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待井小雨さん

待井久仁子というペンネームで「小説&まんが投稿屋」というサイトで、童話やホラーやよくわからない物語を投稿しています。 ご興味を持っていただけたら、よろしくお願い致します。

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ゴン太の華麗なる休日

17/06/03 コンテスト(テーマ):第135回 時空モノガタリ文学賞 【 休日 】 コメント:13件 待井小雨 閲覧数:727

時空モノガタリからの選評

まるで人間のような(それもかなりハイスペックな)犬のゴン太が素敵すぎますね。たまには休んでみたいと言い、結果的に平日よりも沢山働き疲れてしまうというあたりは、まさに人間チックですけれど、皆のためになることをしつつ、恩着せがましいところもないところは人間とは違って、やはり犬であり、うちにもこんな犬がいて欲しなあと思いました。かわいい¢ホ象を書きながらも、かわいさに頼りすぎない丁寧な文章が良いですね。仲の良さそうな家庭の雰囲気も微笑ましく、それぞれのキャラクターの魅力も伝わり、読んでいて楽しい作品でした。

時空モノガタリK

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 せっかくの休日だというのに彼氏の休日出勤でデートがキャンセルになった。
 ちぇー、とむくれて私は我が家の柴犬、ゴン太に抱きつく。
「ゴン太は寂しい私を慰めてくれるよねぇー」
 ぐりぐりと顔をすりつける――と、その頬ずりが肉球によって押し返される。
「ぐえ」
 呻く私にゴン太は人の言葉でこう言った。
「すいません、今日はペットをお休みしますので」
「は――」
 ぽかんとしている私を尻目に、ゴン太は後ろ足だけで立ち上がるとすたすたとキッチンに向かう。そこでお母さんに何やら声をかけている。
「サチ、今日はゴンちゃんがごはん作ってくれるって」
 にこにことお母さんがソファにやって来た。
「待ってお母さん、何でゴン太が」
 ペットを休むだなどと。料理って。しゃべるのなんて初めて聞いたし
「今日はペット業務お休みなのよ。休日は趣味に打ち込みたいんですって」
「ゴン太は料理が好きなの?」
「あら、知らなかった?」
「それは初耳です」
 思わず敬語になってしまう。
「あなた休日は外出ばっかりで家にいないものね。最近はもうずっと、お休みの日のゴンちゃんはあんな感じよ」
 振り返れば、エプロンをしたゴン太が食材を吟味しているところだった。
「見るのも初めて」
 休日をそんな風に満喫しているとは知らなかった。
「毎週休んでいるわけでもないからね」とお母さん。ゴン太の休日は事前の希望制なのだそうだ。
 踏み台に乗って調理の準備をする愛犬の後ろ姿に引き寄せられ、傍に寄る。
「サチさん、犬の料理は人間よりも不器用なんです。近づくと危ないですよ」
 飼い犬に窘められてしまった。
「興味深いものだから、つい。この踏み台は?」
「少し前に造りました。お父さんにも手伝ってもらって」
「ゴンちゃんは器用なのよねぇ」
 そうは言っても鋸や金槌をどう扱ったのだろう。想像している間にも調理は進み、ゴン太はパスタを茹でると立派なベーコンの塊を取り出した。
「そんなベーコン、うちにあったの?」
「これも少し前に燻しまして」
 自家製の燻製までも手掛けるとは。
「味見したい!」と手を挙げる私と「私にも」と甘えるお母さんの前にカフェオレが差し出される。
「犬の料理を見ているよりも、カフェオレでも飲んでいて下さい」
 ふさふさ尻尾はいつも通りに愛らしいのに、落ち着ききった佇まい。年齢的には二十歳そこそこの私よりも年上なのだわ、と思い至る。
 カフェオレをこくり、と飲んでみる。
「蜂蜜が入ってるの?」
「美容に良いそうですから」
「私のため?」
「違うわよね、お母さんのためよね!」
 愛犬の気持ちを取り合う母娘にゴン太は微笑みだけ寄越す。「どっちなのゴン太!」なんてはしゃいでいたら、ドアが開いて「お父さんのためだ!」と慌ててお父さんが登場した。
「蜂蜜は健康にもいいそうですからね」とゴン太は三つ目のカップを運ぶ。
「ほーらお父さんのためだー」
 自慢げにするお父さんに、ゴン太はこれまた微笑して「皆さんのためですよ」と言った。何たる家族たらしの犬だ。
 そうこうしている間に料理が出来上がり、お皿が運ばれる。新鮮野菜のサラダに自家製ベーコンのカルボナーラ。「毛が入らないように手袋をして作りました」と言い添える。それはそれで器用だなぁ、と感嘆。
「このお皿見たことない」
 どこか歪な形の器を指すと、ゴン太は少し恥ずかしそうに「陶芸もやってみたんですけど、まだ下手で」と言った。
 下手でも何でも、愛犬お手製の器で料理(しかもこちらは絶品だ)を食べられるのだから、こんなに嬉しい事はない。
 午後のおやつにはパンケーキ。添えられていたジャムもお手製だというのだから、まったくうちの飼い犬はどこまで多趣味なのだと今更になって驚くばかり。

 夜、彼氏へのメッセージに『来週はうちに来ない?』と誘ってみた。うちのハイスペックなゴン太を思い切り自慢したい。
「ねぇゴン太、来週は――」
 愛犬を振り返ると、当のゴン太はソファで眠りこけてお母さんに撫でられていた。
「疲れちゃったみたい。サチがゴン太のお休みに家にいるなんて珍しいから、張り切っちゃったのよ」
「クールにしてたから分からなかった」
 涎を垂らして眠りこけるゴン太は、休日仕様ではないいつも通りのゴン太だ。
「お休みなのに疲れる事してどうするのよ」
 気持ち良さそうに寝息を立てるゴン太に呆れてしまう。
 来週のゴン太はお休みかしら、それとも通常モードなのかしら。――まあ、どちらでもいいか。
「どんなゴン太でも自慢のゴン太よぉー」
 抱きついてすりすり、と頬ずり。私にされるがままのゴン太は、眠りながら前足を動かしている。これは陶芸をしているのか、はたまたパン生地でもこねているのか。
 夢の中のゴン太はどうやらまだまだ、張り切り休日モードのようだ。


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このストーリーに関するコメント

17/06/03 PURIN

ペットをお休みするという発想が面白いです!ほのぼのしていて癒されました。

17/06/05 待井小雨

PURIN 様

お読みいただきありがとうございます。
休日を趣味に打ち込んで忙しくするペットと、そのペットを取り囲む家族の様子を楽しんでいただけましたでしょうか。
ほのぼのするとのご感想、嬉しいです!

17/06/05 浅月庵

待井小雨様

作品拝読致しました。

......個人的に、途中のお父さんが可愛いです笑
ペット業務をお休みして、家族のために張り切る
ゴン太も、何と愛らしいこと。
癒し効果のあるお話で、とても好きです!!

17/06/05 待井小雨

浅月庵 様

感想ありがとうございます!
かしましい母娘二人と比べ、存在感が薄いながらも慌てて登場するお父さん、気に入っていただけて光栄です(笑)
気負わず楽しく読める物語を目指しましたので、癒し効果があるとのコメントが嬉しいです!
ありがとうございました(^^)

17/06/10 冬垣ひなた

待井小雨さん、拝読しました。

ゴン太の華麗なる休日ぶり、このご家族がうらやましいですね。登場人物もみんな可愛くて楽しかったです。ゴン太は平日もきっと家族に愛されているから張り切るのでしょう、面白かったです。

17/06/12 待井小雨

冬垣ひなた 様

お読みいただきありがとうございます。
平日は平日でゴン太をひたすら可愛がり、休日は休日でゴン太に甘えてみたりするのんびり家族を書いてみました。
面白いと仰っていただけて嬉しいです!

17/06/18 むねすけ

読ませていただきました

読みながらニマニマし、何度か声に出して笑いました
ずーっと幸せに笑っていられる物語、大好きです

17/06/19 待井小雨

むねすけ 様

声に出すほどに笑っていただけたなんて、この物語を書いて良かったと心底思いました!
ゆるーい家族の少しおかしな休日を気に入って下さり光栄です。
お読みいただきありがとうございました!

17/07/02 光石七

拝読しました。
ペットをお休みだなんて、発想がユニークですごいです。
ペットとしても家族を癒しているのに、休日も家族のために頑張るゴン太。主人公でなくても自慢したくなるでしょう。
ほのぼのしていて、楽しく読めました。
素敵なお話をありがとうございます!

17/07/03 瀧上ルーシー

拝読させて頂きました。
自分の家のペットも家事をしてくれたら……とつい思ってしまいました。
とても面白かったです。

17/07/04 秋 ひのこ

入賞おめでとうございます!
遅ればせながら拝読しました。
冒頭の「肉球によって押し返される」ところから「眠りながら前足を動かしている」最後まで、一文一文の情景がありありと目に浮かび、生き生きとした登場人物(もちろん犬のゴン太を含め)のやりとりが本当に面白かったです。
私は「ペットを休む」という発想そのものはそこまで珍しいものではないかな、と感じたのですが、「その休日の過ごし方」がとびきりユニークで、お見事です、のひと言に尽きます!
何度でも、隅々まで読み返したくなる作品でした。
「時空モノガタリ」のサイトに「お気に入り」の機能があれば絶対に登録しています(笑)。

17/07/04 待井小雨

光石七 様
お読みいただきありがとうございます。
お休みなのに家族のために過ごしていて「これは休日と言っていいのだろうか?」と少しばかり悩みました(^^;
お楽しみいただけましたら幸いです!

瀧上ルーシー様
ご感想ありがとうございます。
実際に家事をしてくれたら毛の行方が気になるところではあります。特に料理中(笑)
楽しく読んでいただけたなら大変嬉しいです!

17/07/04 待井小雨

秋ひのこ 様
お読みいただきありがとうございます。
「登場人物のやり取りが生き生きしている」……ふだん上手く書けていないと自覚している点でしたので、生き生きしているとの評価にとても救われます。
「お気にいり」の機能があれば登録している、とのコメントがとても嬉しく、また光栄です。
これからも楽しんでいただける作品を書けるよう励みたいと思います。

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