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ちほさん

時空モノガタリ歴3年目に入りました。 心のあたたかくなるお話を じっくりと書いてみたいです。

性別 女性
将来の夢 児童文学作家。
座右の銘 たいせつなのは、どれだけたくさんのことを したかではなく、どれだけ心をこめたかです。(マザー・テレサ)

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「グリーンゲートの少年たち」第7話・しおり〜最終話・おわりに(旅の果て)

17/03/20 コンテスト(テーマ):第103回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 ちほ 閲覧数:106

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 夏休みが終わっても、ここグリーンゲートの木々は緑に溢れ、街の中央に流れる川は穏やかだった。春に星流学院高等部に転入したばかりの鳴海は、あと半月もすれば秋の嵐が来ると友人から聞いていた。穏やかに見えて、激しさを見せつけてくると。でも、水も空気も綺麗だから、ここに療養に来る者もずいぶんと多い。
 窓から顔を出してグリーンゲートについて考えていると、玄関からお手伝いのあやちゃんと桃ちゃんが出かけるところが見えた。二人とも十六歳で仲が良く、今だって手を繋いで歩いている。まるで姉妹のようだ。可愛いな、と思った。次に、どっちが? などと思ってしまい、何だか馬鹿馬鹿しくなって、窓からそっと離れた。
 数学の予習をしていると、
「鳴海さん、起きていらっしゃる?」
 やたら上品な女性の声がした。花という名の義母だ。
「はい」
「開けても?」
「どうぞ」
 鳴海の声は、そっけないものだった。彼女が家族になって八年になるが、まだ一度も彼女に心をひらいていない。彼女が悪人というわけでなく、たぶん逆の理由から彼女を疎ましく思うのだろう。
 障子がスッと開いて、白い割烹着姿の若い母が現れた。
「今、朝香先生からお電話がありましたの。今日の放課後は『ものがたりクラブ』のために時間を開けておいてほしい、と」
 それって、学校で放送でもすれば済む話では? と思ったが、すぐこの自分のためには電話で連絡するしかなかったことに気がついた。『ものがたりクラブ』の部員五人のうち、高等部の者は他にいないし、中等部の放送は高等部には流れないようになっている。学校で顧問の朝香先生が直接に鳴海を訪ねるのも面倒なことだろう。高等部の校舎は、中等部とは別の場所にあるのだから。
「中等部のどこですか?」
「旧家庭科室だそうです」
 母を見た。息子に丁寧に話すしかない母は、そっと目を伏せた。
 八年もの間、心を通わすことができていない現実を、この人はどう思っているのだろう。辛いことだろうか? でも……心を通わす方法などわからないし、時間もない。次の春には、自分はスコーピオンの大学の寮に入るのだから、恐らくこのまま何も変わらずにサヨナラするのだろう。……でも、本当にそれでいいのだろうか? このまま別れてしまって……いいのだろうか?
「今日は『ものがたりクラブ』のことで、わたしも冬華も月帆も帰りが遅くなります」
 すると母は「まぁ!」と嬉しそうな声を上げて、サッと頬を赤らめた。
「どうしました?」
「いえ、何でもありません」と彼女は本心を隠す。いつものことだ。この人は何を考えているのかわからない。
「学校は午後からですか?」
「はい」
「そう」
 つまらない会話だった。
 
 放課後の学校の窓から夕日が差し込んでくる。生徒が少なくなった中等部の廊下を歩いていると、自分まで夕日色に染まりそうだ。中等部の旧家庭科室を探す。闇雲に探しても仕方ない気がして、次に現れた人に聞こうと心に決めてみる。
 ところが現れたのは、蜂蜜色の髪をしたすらりと背が高いまだ若い先生……ラファル先生だった。途端、やばい……と思った。思ったところで逃げも隠れもできそうにない。ラファル先生と朝香先生の仲の悪さは高等部でも有名で、今から『ものがたりクラブ』に向かうと聞くと、朝香先生目当てにラファル先生がついてくる。きっと、朝香先生に迷惑をかけてしまう。そこまで気を遣う必要もないのかもしれないが、出会えばきっと大喧嘩になる二人なのだ。あまり関わりたくない。ここは、さりげなくやりすごそうと決めた。
頭を下げてすれ違った。先に進もうとした時、「朝香って、どこにいるんだろう?」と呟くように聞かれ、足が止まってしまう。でも、なんだか怖いからラファル先生の顔は見ない。
「なんだか避けられているように感じるんだよねぇ」
「……」
 どう答えよう? 本当に朝香先生はラファル先生を避けているのだと思う。だから、ラファル先生に見つからないように、誰からも忘れられた旧家庭科室を『ものがたりクラブ』の集会所に選んだのだろう。黙り込んだラファル先生の顔を見上げてみる。目を閉じ、指先を顎にあてて考え込んでいる。
「じゃあ、おれ帰ります。さようなら」
 ラファル先生を置いて、鳴海は走り出した。もちろん、このまま帰るつもりはない。
「廊下を走るな!」
 ラファル先生の怒鳴り声がしたが、もう角を曲がるところだったので聞こえないふりをした。
 なんとか旧家庭科室に辿り着いた。旧家庭科室の場所を知っている先生は一人しかいなかった。
教室の扉とは思えないほどの重い鉄の扉を押し開ける。ひんやりとした空気の中で、下に向かう石の階段をそろりと降りる。まるで洞窟のようだ。意外に天井は高い。階段を下りる途中から響き渡っていた子どもらしい明るい声は、やはり月帆と静波のものだった。二人は鳴海の足音に気がついて、座っていた石の椅子から身をひねらせた。静波は両手を無邪気に振り、月帆は「ここがよくわかったね、兄さん」と声をかけてきた。
「ぼく、ここがわからなくて、静波とだいぶ迷ったよ」
「おれも迷った」
 鳴海も言いつつ、月帆の後ろの席に座る。
「冬華兄さんは? 一緒じゃないの?」
「うん」
「大丈夫かな?」
「愛想がいいから大丈夫な気はする」
「愛想?」
 月帆は、訳がわからないという顔をした。たぶん、冬華なら迷うことなく誰かに教室を尋ねて、ここまで送ってもらうくらいの事はしそうだ。学校にまだ慣れていないはずなのに、人付き合いが得意な弟だ。しばらく待っていればいい。
 テーブルも椅子もよく磨かれた灰色や黒の大きな石で出来ていて、天井は鍾乳洞のようだった。壁も巨大な一枚岩だ。それでいてゴツゴツしたところはない。改めて見渡してみると、とても家庭科室には見えない。趣味のいい天文台にいるようだ。
「来たかい?」
 いきなり教室の少し暗がりになっている奥から声がした。白衣姿の朝香先生が、重い扉を潜って現れたところだった。
「隣の部屋はどんななの?」
 静波が叫んだ。教師に対しての礼儀よりも何よりも好奇心が勝ったのだろう。
「ずっとトンネルが続いていてね。その果ては、白猫のワルツ組なんだよ」
 白猫のワルツ……たしか一年五組。
「担任のラファルも知らないことだよ」
 朝香先生の声と同時に、入口の重い鉄の扉が開く音がして、冬華の「こっちですよね、こっちこっち!」という声がした。振り返って見て、鳴海は思わず右手で顔を覆った。冬華がラファル先生を連れてきてしまったのだ。
(うちの弟が馬鹿をして、ごめんなさい……)
まだ学校のことをよくわかっていない冬華は、朝香先生とラファル先生のことを知らなかった。
「わぁ、すごいや!」
 冬華の楽しげな声が反響する。
「朝香、ここってすごいなぁ!」
 ラファル先生も天井を見上げて驚いていた。ここに入った人間は、みんな同じ反応をする。
「ここって、本当に家庭科室か?」
 ラファル先生は言いながら、朝香先生の側へ行く。
「何の用だ、ラファル」
「そんなに嫌そうな顔をするな」
 ラファル先生は、懐から四つに折りたたんだA4サイズの紙を取り出す。
「ほら」
 それを朝香先生に差し出す。受け取った朝香先生は、そこに書かれた文章を読んで絶句した。はらりと紙が足元に落ちる。
「どうしてこんなことに!」
「おれのせいじゃないからな」
 拾い上げたラファル先生は、面白そうに笑った。
「〈しおり〉をあげてもダメかな?」
 朝香先生の手が、去っていこうとするラファル先生のそでを掴む。
「なんだよ、それ」
「文化祭で売るオフセット印刷の同人誌が一冊、〈しおり〉と無料交換になるんだ」
「無理だろう。もともと『ものがたりクラブ』を嫌っている校長だ」
「じゃあ、〈しおり〉なしで一冊進呈」
「同じことだ。何を持っていっても通じないさ」
 朝香先生は、がくりと肩を落とした。
「せっかくの文化祭が……」と呻く。そんな彼の肩を、ラファル先生はポンと叩く。
「おれの文芸部と一緒に文化祭を盛り上げようじゃん」
「……盛り下がるよ」
 どうも二人の会話からすると、文芸部と『ものがたりクラブ』は協力して文化祭を盛り上げるようにとのことらしい。静波が察して、「ボク、いじめられちゃう!」と泣きだしそうになる。慌てて月帆が、彼の頭を撫でてやる。
「ということなんだよ」
 朝香先生は集まった生徒たちに言った。全然説明はなかったが、もうみんな理解できていた。文芸部ニ十五人と仲良くするしかないらしい。こっちはたったの……五人?
「先生、小雲が来ていません」
 鳴海が右手を軽く上げて発言した。朝香先生は、全員の顔を見渡してからゆっくりとこう言った。
「彼は、別の学校に通うことになったよ」
 小雲と特に仲の良かった静波が、思わず立ち上がってびっくり顔になる。
「ボク……それ……イヤ!」
 声は不安と不満でいっぱいだった。
「小雲は何も言わずに去っていくことを許してほしいと言っていたよ。彼はね、グリーンゲート音楽院へこの秋に入学した。星流学院に入学して一か月もしないうちにピアノの才能が認められてスカウトされたんだ」
 静波が、ストンと腰を下ろした。そして、一つ溜息をついた。いつもならここで泣きだすところだが、今は静かだ。
「それで、文化祭の話だけど」
 朝香先生は言って、ポケットから何枚かの〈しおり〉を取り出した。それを一枚ずつ生徒に渡していく。
「これ一枚で、我々の作った本が一冊だけ無料で交換してもらえるよ。自分の大好きな人に贈るといいよ。どうかな?」
 面白そうなことが大好きな朝香先生らしいアイデアである。〈しおり〉はクリーム色で、花の押し花が貼ってある。朝香先生の手作りだろうか。
「本を一冊渡したら、〈しおり〉の裏にハンコを一つ押す」と説明が続く。
 朝香先生は、へこんだままの静波に近づくと、彼の頭に右手を乗せて顔を覗き込む。
「やってくれるかい、静波?」
 少年は顔を上げて首を傾げる。
「ボク?」
「うん、面白くて責任のある仕事だよ。君にやってほしい」
〈しおり〉にハンコを押す仕事。まるでお店屋さんごっこだ。
「いいけど、ボク一人じゃ心配……」
 静波は、沈んだ顔のままポツリと言う。
「ぼくがいても心配?」
 月帆が静波に悪戯っぽく聞いた。
「ううん、心配じゃないよ」
 静波は少し明るさを取り戻して、小さく笑った。
「先生!」
 冬華が手を上げた。
「ぼくたち、文芸部の人と仲良くなれたらいいんですよね」
「ニ十五人もいるけどね」
「簡単簡単!」
 いつも陽気な冬華は全く心配などしていない。彼のきっぱりとした発言に、みんな元気と勇気をもらう。
「文芸部は『ものがたりクラブ』を敵視していて、校長先生も『ものがたりクラブ』をつぶそうとしている」
 朝香先生は、続けてこう言った。
「だから、まぁがんばろう」
 そんな彼のすぐ傍の席で、ラファル先生が何も言わずにただ見守っていた。朝香先生としては、気弱な様子をさらけ出すことはできないようだったが、けっこう気弱だったよなぁ、無理ないけど、と鳴海は同情した。
 それから後は、同人誌の題名をどうしようかと、みんなで悩んだ。朝香先生は『グリーンゲートの少年たち』を提案して、一応そういうことに決まったが、月帆がポツリと呟いた。
「『ものがたりクラブの少年たち』でもいいんじゃないかな?」 
 その日は、これで文化祭についての話し合いは終わった。
 みんなで帰る途中、〈しおり〉の話になった。
「ボク、小雲にあげる。文化祭には来ると思うもん」
 静波が無邪気に言う。
「ぼくはアリス」
 冬華は頬を染めた。この春に知り合った少女だ。水曜日にグリーンゲート川へ行くと、手作りサンドイッチをバスケットに詰めてやってくる可愛いおさげ頭の少女だそうだ。
「ぼくは、どうしよう」
〈しおり〉を眺めながら月帆が言う。
「あ、月帆、おまえは父さんにあげてくれないか?」
 鳴海には、気になる人がいる。でも、今までそこまで真剣に考えたことはなかったが。
「どうして? ……あ、そういうこと!」
 月帆は、こ憎らしいくらいに勘がいい。鳴海は恥ずかしくてしかたがないのに。
「じゃあ、それでいこうね」
 月帆は、にっこり笑った。

 家に帰ってから、月帆はやたら大きな声で父を奥の部屋から呼び出した。台所で洗い物をしていた割烹着姿の母が手を止める。月帆は言った。
「父さん、〈しおり〉をあげる! 大切な人に贈るしおりで、文化祭の本がタダでもらえるんだよ!」
 母の手がまた動く。その動きに寂しさが見えた。
「母さん」
 母にも聞こえるように大きな声で説明してくれた弟に感謝しながら、鳴海は母に〈しおり〉を差し出した。
「あげます。つまり……そういうこと」
 大切な人に贈る〈しおり〉。母にも聞こえたはずだ。
「まぁ、ありがとう。嬉しいわ鳴海さん」
 彼女は、〈しおり〉に頬ずりした。そこまで喜んでくれるとは思わなかったので驚いた。
「あの、それで一つ気になっていたのですが、今朝『ものがたりクラブ』で遅くなると言ったら、どうしてあんなに喜んだのですか?」
 そう、そのことが朝から心に引っかかっていた。母は頬を染めながら明かした。
「あなたが、たくさんの人と仲良くできているようだから本当にうれしかったの。もう少しお友達と仲良くした方がいいのではと、いつも思っていたから。母親失格のわたしなのに、そんな風に考えてしまっていたの」
 いつも寂しそうにしていたが、本当はそれどころじゃなかったのだ。この人は、自らを母親失格と言った。鳴海の後悔する心を激しく揺さぶった。彼女を八年間もこんな状態で放っておいたのは、この自分だ。
素直に言葉が出た。
「ごめんなさい」
 力が抜けた。こっちが泣きたいくらいだ。
「いいのよ。さぁ、お隣から頂いたおいもがあってね、今ふかしたところよ。食べてみて」
 母の言葉から丁寧ばかりだった言葉づかいが消えた。こんなに明るく話す人だったとは知らなかった。
「鞄を置いてくるよ」
 鳴海も丁寧な言葉づかいを捨てて、二階への階段を駆け足で登った。

・おわりに〜旅の果て〜(ものがたりクラブ顧問)
 ぼくはグリーンゲートから何千キロと離れたクデルの地で、物ごころついた頃には奴隷の身でした。ぼくが九歳になった時、母が言いました。
「あなたはグリーンゲートで生まれたのよ。なのに、このままではあなたは、このクデルの地で奴隷の身として死んでしまう。グリーンゲートでは、奴隷制度なんてないの。家族のいないたった一人の子でも、〈お手伝い〉として家族をつくれる。そういう土地……。朝香、あなたは妹を連れて、病身の私など捨てて、グリーンゲートへ行きなさい。それが、あなたの使命です。私と妹の香織に誓いなさい」
 グリーンゲートへの想いを胸に、妹と二人で数え切れないくらい、あちらこちらの土地を点々としました。そして、どの土地も不作の年、ろくに食べさせてもくれない主人の家から妹と共に逃げ出しました。持っていた物は全てお金に変えて、食糧を手に入れ、どうにか生きました。けれど、ぼくは動けなくなりました。食糧のほとんどを妹に食べさせてきたためです。倒れたぼくのそばで妹が泣き叫んでいるのが聞こえました。
「お兄ちゃんが死んじゃう。わたしばかりが食べていたから死んじゃう!」
 一体、誰に向かって言っているのだろうと思いました。意識がもうろうとしている中で、ひとさじの雑炊がぼくの口に運ばれました。誰かがぼくを生かそうとしていました。
「坊ちゃん、そんな薄汚い子どもに触れてはなりません!」
「死にそうな奴をほっとけと言うのか!」
 声の様子からして、ぼくと大して変わらない年齢のようです。目を開けると、まず少年の蜂蜜色の髪の毛が見えました。次に、澄んだ青い瞳が見えました。少年は、自分の名を告げました。ラファエル、と。
 その後、ぼくはラファエルのとてつもなく大きな屋敷で妹と共に働きましたが、そこでも痛い思いをして……とうとうまたしても逃げることに決めてしまいました。ところが今回は、なんとラファエルもついていくと言うんです。妹と大反対しました。身分の高い人は困っていないんだから家出するな、と。すると彼は、とんでもないことを言いました。
「身分を捨てれば、ついていってもいいんだろう?」
 彼は、本当にそうしてしまいました。名を『ラファル』と少しだけ変えて。それ以来の縁で、今に至ります。彼は、ぼくを助けた時に言いました。
「妹を守る立場の者が先に倒れてどうする!」 
 ラファルがぼくたちについてきたのは、ぼくがまた困ったことになってはいまいか、本当に大丈夫かといつもいつも心配し続けるのが嫌だから。単純ですが、彼にとってはほっとけないことだったようです。だから、学校でもぼくにつきまとい、常にぼくの安全に目を光らせています。行き過ぎた感はありますが。ラファルは、とても大切な親友です。だから、妹のことも託せました。 
 こんなぼくら三人を生かしてくれたのが、ここグリーンゲート。汽車から初めて見たこの土地の美しい緑とトウトウと流れゆく川の景色に、心から感動しました。あぁ、ここがグリーンゲートなのだ、と。とうとう母の故郷にたどりついた、と。母の言葉通り、この土地には、貧しい者を救ってくれる〈お手伝い〉という職業が根付いていました。他国では住み込み家政婦などと呼ばれています。違うのは、〈お手伝い〉は職業の一つですが雇い主の家族の一員と見なされる制度です。この制度のお陰で、まだ子どもでしかなかったぼくらも生きていけました。子どもだから、と否定する土地ではなかったのです。ぼくが十一歳で、妹が九歳。そして、ラファルが十二歳の春のことでした。もうぼくは、このグリーンゲートから他国へ渡ることはないでしょう。

──グリーンゲート。

 この美しい土地が、いつまでも人の心に優しい場所でありますように。

                                         (つづく)





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