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村崎紫さん

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そうして巡る

17/07/18 コンテスト(テーマ):第140回 時空モノガタリ文学賞 【 育児 】 コメント:0件 村崎紫 閲覧数:130

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今年、我が家の玄関にツバメが巣を作った。
ツバメが飛んでいるな、と思っていたらみるみるうちに泥と枯れ草で作られていた。掃除が楽になるよう、巣の下に空箱を置く。巣になり損ねた物と糞がよく落ちてきた。
調べてみるとツバメは雌雄で子育てをするそうだ。抱卵中はほとんど雌で、雌が食事に出る時だけ雄が温める。なかなかの育メンだなと思っているうちに、卵から孵化していた。
鳥と言うより黄色い口が五匹分、巣から顔を出していた。親が来るたびにピィピィ鳴いた。俺が巣の下を歩く時もピィピィ鳴いたが、違うと気付くと鳴きやんでいた。その姿も可愛らしかった。
気付くと、ツバメらしいツバメが巣の中にギュウギュウになっていた。ツバメの親は偉い。晴れの日はもちろん、雨の日だって、何度も何度も餌を取りに行く。子どもに渡すとすぐに飛び立っていく。そのうち子どもが飛ぶ練習を始めたら、側で一緒に飛んでやっていた。励ます姿に心を打たれてるうちに、巣は空っぽになってしまった。

俺もツバメみたいな父親になりたい。
憧れを抱いたまま、彼女が出来、結婚して、娘が産まれた。
オムツ替えや夜泣き、ミルクなど、嫁と一緒に苦戦しながらも、娘が泣きやんで笑顔を見せるととても癒された。
夜中に高熱が出ると、夜間でも子どもを診てくれる病院を必死で探した。苦しそうな顔を見てると俺が変わってやりたかった。薬が効いたのか、次の日には案外けろっとして安心した。
自転車の補助輪無しでの練習、何度も転けて膝が擦り剥けていた。それでもめげずに何回目かの練習でそっと手を離すと、少しよろけながらもぐんぐん進んでいく後ろ姿。援助無しで出来た事を一緒に喜んだ。
思春期に入ると、少し距離が出来た。まぁ、そのうち、といつも通りに接していたが、内心寂しかった。
部活が始まると、遠い所へ試合に行く時は一緒に起きて車を出した。成績を残せたわけではないが、試合での真剣な表情と君が三年間やり遂げられたことに誇りを持った。
社会人になる頃には、思春期の頃の距離感は無くなって、たくさん話をした。さすがに彼氏の話はモヤモヤした。それが顔に出てたのか、嫁と顔を見合わせてクスクスと笑っていた。
そうして君と25回の春夏秋冬を過ごした。
26回目の秋。僕の隣には、白を纏った君。とても綺麗だった。
「お父さん。今までありがとうございました。」
「ああ。落ち着いたらまた帰っておいで。」

あっという間だった。
巣立ちとはこうも早いのか。
嬉しくもあり、寂しくもあった。

今年、我が家の玄関にツバメが新しく巣を作った。
ツバメは同じ所に巣を作る習性がある。
あの可愛らしい姿も楽しみだが、もう一つ楽しみがある。
娘が帰って来る。
僕はもうすぐ、おじいちゃんになるのだ。


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