのでしょう。シンプルな語り口で、ハッとさせられる内容がすっと入ってきました。

時空モノガタリK

この作品を評価する

 その少年は、孤独でした。孤児院には一人も友達がいません。淋しさのあまり涙を流すこともしばしば。頼れる人など、誰もいないのです。淋しい。涙。淋しい。涙。毎日がその繰り返しでした。
 あるとき、少年は自分の置かれている現状に耐え切れなくなって、神様にこんな願い事をしました。
「日本中の人たち全員と友達になりたい」
 彼の思いは極めて強いものでした。それゆえ、悩みに悩んだ挙句、神様は彼の願い事を叶えてあげることにしました。

 あれからというもの、少年は孤児院の友達と親しく言葉を交わしました。外へ出掛けると、通りかかる人たちから例外なく声を掛けられました。みんな彼の友達なのです。知らない人は一人もいません。彼はすっかり淋しさを忘れることができました。テレビに出ているあの有名人も、毎朝公園で体操している怖そうなおじさんも、いつも柴犬を連れているきれいなお姉さんも……。誰もかれも少年の大切な友達になったのです。
 それだけたくさんの友達がいるものですから、彼宛ての便りが毎日山のように届きました。遊びの誘い、結婚の知らせ、パーティーへの招待、赤ちゃんが生まれたという嬉しい知らせ、他愛もない話、それから……。

 あれからというもの、少年は毎日のように泣いていました。淋しいのではありません。悲しいから、涙があふれてくるのです。絶え間なく届く便りの中には、当然のことながら、悲しい知らせも多くありました。
 〈タカエおばさんが亡くなった〉
 〈タク君が癌で死んだ〉
 〈アイさんが、ビルから飛び降りて自殺してしまった〉
 〈ユキちゃんが、テニスの練習中、突然倒れた。もう、だめかもしれない〉
 
 テレビに目を向けると、愉快な話題に混じって、悲惨なニュースの報道が続きます。
 〈タカシ兄さんが飲酒運転をして、ユウキ君を轢き殺してしまった〉
 〈エリさんが、お母さんのミキコさんをナイフで刺した〉
 〈コウスケさんが木造の家屋に放火をした。そこに住んでいたハナコちゃんとアヤカお姉さんとナカノおじさんが死んだ〉
 〈乗客32人を乗せたバスの転落事故が起こった。乗客全員死亡。
  乗っていたのは、運転手のゴロウさんと、カナちゃん、ユウヤ君、カヨおばあちゃん、ヨシエさん、それから……〉

 雨のように降り注ぐ残酷な知らせ。少年を悲しみの海の底に沈めるのに、充分すぎる重さの錘でした。悲しい。涙。悲しい。涙。
 やがて少年は心を閉ざしました。愚かな願い事をしたことに対して、深く後悔をしました。何度も何度も後悔を重ね、その度彼の中に黒い闇が充満します。その間にも、彼の友達は、不幸に遭ったり、互いに傷つけ合ったりして、次々と消えていきます。悲しみがこれでもかと襲い掛かります。彼の心にとって、とても耐えられるような負担ではありませんでした。
 ついに彼は、精神を患って床に伏せてしまいました。その様態を聞きつけて、急遽日本中の優秀な医者たちが彼の元に駆けつけました。大切な親友を元気にしてやろうと、協力して手を尽くしました。日本中の人々が親友の無事を祈りました。しかし、彼は一向に回復しませんでした。

 とうとう彼は息を引き取りました。

 彼の死は、波紋のように日本中に知れ渡りました。一人として、涙を流さぬものはありません。大切な友達を失って、誰もが泣きじゃくりました。涙があふれて止まりません。
 やがて、どんよりと暗く重たい空気と、溢れる涙の洪水が、日本列島を沈めはじめました。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

18/01/06 そらの珊瑚

ひーろさん、拝読しました。
見知らぬ誰かの不幸を知っても、それはどこまでいっても他人事。
だから人は悲しみのなくならない世の中でも、それを忘れて現実を生きていけるのかもしれません。
真の友達であるということは、その友達の身に起きた悲しい出来事を我が身のこととして悲しく思い、悲しみにおぼれてしまう。
このお話の結末は悲劇であるのかもしれないけれど、不思議なあたたかさを心に残すものでした。

18/01/08 ひーろ

そらの珊瑚さん
改行が反映されておらず読みづらいものを、読んで感想までいただきありがとうございます。
友達になるとはどういうことか、自分なりに考えながら書いたものです。
「その友達の身に起きた悲しい出来事を我が身のこととして悲しく思」えるのが友達。
深いところまで感じていただけてうれしいです。

18/02/02 光石七

入賞おめでとうございます!
拝読しました。
一人も友達がいないのも寂しいけれど、全ての人が大切な友達となると、主人公のように連日の悲しみに押しつぶされてしまうかもしれませんね。
自分自身を振り返ってみて、そこまで親しくなかったり、他人事だと自分の中で線引きしているから、悲しみを引きずらずに済んでいる部分があるなと思いました。
優しくシンプルな語り口の中、考えさせられるお話でした。

18/02/07 ひーろ

光石七さん、ご感想ありがとうございます。
どこかで通りすがった人が消えてしまっても、正直、悲しんで泣くようなことはないのかなぁと思います。親しくなり、友達になるということは、互いの感情に責任をもつことになるのだと感じます。友達を大切にすることは、自分を大切にすることでもあるのかもしれません。
光石七さんのコメントから、自分も改めていろいろと考えさせられました。ありがとうございました。

ログイン

ピックアップ作品