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文月めぐさん

第144回時空モノガタリ文学賞【事件】にて、入賞をいただきました!拙い文章ではありますがよろしくお願いします。コメントもできるだけ書いていこうと思います。Twitter→@FuDuKi_MeGu

性別 女性
将来の夢 作家
座右の銘 失敗したところでやめてしまうから失敗になる。成功するところまで続ければ、それは成功になる。

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冬空の旅人

17/07/08 コンテスト(テーマ):第139回 時空モノガタリ文学賞 【 旅 】 コメント:1件 文月めぐ 閲覧数:598

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 寒い寒い冬の空。星々は分厚い雲に覆われて、その光は地上へは届かない。夜になると北風が一層冷たく吹き、四人の旅人たちはコートの襟を掻き合わせ、少しでも風をよけようとした。
 先頭を歩く長男の淳一郎は、みんなの風よけになっているといいな、と思っていたが、身長が低いせいで、実際あまり役に立っていなかった。
 次男の康二郎は、後ろの二人がついてきているか、振り返りつつ歩いている。
 三男の音三郎は早く休憩したいな、と思いつつ、前を歩く兄には負けたくないという考えが根底にあり、必死に歩を進める。
 末っ子の京四郎は雪の下からのぞく可憐な花を見つけるたびに立ち止まり、兄たちを心配させていた。
 ようやく今日の休憩場所まであと少し。この後は四人でテントを張って、温かいスープでも飲もうと、淳一郎が皆を振り返ったときだった。
 「旅人さんたち。寒いならこのマフラーをあげよう」
 声をかけてきたのは四兄弟とほとんど歳の変わらない二人組の若い旅人だった。
 「私たちはマフラーを三本持っています。一本しかあげられず申し訳ないのですが、良かったらどうぞ」
 淳一郎たち四兄弟は喜んでその緑色のマフラーを譲りうけた。
 マフラーはとてもとても長いものだが、一本しかない。さて、どうしようと四人は張ったテントの中で額を寄せ合って考えた。
 「このマフラーを三つに裂こう。そうして康二郎、音三郎、京四郎の三人がそれぞれ使えばいいじゃねえか」
 頼りになる長男の淳一郎は弟三人を見回した。
 「いや、このマフラーは丈夫だ。裂けるとは思えない。俺以外でじゃんけんでもして使ってくれ」
 生真面目な康二郎は顎に手を当て、考えながら言った。
 「ちょっと待てよ。ここは一番寒がりな俺に使わせてくれよ」
 楽観的な音三郎が大げさに寒がり、マフラーを譲るように言った。康二郎が「なにを勝手な!」と怒鳴る寸前に、優しい声が聞こえた。
 「こんなに長いマフラーなんですし、みんなで使いましょう」
 温厚な京四郎が手をポンとたたいた。
 「こうやって、ぐるぐるーって、みんなの首を巻くんです」
 京四郎がぐるぐるーといいながら、淳一郎、康二郎、音三郎の首をふんわりとマフラーで巻いていく。
 「ね、こうすればみんなあったかいでしょ」
 そう言って、最後に自分の首にマフラーを巻き付けた。
 四人はそのまま仲良く並んで眠りについた。
 いつの間にか雲は消え去り、かわりに何百、何千という星々が空を埋め尽くしていた。
 まだまだ寒い冬は続くが、四人の心の中はほんわりとろうそくの灯がともったようにあたたかくなっていた。


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このストーリーに関するコメント

17/07/23 笹峰霧子

可愛い発想ですね。
想像しただけでもほんわかします。

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